覚醒紅魔郷   作:ジャックハルトル

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超難産でした! ちょっち文章おかしいかも?

あと、意外な展開かも?


第22話・最強の番犬

 

 

 

 

咲夜を打破した霊夢一行は、紅魔館の長い廊下を駆け抜けていた。

窓のすら存在しない真っ赤な廊下は、走っているだけで気が狂いそうになる。

 

「目がチカチカしてくるわね…」

 

「距離感もおかしくなりそうだし、赤統一って時点で趣味が悪いぜ」

 

長い長い廊下は、霊夢達が走る速度に合わせて伸びているんじゃないかと思うほど先が長い。

しかし、そんな考えは杞憂に過ぎなかったようだ。

 

廊下の先、恐らくは踊り場であろう場所に誰かが立っている。

とりあえず走るのが面倒になってきたので、飛んでさっさと移動する事にした。

 

「いらっしゃいませ。 博麗の巫女様と魔法使い様でございますね?」

 

大きな扉の前に陣取っているのは咲夜よりも背の高い黒髪のメイド。

妖力があまり感じられないが、それは何らかの方法で隠しているだけだろう。

落ち着き払った物腰とは裏腹に、強者独特の余裕と、ピリピリした威圧感を感じる。

 

「申し遅れました、私の名前はアトラス・トワイライトと申します。

この紅魔館では副メイド長をさせていただいております」

 

「博麗 霊夢よ」

 

「霧雨 魔理沙だ」

 

二人はなんとなくだが理解できた。

 

あ、これ勝てないわ。

 

「あんたが次の相手なの?」

 

「そういう事になりますね」

 

「…………冗談キツいぜ」

 

霊夢はこれまで無傷で戦って来たが、魔理沙としたら堪ったものではないだろう。

パチュリーという最上位の魔法使いと、小悪魔とかいう名前詐欺の魔神を相手にしていたのだ。

魔力もスッカラカンに近い、ダメージも限界寸前、その上こんな強者と戦うなんて冗談でもたちが悪かった。

 

「さてさて、私には全力で戦うなという制限がかけられていますが……この館唯一の男の子を殺しかけたというのは本当ですか、魔法使いさん?」

 

「その件に関しては本当に申し訳なく思ってる。 弾幕ごっこで故意に相手を殺すのは御法度だし、なにより私がしたくない」

 

「恭君は無事なんですか?」

 

心配そうな顔で聞いてくるアトラスは、この館の住人を余程大事に思っているのが伝わってくる。

だからこそ、魔理沙は至極真面目に答えた。

 

「生きている。 少なくとも私が図書館を離れるときには落ち着いていた。

あの紫色と小悪魔には感謝してるよ」

 

「そうですか、よかった……」

 

「もし、もしよ? もし魔理沙がその男を殺してたらどうするつもりだったの?」

 

霊夢の質問を聞いた途端、今までの優しげな表情が消え失せ、代わりにアトラスが見せたものは…

 

「殺します。 出来るだけ苦しむように、一撃では殺さないように、殺してくれと懇願されても痛みだけを刷り込み、私が許すまで貴女を生かして殺します」

 

一瞬、本当に殺されたかと思った。

霊夢はアトラスの放った殺気に耐えられたのだが、その殺気を集中的に受けてしまった魔理沙は顔を青くして、ペタンと座り込んでしまっている。

 

「そう……なら殺されないって事でいいわね」

 

「元々、弾幕ごっこで故意による殺しは禁止なのでは?」

 

「まぁ、基本的にはそうね」

 

「ならそういう事です」

 

「まるで私達じゃ勝てないような言い草じゃないの」

 

アトラスの言葉を要約するとこうなる。

貴女達では絶対に勝てないので大人しく帰ることをオススメする……と言っている。

 

イラついた表情を見せはじめた霊夢。

だが、非常に悔しいことだがそれは真実なのかもしれない。

 

「あ、でも私も鬼じゃありませんよ」

 

一つ提案が…と続けるアトラスの顔は相変わらず余裕綽々といった態度で気に入らない。

 

「提案って?」

 

アトラスは手を開いて、それを霊夢に見せる。

 

「5分です。 5分間、私から逃げられたらここを通してあげます。 もちろん私も攻撃しますけどね」

 

「ーーーーーーはぁ?」

 

完全に舐められている。

 

