視界の悪い中、なんとか山本の背を追いかけていたツナ達。
「こっちだ」
斜め前から聞こえた声に誘導されるようにして行けば、草むらの中に隠れるようにした地下通路が現れた。
「うっわ・・・ナニコレ、すっご」
ツナが思わず感嘆の声をあげると、山本は二カッと笑った。
「ハハッ、驚いたろー?ここはボンゴレの重要な拠点として急ピッチで作られたんだぜ」
「・・・スゲェ」
「いいこと教えてやろっか、コレ、この時代のツナがぜーんぶ決めて、作らせたんだぜ」
ポンポン、と山本がツナの頭を撫で、懐かしそうに目を細める。
「山本・・・?」
「昔からツナはスゲー奴だったけど・・・ホント・・・」
「言葉濁さなくてもいいよ、山本。俺、死んだんだろ?」
「っ、ゴメン・・・守りきれなくて、ゴメンな」
ツナが苦笑すれば、山本はくしゃりと表情を歪めた。
「良いんだよ。どうせ俺も言い出したら聞かないんだろうし、相手から一対一でと言われたら律儀に1人で会いに行こうとするだろうし、ね」
「それでも・・・俺達は、どんなことをしてでもツナを止めるべきだったんだ」
この先、彼等はずっとこんな思いを抱いて生きて行くのか。そのやり直しの利かない過去に苦い思いを抱く。
「・・・残された守護者の気持ちを考えられなかったのかな?代わりに謝るよ、ゴメン」
それ程に追い詰められていたのか?それとも・・・。
「いや・・・ツナは悪くない・・・俺達が弱すぎたんだ」
「山本・・・」
「っ、ふざけんな!!10代目が謝られてるんだ!素直に受け入れやがれ!!」
(いやいや、隼人。それはかなり乱暴な発言だってば・・・)
ツナが内心ツっこんでいると、山本は驚いた様子で目を瞠った。
「獄寺・・・俺、お前にはなじられるとばかり思った・・・なんで、護らなかったんだーって」
「そりゃ、未来の俺も同罪だからな・・・それに、10代目がああ仰っているのにいつまでもウジウジとしてる方が失礼だろうが!!」
「あ・・・ああ、まぁ・・・そうなんだけど・・・?」
戸惑う山本にツナは激しく同情した。獄寺がここまで冷静に物事を捉えられるのは、ひとえにツナが普段引っ張り回しているからだ。
こちらの獄寺がツナが猫を被っていた間の獄寺と同じならば・・・まず真っ先に山本に八つ当たりするはずだったのだ。
(混乱させてごめんねー、山本ー)
もう、苦笑いするしかない。
「あのね、山本・・・俺達、違う時間軸から来たんだよ」
「へ?」
キョトンとしてツナを振り返る山本。
「違う時間軸、つまり、お前達の知っている過去からじゃないってコトだよ。ったく」
「違う時間軸・・・そう、か・・・だから、ツナの雰囲気も違うのか」
獄寺が補足すれば山本は納得した様子で頷いた。どうやらツナの雰囲気が違うことには気付いていたらしい。
「やっぱり雰囲気違うんだ。・・・ね、この時間軸の俺ってどんな感じ?」
「どんな感じって言われてもな・・・スゲー奴だぜ」
「それはさっき聞いたっての・・・性格とか、考え方のことを聞かれてるんだよ」
獄寺が呆れたような視線を向ければ、山本は更に戸惑った様子で獄寺を見つめる。
「・・・なんか、“今”の獄寺よりも落ち着いてんじゃね?」
激情に任せて行動する所は、あの10年後獄寺も変わっていないらしい。
「違う違う、山本。隼人は落ち着いてるんじゃなくて達観してるだけだよー。ね?隼人」
「・・・10代目ェ」
ツナが猫を被るのを止めてから、獄寺に苦労性のステータスがついた。しかも常にレベルアップ中だ。
ガックリと肩を落とす獄寺を見て、山本は口元を引きつらせた。ツナがこんなにもイイ性格をしているとは思ってもいなかったらしい。
となると。
「俺が考えるに、この時間軸の俺って、猫被りしてた時の俺がそのまま存在してるんじゃない?」
「猫被りしてた時の・・・10代目・・・」
獄寺はその時の様子を思い出したのか、そっとツナから視線を外した。
怪しいと思い読心術を使ってみれば、案の定、獄寺はあの頃の10代目は可愛かったなぁ、なんて懐かしんでいた。ちょっと不埒な妄想と共に。
「悪かったねぇ、今は可愛くなくて」
「!!!・・・す、すみません!すみません!!今も十分、お可愛らしいです!!」
覗かれたと気付いた獄寺は地面に額をすりつけるようにして謝り倒す。
「可愛いは褒め言葉じゃないって何度言ったらわかるんだか・・・しかも、妄想癖が前より酷くなってるし」
盛大な溜息をついたツナは、呆然とする山本に向き直ってニッコリと笑った。
「さ、こんなのは放っておいて、基地の中に行こうか!さくさくと!」
「10代目ぇえええええ・・・!」
「・・・はは・・・なんか、スゲーのな・・・」
(山本、俺に関する感想は“スゲー”しかないのか・・・)
などとツッコミを入れたりはせず、ツナは笑顔のまま首を傾げた。
「ん?何のことー?」
「・・・いや、何でもねーのな・・・」
この短時間で山本も学習したらしい。ツナに余計なことを言ったり聞いたりすれば、倍返しどころか10倍、100倍になって返ってくるだろうということを。