覚醒紅魔郷   作:ジャックハルトル

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先に言っておきますが…過去最長になっちゃったww
8000文字越えましたね、やっちゃったぜ!

回想の続きと、青い薬の正体が判明する回ですね。


第14話・最強の番犬、赤い記憶と幸福な……

 

 

 

 

「とは言ったものの……些か飽きてきましたね…こうもあっさり殺せてしまうと、楽しめないじゃないですか」

 

バラバラの死体や、最早原型すら止めていない死体……床一面を覆っているのはアトラスが作り出した血の海。

本来なら死に難い吸血鬼がこうもあっさりと死んでいくのは、アトラスの能力によるものが大きい。

『読み取る程度の能力』それは、相手の仕草や表情を見て次の行動や、して欲しい事が予測出来るだけの能力ではなく、相手の体を見ただけで相手の弱点なども読み取る事が出来る、スカーレット家以外が気づいていないだけで、実に攻撃的で汎用性のある能力だ。

 

「ではこうしましょう、抵抗しなければ惨たらしく苦しめながら殺します。

抵抗すれば楽に殺してあげます、どうですか?良い案でしょう?」

 

それを聞いた吸血鬼達は一斉に襲いかかってきた。

もちろん、アトラスを倒せればそれで良いのだが、彼らにとっては『楽に殺してもらえる』というのが魅力的だったようだ…

 

右から襲ってくる拳にカウンターを合わせて頭を粉砕。

遠くから飛んでくる魔弾を掴み取り、そこら辺にいる適当な吸血鬼に投げつけ、心臓を貫く。

様々な方法で、しかし一撃で殺し尽くしていく。

 

やがて31人もいた吸血鬼は、最後の一人を残すのみとなった。

 

「貴方で最後ですね、言い残す事はありますか?」

 

「つ、妻と子供には……家族だけは助けてくれ…」

 

「あ、お断りします」

 

「な、なんで……」

 

「貴方はレミリア様とフラン様を手にかけようとしたんですよね?

それなのに何故、貴方の子供は助けなければならないんですか?

勝手ですねぇ、それに最初に言ったじゃないですか『今ならここにいる方々を殺すだけで、この自殺行為に参加しなかったご家族は生かしておいてあげます』と」

 

「そ、そんな…た、頼む!家族は!せめて家族だけは!!」

 

「もう遅いですね、さようなら」

 

アトラスが腕を振り上げて力を溜める。

一族郎党皆殺しにするのは確定しているが、せめてこの愚かな吸血鬼は約束通り、苦しまずに殺してやろう。

絶望し、涙を流しながら『すまない…すまない……』と呟いている。

 

そんなとき、イレギュラーな事態が発生した。

 

「アトラス……?」

 

通路の影から顔を出して、こちらの様子を覗いているレミリアがそこにいた。

先程まで昂ぶっていたアトラスの精神は一気に沈静化し、辺りの惨状を目の当たりにした。

 

「レミリア様!部屋にお戻り下さい!見てはいけません!!」

 

だが、それを言うには遅すぎた。

幼いレミリアの目に映るのは死体の山、死体とすら呼べないような解体をされた、この世の地獄絵図。

床どころか壁までも血が飛び散って、木で出来た床や、ベージュ色の壁が真っ赤に染まっていた。

 

「わ、わたし……アトラスを助けようかと思って…レミリアパンチで悪者を退治しようと思って……」

 

今の光景だけを見せられた人なら、その目にはどう映るだろう?

血と人体の一部であろう何かが飛び散る部屋の中、涙を流して家族の無事を祈り続ける男を殺そうとしているアトラス……

レミリアの目には、悪者になってしまったアトラスがこの状況を作り出したように見えていた。

 

「ア、アトラスが…悪者になっちゃった……」

 

「レミリア様……見ないで下さい、お願いですから…部屋に戻って下さい……」

 

目の前の吸血鬼を放って、レミリアの元にフラフラと近づいていく。

レミリアはそんなアトラスを見て、無意識にだが、怯えてしまった。

 

「ひっ……」

 

レミリア様に嫌われた…嘘だ……どうしよう、嫌だ、なんで、どうして…私のせいだ……私が殺したのが悪いんだ、なんで殺したんだ?