「足りませんか? なら、少しでもダメージをもらったら…という条件も追加してあげましょう。

どこかで聞いたような条件ですが、貴女達にはちょうどいいかもしれませんね」

 

「…………………あぁ?」

 

あぁ、さっきのは完全に舐めてるわけじゃなかったのか…つまり、今

 

「完全に舐めてるわよね」

 

「舐めている…というと聞こえが悪いですが、概ねその通りですね。

私と貴女達の間にある実力の差はそれほど大きい物と思っていてください」

 

「ふ……ざけんなっ!!」

 

アトラスに向けて唐突に放たれる弾幕を、まるで最初から飛んでくるのが分かっていたかのように避ける。

 

「魔理沙ぁ!あんたは邪魔だからどっか行ってなさい!」

 

その一言で我に返ったのか、はっ! と飛び起きるように霊夢の隣に立つ。

先程の恐怖は振り払えたのか、そんな事は分からないがとにかく今は勝つ事だけを考えなければ、本当に勝てなくなってしまう。

 

「あ、接近戦ありでもいいですよ? 正直言ってしまうとそっちの方が楽しめそうですし」

 

「魔理沙! どっか行ってなさい! この妖怪は私だけで相手する!」

 

「おう!……えぇ!?」

 

驚きを隠せない魔理沙だが、結構ガチで怒っている霊夢は怖いので、大人しく隅に移動する。

 

縮地、などと呼ばれている歩法で一気にアトラスに急接近する。

なぜそんな事が霊夢に出来るかと言えば、先代博麗の巫女、霊夢の師匠とも言える人物の特技は…

 

「せいっ!」

 

「あら、本当に接近戦も出来るんですね。

霊力で強化しているのか、人間にしては中々の重さもありますね」

 

簡単に受け止められてしまったが、その動きは完全に接近戦を修めた者の動きであった。

先代博麗の巫女は、弾幕ごっこ、という人間に有利なルールが存在する前から、接近戦での妖怪狩りを生業としていた生粋のファイターであり、歴代最強と言わしめるほどの戦闘力を誇っていたらしい。

 

流れるような動作で繰り出される拳は、アトラスの顎を狙い真下から振り上げられる。

アトラスはそれをスウェーで躱すと、そのままの勢いを利用し、バク転をするかの様にサマーソルトを霊夢の顎に当てる。

 

「ぐっ!」

 

まさかあの体勢から反撃が来るとは思っていなかったのか、咄嗟のことで反応できずにいた霊夢は、見事に打ち上げられる。

だが、ジクジクと痛む顎を気にしている余裕などない。

 

「はぁ!!」

 

アトラスは打ち上げた霊夢の腹を狙い、右手で掌底を打つ。

直感的に、この攻撃を喰らえば、良くて内臓のいくつかは持っていかれると判断できた。

 

迫り来る掌底を蹴り払うために足の筋肉に力を入れた瞬間、それが間違いだったと判断出来た。

 

アトラスは攻撃の手を途中で止めた、所謂フェイントという技術だ。

完全に虚をつかれた霊夢の足は何もない空間を蹴り抜く。

そしてそれは、決定的に致命的な隙であり、アトラスが望んだ通りの展開だった。

 

「中々にいい蹴り技でしたが、私や美鈴ちゃん、恭君には程遠いですね」

 

足を掴まれ、顔面を床に打ち付けられる。

床が砕ける程の威力で打ちつけられた痛みは、声が出ないレベルの物だったが、もしも霊力で強化していなかったら、見るも無残な潰れた死体になっていたかもしれない。

 

なんとかして脱出しなければ、いつかは本当に潰れた死体になってしまう。

無様な体勢だが、残っているもう片方の足でアトラスの手を蹴って抜け出そうとするが…

 

「おやおや、先程の洗礼された物とは違って、今の蹴りはいただけませんね。 0点です」

 

見事に両足を掴まれてしまい、今度こそ身動きが取れなくなってしまう。

しかし、両手が動く以上は弾幕による攻撃なら可能なため、手に霊力を溜めるが、それすらも看破されていた。

 

「無駄な抵抗ですね〜」

 

まるで、薪割りをする斧のように体ごと持ち上げられーーー叩きつけられる。

何度も何度も……叫び声をあげるも手を止める気配はない。

霊力による物理防御の強化をしていなければ確実に死んでいるだろうが、アトラスはそれを見越して叩きつけている。

 

痛い!痛い!痛い!痛い!!

