―― 殴り込み当日
「では装備の説明をさせていただきますね、10代目。この“オートマモンチェーンリングカバー”は使わない時に自動的にリングの力を封じ、敵から探知されにくくなる機能を搭載しています。
それから特別製の無線機、一斉に送受信両方の周波数が変化するので盗聴の心配もありませんし、機器同士の周波数は寸分違わずに同調変化しますから音質もクリアなのです!!」
ジャンニーニの説明にホウホウと感心した声をあげつつ、ツナと獄寺と山本、クロームはその装備を身に着ける。
「・・・本当に、大丈夫なのか?」
了平が心配そうにクロームを見つめるが、当の本人はケロッとした顔でこっくりと頷く。
「大丈夫。もう、炎の使い方も完璧」
これは無理をして言っているのではなく、本気でクロームは炎の扱い方をマスターしている。
幻術世界で何十倍にも感覚を遅くして死炎と幻術の技やらなにやらを練習したのだから、守護者の中でもダントツで炎の扱いが上手くなっているはずだ。
それはツナも承知しているので、クロームに何かを言うこともなく好きにさせている。
「とりあえず、俺達が囮として派手に暴れまわるから、クロームと雲雀さんはさっさとあの丸い装置のトコに向かってね」
「この地図通りに行けばいいの?」
「たぶんね。この部屋の配置を見る限りでは何か仕掛けの一つや二つはありそうだけど・・・その仕掛けが発動する隙も与えずに動けば問題ないし、いざとなったら壁ぶち抜いて行けばいいよ」
「うん。わかった、そうする」
サラッと過激なことを言うボスとそれを素直に実行しようとする霧に、大人組はしょっぱい顔をした。
まぁ、今更の事なのでツッコミはしないが。
「で、ジャンニーニ。γにはこの通信機を渡し済みなんだよね?」
「ハイ。もちろんですとも。太猿さんや野猿さんにも渡してありますから、万が一、バラバラに配置されていたとしても大丈夫ですし、彼等への連絡は音声を拾われる可能性を考えて、偽名で行う事も通知済みです」
その偽名がゴリゴリとγ達の気力を削ったのは言うまでもないが、ツナに悪気は一切ない。むしろバレにくくて良いじゃないかとご機嫌ですらあったのだから反論もし辛かったのだろう。
そして、それらの装備に加え、リボーンとレオンからのプレゼントとして耐死炎の糸でできたTシャツを上着の下に着こんだツナ達は、いよいよ出発することとなる。
並盛ショッピングモールの地下駐車場までやって来た面々は、見送りに来たビアンキに京子やハル、子ども達のことを任せ、配電室のダクトからミルフィオーレの基地に潜入を始める。
***
「よし、図面通りだな。・・・第2格納庫のあたりに到着した。ここから先は赤外線が張り巡らせてあるから“くぐり抜け”を実行するぞ」
ラルの言葉に、ツナはニコニコと笑いながら否を告げた。
「え、ヤダよめんどくさい」
「めっ・・・」
言うに事を欠いて“めんどくさい”とは何事か。
せっかくジャンニーニとも相談し様々な手段を講じたというのに、何を言ってくれやがるのか、このガキんちょ様は。
ラルがイラッとした瞬間、ツナはさらなる爆弾を投下した。
「リボーンや雲雀さんの手前、大人しく作戦を聞いておいたけど。クロームが侵入するにはもうちょっと派手に動かないとまずいと思うんだよね。・・・っていうのはまぁ表面上の理由でね。
そろそろ暴れても良いかなぁ?この下に良い獲物がいるって、俺の超直感は叫んでるんだよねぇ」
にっこり。
((獲物って、獲物って言ってるよ!!この子!!))
