では、どうぞ
チルノ撃破後に黄昏ていた霊夢達だが、やっとこさ重すぎる腰を上げて紅魔館を目指すために飛び始める。
やる気が削がれているためか、妖怪の森上空でリプト、ルーミアペアと戦ったときと比べて格段にテンションが低い。
「……なんか霧以外見えなくなってきた」
「……まぁこの先真っ直ぐ進めば良いんじゃね?」
「そうね……Uターンって手もありね」
「霊夢さん? 人の話聞いてました?」
別に負けるから行きたくないという訳ではなく、勝っても負けても辛い戦いになるのが目に見えているから行きたくないというのが、二人の本音。
しばらくフワフワ飛んでいると、ボンヤリだが大きな建築物が見えてきた。
「あれが紅魔館?」
「だろうな、赤すぎて目に悪そうだし」
「なんか下に門番的なのがいるけど…無視しても良いわよね」
「アリだな」
下の二人にバレないように上からこっそり抜けようと飛んでいると…
「待て、霊夢……ダメだこりゃ、侵入出来ないように結界が張ってある」
「あんたも魔法使いでしょ? 破れないの?」
「無理だな、どうやらこの紅魔館には私よりもよっぽど腕のたつ魔法使いもいるらしい」
魔力を察知した魔理沙が急に制止をかけたが
本当に入れないのか試してみるべく、霊夢は取り敢えずお札を投げてみる。
「ほいっと」
シュボッ!
「うわぁ……触ったら黒焦げになってるとこだったわね…」
「はぁ…理不尽が3人に増えたのかよ…」
もちろんそれは、レミリア、アトラス、パチュリーの事だが、本来ならその理不尽の中にフランドールまで混じっているので、この紅魔館の戦力は明らかに異常を通り越してバグのようなレベルになっていた。
「門番をなんとかしないと、中に入れさせてもらえないって事だな」
「面倒ね…でも、仕方ないのよね……」
溜息を吐きつつも地面に降りる霊夢と魔理沙の前には二人の門番がいた。
一人は山伏のような衣装を着ている事から、恐らくは天狗だとよそうされる…何故こんなところにいるのかは分からない。
もう一人はチャイナドレスを着ている謎の妖怪、明らかに接近戦に強そうなのは見た目から判断できる。
「貴女が博麗の巫女ですか?」
「そうよ」
「ならばここを通すわけにはいきません」
「そりゃ私だって通りたくないけど、あんた達が余計な事するからこうして出向いてやってるんでしょ?」
「聞く耳持ちません、覚悟して下さい」
拳を構える美鈴と剣を抜いた椛。
どの様な戦い方をするのか分からない以上、魔理沙は警戒しなければならないが、霊夢はなんとなく地上で戦うべきではないと判断した。
「魔理沙、地上で戦うのは得策じゃない気がするわ」
「勘?」
「勘」
「じゃあ地上で戦うのは止めとくか」
霊夢の勘はよく当たる。 それも的中率が異様に高いらしく、何度か戦ったことのある魔理沙から言わせてもらえば、それは未来予知とも言えるレベルらしい。
一気に高度を上げて二人から距離をとると、やはり正解だったのか美鈴や椛の顔が若干歪んでいる。
「椛、私が巫女達を叩き落とすので、地上で叩っ斬って」
「了解であります」
椛からの了解がとれた事を確認した美鈴は一気に飛び上がる。
しかし、一気にとはいっても元々飛ぶのが苦手な美鈴では飛行速度もそこまで早くはないので……
「おい霊夢、アレって撃ち落としてもいいんだよな」
「そうねぇ…多分、私達を撃ち落として地上戦に持ち込みたいんでしょうけど、それをするとさっきの相手よりも厄介になりそうだから……」
「ガンメタ張って近づけさせないのが一番だな」
「そゆこと」
飛んでくる美鈴に対して二人は、相手の作戦通りにはさせまいと弾幕を形成する。
色取り取りの弾幕の中には札や針も混じっている上に、霊夢の誘導型霊力弾も混じっているので非常に避けにくい。
「あっ、ちょっ、避けきれない! 助けて椛! ぐへっ!」
「………」
気合を入れて飛び出して行った割にはズタボロにされている哀れな先輩を、ボーっと見つめる椛の目は心なしか死んでいた。
霊夢と魔理沙も面白くなって来たのか、弾幕の密度を濃くすると、更に美鈴の被弾が増えていった。
「ぐほっ、へぐっ、ひぎゃぁぁぁあ!!」
「うひゃひゃひゃひゃ!! やべっ、超楽しいんだけど!」
「……私はそろそろ良心の呵責に耐えられなくなってきたわ…」
被弾してない場所は無いんじゃないかというくらいボロボロにされた美鈴は、ついに耐えられなくなったのか地上に落下していった。
