謎のインタビュアーとの対談記録。
何をしたかったのかは私にもわからん

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熊野ショートショートショート

◆ カップラーメン

 

「ええ、知っておりますわよ」

- 食べたことはあるんですか?

「無いですわね」

- 食べてみたいですか?

「そうですわね、機会があれば」

- 今、お腹空いてますか?

「まぁ、それなり、ですわね」

- なるほど、それでは今日はこの辺りで。

「はい、ありがとうございました」

 

彼女は口元に小さな笑みを浮かべて部屋を後にした。

尚、食事の用意は特にしていない。

 

 

◆ スカイダイビング

 

- 3, 2, 1, はい、どうぞ

「ぉぉおおぉぉぉぉぉおおおおぉおぉぉおおぉおおぉぉぉおおおぉぉぉぉぉ」

- 初めてのスカイダイビングとのことですが、感想はいかがでしょうか。

「ぉぉぉぉぉぉおおぉおおおおぉぉぉぉぉぉ...」

- なるほど。スカイダイビングは隼鷹さんも嗜むとお聞きしておりますが、今度ご一緒されてはいかがでしょうか。

「...」

- なるほど。日夜海上を縦横無尽に駆け回る艦むすだからこそ、と言ってはなんですが、空中にかける想い、というのはありますか?

「...」

- なるほど。あ、そろそろ開傘ですね、では今日はこの辺りで、解散、なんちゃって。

「...」

 

後日、彼女はこの体験を姉妹艦相手に鼻高々で語ったという。

 

 

◆ ピザ

 

- (開きっぱなしのスケッチブックが奥の机に置いてあるのを見て) 絵をお描きになられるんですか。

「ええ、まぁ、嗜む程度に」

- 拝見してよろしいでしょうか

「少し嫌ですけれど...、どうぞ」

- (スライムみたいな絵が書いてある) これは、書きかけの絵ですね

「いえ、完成しておりますわ」

- あ、そうなんですか。抽象的な絵をお描きになられるんですね

「餅ですわ」

- あ、餅。餅をお描きになられた。

「はい。何か?」(首を傾げて不思議そうな表情を浮かべる)

- いえ、何も。(次のページをめくる)これは、これも、もちですか

「チーズです」

- あ、とろけるタイプの、ですね

「はい。」

- なるほど。

「あの、なにか、変でしょうか」

- いえ、そんなことありませんよ

「わたくし、絵、下手でしょうか」

- いえいえ、素晴らしい絵だと想います。陰影もしっかりついていますし、クオリティは高いと想いますよ

「まぁ。ありがとうございます」

- それでは今日はこの辺りで

「はい、ありがとうございます」

 

後日、我々はマルゲリータピザを持参してインタビューを行った。

彼女は黙々とピザを食べ続け、我々の質問を全て「そうですわね」の一言だけで済まそうとしていた。

ピザを喰むたびに伸びるチーズをじっと見つめていたのが印象的であった。

 

 

◆ シーサー

 

- それでは、まずこの写真を御覧ください

「獅子、ですわね。狛犬のように見えますわ」

- 素晴らしいですね。正解です。用途はわかりますか?

「用途?魔除けではなくて? それで、これがなんなのかしら」

- いえ、それを当ててもらうクイズのつもりだったのですが、予定が狂ってしまいました。

「見くびっていた、ということでございますわね」

- では、景品としてこちらを差し上げます

「なにかしら、暖かいわね」

- プリトーです

「プリトー」

- 温かいうちに、どうぞ

「あ、チーズが入っているのね」

- はい

「...」

- こちらの写真の置物、実はある地方でよく見られる物なのですが、どこかおわかりになられますか?

「...そうですわね」

- 実は沖縄なんです。

「...そうですわね」

- 実は、この沖縄でのロケを予定しているのですが、行っていただけますね

「...そうですわね」

- 沖縄の雄大な自然をバックにスカイダイビングをしていただきたいと思っておりまして。やっていただく、ということでよろしいでしょうか

「...そうですわね」

- それでは、今日はこの辺りで

「...そうですわね」

 

こうして我々はこの困難なミッションを成し遂げたのである。

 

◆ 錦鯉

 

「5分とかからないインタビューのために、よくまぁこんな遠出が許されるものですわ」(鯉に餌を与えながら)

- まぁまぁ。たまの息抜きです

「悪くはないですけれども」

- この錦鯉、ここのオーナーが飼っているもので、とても高価だそうですよ

「そうなんですの。鯉というのは優雅で、癒やされますわね」

- ご自身と重なる所は、何か感じますか

「重なるかどうかはなんともいえませんが、この鯉達のように優雅に海を泳ぎたいものですわね」

- 餌を投げると水面に集まりますね

「そうですわね...」

- ご自身も好きなものがあるとなりふり構わず夢中になってしまう方ですか?

「そんなことありませんわ!重巡熊野、いついかなる時も気を抜くことはありません」

- 素晴らしいです。

「当然ですわ。(手持ちの餌を全てまいて)さ、行きましょう」

- 心当たりは特にありませんか?

「な、何の話ですの?」

- いえ、無いなら良いんです

「何の事をおっしゃられているのか、よくわかりませんわ」

- あ、そうそう、今日もプレゼントを持ってきたんです

「あら、嬉しいわ」

- ねりけしです

「ねりけし」

- ほら、こんなに伸びます

「伸びるわね」

- どうぞ

「メロン味って書いてありますわ」

- 食べ物ではありませんよ

「そうなのですね。ありがたく頂戴しますわ」

 

当初は不思議そうに遊んでいたが、しばらく経つと例のインタビュー不能状態に陥った。

10分ほどでその状態は途切れてしまったが、食べ物でなくても良い、という非常に有益な情報を得ることができた。


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