ラルも了平もそのツナの発言にはドン引きである。
しかもツナはヤ(殺)る気満々である。止めるべきかどうか一瞬悩んだ隙に、お腹真っ黒剣士こと山本へ命令を下していた。
「武、やっちゃって」
「ん?良いのか?」
「うん、やっちゃって♪」
「わかったのなー♪」
シャキーンシャキーンという斬撃の音が何度か耳に入ったが、実際には何回斬ったのかラルの目では追えなかった。
その直後にはダクトの残骸ごと真下に落下したからだ。
「ハァ~~、なんだぁ~?上でゴソゴソしてるモグラかと思ったら、人間のガキか~~?」
哀れ、生け贄に選ばれたとも知らない大柄の男が馬鹿デカい武器を担いだまま、こちらを見てニヤリと笑う。
「・・・見事なまでのムダマッチョッスね」
きっぱりバッサリと大柄の男を扱き下ろす獄寺。
「ははっ、筋肉つけたら強くなるとか言って鍛えるけど、見た目より弱っちいってのの典型的なタイプなのな~」
にこやかだけれども毒舌な山本。
「うん。いい感じの獲物だよね」
始終、彼を獲物扱いするツナ。
敵の基地の中に入って、しかも、敵に遭遇したというのに、すさまじい余裕っぷりである。
「む、ムダ・・・よ、弱っ・・・チキショ~~~!このガキィイイ!!消し炭にしてやる~~~~!!」
大きな声は某鮫さんの調子と似ているが、所詮は雑魚なのである。登場そうそう様々なフラグを立てた彼は、あっさりとツナの新技の餌食となった。
「うん、こんなもんかね」
「さすがッス!10代目!!」
「ははっ、やっぱ、ツナは強ぇ~のな!!」
守護者達に褒められてご機嫌なツナは、新技の餌食となって真っ黒焦げになった彼へと視線を向けた。
「・・・でも、ちょっと失敗したなぁ」
「何がです?全てが完璧でしたよ!!」
「そーだぜ?ツナ」
「リングと匣兵器壊しちゃって、回収し損ねたんだよねぇ・・・」
反省点はそこかよ!!とツッコミを入れたい大人組だったが、お子様達の放つ雰囲気がそれを許してくれない。
「あー・・・でも、相手は雷でしたから雲雀への使いまわしもできませんし、アホ牛には戦わせない方向で10代目はお考えでしょう?」
「そーだけどさぁ、γとかなら有効利用できたんじゃないかなぁとかさ」
「あ゛~」
慰めようとした獄寺が撃沈したのを横目で確認した山本は、それならばと口を開いた。
「あ、あのさ!猪突猛進な匣兵器ってγには似合わねーし、リングだってランクの低そうなヤツっぽかったから、γに渡したって雲雀みたいにぶっ壊すのがオチだと思うぜ?
それに、もっと上の敵からかっぱらった方が、雑魚よりもイイもの使ってるだろうから間違いないって!」
色々毒舌である。
まぁ、猪突猛進でリングの質も悪い雑魚、と酷評された相手は既に夢の世界にご退場されていらっしゃるので、反論する者もない。
「・・・ま、それもそーだよね。ゴミを渡されてもγが困っちゃうよね」
扱き下ろす方もだが、それで納得する方も色々とヒドイ。最終的にゴミ扱いされた彼と彼の持ち物は早々にボンゴレ側の記憶から抹消されることになる。
「・・・お前達、おしゃべりをしている暇はないぞ。カメラには偽景フィルターをつけて、侵入したことを悟らせないようにして・・・」
「ラル~?俺達、囮」
「だからなんだ!早くしなければミルフィオーレの奴らに、」
「ラル、囮はこそこそはしないもんだよ?」
「っ・・・沢田、まさか、このまま・・・」
「あはっ、当然♪正面突破、一択でしょ☆」
(誰か・・・というか、リボーン!!お前の生徒を何とかしろ!!!大暴走中だぞ!!!)
なんてラルが心の中で叫ぶが、あいにく電波が届き難い場所らしく、通信が安定して行えないため、リボーンに止めてもらうことは不可能だった。
頼みの綱の了平も、まぁそれでも良いかと言わんばかりに止める様子を見せない。元々こそこそするのが苦手な晴の守護者であるので、ラルの期待に応えてくれる可能性はゼロだ。
ボンゴレ突入囮組の面々で一番の貧乏くじを引いてしまったらしいラルはふつりと緊張の糸が切れるのを感じた。
「・・・もう、どうなっても、オレは知らん」
要するに目的さえ果たしてしまえば良いのである。こんな危険人物達には早々に過去へとお帰り頂き、自分の知るボンゴレのメンツに戻ってきてもらわねば。
ラルの現実逃避を察知しつつも、ツナは暴走を止めるつもりはなかった。それもこれもすべては同時に潜入したクローム(ついでに雲雀)のためなのである。
「よし!ラルの許可も得たし、そろそろ次に行ってみよ~!」
「「おおー!!」」
大人組の諦めやらはさておき、元気なお子様達はサクサクと次なる獲物を探しにミルフィオーレの基地を堂々と突き進んで行ったのだった。