 

…………そうか、彼奴らが悪いんだ……

 

吸血鬼の男は自分からアトラスの興味が無くなったことに安心して、今の内に逃げてしまおうとするが、腰が抜けてしまって動けない。

足を叩いて無理やり立ち上がろうとしていた。

 

「殺す……殺す……お前のせいだ…お前達のせいでレミリア様に嫌われた……殺す…殺してやる。

惨たらしく、苦痛を与えて、お前の一族全て私が殺す…苦しめて苦しめて、お前の首を持って、それを見せながら殺してやる……」

 

レミリアに背を向け、再び男に近づきながらブツブツと呟いている。

いつもの笑顔は消え、無表情になっているのが、男の恐怖心を更に煽った。

 

「死ね、死ね、死ね……」

 

一歩ずつ、一歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる。

あまりの恐怖に年甲斐もなく小便を漏らしてしまうが、そんな事に気を使っていられる余裕はない。

今度こそ死んだ…そう思った直後……

 

「ア、アトラス!」

 

「………なんですか?」

 

相変わらずの無表情、それはレミリアが見た事のない顔だった。

いつも笑顔でみんなに優しい、それがレミリアの中でのアトラスであり、こんな顔で見られた事がない。

だが、レミリアはどうしても言わなければならない事がある。

 

「わ、私は…アトラスが大好き!だから!だから……もう、赤いのは見たくない…」

 

「……ダメですよレミリア様…この者達は私の主を手にかけようとした、殺さなきゃならないんですよ…」

 

「アトラス!こっちに来なさい!」

 

レミリアは、もうオドオドしていない。

内心は怖くて逃げ出したい。だけど、ここで逃げ出したら2度とアトラスは戻ってこない…

そんな気がした。

 

「……わかりました」

 

目の前まで来たアトラスは相変わらず笑ってくれなかったが、やる事は一つ。

 

「アトラス、少ししゃがみなさい」

 

「…はい」

 

レミリアの目線に合わせるように腰を下ろした。

 

「レミリアパンチ!」

 

アトラスの胸に当たるか弱いパンチ、だがそれはアトラスの胸に、心に強く突き刺さる。

 

「どう?悪者はどこかに行った?」

 

レミリアパンチは正義の拳…悪い心を退治する正義のパンチ。

そう教えたのは他でもない、アトラス本人だった。

 

「………はい、はい…ありがとうございます。

私の悪い心はレミリア様のお陰で退治されました……こんな私ですが、レミリア様の側にいても…よろしいですか?」

 

「当たり前じゃない…私とフランのお世話はアトラスにしか任せられないわ」

 

「……ありがとうございます。

もう大丈夫です、貴女のアトラスは帰ってきましたよ…」

 

泣きそうな笑顔だったが、その顔には確かに優しい、いつものアトラスの笑みが戻った。

 

「レミリア様、ここにいてはいけません。

なのでフラン様をお願いしますね」

 

「……あの人はどうなるの?」

 

「あの人は悪い事をしに来たんです、どうすればいいと思いますか?」

 

「ごめんなさいって言って、もう悪い事はしないって言うなら許してもいいと思う」

 

やはりレミリアは優しすぎる、いつかはその優しさが仇になる事があるのかもしれない。

強くなってほしいと思う反面、その優しさが

スカーレット家に繁栄をもたらすなら、それでもいいか…なんてアトラスは思ってしまう。

 

「わかりました。あの人には私が聞いておきますので、レミリア様はお早く…」

 

「うん……」

 

返事をすると、レミリアは先程まで隠れていた部屋に帰って行った。

それを見届けると、未だに腰を抜かしている男の方に向かって歩いて行く。

 

「レミリア様からのお言葉を伝えます

『ごめんなさいって言って、もう悪い事はしないって言うなら許してもいいと思う』

との事です、如何しますか?もし断ると言うのなら、命の保証は致しません」

 

「……ごめんなさい、2度としないので許して下さい…と、レミリア様に伝えておいてくれ」

 

「わかりました、伝えておきます。

ですが、これだけは理解して下さい…私は今回の虐殺について謝る気など毛頭ありません。

貴方がたはそれだけの事をなされたのだと、重々ご承知置き下さい」

 

周りの惨状を見渡した男の顔は悲しみで歪み、涙を流している。

男は自分だけが助かった事に涙を流したのではなく、自分達の愚かな行為を嘆いての涙だった。

 

「私たちは…あのような、あのような子を…あんなに優しい子を殺そうとしていたのか……自分達の利益のみを考えて……」

 

「そうです、貴方がたは愚かな行為を犯しました。

レミリア様やフラン様を手にかけようとした事、スカーレット家に手を出した事、旦那様や奥様が狙われるのは仕方のない事だと思います、お二人共多くの敵を作っていますからね。

しかし、レミリア様やフラン様はまだ子供なんですよ?

