Gのレコンギスタ[外伝] アメリアン・ソルジャー   作:榊原啓悠

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敵襲と会敵

「ミノフスキー粒子が撒かれたってんだろォ!」

 

「カーキの《ジャハナム》だよ、そいつが敵だ!」

 

「見た目に惑わされるな! 向こうはゲリラだぞ!」

 

 混沌のテキサス基地内で、隊員たちの怒号が飛び交う。ノーマルスーツに着替えるまもなく、カイルは制服の下に汗を滲ませながら兵器廠へと駆けた。

 

「どうしてこんな時に―――あッ!?」

 

 兵器廠へと続く渡り廊下が、轟音とともに叩き潰される。どうやら、敵のモビルスーツは兵器廠を孤立させる腹積もりのようだ。

 舞い上がる土煙と熱風を全身に浴びたカイルが思わずうずくまると、襲撃者と思しきカーキカラーの《ジャハナム》が網めいたセンサーを鈍く光らせているのが、崩れた渡り廊下から覗くテキサスの荒野に見えた。

 

「くそっ……一階からなら……だめだ。それだと《ジャハナム》に踏み潰される。これじゃあ兵器廠に行けない……いや!」

 

 まだ方法はある。徒歩で行けないのなら、モビルスーツで突入をしてしまえばいいのだ。さっきの新兵たちが行った方にモビルスーツドッグがあるはずだ。あそこなら、実戦配備されているモビルスーツが何機か置いてあるに違いない。

 

「カイル少尉!」

 

「きみは……さっきのメカニック!」

 

 腹の出た先程のメカニックが、土埃に塗れた顔で走り寄ってくる。その顔は他の職員らと変わらず、襲撃者に対する驚愕と怯えに支配されていた。

 

「奴らの狙いは《G-イシュリア》です!」

 

「確かにそう言ったのか!?」

 

「それ以外にこの基地をゲリラが襲う理由なんて、ありゃしませんよ!」

 

「想像のしすぎ……ではないか。モビルスーツドッグに案内していただけますか!?」

 

「出るんですか!?」

 

「自分のモビルスーツくらい、自分で守る!」

 

「残ってるのは《グリモア》が一機ですけど……」

 

「構わない!」

 

 

 ※※※※

 

 

 宇宙世紀の環境破壊から未だ立ち直れずにいるこのテキサスでは、緑などそうそうお目にかかれるものではない。ゲリラたちの駆るカーキの《ジャハナム》はその意味で実に実用的なカラーリングを施されており、逆に駐屯部隊のオリーブドラブカラーの《ジャハナム》はモビルスーツ戦の基本である有視界戦闘において視覚的な不利に立たされていると言えた。

 交戦開始から十分が経過し、三機目の《ジャハナム》が爆炎を上げた頃、作業服に身を包んだ少女は兵器廠の機密区画にある《G-イシュリア》のコックピットへ到達していた。

 

「経路を予習しておいて、正解でしたわね……」

 

 キャップを取り払い、少女―――ティアラ=ブリーチが呟く。腰まで届く金の長髪がふわりとシートにかかり、無骨なコックピットに少女の香りを満たしていく。

 

「ギャリソンたちの襲撃は予定通り。あとはこれで脱出して、みんなのところへ帰るだけ……!」

 

 コントロールパネルを操作してスターターを入れる。命を吹き込まれた《G-イシュリア》の各部に《フォトン・バッテリー》の光が灯り、白亜の巨体が蠕動を始めた。

 

「すごい、操作系はユニバーサルスタンダードだけど、この機体……五倍以上のエネルギーゲインがある」

 

 執事のギャリソンから教わった通りとはいえ、ティアラにとってこれは初めての実戦である。それも、軍事用のモビルスーツを使った武力行使だ。場合によれば、こちらにもあちらにも死人が出る。そしてその中に、自分が入っていないという保証はない。ゾクリとする感覚に背を震わせつつも、ティアラは父の崇高な理念とキャピタル・テリトリィへの留学で知ったスコード教の尊いタブーを杖にして、再び肢体に活力を入れた。

 

「………大丈夫。コックピットを狙わなければ、人は死なない……。みなさん、どいてくださいましーッ!!」

 

 気合とともに立ち上がる《G-イシュリア》。全長18メートルの巨体が屹立しようものならば、それは心理的効果というかたちで周囲の作業員たちにも現れる。ある者は驚き、ある者は味方と勘違いして喜び、ある物は何かをこちらに向かってわめきたてている。

 

「よかった、巻き込まれた人はいないみたい……。えっと、ジャンプで天井を破りますっ! 近くのものに掴まって、吹き飛ばされないようにしてくださいっ!」

 

 拡声器で作業員らに声かけをすると、ティアラはコックピットハッチを閉じてシートに深く座り込んだ。ここから先は、接触回線以外での通信は無効になる。ミノフスキー粒子散布下の環境では、無線通信は遮断されてしまうからだ。100回は読み返した作戦プログラムを反芻すると、ティアラは意を決してフットペダルを踏み込んだ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ※※※※

 

 

「なっ……!?」

 

 兵器廠の屋根を突き破って、白いモビルスーツが飛翔する。《フォトン・バッテリー》の余剰光が軌跡となって、その様はカイルにとって神々しい光景にさえ見えた。

 

「……はっ、見とれている場合か、僕は!」

 

 搭乗した《グリモア》のセンサーを蠢かせて、現れた白いモビルスーツ―――《G-イシュリア》を補足する。状況と挙動から推察して、恐らくアレはテロリストの手に落ちた。となれば、この《グリモア》であれを奪還しなくてはならない。

 

「機体を傷つけず、パイロットだけを無力化できるか……!?」

 

 できるわけがない、という道理はこの際無視する。戦場はいつだって理不尽だったし、ここだってそうだ。経験で鍛えられた腕と判断力、そして知恵と勇気を信じて今は挑むしかない。

 

「うおぉぉぉおおぉおッ!!」

 

 砂塵舞う荒野を、カイルの《グリモア》が疾走する。目標は、兵器廠上空の《G-イシュリア》。

 

 白と黒、最新型と旧型、少女と軍人の―――巨人(モビルスーツ)を駆るもの同士の対決が、始まった。

 




ギャリソンの元ネタが【無敵鋼人ダイターン3】だと分かったきみは偉い!
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