――ミルフィオーレ日本基地
「・・・グロ、本当に使えなかった。発信機すら仕掛けられないとか、どういうこと?」
ブツブツと文句を言う正一は本来の計画が実行できずにいることにいら立っていた。
グロ・キシニアがその慎重な性格から、万が一負けた時のために発信機を仕掛けることを予想していたというのに、それすらもできずにボッコボコにされるとは思ってもいなかった。
まぁ、夢の中で出会ったツナとクロームを見る限り、グロでは力不足だったのだろうとは理解している。
だが、こちらの戦力を大幅に“削る”ためには、ボンゴレの基地へ戦力の大多数を送り込み、雲雀によって無力化してもらうしかないはずだったのだ。
しかし、ふたを開けてみれば、クロームの持ち物に発信機の類は仕掛けられておらず、雲雀からお叱りの言葉と共にクラッキングウイルスが送られてくる始末である。
「もう、ほんとイヤ・・・」
さて、どうやって戦力を削ろうと考えていた最中に、とうとう殴り込みに行くぞとの連絡が雲雀から入り、正一は頭を抱えた。←イマココ
てゆーか。
「こっちの戦力削らなくても、この際良いような気がする・・・必要なくない?ないよね?あの人(雲雀さん)曰く、下手な小細工すると余計な被害が出るってことだったし」
焦って余計な事をしたら、マジで敵判定されて自分までボッコボコにされそうな予感がするのは気のせいではないだろう。
「とりあえず最初から僕の匣兵器・メローネ基地を起動させて、うまい具合に誘導すれば・・・」
現時点での計画変更は痛いが、それくらいできなければ白蘭の懐刀の名が泣く。――泣いても良いけど。
「よし・・・決めた」
こうなったら総力戦である。雲雀の情報だと過去から来た彼等のスペックは予定よりも遥かに高いらしいので、心配はいらないだろう。
正一が大まかな方向性を決めたその時だった。
「「入江様!!」」
タイミング良くチェルベッロの2人が研究室に駆け込んできた。
「どうしたんだ?」
しかし、いつになく動揺している様子の2人に問うと、彼女達は声を揃えてとんでもない報告をしてくれた。
「「第3部隊、電光のγ、同じく嵐炎の太猿、同じく野猿の3名が負傷してはいますが、無事帰還致しました!!」」
「なにっ?!γ達が戻ってきただと!?」
(あああ!絶対、これ、彼の差し金だ~っ!!また、計画の練り直しをしなくちゃいけないじゃないか!!~~っ、胃がっ、胃が痛いぃぃ~~!!!)
***
――ボンゴレ日本支部・ブリーフィングルーム
「♪♪♪」
「10代目、ご機嫌ですね」
「うんっ♪・・・とりあえずγ達はうまくミルフィオーレの基地に戻れたかなぁ?」
「おそらく大丈夫でしょう。入江ってのがこっち側の人間だとするなら、10代目のご指示で戻ったことも勘づくでしょうし、そもそも、あそこまでボロボロになったγ達が敵側に寝返ってるとは誰も思わないッスよ!」
「ボロボロにしたのは隼人、キミだけどね~」
3人がかりでも獄寺の匣兵器の威力はすさまじく、まるで歯が立たなかったのだ。
言い訳をさせて貰えるならとγが白状したのは、現在の匣兵器は封印状態にあるのと同じで、本来の匣兵器はミルフィオーレに囚われている虹の姫・ユニに預けてあるのだという。
ならば、と獄寺が発案したのが今回の作戦である。
「でも、今回の作戦を遂行するためにはちょうど良かったッス。無傷で帰っては疑われますからね」
「確かにね~。結構なボロボロ具合だし、リベンジをしたいから、と言えば封印していた匣兵器を持ち出すのには十分な理由になるだろうからね」
「ええ!γの匣兵器を取り戻すのと、あっちの動きもスムーズに手に入れられる、一石二鳥の作戦ッスからね!
入江って野郎よりもγの方が監視の目も少ないでしょうから、こちらとの連絡も取りやすいでしょうし、重要な拠点をγに任せるように仕向ければ、こっちは楽勝で重要な拠点に向かえるってもんですよ!!」
「さすが隼人~。エゲツない作戦を考えつくよね~」
「いやぁ、それほどでも~」
(((褒めてんのか!!?そして嬉しいのか!!?)))
キャッキャと子ども達が盛り上がる脇で、大人組はその黒い会話に思いっきりドン引く。
その様子をチラリと横目で確認した山本は空気を一変するように明るい笑い声をあげた。
「ははっ、獄寺にしてはまともな作戦だよなー。いつもならこう、理論をこねくり回したような作戦ばっかり提案してんのに」
「はっ、俺だって成長したんだ。10代目の右腕になるためにこれくらいの計画はちゃちゃっと提案できるようになるのは当然なんだよ!」
「ふーん・・・ま、俺はツナの懐刀を目指してっから、作戦云々っていうよりもツナの敵は全部斬るって方に力を入れるつもりだし、役割分担できて助かるけどな」
「けっ、てめぇなんて懐刀じゃなくて、肩甲骨で十分だっつーの」
「獄寺~、それも結構重要な部位だぞ~」
「うるせー!懐刀だなんてカッコいいフレーズを使うんじゃねーよ!肩甲骨!!」
「ははっ、ひでーのなー、獄寺」
なんというかどうでもいい内容で言い争う獄寺と山本を放置し、ツナはリボーンに視線を向ける。
「ねー、センセ」
「なんだ、ツナ」
「今回はお留守番だろ?」
「・・・ああ、そーだな」
「じゃあ、たくさんお土産持ってくるからさー、ご褒美にアルコバレーノの話を聞かせてね?」
「う゛」
「――――ね?」
強い圧力と共に笑顔で凄まれたリボーンは、渋々ながらも頷く。
「わ、わかったぞ・・・」
「ふふっ、約束だよぉ?リボーン」
「・・・約束は守るぞ・・・」
(じゃねーと、おっかねーからな、ツナは。それにそんなことで嫌われたくもねーしな・・・)
なんだかんだ言いつつ、ツナには甘いリボーンなのだった。