まだ幼いお二人を殺すのはお門違いも甚だしい事です」

 

「……そうだな、私達は愚かだった。

何か私に出来る事は無いだろうか?私の命はレミリア様に救われた、ならば我が身はスカーレットのに心血を捧げると誓う。

トワイライト…お前の命令にも従おう」

 

「そうですねぇ……とりあえず、ここの片付けですかね?」

 

男はそれを承諾し、二人で掃除を始めた。

レミリアからの命令だろうか、妖精メイド達も続々と集まって来てくれたので、掃除もそこまで時間がかかる事はなかった。

惨状を見た数人の妖精メイドが吐いたので、若干仕事が増えたのだが……

 

翌日、レミリアを起こそうと部屋に入ると、レミリアは眠れなかったのか、目の下の隈を作り、ベットの上でボーッとしていた。

ちなみに、フランドールはレミリアの横でスヤスヤと可愛らしい寝息を立てている。

 

「レミリア様、眠れなかったのですか?」

 

「うん……眠ろうとすると、目の前が真っ赤になって…怖くって……」

 

無理もないだろう、こんなに小さい子供が

肉片や内臓が飛び散る部屋を見てマトモな神経でいられる訳がない。

昨日は無理をして気丈に振舞っていたのだろう、堪えていた分一気に恐怖心が吹き出てしまったのだ。

 

「…レミリア様の好きな色は何色ですか?」

 

「ん〜っとね…青か…金色かな?」

 

「ん?青色は何となく分かりますが……金色ですか?」

 

「青色はね、私の髪の毛の色だから!」

 

レミリアは隣で寝ているフランドールの髪と、アトラスの目を見てからこう言った。

 

「金色はね!フランの髪の毛が綺麗なのと、アトラスの目が好きだから!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一通り語り終わったのか、アトラスはうっとりとした表情で机に頬杖をついている。

 

「あぁ〜……あの時のレミリア様は可愛かったですよ〜、恭君も495年前から働いていれば良かったのに…」

 

「いや、俺って一応人間ですから…多分」

 

「そこで多分をつけるのが恭君らしいですね」

 

「ていうか、アトラス先輩ってそこまで理不尽に強かったんですか?」

 

吸血鬼の大群を相手にして、マトモな怪我は二箇所のみ。

恭介にとっては充分な理不尽、パチュリーに聞いていた以上の理不尽具合に『ハンデなんていらないぜ!』的なセリフを吐いた過去の自分を呪った。

 

「理不尽だなんて……まぁ否定はしませんが」

 

「しないんかい!……ん?パチュリーから聞いたんですけど、レミリア嬢の方がアトラス先輩よりも強いって……」

 

「まぁそうですね、レミリア様のグングニルが見えないんですよ。

投げるタイミングと方向は分かるのに、速すぎて避けられないんですよ、卑怯ですよね」

 

恭介は誓った……カリスマ中のレミリアを絶対におちょくらないと。

 

「レミリア嬢が昔、赤色に苦手意識を持ってた理由は分かったんですけど、結局この青いのは何なんですか?」

 

「あぁ、それはですね……」

 

アトラスが語ろうとしたそのとき、部屋の出入り口がキィ…と開いた。

そこには意気消沈中のレミリアが立っていた。

 

「おや、こんなところにいらっしゃらなくても、お呼びになればそちらに向かいましたよ?」

 

「いやね……トイレに行く途中、なんだか昔の恥ずかしい話をしているのが聞こえてきてね」

 

「あ、あら?聞こえてましたか?」

 

「外まで聞こえてたわよ……妖精メイド達も聞き耳立ててたし、咲夜もいたし…」

 

「レミリア嬢…取り敢えずトイレ行ってこい」

 

以前の失敗を思い出したのか、返事もせずにダッシュでトイレに向かい走っていく。

 

「慌ただしいご主人様だこと……」

 

「いけませんよ恭君、レミリア様は立派なご主人様です。

時々お茶目な事もしますが、本当に立派なお方ですよ」

 

「そんな事、分かってますよ」

 

恭介は指先でコロコロと青い薬の瓶を転がしている。

蓋がしてあるので溢れる心配はない、その様子をクスクスと笑いながら、アトラスはもう一度コーヒーを淹れてくれた。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます。

そういえば、レミリア嬢の両親ってどうなったんですか?」

 

