――沢田家
「ふぁ~・・・ヒマ」
「オメェはいつもヒマヒマって言ってんじゃねェか」
子ども達の遊ぶ庭を見つめ、あくびをしながらツナがぼやくと、すかさず脇からリボーンのツッコミが入る。
「だってー・・・XANXUSがいないんだもん」
「・・・」
むぅ、と唇をとがらせるツナに、リボーンは複雑な思いを抱く。
XANXUSを始めとしてヴァリアーの幹部は次期10代目預かりになったが、それでも同盟ファミリーには任せることのできない仕事というものがある。
そのためにXANXUSは幹部達を引き連れて、一時イタリアへ帰国しているのだ。
やっとイチャつく2人を見ないで済むと胸を撫で下ろしていたというのに、まったくもって面白くない。
「あーあ、XANXUS早く帰ってこないかなぁ・・・」
いやいや、もうしばらくイタリアにいても良いぞ、などと思いながらリボーンはツナの背中を蹴飛ばす。
「ヒマだったら修行でもしてろ、最近、タルんでるぞ!」
「いってぇなぁ・・・暴力反対。横暴家庭教師!」
涙目で振り返るツナにドギマギなんてしてない―――いや、ホントに!!
「ほほー・・・こりゃ、ねっちょり修行だな。並盛山に行くぞ、ツナ」
「ええー・・・」
ブーブー言いながらも、ツナはよっこらせと、かったるそうに立ち上がって準備を始める。
ヒマを持て余すよりも、自分と修行をしていた方がマシという考えに至ったのだろうと思うと、リボーンは口の端がつり上がるのを感じた。
XANXUSのいない間に、少しでもツナの心から“奴”の占有率を減らしておくべきだと思った。この際、他の守護者のことでも良い。
「ついでだ。獄寺や山本も連れて行くぞ」
「わかったぁ・・・じゃ、隼人と武に連絡しなきゃな」
そう言って廊下に出たツナを見送り、リボーンは庭で遊ぶ子ども達に声をかけた。
「おい、オメェ等。並盛山に修行に行くぞ」
子ども達は庭よりも広い場所で遊べると素直に喜び、子ども達の面倒を見ていたビアンキも目を細めた。
***
ワイワイと賑やかに並盛山に向かう途中のことだった。
ピタリ、とリボーンが足を止める。
「・・・リボーン?どうしたんだよ」
「・・・動けねぇぞ」
「は?」
唐突に言われた言葉に、ツナは首を傾げる。
(動けないって何?ふざけてんの?)
素直な感情が顔にうかび、リボーンは読心術を使うまでもなくツナの心情を悟った。
「ふざけてねぇぞ・・・マジで、動けねェ・・・」
「どうして・・・っ!?」
リボーンの堅い声音にふざけているわけではないと理解したツナが歩み寄ろうとした時だった。リボーンの頭上に10年バズーカが突如現れた。
思わず背後にいるランボを見るが、ランボもまた仰天した様子で10年バズーカを見ている。
「お、オレっちじゃないもんね!!」
確かにリボーンの頭上に突然現れたわけだし、そんな芸当はランボには到底無理だ。とはいえ10年バズーカを持っているのはランボだけのはず。
一体どこから飛んできたのか。そんなことを考えて首を傾げるツナに危機感はない。
「10年後のリボーンってどんなのだろ?」
「おい、見てねェで助けろ」
「だって10年後だよ、気になるじゃん・・・ま、リボーンも10年後に行って、楽しんでおいでよー」
ひらりひらりと手を振ったツナを恨めしげに見やり、なぜ身動きが取れなくなったのか首を傾げつつ、リボーンは10年バズーカに呑みこまれていった。
ボフン、とその周囲に煙が充満し、ツナは期待に満ちた目でその中から出てくるだろう10年後のリボーンを待つ。
が、煙が晴れたその場所には10年後どころか、現在のリボーンすらも存在していなかった。
「・・・え、どういうコト?・・・なんで、交代してないの?また故障?」
ツナが呟くと、子ども達が騒ぎ出す。
「ツナ兄・・・リボーンは場所を移動しただけかも」
フゥ太の言葉に、ツナはそれもそうかとビアンキに視線を向けた。
「守護者の皆に連絡して手分けして探す。ビアンキは子ども達を連れて家に帰って。家に帰ってる可能性もあるし」
「わかったわ」
ビアンキが子ども達を連れてその場を離れると、ツナはリボーンの立っていた位置に手を触れる。
リボーンが動けなくなったのは10年バズーカのせいかと思っていたのだが。
「・・・微弱だけど、10年バズーカじゃない何らかの力の痕跡があるな・・・」
超直感は何もいわないし危険とは思えなかったから傍観していたが、マズかったかもしれない。そんなことを考えながらツナは約束していた集合場所に向かった。
集合場所にツナが着くと、そこには既に獄寺と山本が揃って立っていた。
ツナが2人に事情を話すと、獄寺がギョッとして叫ぶ。
「ええ!リボーンさんが消えた?」
「うん。悪いけど、修行は中止。リボーンを探してくれるかな?」
「承知しました!!」
「わかったのな!」
2人の了解を取り付けて、ツナは並盛中へと向かう。
並盛で何かあったら“あの人”に全部知らせないと、怒らせてしまうから。
――並盛中
「・・・赤ん坊が消えた?」
「はい。今、皆で手分けして探してるんですけど・・・まぁ、10年バズーカの故障ならそのうち戻ってくるハズなんで」
「ふぅん・・・まぁ、気にかけてはおくよ」
並盛で守護者があちこちうろつく許可を得たツナは、応接室を出ようとして雲雀に呼び止められた。
「ねぇ」
「・・・はい?」
「君、いつになく焦ってるけど・・・その10年バズーカとやらの故障の他に、何かあるんじゃないの?」
雲雀に指摘されて、ツナは目を軽く見開いた。
「雲雀さんはやっぱり鋭いなぁ・・・どうも別の力が働いたらしくて。10年バズーカ自体もどこから飛んできたのかわからないし、モノ自体も消えてしまったし・・・どうもおかしいと思い始めてます」
「・・・そう・・・僕もこれから並盛の見回りに行くから・・・いたら知らせてあげる」
「!・・・ありがとうございます」
見回りが嘘だとは言わないが、リボーンを探してくれる気はあるらしい。素直じゃない協力の申し出に、ツナは茶化すことなく礼を言った。
応接室を後にし、ツナがリボーンを探すために校門を出ようとした瞬間。
「っ!」
突如頭上に10年バズーカが現れる。
その一瞬の動揺に初動が遅れ、ツナはそのまま10年バズーカにその身を呑まれた。