ガガガガガ!!!
激しく打ち合うツナと雲雀。
それを見つめる草壁は背中で滝のように流れている汗を感じつつ、必死に冷静さを装っていた。
(この殺気・・・恭さんとほぼ互角かそれ以上の・・・)
ぶつかり合う雲の炎と大空の炎、澄み切った色をしている2つの炎が打ち合う度に余波がこちらにも向かってくる。
(・・・調整って言ったよな・・・調整って!!)
リングの質の差か徐々に押され始めて、更には手加減までされているように思える状態の雲雀のムカつき度はMAXである。
「キミ、ムカつく・・・」
「えー、そんなこと言わないで下さいよ~・・・ちゃんと本気出してますよ?」
「・・・ウソ。本来のキミの炎はそんなモノじゃないはずだ」
雲雀がそう感じるのも仕方のない事なのだが、今のツナではこれが限界であるのも本当だ。
「そんなこと言われても・・・本気なものは本気なんですよ」
ツナの持つ炎は確かにもう一段階上がある。
しかし、新技を使うに際しては現在の炎であっても不安定さが残っている。これ以上の炎は使えないのだ。
「大空専用の匣があれば・・・また違うのかなぁ・・・」
さすがのツナもこればかりは超直感では解決できない問題だった。自分の力ながらじゃじゃ馬な炎にすっかり振り回されているのである。
それなのに雲雀を押さえ込めている辺り、ツナの本来の力は相当なものであることが知れる。
「・・・リングの差だけでも相当な差があるっていうのに・・・炎圧でもここまで差ができるなんて。どんだけ化け物なのさ、この小動物・・・いや、むしろ小動物の皮被った猛獣だし・・・」
雲雀は「可愛くない」とぼそりと呟いて、ツナに背を向けた。
「雲雀さん、帰っちゃうんですか?」
「興をそがれた・・・帰る」
ぷんすこと怒りながら帰っていく雲雀を見送り、ツナはラルを振り返る。
「ねー、ラルはこの解決策とか思いつく?」
「・・・いや、オレもさすがにそこまでは・・・技術者ではないからな」
「ふむん・・・技術者ねぇ・・・」
(ジャンニーニは匣兵器とか、武器系統の知識はあまりないって言ってたしなぁ・・・施設面に特化してるっぽいし。
やっぱりここは、入江正一クンをとっ捕まえて聞き出すしかないかぁ・・・どうせ、ミルフィオーレの基地の制圧くらいなら、今の戦力で十分でしょ)
超直感はその先に何かあると警鐘を鳴らしているのだが、基地に潜入すること自体には反応していない。
「・・・沢田?」
いつも強気であっけらかんとしているツナが考え込んでしまったので、ラルは困惑した様子で呼びかける。
「ん?ああ、大丈夫。何でもないよ。・・・どうせ、雲雀さんが全力でない俺ではつまらないと駄々をこねてるだけだから、基地を制圧するくらいなら今の実力で問題ないでしょ?」
「・・・ああ。おそらく、今の実力で全く問題ないだろう」
(そもそも雲雀と互角だなんて、その時点で化け物レベルだとこいつは気付いてて言ってるのだろうか・・・?)
そうぼやくくらいに、出会った当初からツナのペースにハマりまくっているラルなのだった。
***
――病室
規則正しい心拍数モニターの音が響く病室で、京子とハル、イーピンは心配そうにクロームの青白い顔をのぞき込む。
中身はツナに引っ張られる形で色々と進化してしまっているが、表面上では儚げな美少女であることは間違いないので、心配してしまうのも仕方のないことだ。
「大丈夫でしょうか・・・」
「うん・・・」
「ツナさん、すぐ元気になる、言ってた」
イーピンが2人を励ますようにそう言うと、京子もハルもわずかに表情を緩めた。
「そうだよね、ツナ君がそう言うんだもん・・・」
「はひ!ツナさんがそう言うなら、間違いないですよね!」
実際にクロームはピンピンしており、精神世界にてボンゴレリングの炎で幻術を強化する調整をしているだけなのである。
今の京子達に幻術どうこう、とは言えないため、ツナが心配しなくていいと言って聞かせたのがつい先ほど。
自身の調整の前に2人に声をかけ、イーピン“に”2人の面倒を任せた。
肉体年齢はともかくとして、この異常な状況下ではマフィア関連の知識を持っているイーピンの方がはるかに頼りになり、正常な判断を下せるだろうという人選だ。
「んぅ・・・」
その時、クロームが小さく呻き、うっすらと目を開ける。
「だ、大丈夫!?」
「つ、ツナさん、ツナさん、呼んできます!!」
「・・・待って」
途端に慌てる2人を抑えたのは、イーピンではなくクローム本人だった。
「クローム、ちゃん」
「私は平気・・・ボスの邪魔しちゃ、ダメ」
「は、はひ」
「でも、心配してくれてありがと。・・・ちゃんと、聞こえてたから」
微笑をうかべたクロームにそう言われ、京子とハル、イーピンは嬉しそうに笑った。
「元気になったみたいで良かった!」
「本当に、良かったです!!」
「うん、ありがと」
京子とハルにはとりあえず巨大な猫を被ってみたクロームだったが、とりあえずは不審に思われていないようだとホッと胸を撫で下ろす。
一般人である2人をどこまで巻き込むことになるかわからない以上、なるべくならば余計な情報を渡さない方が良い、というのがツナとの共通認識であるからだ。
ちなみに、リングの炎を操る過程で骸だけでなくクロームまでもがツナと精神世界で意思の疎通ができるようになったと知ったら、某暗殺部隊のボスはとっても渋い顔をするだろう、ということまで共通認識を図っていたりするのは余談である。
久々に実際の身体を動かしたクロームは、とりあえずと勧められて入浴と着替えを済ませ、食堂へと足を運んだ。
(腹が減っては戦はできぬって、言うものね)
こちらに来てからろくなものを食べていないクロームのお腹は、待ちきれんといわんばかりに「きゅるるる」と抗議の声をあげたのだった。