 

顔面は既に感覚が消えている。

 

どうなったんだろう? ぐちゃぐちゃになってるのかな? 私はここで死ぬのかな?

はぁ〜あ……こんな目に会うなら家でのんびり茶でも啜っていればよかったのに…

 

「霊夢!!」

 

見ていられない、といった様子で霊夢を助け出そうと弾幕を放つ。

ーーーしかしそれは、この状況では絶対にやってはいけないだろう。

 

「あらら…仲間が人質に取られていると言うのに…」

 

霊夢を盾にするように自分の前に持ち上げる。

そうするだけで自然とアトラスへの被弾は無くなる………そしてそれは、本来ならアトラスに命中するはずの弾幕が霊夢に直撃するという事だ。

その時点で撃つのを止めたのだが、それでも既に放ってしまった弾幕に関しては、完全に魔理沙のコントロールを離れてしまい、もはやどうする事も出来ない。

 

「霊夢を離せぇぇぇえ!!」

 

力の限り叫ぶも、アトラスにそのつもりは欠片もない。

 

「自業自得です」

 

結界を張る力すら残されていないのか、ゴッ! ゴッ! と地面を砕く鈍い音が響く。

 

やがて、霊夢の反応が無くなったのを確認したので5mほど離れている魔理沙に向かって放り投げる。

能力を発動させ霊夢を見てみると、浅くだが、確実に背中が上下している。

 

「まぁ、殺すつもりは無かったから当然なんですけどね」

 

「テメェ……」

 

怒りの形相でアトラスを睨みつけるが、当の本人は全くと言っていいほど気にしていなかった。

魔理沙もその理由はよく分かってはいるが、友人を目の前で殺されかけた事は許せるものではない。

問答無用でマスタースパークを放とうとしたその刹那、肩を叩かれた。

 

「止めておいた方がいいですよ? 私を正面から相手にして倒せる方法なんて、ほぼ存在しませんから」

 

「は……え?」

 

目を離したつもりは無い。 目を瞑った覚えも無い。 なのにこのメイドは一瞬で距離を詰めて私の肩を叩いてきた。

 

「おや、この程度の速度でも目で追えないんですか? 情けないですねぇ……恭君ならギリギリで反応出来る速度ですよ?」

 

あぁ、こりゃ勝てんわ。

霊夢が何も出来ずに惨敗、それ以下の私じゃ何をやっても無理だな。

ここまで実力の差があると全く悔しくならないのは新しい発見だったぜ。

 

「その表情、目の動きから察するに、諦めていただけるんですよね?」

 

「それは……」

 

霊夢の意思を尊重したい。 所詮私は異変解決についてきたオマケだ。

そんな私が決めていい事ではない。

 

魔理沙がどうするか悩んでいると、アトラスの後ろにあった扉が静かに開いた。

 

「アトラス、殺してないだろうな?」

 

「はい。 レミリア様の言い付け通り生かしてあります」

 

現れたのは青い髪にコウモリのような翼を持つ少女だった。

 

多分、この幼女がコイツらのボスだな……

 

レミリアから感じる妖力は、外に広がっている霧と同じなのを感じ取った魔理沙。

今は弱体化しているのか、思ったよりは妖力を感じないが、それは霧を放ち続けているのが原因なのだろう。

 

「と、言うわけだ。 お前ら二人程度ならこのアトラス一人で十分なのは理解したな?

殺されなかっただけありがたいと思って、さっさと帰る事をオススメしておく」

 

その言葉を聞いて霊夢を見てみる。

恐らく意識は無いだろう。 息も絶え絶え、殺してないとは言っているが、一歩間違えば確実に死に至るダメージだ。

霊夢が戦えない状態でこの化け物二匹を相手にする?…………冗談じゃない。

 

「レミリア……って言ったか?

