「じゅ、10代目・・・あ、あれはモスカですよ!」
「・・・うん」
「アレは偵察用のストゥラオ・モスカだ。リングの波動を感知するシステムを搭載しているらしい・・・ミルフィオーレの技術者が専門の研究をしていて、後継機も多く存在している」
「あ、じゃあ・・・ヴァリアーじゃないのか」
「ああ、昔の話をしているのか?・・・今のヴァリアーはモスカを所有していない。匣兵器の方を重点的に集めているからな」
「匣兵器かぁ・・・リングに灯した死ぬ気の炎で開けるんだっけ?」
「ああ・・・安全な場所に行ったら、ちゃんと見せてやる」
息を潜めながら話していると、突如モスカがこちらを向く。
「っ!気付かれた!?」
獄寺が息を呑む。
「バカな・・・マモンチェーンでリングの波動は封じているはず・・・おい、お前等、他にリングを持ってるんじゃないだろうな?!」
「リング・・・あ!」
ツナが懐を探って取り出したのは、ランチアから貰った、亡くなったボスのリングだった。
「それだ・・・どうして隠していた!」
「隠してたんじゃなくて、コレも力あるリングだとは思ってなかったんだってば・・・」
ツナは肩を竦め、よっこらせと立ち上がる。
「おい、沢田!」
「いや、見つかったなら戦うしかないでしょ?」
「待て、そのモスカは生半可な攻撃では破壊できん!かと言って、オレの匣兵器では相性が悪すぎる・・・」
「んー・・・とは言われても・・・完全にロックオンされてるし」
「10代目、そのリングは俺に渡してください!俺がそれを持って逃げれば・・・」
「は・や・と?・・・アレだけリング争奪戦の時に言ったのに、もう忘れたのかなー?」
笑顔で獄寺の耳を引っ張るツナだが、目が笑っていない。
「いだだだだだだ!!!す、すみません!すみません!!忘れてません!!!いのちだいじに、ですよね!!わかってます!!!!」
「なんだー、すっかり忘れていると思ったよー・・・次言ったら、どうしようかな?ビアンキに抱き付いてもらおうか」
「ひっ・・・!」
ビアンキの名前を聞いただけで青ざめた獄寺が大人しくなると、ツナは満足して耳から手を放す。
が、状況が変わったわけでもなく、モスカと睨みあう状態が続いている。
不意に、モスカが攻撃モードになり、腕をこちらに向ける。どうやら指の先から弾が発射される仕組みになっているらしい。
その矛先が一番近くにいたツナに向く。
「っ、10代目!!」
獄寺の悲鳴のような叫びが辺りにこだました。
その時。
「鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)!」
ガキィイ!
怪我を覚悟で攻撃を受け止めるつもりだったツナだが、目の前のモスカの肩口に刀がめり込んでいるのを見て、ホッと息を吐いた。
「助っ人登場ってな?」
刀を引き抜いた“彼”は、そう言ってニカリと笑った。
そして、モスカに動く気配がないのを確認して“彼”はツナ達に歩み寄る。
「怪我はねーか?」
「山本・・・!?」
獄寺がその名を呼び、10年後山本はそちらに視線を向けた。
「あれっ、獄寺がちっせェのな~?」
「10年バズーカにやられてこっちに来たんだよ!!見てわかれよ、この野球バカ!」
「あ、ああ!あー、そうか。10年前の・・・ハハッ、そっか」
山本の笑顔にどことなく影を見つけた獄寺は、先程聞いた山本の父親の死が原因だろうと眉をひそめて呟く。
「チッ・・・から元気を出しやがって」
その呟きを耳にした山本は、ちらりとラルを見てから苦笑いをうかべた。
「そっか・・・ラルから聞いたんだな」
「たけ――山本、ありがとう」
10年後獄寺と同様、“武”とは呼んでいなかっただろうとふんで言い変えたツナに、山本は目元を緩めた。
「いや・・・門外顧問の使者を迎えに来たつもりが、お前らを助けることになるなんてな」
「ほんと、助かったよ」
モスカの攻撃を受け止める自信はあったが、無傷とはいかなかっただろう。それを考えれば山本の乱入はありがたかった。
「いや・・・とりあえず、いこーぜ。こんな奴相手にするだけ損だし」
のんびりと歩き出した山本に、ラルが焦れたように訊く。
「おい、山本・・・基地まではまだ遠いだろう?急がなくていいのか?」
「ああ、そりゃガセの情報なのな。正確な場所を敵に知られるわけにはいかないし・・・実際はもうすぐそこだ」
山本は懐から小さな箱のようなものを取り出し、指にはめていたリングをあてる。すると、そこから何かが飛び出して、ポツポツと雨が降り始めた。
「今の・・・」
ツナが山本の指にはまるリングを見つめる。
「防犯対策のカモフラだ。よそ見はするなよ?」
山本の言葉と同時に、雨がシャワーのように強く激しく降り始めた。