Gのレコンギスタ[外伝] アメリアン・ソルジャー   作:榊原啓悠

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アーリー・アメリアンの真実
超高速大気圏用パック


「なんてこと……。やはり少佐の情報は正しかったということね」

 

 前方の先頭空域をデジタル望遠で観察しつつ、ティアラが静かにつぶやく。ちらりと手元のコンソールパネルに視線を下げ、機体背部に接続した超高速大気圏パックの状態のリアルタイムデータをチェックすると、ティアラはフットペダルを踏み込んで更なる加速をかけた。

 

「これ以上の損害は、出させませんわ!」

 

 混戦の場にライフルで撃てばフレンドリー・ファイアの可能性がある。バックパックの機動性を頼りに、ティアラは機体襟部分のビームサーベルを抜き放って突貫する。

 

 ―――通常、モビルスーツはそれ専用でなければ大気圏飛行は難しい。それも単機による高速戦闘などというのはまずもって不可能だ。人型のフォルムをとる以上、航空力学的に限界はある。そもそも機体耐久度がそれを許さない。

 

 だが、ティアラの《G-イシュリア》は違った。

 ほとんどの機構が再現不可能だったとはいえ、《G-セルフ》から培った多くのアイデアは《G-イシュリア》を、旧世代のみならず、同世代アメリア製モビルスーツからも機体性能という面において大きく引き離していた。

 圧倒的な加速性能と運動性に装備するモビルスーツが耐えられないとされていた超高速大気圏用パックの装備がまさにその証拠であることは、揺るぎない事実である。

 

 でなければ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()この状況の説明がつかない。

 

『うわぁああぁ――――ッ!!』

 

『速すぎる……ッ!』

 

 アメリア軍パイロットたちの経験にない電光石火の高速挙動が、次々と攻撃部隊の《ジャハナム》に襲いかかる。やや圧されかけていた《アーリー・アメリアン》の士気がティアラのこの活躍で回復したのは言うまでもなく、次第に戦況は攻撃部隊側の不利へと傾きつつあった。

 

 だが、しかし。

 

「むぐっ……!?」

 

 いかに高速戦闘ができるとはいえ、旋回の瞬間には動きが鈍る。その一瞬の隙を狙った射撃が《G-イシュリア》に殺到し、ティアラは被弾による激しい衝撃でエアバッグに顔を埋めた。

 強烈なGに晒され続けたティアラはヘルメットの中で鼻血を吹き出し、立ちくらみにも似た症状に吐き気さえ催していた。しかし今は戦闘中。気だるさと重力を振り切って即座に体を起こす。

 

 そして次の瞬間、ティアラは《G-イシュリア》の双眼に自身に被弾させた敵の姿を斜め上空に捉えた。

 

「来た……! あの《グリモア》……!」

 

 恐怖の混じった唸り声とともに、ティアラは戦慄した。敵弾の予測方向の先で、《フライスコップ》に伏せてこちらに銃口を向ける《グリモア》を発見したのである。

 

 彼女は知る由も無いが、あれこそがカイル=ガウェインの駆る、この攻撃部隊の隊長機なのだ。

 

「うっ……うわぁあ―――ッ!!」

 

 戦う決意をした時から、既に覚悟はできている。震える胸にそう言い聞かせて、ティアラは眼前の《グリモア》に向かってビームライフルの銃口を向けた。先程まで使っていたサーベルではなくライフルを選択したのは、機体性能でもカバーできない圧倒的な実力差から近接格闘に勝ち目がないことを察したからか、あるいは単なる動物的カンなのか。いずれにせよティアラは、サーベルの使用をためらって腰にマウントしたライフルによる射撃を選択した。

 

「それは悪手でしょ!」

 

 吠えるカイルが、気合とともにフライスコップから飛び降りて眼下の《G-イシュリア》に遅いかかる。敵を目の前にして、悠長に手持ちの武器を持ち替えるなど悪手以外の何でもない。カイルはサブマシンガンの銃口下からビームワイヤーを射出すると、《G-イシュリア》の繰り出したライフルを即座に絡め取って焼き潰した。

 

「あぁッ!?」

 

 引き金を引くよりコンマ数秒速くライフルを潰されたティアラが、慌てて先程のサーベルを襟から引き抜き直そうとする。だが、それでは遅いと言わんばかりにカイルは自由落下の勢いそのままに《グリモア》を《G-イシュリア》に接触させた。

 

「接触回線で聞こえるな! 降参しなければこのままコックピットを焼く!」

 

 サブマシンガンをハッチに押し当てつつ、空いた片手のマニュピレーターで頭部アンテナを鷲掴みにする。上空から落ちてきた《グリモア》にあっと言う間に封じ込められれば、心理的にも圧倒できているはずだ。そんな勝利の確信と共に、カイルは接触回線で《G-イシュリア》に降参を勧告した。

 

「やらせません!」

 

 ―――だが、カイルの予想を裏切って、《G-イシュリア》は反撃して来た。頭部のバルカンでこちらの頭部を潰してきたのである。素人と侮り、千載一遇の撃墜チャンスを逃した―――そんなカイルの後悔を他所に、《G-イシュリア》はバルカンの直撃で頭部を破壊されたカイルの《グリモア》を蹴飛ばし、一気に直上へと飛翔した。

 

「うおぉぉおおお………ッ!?」

 

 キックをくらってきりもみ落下状態に陥るカイルの《グリモア》。そこへ、上昇からの急降下攻撃をサーベルで仕掛けんと《G-イシュリア》が迫る。

 

「でぃやあぁ―――ッ!!」

 

 Gに晒され、急速に狭まっていく視界の中央に《グリモア》を捉えながら、ティアラは逆襲の一太刀を振りかぶった。

 

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