「ーーーーはっ! 美鈴殿!」
放心状態だった椛が美鈴の落下予定地点に移動する。
しかし、魔理沙という悪魔がその行動を予測していたようにスペルカードを構えた。
「……私、魔理沙と友達やめようかな…」
「『恋符・マスタースパーク』!!」
魔理沙の放った極光が、落下中の美鈴を飲み込むと、ついでと言わんばかりに待機中だった椛も巻き込み、地表に激突し大きな爆音と共にクレーターを作り上げた。
「ふぅ…超スッキリ」
「あんた、魔女じゃなくて悪魔の類でしょ」
美鈴は明らかにオーバーキル、椛の無事は分からないがマスタースパークの直撃を食らっているため、まず無事には済んでいないだろう。
門番の撃破を確認した二人はゆるゆると地上に降りていく。
「なんか今回は楽勝だったな」
「違うわよ、さっきの二人…というか壁女の能力と弾幕ごっこのルールが相性良すぎるのよ、こりゃ多少は改変した方が良いかもね……とまぁ普通はこんな感じで終わるのが常なのよ」
「それもそうか」
地面に降りた二人は普通に歩いて門を潜り抜けると、魔理沙の背中に軽い衝撃が走った。
「あん?」
「……油断しましたね、拙者にあのような見え見えの攻撃が当たるとでも?」
後ろを向くとそこには、先ほどマスタースパークで焼き払ったはずの椛が立っていた。
片手をこちらに向けている事から、おそらくは軽い妖力弾をぶつけてきたのだろうが、それ以上の攻撃はしてこなかった。
「へぇ…あの位置からの攻撃を避けたのか、下っ端天狗のくせにやるじゃないか」
「下っ端と言えど天狗は天狗、速さという観点において拙者達天狗の右に出る生物など存在しないのであります…………レミリア殿はカウントしませんが(ボソボソ)」
最後の方は小声だったので聞き取り辛かったが、魔理沙にとってはその前の台詞に納得出来なかった。
「いやいや、幻想郷最速は私だから」
「いえいえ、幻想郷最速は文様であります」
「いやいや、少なくともお前よりは速いから」
「何を馬鹿な、貴女ごときに負ける拙者ではありませんよ」
「あんだと?」
「なんでありますか」
霊夢を放置して謎の速さ自慢が始まる。
二人の争いは次第にヒートアップしていき、ついには駆けっこで勝敗を決める事になったらしい。
「ここから約100m、先に着いた方が勝ちだ」
「いいでありますよ? でも拙者が勝っても特別に館の中には入れてあげるでありますよ、さすがに駆けっこで帰らされるのも恥ずかしいでありましょう? プププ」
「吠え面かかせてやるぜぇ……霊夢、 大体100mくらいの位置に立っててくれ! お前がどっちが速かったか決めろ!」
「えぇ…正直めんど……」
「「早く」」
「………はぁ、分かったわよ」
霊夢が移動を開始すると、魔理沙は地面に一本の線を引いた。
恐らくはそれがスタートラインなのだろう、椛はそこに合わせるようにクラウチングスタートの姿勢をとる。
魔理沙は地面から少しだけ浮いて箒に跨る。
「いくわよ〜!」
遠くから霊夢の声が聞こえてきた。
「位置について〜…」
魔理沙は箒をより強く固定するために手に力を、椛は地面をより力強く蹴るために足に力を入れる。
「よ〜い……」
相手の目を一瞬だけ睨むと、お互いにその目がバッチリ合う。
魔理沙からの『テメェにだけは負けねぇ』という意思と、椛の『ブッ潰す』という想いが交差する。
「ドンッ!」
「ーーーふっ!」
凄まじいスタートダッシュと共に先頭に躍り出たのは椛だった。
魔理沙もそれに続く形で発進したのだが、この100mという距離が、魔理沙の負けを濃厚にさせていた。
クソッ! なんだこの天狗、速いなんてもんじゃねぇ! スタートの一瞬だけでもう追いつけなくなりやがった! (ここまで0.1秒)
ふっ、空中ならいざ知らず…地上で拙者以上に速い生き物なんて存在しな……レミリア殿とアトラス殿は除くでありますが、存在しないであります (ここまで0.1秒)
勝負は一瞬だった。
霊夢の掛け声が終わった直後には椛が目の前に立っていたのである。
魔理沙も負けじと頑張っていたのだが、それは明らかに椛よりも後に到着していたのだけは確認できた。
「勝者は……まぁ、ワンコロの勝ちね」
「どうでありますか? 幻想郷最速は誰だったでありますっけ? HAHAHAHA! 少なくとも貴女ではなかったのが証明されたでありますねぇ! HAHAHAHA!!」
