Ciao! 腹黒ツッくん☆未来編   作:cibetkato

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ツナの答え

 一方、閉じ込められたツナは至って冷静に状況を把握していた。

 

 狭い球体の中、酸素の量も限られている。

 

 ツナは呼吸を落ち着けて、なるべく球体内の酸素を使わないようにした。

 

「さて・・・この球体は匣兵器なわけだから普通の方法では出られないとして、むやみやたらに暴れるのは有限である酸素の無駄遣いか」

 

 閉所・暗所恐怖症でなくて良かったと思いつつ、ツナは目の前の壁に触れる。

 

「攻撃性がまったくないっていうのは、雲雀さんらしくないね。こういう追い詰めて殺すやり方はどちらかというと骸の得意分野だった気がするし・・・本来は別の目的で使ってるんだろうなぁ」

 

 のんびりと考えている暇はないが、どうにもこの球体に今の自分の力が通用するとは思えない。

 

「んー・・・一発いってみますか」

 

 自分の持てる最大級の力を、リングに込めて炎へと変換する。

 

 ドゴォ!!

 

 球体が激しく揺れるが穴が開く様子は一切ない。それでも壁の一部が溶けている部分を見つけ、ツナは目を細める。

 

「ふぅん・・・やっぱりそうか」

 

 太猿や野猿、γを獄寺や山本の練習相手にした時、彼等の使う炎はとても純度が高いものだった。

 

 獄寺も山本もリングを通して炎を出してはいるものの、まだまだ彼等の純度には遠く及ばない。それは覚悟の差というよりも慣れに近い。

 

 ならば自分は?

 

 慣れというならば、自分はおそらくこの場にいる仲間の誰よりも炎の扱いに慣れている。なのに純度はいまいち。

 

 覚悟というより緊張感が足りてないのかとも思ったが、どうやら少し違うようだと思ったのは、雲雀やラルの知る未来の自分の情報を“読み取った”時だ。

 

 2人ともにこの時代の自分の戦い方を知っているらしく、“沢田綱吉の力はこんなものではない”と思っているのがひしひしと感じられた。

 

「何が足りない?」

 

 リングに問いかける。

 

 雲雀が何の理由もなくこんな場所に閉じ込めるわけもない。

 

「7(トゥリニセッテ)、か」

 

 一瞬の油断を見せたリボーンの心の中を読み込んだ時に見たもの。それは“おしゃぶり”“ボンゴレリング”“マーレリング”という世界の根源に由来するものの情報。

 

 そのうちの“おしゃぶり”を有する7人の赤ん坊にかけられた呪い。そしてリング戦の時のXANXUSとチェルベッロとの会話。

 

「俺はまだまだ、何も知らない・・・」

 

 そう呟いた時だった。

 

<殺れ>

 

 声が頭の中に響く。

 

「!」

 

<報復せよ、嵌めろ、根絶やせ>

 

 頭の中に流れる映像は、ボンゴレがマフィアであるが故に持つ業。

 

「これは・・・ボンゴレリング、から?」

 

 そして今、ボンゴレの試練が始まる・・・。

 

「とか、ないわー」

 

 ツナはぼそりと呟く。

 

 この現象が何なのかはよくわかっていないが、自分が試されていることはよくわかる。

 

「っていうかさぁ、こんなのマフィアなんだから当たり前の業だよね。それを俺は変えるつもりでいる。それに、文句があるのなら出てきなよ。さっきから覗き見てて“あの変態”の仲間になりたいワケ?」

 

「ふっ」

 

 ツナの挑発によって現れた“彼”は小さく笑いをもらした。

 

「綱吉君・・・」

 

 聞き覚えのある声にツナは横を向き、口元を歪ませる。

 

「9代目、貴方は・・・」

 

「すまない・・・年若い君達にすべてを背負わせる形になってしまった」

 

 そのセリフからも察せられるとおり、おそらくこの時代の9代目は生きてはいない。なぜならここは、リングに宿る歴代ボスの“魂”がいる場所だからだ。

 

「いいえ、これも予定調和なんじゃないですか?・・・俺の動向を逐一見ている変態さんの、ね」

 

「変態、か・・・ふっ。Ⅹ世(デーチモ)、お前は一体どこまで見えているのか」

 

「全然だよご先祖様。・・・俺が知っていることなんて目先のことに過ぎない。“XANXUSを操っていたヤツ”が何かを企み、俺にそれをさせようとしている・・・ってことだけ」

 

 それが気に食わないから、変態呼ばわりしている。

 

 まぁ、その程度で怒り、しっぽを出すような相手ではないとは知っているが。

 