「あぁ…お二人とも冒頭に話した討伐の件で戦死しましたよ」

 

なんでもない事、と言った様子の返答に、恭介は逆に違和感を覚えてしまう。

 

「……案外、あっけらかんと答えるんですね」

 

「500年……正確に言えば495年も前の話ですからね。

当時は悲しかったですが、今はレミリア様ですら気にしていませんよ」

 

コーヒーを飲みながら答えるアトラスが、どこか薄情に思えてしまった。

 

「でも、気にしてないとはいえ、お二人には今でも感謝していますよ。

出来損ないと言われ、どこの吸血鬼達も私を見下し、罵倒してきた……でも、旦那様と奥様が私を引き取ってくれたんです。

そのお陰でレミリア様やフラン様に出会えたんです、いくら感謝してもしたりませんよ。

もちろん、恭君や紅魔館の仲間達…その全てに出会い、仲良くさせていただいている事にも感謝しているんですよ?」

 

「そうですか…俺も感謝しないといけないな」

 

アトラスの部屋で、かなりの時間を過ごしていたらしい、既に時計は22時を回っている。

そろそろ帰ろうかと、席を立って『ごちそうさま』と告げると同時に、再び部屋のドアが開いた。

 

「恭介?私の小っ恥ずかしい話を聞いて、ただで帰れると思ってるの?」

 

「なんだ、幼女か」

 

「幼女じゃないし、恭介より大人だし」

 

「はいはい、それよりも…もう大丈夫なのか?」

 

「あぁん?紅魔館の主がいつまでもショックで寝込んでる、なんてカッコつかないでしょ?

そんなもん気合いで何とかしたわよ。

てか、どっか座らせなさいよ、主を立たせておくなんていい根性じゃない」

 

「ではこちらにお座り下さい」

 

アトラスが案内したのはベットの上だった。

レミリアはその指示に大人しく従い、ベットに腰掛けた。

 

「で、なんの話でどこまで話したのよ?」

 

これは帰れないと判断し、恭介はもう一度椅子に腰掛けた。

アトラスが説明をしてくれているので、今は黙っておこうと、再びポケットから瓶を取り出してコロコロして暇を潰していると…

 

「うわぁ…よりにもよってその話?黒歴史に近いレベルじゃない…

……あれ?恭介が転がしてるのってもしかして」

 

「ん?これか?結局何かよく分からんけど、欲しい?」

 

「欲しい!」

 

ベットから勢いよく跳ねて、恭介の前に着地した。

鼻が触れ合いそうな距離だったので、取り敢えず唇を前に突き出してみる。

 

「恭君?」

 

「え?ボク、何もしてないよ?はい、レミリア嬢」

 

レミリアに薬を渡すと、それを一気に煽った。

ゴクゴクと飲み干すと、プハーー!と言いながらいい笑顔を浮かべている。

 

「いやぁー、久々に飲んだけど、やっぱり美味しいわね」

 

「で、結局それって何だんだ?」

 

「あーー……まぁ、さっきの話を聞いたのなら話してもいいかな?

簡単に言うと、あの事件のせいで私は赤が嫌いになってたのよ、種族的にはありえないから、今は赤も大好きだけど。

で、これは当時のアトラスが用意してくれたジュースなのよ、赤は嫌いだけど、青は好きだからって事でね。

当時の私も現金よねー、美味しいジュース一杯で機嫌が戻っちゃうんだからさ」

 

笑いながら話すレミリアは、嬉しそうに語っている。

当時の事はよく分からないが、それは多分、大好きなアトラスからもらった…というのも大きな理由の一つなんだろう。

 

「で、パチェから聞いたんだけど、恭介の能力が分かったんだって?

本人から聞けって言われちゃったから、気になってたのよ」

 

「あ、恭君の能力は私も興味あります」

 

「別に隠す事でもないし…『力を分け与える程度の能力』って名前らしい。

まぁ尤も、パチュリーが名付けてくれたんだけど」

 

「ちょっと私に使ってみなさいよ、制御くらい出来るんでしょ?」

 

「出来るけどさ……この能力って案外危険な部分もあるんだよ」

 

「危険……とは物騒ですね、どんなデメリットがあるんですか?」

 

「簡単に言うと、俺のスタミナを100として、それを分ける対象に都合の良いエネルギーに変換し、増幅してから譲渡するんですけど…100全部を使い切ったら多分、衰弱死しますね」

 

「使い所が難しい能力ですね…」

 

「ちなみに今のスタミナ量は分かるの?」

 

「ハッキリ正確には分かんないけど……」

 

「92ですね」

 

恭介本人ですら正確には分からなかったものを、アトラスが代わりに答えてくれた。

能力を使ったのか、その声には絶対の自信が宿っている。

 

「あ、そうか……アトラス先輩の能力なら正確に判断できるのか…」

 

「便利な能力で、私自身よく助けられてますよ」

 

二人が話す中、レミリアだけはふんふん…と頷き、ニヤッとしながらとある提案をしてきた。

 

「その内の5を私に分け与えてくれない?

