俺、つかみたいものがあります   作:闇谷 紅

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第二話「こんにちわ変態さん(アルティメギル)」

 抱えるのは、古本屋で買った文庫本が数冊。目的も無しに外に出て、気が付けばゲーム屋と古本屋及び書店をハシゴしていたのは、きっと前世の性なのだろう。三つ子の魂百までとは良く言ったものだ。生まれ変わったというのに行動パターンの一部がそのまんまというのはいささか問題かも知れないけれど。

 

「マクシーム宙果、か」

 

 記憶にある近場のゲームショップと新と古、双方の書店を制覇し、ノープラン故に目的地を失った僕の視界に入ってきたそれは、確か地元最大のコンベンションセンターだったと思う。もっとも、たまたま辿り着いただけなので、本日なんの催し物をやっているかはとんと不明だったりもするのだが。

 

「さて」

 

 どうするべきか。催し物をしてるなら人もいるだろう。確か、学校の行事なんかにもあの宙果は使われていた気がするし、イベントやライヴなんかが催されたことだって有る。ひょっとしたら予期せぬ出会いなんて素敵なモノも転がってるかもしれない。まぁ、前世今世併せて運命の出会いなんてお目にかかったことはまだ無いけどね。

 

「ふむ」

 

 前世を反省してわざわざ外に出たのだから、動機を考えれば足を運んでみるべきだとは思う。行動することは可能性を作る事でもあるのだから。モバイルゲームのガチャだって回さなければレアな目玉商品が当たることはない。まぁ、僕は無課金勢だったので、回すのはイベントでチケットを貰った時ぐらいだったけれど、って話がそれた。

 

「行ってみる、か」

 

 どのみち家に戻ったとしても、抱えた戦利品を読むか、テレビを見るか、ゲーム、もしくはネットサーフィンするのが関の山なのだ。通ってるのが初等部から大学部まで一貫進学が出来る超エスカレータ校だからって勉強を疎かにするつもりはないが、前世で高校は卒業してるので勉強はだいたい解る。苦手科目さえ抑えておけば、あと二~三年は戦えるレベルだ。よって、夕飯までに家に戻れば問題ない。

 

「はぁはぁはぁ、あっしと、したことが、座標を、しくじる、なんて……」

 

 そう思った矢先だった。息を切らした一人の少女が呼吸を荒くしつつ僕の横を通り過ぎたのは。もっとも、無関係の僕としては、何か随分急いでるなぁとぐらいにしか感じなかったのだけれど。横に並んだのは一瞬、顔もちらっとしか見えなかったし、その人を示して「ご注文の運命の出会いです」と笑顔で言われたなら、若干申し訳なく思いつつも僕は「チェンジで」と言ったと思う。美少女という表現がしっくり来るぐらい顔は可愛かった気がするのだけれど、天は二物を与えなかったんだろう。いや、失礼なことを考えてるとは自覚してる、だからか。

 

「ん?」

 

「っ」

 

 彼女は急に振り返り、僕は硬直した。全く見知らぬ赤の他人である僕にわざわざ振り返る理由なんて失礼な思考を感じ取ったか、知人と見間違えたかの二択しかない。僕が絶世の美男子だとか、奇抜な格好で歩いてたなら他の可能性もあったかも知れないが、いかんせん今世の僕は良くも悪くもモブ勢なのだ。

 

「あ、あの」

 

 人違いかとそのまま去るどころか、少女が声をかけてきたことで、人違い説が断末魔を上げて死んだ。少女の片手は白衣のポケットに突っ込まれていて、何かを掴んでいるようにも見えた。やばい、入学式当日だって言うのに、僕は通報されてしまうのか。あれは、白衣の中のそれは警察へのダイヤルをプッシュされてる携帯電話かもしれない。もしくは防犯用のブザーか。僕の手の中をねっとりと嫌な汗が湿らせ始め。

 

「すいやせん、初対面のお人に、こんな事を言うなんて気が触れたとお思いかもしれやせんが、一つあっしの質問に答えちゃくれやせんか?」

 

 彼女が続けた言葉に、僕は人生終了のベルが鳴るのを確かに聞いた。あかん、これはあかんやつや。

 

「今、視姦しやしたね? 正直に言ってくれたなら、まぁ、額によっては通報は止めておいてもいいですぜ?」

 

 とか、そんな感じの質問が飛び出してくるのだろう。そして、多分僕の背後にはガラの悪そうなお兄さんが金属バットかチェーンでも手にしながら、逃亡を防ぐポジショニングをしてるに違いない。

 

「えーと、もしもーし、あっしの言葉聞こえてやすか?」

 

「あ、ああ」

 

 一応中古のライトノベルを数冊買っただけだ、財布の中身はそこそこ残ってはいる。だが、この手の要求に屈した場合、待っているのは第二第三の要求だ。なら、逃げるかと言うとそちらも人数次第では厳しい。今世はいじめられないようにと護身用に武術をかじっているものの、生兵法は何とやら。今のところ喧嘩に使ったことがないので、通用するかという指標もないのだ。

 

「じゃあ、質問しやすよ?」

 

「ああ」

 

 わざわざ確認してくれる親切さにちょっと違和感は感じたものの、絶体絶命にはかわりない。

 

「お」

 

 脳内にどうしようという単語がぐるぐる回る中、少女が発しようとした問いは途中でかき消された。

 

「なっ」

 

 耳を塞ぎたくなるような轟音。思わず振り返ると車が空を飛んでいた。SFとかで見るようなタイヤのない車が宙を走るのとは違う、打ち上げられて空に舞ったというのが正しいか。

 

「ちぃっ、後手に回っちまった」

 

 僕としては突然の非日常、ただ固まってやがて重力に従い落ちてくる自動車を見ているしかなかったのだけれど、二度目の人生という希有な体験が作用したのか、心の中の冷静な部分は彼女の舌打ちと言葉を拾っており。

 

「ああ、まったく……ちょっと一緒に来て下せぇ」

 

 再び声を上げる暇もない。腕を掴まれ、引っ張られる。驚きに言語機能まで麻痺したのか、言葉も出ず。ただ、次の瞬間極彩色の閃光に包まれた僕は。

 

「やっぱり、遅かったようでさぁね……ちくしょう」

 

 悔しげな少女の声を聞きつつ、目を疑った。視界に入るマクシーム宙果は先程とと大きさが全然違い、立っている場所もまるで違っていたのだから。

 

「駐車場、か?」

 

 おそらくは屋外駐車場だ。燃える車とか「者ども、集まれい」とか口にしてる人ならざるナニカ。非日常がこれでもかと視界を埋めているのだから、瞬間移動だってありと言えばありなのだろう。

 

「ふはははははは!! この世界の生きとし生ける全てのツインテールを、我らの手中に収めるのだ――!!」

 

 だから、そのナニカが、訳のわからないことをほざいたのだってきっと――。

 

「ないな」

 

 許容範囲と思おうとして、気が付けば口から言葉が出ていた。

 




 ちょ、オリキャラばっかでリザドギルディをちょっとしか出せてねぇぇぇ!

 第三話「赤の戦士(テイルレッド)

 うん、次回はきっと……出せると良いなぁ。
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