最早ワンコロと犬扱いをされているのにも気が付かないほど浮かれている椛は、とりあえず魔理沙を煽っていく。
一言言うたびに魔理沙の肩が震えるのを見ると、なんだか少しだけ………楽しくなってきたらしい。
「くそぅ……」
「いやぁ〜、試合が始まる前はその自信に押されてちょっと緊張してしまったでありますが、終わってみると……ププっ」
「ワンコロ、そろそろやめてあげなさい」
「まぁそうでありますね、これ以上格下を弄っても気持ち良……楽しくありませんからね。 ていうかワンコロじゃありません、狼で椛であります」
霊夢の中で二つ確かなことがわかった。
一つはこのワンコロがSだという事、もう一つは……もし地上で戦っていたら、もし弾幕ごっこではなくただの殺し合いだったのなら……下手をすれば二人共瞬殺されていた可能性もあったという事だった。
「ねぇ、もみ……ワンコロ、あのボロ雑巾ってあんたより弱かったの?」
「美鈴殿は拙者よりも強いであります、地上戦ならさっきのような事にはならなかったでしょう」
やはりというか、なんというか…この屋敷は確実に幻想郷で最強の勢力なのだろうという事がよく分かった。
「で、そろそろ屋敷の中に入れて欲しいんだけど? 魔理沙もさっさと正気に戻りなさい」
「そうでありましたね、ではついてきてください」
椛に従って正門をくぐると、巨大な館が見えた。 その前に広がる庭園の大きさも合わさり、自分の神社が小さく見えてくるのが非常に悲しく思えてきた。
「この門をくぐるとエントランスであります。 一度中に入ればきっと生きては出られません、引き返すなら今のうちであります」
「かもしれないど、そうじゃないかもしれない。 つまり心配無用よ」
「魔法使い殿もよろしいでありますか?」
「霊夢と同意見だな」
それに答える事もなく、椛は玄関の扉を開けた。 ギィィ……と不気味な音が鳴る事もなく、普通に開いたのが逆に霊夢達の不安を煽る結果になった。
「ご苦労様、椛。 巫女の案内は私が引き継ぐわ」
「よろしくお願いするであります。
さて、魔法使い殿は拙者についてきてください」
エントランス中央にいた咲夜と椛は、何故か霊夢と魔理沙の二人を別々の所に案内すると言いだした。
「私達を別々にする理由は? 納得できる理由じゃない限り断らせてもらうわよ、遊びじゃないんだし」
「理由は簡単です。 魔法使いの貴女に勝負を挑みたいという方がいらっしゃるからよ」
「そういう事でありますので、拒否権は無いと思ってください」
有無を言わさぬ二人の言葉に逆らおうとした霊夢だったが、魔理沙が一歩前に出る事でタイミングを失ってしまった。
「これから先は全部タイマンなのか?」
「そうよ」
「霊夢の方もタイマンなんだよな?」
「もちろん、その通りよ」
「その魔法使いをブッ倒したら霊夢の援護に向かっても構わないよな?」
「倒せるとは思えないけど、好きにしたらいいわ」
「なら乗る」
「ちょっ、魔理沙!?」
勝手に話が進んでいったと思ったら、勝手に話が終わってしまった。
霊夢自身もタイマンである事は文句無いのだが、例の吸血鬼と戦う時だけは魔理沙がいて欲しかったので、不用意に魔理沙と離れないで欲しかったのである。
「いいじゃねぇか、速攻終わらせて速攻助けに行ってやるよ」
「はぁ…吸血鬼なんて一人で相手したくないんだから、頼むわよ」
「頼まれた」
二人は別れると決めて、ハイタッチをしてからその場を離れた。
ーーーーーー図書館ルートーーーーーー
以前までは割と散らかっていた図書館もさすがに整然としていた。
戦闘に巻き込まれて本がダメになってしまうのを避けるため、パチュリーが全ての本棚に対物、対魔、耐熱、耐水の結界を掛け易いように恭介と小悪魔が整理したからだ。
「てか、これから来る予定の魔法使いって強いのか?」
「さぁ? でも、リプトとルーミアチーム美鈴と椛チームが無傷で倒されてるらしいから、相当な実力者みたいね」
「勝てる自信は?」
「あら、言わなくてもわかるでしょ?」
「そりゃ失敬」
現在、恭介とパチュリーの二人は何時もの椅子に腰掛けて語り合っている最中だった。
小悪魔がいないのは、二人に飲み物を用意するために席を外しているからだ。
外の様子などお構いなしといった、日常風景にしか見えない光景を他人が見たらどう思うのだろうか。
「紅茶淹れてきましたよー」