とりあえず今回は諦めて帰る事にする。

その上で一つ聞いておきたい」

 

「言ってみろ」

 

「この霧を止める気はあるのか?」

 

「ある」

 

意外な答えだった。

この霧は間違いなく吸血鬼が昼間でも外で活動できるようにする為のもの。

だからこそ、この霧を簡単に消すと言ったレミリアの言葉の意味がよく分からなかった。

 

「元々、この霧はそんなに長時間出し続けられるものでは無いし、私の館にも人間の従者がいる。

既に会っているだろうが、その二人にまで影響を与えかねないものをいつまでも垂れ流している訳にもいかんのでな」

 

「人里にも被害が出てるんだ。

なるべく早く消してくれると助かる」

 

「そうだな……」

 

レミリアが顎に手を当てて考え込む。

一人じゃ判断が出来ない事なのか、アトラスを呼んでしゃがんでもらい耳打ちをする。

時折『妹……』やら『満足……』などという単語が聞こえてくるが何の事だか分からない。

 

「よし、一週間待て。

一週間後にはこの霧を綺麗さっぱり消してやろう」

 

「もう少し短く出来ないないか?」

 

「駄目だ。 少なくとも恭介が回復するまでは絶対に解除しない」

 

遠回しに責められた気がする……

まぁ間違いなく私のせいなんだろうけど。

 

「わかった」

 

霊夢を抱き上げ背中に乗せる。

帰り道はどっちだっけか? と左右を見ていると、レミリアが『あぁ、それと』と言ってきた。

 

「今後、私達に手を出そうものなら実力行使で対応するのを忘れるな。

ブン屋にでも頼んでアポを取ってから会いに来るなら歓迎しよう。

唐突に来たとしても、それ相応の理由と戦闘の意識無しと分かるのなら歓迎する。

だが、もしも悪意や敵意を持ってここに来るというなら……」

 

背中がゾクリと震える。

 

「あぁ、わかった」

 

「ならいい。 アトラス、巫女の応急処置が終わったら玄関まで案内してやれ」

 

「かしこまりました、レミリア様」

 

レミリアはそれだけを言い残すと扉の向こうに帰って行った。

次は弾幕ごっこなんて甘いもんじゃないんだろうな……などと考えていると、アトラスが何処からか医療道具らしき物を取り出していた。

 

「巫女様をこちらに」

 

敵意は完全に消え去っている。

信用して良いのだろうかと悩むが、下手に逆らって相手の機嫌を損ねる真似はしたくない。

そう思った魔理沙は、大人しく霊夢を渡した。

 

「ふむ……鼻骨、胸骨、大腿骨、脛骨が折れていますね。

それ以外もそこそこ酷い状態ですが、まぁ…何とかなるでしょう」

 

予想以上に酷い状態だった。

添え木やら包帯やらを取り出し、テキパキと固定をしているアトラスを見ていると、先程まで見せていた悪鬼の如き様相は消えていた。

 

「なぁ……霊夢は大丈夫なのか?」

 

「あぁ、心配は要りませんよ。

パチュリー様から預かっているエリクサーを使用すればこの程度の怪我なら2、3日で完治しますよ」

 

「そうか……よかったな、霊夢」

 

もちろん反応は無い。

無事なら無事で、その事は素直に喜んでおこう。

しかし今は、それよりも気になる事が一つだけあった。

 

「最初にさ、第二段階とか言ってたけど、今のは本気じゃなかったのか?」

 

「今の『状態』で、という括りなら本気でしたよ。

とは言っても、本気で殺しにかかってないですし、そもそも私の全力ではありませんので」

 

「なるほどな……」

 

つまりは完全に遊ばれただけ、それでこの有様かよ……

つくづくここの連中が化け物だって理解できたよ。

 

「まぁ……案外話の分かる奴等だってのはいい収穫だったかな」

 

「レミリア様は決して話の通じないお方ではありませんよ。

ただちょっと我儘なだけです」

 

「ま、個人的にはあのパチュリーって魔法使いにリベンジさえ果たせれば文句は無いからよ」

 

「良き友になってくれると嬉しいんですけどね」

 

「いやぁ〜、それはどうなんだろ。

私としてはあのレベルまで昇華した魔法使いなんて見た事ないから嬉しいんだけどよ、向こうからしたら私と友達になっても得なんて無いからよからなぁ」

 

あら、と言って意外そうな顔をするアトラス。

どうした? と聞き返してみると、帰ってきた言葉はおよそ妖怪らしからぬ言葉だった。

 

「損得勘定では真の友人にはなれませんよ?

貴女……」

 

「魔理沙だ」

 

「魔理沙様と巫女様はお互いを信頼し合っている、損得勘定のない良き友人に見えますが、私の勘違いでした?

