「じゃ、一週間後にミルフィオーレの基地に突撃。これでかまわねーな?」
リボーンが皆を見回して確認すれば、全員から頷きが返ってくる。
「そうと決まったら準備を始めないと・・・時間は無いよ、隼人と武は手元にある匣兵器をしっかりと使いこなせるようになっておいてね?」
「はい」
「わかったのな」
「じゃ、獄寺はビアンキに修行を見てもらえ。この時代の獄寺はビアンキにも匣兵器のことを伝えていたみてーだからな」
「・・・わかりました」
リボーンの言葉に素直に頷く獄寺に、この時間軸の獄寺しか知らないビアンキは目を丸くする。かなりの反発があるだろうと思っていたから余計に驚いたのだ。
「隼人・・・」
「んだよ?」
彼女の顔を見て体調を崩していた獄寺はここにはいない。
完全に克服はしていないものの、しっかりと意識をしてビアンキを見ればゴーグルなしでも大丈夫なくらいには(ツナが)“調教済み”である。
ついでにむやみやたらに反発するのも止めさせているから、ビアンキに対する態度はかなり軟化しているように見えるだろう。
「・・・いえ、少し驚いただけよ。この時代の隼人から預かっているものと、私が集めたものを加えてようやく完成する匣兵器があるの・・・貴方ならきっと使いこなせるはずだから」
「ああ、説明を頼む。姉貴」
複雑な家庭環境であることはとうの昔に(吐かせて)知っている。ツナは満足げに2人のやり取りを見てから、リボーンに視線を戻した。
「これで隼人は良いとして、武は?」
「俺が見るぞ」
「ふーん・・・でも、あんまり武を“らしく”しすぎないでね?」
山本には“殺し屋”の才能がある。それはヴァリアーとの戦いで知った事実だが、それでもツナとしては今の山本の“良いところ”を消してまで極めさせるだけのメリットはないと思っている。
「わかってるぞ」
「んじゃ、よろしくなー、小僧」
「おう、任せとけ」
「で、俺の修行担当は?」
「ああ、ラルと・・・」
チラリ、とリボーンの視線が向かった先に顔を向ければ、今にも噛みつき――この人の場合は咬みつき、という表記が妥当か――そうな気配を放っている雲雀がいた。
「随分、待ったよ?」
(ああ、そういえば手合わせするんだか、死合うんだか、約束していた気がする)
ツナは苦笑いをうかべ、雲雀と向き合った。
「じゃあ、思いっきり暴れられる場所にでも行きましょうか?」
***
やってきたのは地下にあるトレーニングルーム。
ツナと雲雀の戦いを見たいと言い張った獄寺と山本も着いて来て、ついでとばかりにγ達も引っ張ってこられる。
「・・・なんで俺らまで」
「後で修行相手になってもらうからな、今のうちにツナの実力を確認しておけ」
「いやいやいやいやいや・・・ちっこいボンゴレの相手なんぞ、俺には無理だぞ!!」
「そうか?・・・お前は1つの部隊を任されてるんだろ?・・・って事は相当強ぇーんだろうが。何より、対匣兵器の練習ができるのが雲雀だけってのは偏りすぎだからな。いろんな属性の匣兵器を相手に練習させてぇーんだ」
善戦しろとは言わないが、せめてどういった攻撃の方法があるのかくらいは見せろと命じてくるリボーンに、γは勘弁してくれとこめかみを押さえる。
だが、一応捕虜という形であるγ達に拒否権はないので、結局のところ了承させられた。
ならば、しっかりツナと雲雀の戦いを見て対策を立てなければ――じゃないと、瞬殺される――と真剣な表情で向かい合うツナと雲雀を見つめる。
チリリ、と鋭い殺気が肌に突き刺さり、それと同時に雲雀が動いた。
凄まじい炎圧の雲属性の炎が雲雀の持つ匣兵器に注ぎ込まれ、パリン、と指輪が砕け散る。
「ランクの低いものとはいえリングを使い捨てにするか・・・これでボンゴレリングを持ってた日には目も当てられなかったな」
こんなのを相手にしていたら、命がいくつあっても足りない。さすがはボンゴレ最強の守護者と言われるだけのことはあるとγは納得した。
「君の力はまだ目覚めてない。この時代の君のように戦えるようになるために・・・才能をこじあける」
純粋な殺気と共に向かってきた匣兵器に、ツナは炎で防御を固めた。
「くっ」
凄まじい力に圧され、圧倒的に雲雀の炎の純度が違うということに気づく。
(これが、今と未来の差か)
悔しいとは思うが、それこそ経験の差というものだから仕方が無い。とはいえ負けっぱなしというのも腹立たしい。
「死ぬ気の零地点突破Fast Edition!」
「すげぇ!!」
「さすが十代目!!」
ビキビキと凍っていく匣兵器に、山本と獄寺の歓声があがる。
「いや、まだだ!」
匣兵器が凍りつくよりも先に増殖を始めるのを見て取ったラルが声をあげ、ツナを雲雀の匣兵器が包み込もうとする。
「・・・くっ!早いっ」
片っ端から凍らせるつもりが、その増殖速度に追いつかず、ツナはすっぽりと匣兵器に包み込まれてしまう。
「ツナ!!」
「十代目っ」
「球針態、絶対的遮断力をもった雲の炎を混合した密閉球体・・・彼の“今の”炎では突破は難しい」
「密閉・・・っつったな?」
ギロリ、と獄寺が雲雀を睨む。
「・・・」
「つまり、空気も通さねぇってコトだな?」
「おいっ、ソレって・・・」
獄寺の確認に答えない雲雀だったが、山本がその問いの意味に気づいて声をあげる。
「ああ、早々に脱出しないと、あの中の酸素がなくなっちまう・・・」
「!!」
冷静を装った獄寺の言葉を聞いて、山本は凄まじい殺気を雲雀にぶつける。
「山本武・・・君からそんな殺気を向けられるとはね。やっぱり時間軸の違いは大きいということか」
雲雀はなんてことのないように呟くが、周りはその空気を震わせるような殺気に鳥肌をたてる。
「山本、止めろ」
「小僧!でも・・・っ!」
止めるリボーンへも殺気を向けた山本だったが、逆に跳ね返すように強い殺気をぶつけられて、思わず黙り込む。
「止めろっつってんだ。これはツナへの試練でもあるんだぞ」
「「試練?」」
思いもつかなかった言葉に、獄寺と山本は声を揃えて首を傾げた。
「ボンゴレの試練、何がどう行われるのかまでは知らねーが、本物の殺気に晒された時にリングが主を試す」
リボーンがこちらに来てからというもの、何人もの死ぬ気の炎を見てきたが、明らかに自分達の知る――ツナやXANXUSなどの使う――炎とは質も量も違っている。
リングを通しての炎の扱いに慣れているから、というだけではないはずだ。
ツナ自身、炎は幼少時から使っているものであり、慣れているという次元ではなく、それこそ呼吸をするように扱えるものだ。
ならば、何が違うのか。
ふとパワーアップという言葉が脳裏を過ぎり、それならば、このボンゴレの試練しかないと思い当たって、雲雀には本気で殺すつもりで戦うよう告げた。
「リボーンさんは、十代目がこの試練を乗り越えられると信じているんですね」
ぽつり、と獄寺が呟く。
「ああ、アイツなら・・・越えられる」
たとえ、この若さでボンゴレの試練を受けた歴代のボスはいないとしても。