「ありがとう、小悪魔」
「おい、なんで俺だけコーヒーなんだ…しかもブラック……」
パチュリーと小悪魔の前に置かれた紅茶からは良い匂いが漂って来ている、きっとリラックス効果の高いラベンダーを使用しているんだろう。
そして何故か恭介の前に置かれたのは、ガムシロップや角砂糖、ミルクなどが一切用意されていないブラックコーヒーだった。
「ま、ブラックでも平気なんだけどな!」
「ちっ…」
「パチュリーさんパチュリーさん、おたくの使い魔が態度悪いんですけど、舌打ちしてきたんですけど」
「コーヒー好きならいいじゃないの」
「まぁ、そうか……そうか?」
なんとなく疑問は残るが、なんとなく納得も出来たので良しとする。
和気藹々とトークを楽しんでいる3人の姿は、およそ緊急事態の最中だとは到底思えない様だったが、コンコンコンっと図書館のドアがノックされた途端、その顔が怒りに染まった。
「入りなさい」
「失礼するであります」
扉を開けて最初に入ってきたのは椛だった。
それに続く形で入った魔理沙は中にいた3人を見た瞬間、誰が自分を指名したのかが分かった。
「お前が私の相手で間違いないよな、紫色」
「私が貴女の相手で間違いないわよ、白黒」
二人が睨み合う中、恭介と小悪魔は直ぐに席を立ち椛達の側に移動した。
「ん? おい、そこの男」
「なんだよ?」
「お前は人間だよな」
「それがどうした」
「いや、なんでもないぜ」
その問答を終えると、魔理沙はパチュリーと少し離れた位置に移動し、対峙した。
二人の間にはバチバチと火花が走るかのように睨み合っているのが、観戦しているだけの恭介と小悪魔にも見てとれた。
「さて、始めましょうか…魔法使いさん?」
「おう」
「なら先手は譲ってあげるわ」
「はぁ? 舐めてんじゃ……ねぇぞ!! 『魔空・アステロイドベルト』!!」
大型の弾幕がこれでもかと言うほどの密度で放たれ、その弾幕が当たった壁や本棚に反射したものが左右からも襲うようにパチュリーに向かって飛んでいく。
「そんな無駄ばかりの魔法で…はぁ……
『木金符・エレメンタルハーベスター』」
高速回転する大きな歯車が、魔理沙の弾幕を悉く刻んでいく。
迂回しようとどうしようと、行く先々に現れる歯車によって切り刻まれる。
「この程度の魔力で私に勝てると思ってたの? 魔法使いさん?」
「んならこれも防げるか!? 喰らえ!!
『恋符・マスタースパーク』!!」
最早魔理沙の代名詞にもなりそうなマスタースパークがパチュリーに迫るが、彼女は微塵も慌ててはいなかった。
「『土金符・エメラルドメガロポリス』」
翡翠の壁がパチュリーとマスタースパークの間に現れると、少し拮抗した程度で直ぐにヒビが入ってしまった。
「おらおら! デカい口叩いた割には大したことねぇぜ!」
「ーーーー本当にそう思う?」
「は?」
パチュリーの使った『エメラルドメガロポリス』は壁を一枚作り出すだけでは終わらない。 むしろ、パチュリーほどの魔法使いがその程度の魔法を開発し、使う訳がない。
まるで、マスタースパークを輪切りにするように翡翠の壁が次々と出現する。
一枚一枚の強度ではリプトの壁には劣るが、その本分は防御力の高さではなく……攻撃にある。
「ーーーーっ真下っ、ぐぁ!!」
真下から出現した翡翠の壁にカチ上げられた魔理沙がマスタースパークを強制的に中断させられた。
そして当然、それを見逃すパチュリーではない。
「ほらほら、デカい口叩いた割には大したことないわね?
『月符・サイレントセレナ』」
パチュリーを中心に魔法陣が広がると、そこから大量の魔力弾が魔理沙に向かって殺到する。
ズガガガガガガガッ!!
「ぐあぁぁぁぁあ!!」
「わかった? これが魔法使いとしての…いえ、生物としてのスペック差よ」
魔理沙VSパチュリーです。
次の話もこれの続きですが、魔理沙が勝てるかどうかは次に期待しててくださいな。
恭介と小悪魔が空気?
タイマンなんだから気にしてやらないで下さいね?
椛、美鈴VS霊夢、魔理沙は、まぁ…こうなるでしょうな、飛ばれた時点で空中戦と弾幕戦が苦手な美鈴では手が出ませんし、椛の場合は地上でのスピードが速いだけで他の能力は所詮下っ端レベルですから……無駄に逃げ回らせて長引かせるよりも、パッと終わらせちゃいました。
では次回に期待してて下さいな!( ´ ▽ ` )ノ
感想下さい!