「我等もまた、その存在を知りつつも近づけずにいた・・・Ⅹ世、お前ならば」

 

「初代(プリーモ)・・・期待しないで、俺はボンゴレを壊すかもしれない人間だよ?」

 

「栄えるも滅びるも好きにせよ、その存在に従うか逆らうかも、な。・・・ボンゴレの運命は、お前と共にある」

 

<では、力を授けよう>

 

 9人の歴代ボスに認められた証であるその力がツナの身体に流れ込み、そして、爆発的に放出した。

 

 

 ***

 

 

 球針態に大きなヒビが入り、そこから徐々に広がっていく。あまりにもアッサリとその状態に達したことに、雲雀は眉を顰める。

 

 違う時間軸の過去から来た沢田綱吉。果たしてそれだけで説明のつくものなのか、もっと違う・・・その存在自体があらゆる時間軸から隔離され秘匿されていたものではないのか。

 

(そういえば、“彼”が言ってたね・・・。白蘭にさえも見ることのできない、7(トゥリニセッテ)によって強力に守られた世界だと)

 

「恭さんっ!!」

 

 草壁の声で我に返った雲雀は、球針態のヒビから爆発的に光が漏れるのを目にする。

 

「球針態が・・・壊れる」

 

 その呟きとほぼ同時に、球針態が爆発を起こした。

 

 一部始終を見ていたγはその凄まじい力に絶句し、呆然としていた。

 

(これが、ボンゴレ10代目の力・・・)

 

 これ程の力がありながら、なぜ白蘭に大人しく殺されたのか。

 

 今となっては当人に聞くことはできないが、この先、彼等と行動を共にしたならその答えがわかるのではないかとγは考える。

 

「10代目っ・・・なんて、神々しい・・・」

 

「お、ツナ、なんかグローブがかっこよくなってるのな!」

 

 完全に崩れた球針態の中から現れたツナをあがめるように見つめる獄寺と、ツナの手にはまるグローブの変化にいち早く気付いた山本。

 

 2人が全く驚いていないのは、このツナならば何でもありに違いないと思っているからである。

 

「・・・ⅩグローブVer.V.R.か」

 

 ポツリと呟いて、ツナはリボーンとラルに視線を向ける。

 

「この時代の沢田は指に装着したリングを手の甲に宿して力を引き出していた・・・それが、試練の末の形態だったとはな」

 

「まぁ、俺もあまり自信はなかったが・・・ツナに何が足りないのかと考えたら、この伝説の試練くらいしか思いつかなかった、というのが正直なところだ」

 

 しかし、それでなくてもツナの強さは化け物じみているのに、未来での戦い方を覚えたら完全に自分の手には負えなくなる。

 

 それでも、ツナは最強でなくてはならない。いくら未来の戦い方が特殊であったとしても、負ける姿を曝させるわけにはいかないのだ。

 

「わかってるよ、センセ」

 

 ツナはクツリと笑い、ⅩグローブVer.V.R.に力を込める。

 

 ボウッ!

 

「10代目の炎・・・太猿をボコった時よりも強い」

 

「スゲー、澄みきったオレンジなのな」

 

 その炎は明らかに、今までのものよりも純度が高かった。

 

「ワォ・・・やっと、僕の知る君らしくなったね」

 

「お前の知る俺がどんなのかは知らないけど・・・きっと違う」

 

「死合ってみれば、わかるよ」

 

 雲雀は懐から匣兵器を取り出し、そこに雲の炎を注ぎ込む。そうして開いた匣兵器から出てきたのは、紫の炎をまとったトンファー。

 

 そのトンファーを構えた雲雀から、凄まじい殺気が放たれる。

 

「っ、なんて殺気だ・・・これが、雲雀恭弥」

 

 本気でツナを殺しにかかっている雲雀を見て不安になったラルは、チラリとリボーンを見る。

 

 雲雀の殺気にも動じていないリボーンはラルの視線を感じつつも、ツナの一挙手一投足を見逃すまいとしていた。

 

 おそらく、XANXUSとリング争奪戦で戦った時よりもずっと強くなっている。大空専用の匣兵器さえ手に入れば、もはや白蘭すらも怖い存在ではないはずだ。

 

 雲雀ならば、良い試金石になる。

 

 白蘭の強さはまた異質なようだが、それでも、匣兵器での戦闘に長けている相手と戦うことで、ツナはまた学習する。

 

 それは、入江正一を、そして白蘭を倒すための力となる。

 

「いくぞ」

 

 死ぬ気の炎を発することによって感情が抑圧された声でツナが呟いた瞬間、その姿が炎の残滓と共に掻き消えた。

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