身内の能力を正確に把握しておくのも主の務めだと思うのよ」

 

「レミリア様……またそんな無茶を…」

 

「いや、良いですよアトラス先輩。

よければ二人とも、5ずつで良ければ分けますよ?」

 

「わ、私も良いんですか?」

 

「よっしゃ、決まりね」

 

「では……」

 

パチュリーに使った時のように、恭介と二人の体が光の線で繋がる。

あまり長く繋げておくとグングン吸われるようなので、二人合わせて10だけ分けると、光の線をすぐに切った。

 

「うわっ、凄いわねこれ…たったの5でここまで力が湧いてくるなんて…」

 

「私もです…第二形態には及びませんが、そらでもかなりのパワーアップが出来てます」

 

「ふぅ……相変わらずこれを使うと疲れる…」

 

レミリアは自分の体を確認するように、両手を閉じたり開いたりしている。

アトラスは分け与える感覚が気持ちよかったのか、目を閉じて何かを堪能していた。

 

「いやはや、これは強烈な能力だわ。

パチェにはどんなもん突っ込んだの?」

 

「突っ込んだ………ゲフンゲフン!

あの時は実験も兼ねてだったから20くらい突っ込んだな」

 

「5でこれだけパワーアップなのに20も突っ込んだら…….私でもパチェに勝てる気がしないわ」

 

「とまぁ、俺の能力はこんな感じらしい。

強力な能力ってのは分かるけど、俺にとっては使った分だけパワーダウンする厄介な能力だよ……そろそろ寝るわ、明日もあるし疲れたし」

 

今度こそ帰ろうと席を立ち、帰ろうとしたところで、今度はアトラスが恭介を呼び止めた。

 

「あっ、恭君に渡すものが…ちょっと待ってて下さい」

 

アトラスはタンスの扉を開けて何かを探していた。

恭介もタンスの中を必死になって見渡している……大きいブラジャーを発見したが、言ったら消されそうなので心にしまっておく事にする。

 

「はい、これです」

 

アトラスが探していたものは、『男物』のズボンとフード付きのパーカーだった。

 

「お、俺に?」

 

「そうですよ、手作りなのでデザインはシンプルですが、サイズはバッチリな筈です」

 

黒一色のジーンズと紺色のパーカーはデザイン的にも恭介の好みで、非常に嬉しい一品だった。

 

「今日はもう遅いので、明日の仕事に着てきてくれると嬉しいです」

 

「あ、ありがとうございます!これで『メイド服とはオサラバ』だーーーー!!」

 

思わずアトラスに抱きつく恭介、レミリアはその様子を見ていたのだが、明らかに恭介には下心があった。

 

「こら恭君、嬉しいのはわかりますが、男の子がそんな簡単に女性に抱きつくのは感心しませんよ?」

 

アトラスは気がついていない。

能力をきっているため、抱きつく瞬間恭介が胸に向かって頭の位置を調整していた事に。

しかし、嬉しそうにしているのは本当なので、ここで水を差すのも憚られたので、放っておく事にした。

 

 

こうして、紅魔館における最強の番犬は幸せに暮らしている。

何処の誰が吹聴したのか、紅魔館にはとんでもない番犬がいる、吸血鬼を31人も相手にして皆殺しにした……と噂が広まっていたらしい。

以後495年間、紅魔館に挑んで来るものはいたが、その殆どが番犬との手合わせ感覚のものだったらしい。

レミリアも戦えるようになってからは番犬の代わりに手合わせをしていた、勢い余って殺してしまった事も少なくはないらしいが…本人は特に気にしていないらしい。

 




笑わないアトラスの初登場でしたね、怖っ……

自分で書いてて思いましたね、美人がキレると怖いんだろうなぁ…ってw

さて、今回の話でハッキリさせましたが……恭介は次回までずっとメイド服でしたwww
さて、何人が気づいたでしょうね?
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