私に友人という存在はいませんが、それでも最近新しく入った同僚達とは友人を超えた『家族』のような絆が出来て嬉しかったですよ?」

 

うふふ、と笑いながら言うアトラスに対して思ってしまった。

ーーーーあぁ、ダメだこりゃ。 強い弱い、勝つか負けるか以前に、器の大きさが違ぇや。

 

これで良し。 そう言って治療を終わらせ、気絶している霊夢に気付けをする。

 

「あがっ!?」

 

「よう、おはよう霊夢」

 

「痛たた……って! 私気絶してた!? あのメイドは何処ーーーって、ぎゃぁぁぁあ!!」

 

アトラスを探して後ろを振り向いた霊夢が、およそ女の子らしくないおっさんのような悲鳴を挙げている。

状況が分かっていないのはしょうがないだろう、ボコボコにされて気を失っていたのだから。

 

「あ〜、もういいぞ霊夢。 話の通じるここのボスのおかげで私達も幻想郷も助かる。

あとついでに、瀕死の重傷だったお前を助けてくれたのもそこのメイドさんだ」

 

「は!? 全く状況が掴めないんだけど!?」

 

「まぁつまりアレです。 魔理沙様と巫女様は今後こちらに攻撃の意思を持たない限りは、丁重におもてなし致しますよ……じゃあ説明になりませんか?」

 

「なりません!!」

 

まぁ、霊夢の言う通り説明にはなっていない。

けど、ここでもう一悶着起こすつもりはないプラス一悶着起こして殺されるのも嫌なので、事の顛末を霊夢に話す。

 

「えぇと……つまり、あんた達は吸血鬼の妹を外で遊ばせたいからこんな異変を起こしたと?」

 

そこに関しては魔理沙も聞いていなかったので、ちょっとした驚きであった。

 

「はい、それ以外に理由はありませんね」

 

霊夢がワナワナしてる………気持ちは分かるぞ。

と、頷いている魔理沙。

 

「そんな事で……そんな事で……こんなデカい異変を起こすなぁぁぁぁああ!!」

 

アトラスに胸倉に掴みかかってガクガクと揺らし出す。

 

「あんたねぇ! ちょっと言ってくれれば考えてあげるって程度の事をなんの相談もせずいきなり危ない霧なんか出してんじゃないわよ!」

 

「あはは〜、そこは私に言われても〜」

 

「あはは〜……じゃない!!」

 

暫く揉めあった後、やっと霊夢が落ち着いてきたのか、これ以上アトラスに文句を言ってもしょうがないと思ったのだろう。

 

「もういいわ……帰してくれるなら、そろそろ帰るけど、もう変な事しないでよね」

 

「レミリア様次第ですね〜」

 

相も変わらず笑顔のアトラスが妙に腹が立つ。

しかし、殴りかかっても軽くあしらわれる事が目に見えてるのでどうしようもないのが更に腹立たしい。

 

「では玄関までお送り致します」

 

「いや、別にいいわ。 帰り道なら分かるし、あんたは例の男でも見に行ってみなさいよ」

 

「いいんです?」

 

「んな、心配ですっ! ってツラされてりゃ断る気も失せるわよ」

 

それを聞いたアトラスは、ありがとうございます! と叫んで走って行った。

余程心配だったんだろう、泣きそうな顔だった。

 

「さて、帰るわよ」

 

「おう」

 

1週間もすれば異変は勝手に解決する。

そう思えば何となくだが、足取りが軽くなった気がする。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ヴワル魔法図書館。

そこには今、パチュリー、小悪魔、アトラス、まだ寝ている恭介がいた。

 

深刻そうな顔でパチュリーが、恭介の頭を撫でていた。

 

「恭君の容態は如何ですか?」

 

「大丈夫…寝ているだけよ」

 

「じゃあーーーーその顔の理由は何ですか? パチュリー様がそこまで深刻になるなんて、ただ事ではありませんよね?」

 

言うべきか、言わないでおくべきか……いいえ、迷う様な事ではないわね。

 

「恐らくだけど、恭介が幻想郷全体から狙われるかもしれないわ」

 

 

本当の異変は、まだ……終わらない。




霊夢・魔理沙組が負けました!
アトラス強すぎ? しょうがないよね、作者が気に入ってるんだから……恭介? あぁ、彼はいいんだよ。

まぁ霊夢にはあのバグみたいな技があるので、次はどうなるか分かんないですけど、今後の展開の為にも負けてもらいました。
正直ここで解決チームを負かすのは読者様的にどうかな? と思いましたけど、やっちゃったww

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