俺、つかみたいものがあります   作:闇谷 紅

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第四話「それは、きっと」

「言葉は通じるな、化け物。この人たちのツインテールを……返せ」

 

 幼女の言にか、それとも登場にか。

 

「な……これは……」

 

 トカゲもどきは驚き立ちつくすが、驚いたという意味では僕も同様だった。手足を覆う白と赤のプロテクター、腰部にあるそれにツッコミを入れる気はない。ちらりと自動車の窓を横目で見れば、色と形状は違うものの僕もその手のスーツを装着しているようだったから。

 

「……違う」

 

 僕が驚いたのは別の点。そう、何故この幼女までがツインテールがどうのこうのと言っているかだ。トカゲもどきのほうはいい、ロクでもない置きみやげから目を逸らさせるための情報操作なのだから。なら、幼女の方は何故トカゲモドキの狂言に付き合うのか。見れば、たなびく髪は赤いツインテールだ。まるで姿までトカゲもどきの寝言に付き合ってますと言わんがばかりだが、それも解せない。

 

「いや」

 

 待て、考えろ。ツインテールを守り、取り返すだけのために幼女が化け物に挑む何てあり得るのか。

 

「ないな」

 

 なら、なぜ幼女はトカゲもどきに付き合うのか。途中からしか見ていないが、幼女は声を上げた直後、急減速してアスファルトに火花を散らし、粉塵を巻き上げていた。ただのコスプレであんな真似は不可能、つまりアレは洒落にならないくらい強力な装備の筈なのだ。寝言の為に用意するなんて考えられない。有るのだ、深い意味が。

 

「ん?」

 

 待て、付き合う意味だって。

 

「旦那ぁ」

 

 おそらくはそこにヒントがあるのではと思った直後だった、まるですぐ側にいるかのようにあの少女の声がしたのは。

 

「……そうか」

 

 そして、僕は気づいた。あの幼女の立ち位置は僕と同じなのではないかと。違いがあるとすれば、胸の大きさを含む外見年齢と髪型、そして――与えられた情報。僕は少女に連れられ、土壇場でブレスレットを貰ってここにいるが、幼女の方は僕にブレスレットを渡した少女のような誰かから、トカゲもどきの言動に付き合うようにと何らかの説明をされたのではないか。例えば、あの輪っかをくぐらされた少女達が真相を知り心の傷を負わないように、とか。

 

「なるほど、な」

 

 怪物はおぞましい計画が知られぬように、幼女は巻き込まれた人々の精神面のケアを考慮し、結果として成り立っているのが「ツインテールを奪う悪党と守り取り戻そうとする正義のヒーロー」の図式という訳か。

 

「ならば、ぼ……俺はさしずめ巨乳のヒーローと言ったところか」

 

 成る程、良くできている。この茶番に加わる一人物として僕、いや俺と言うキャラはまさにうってつけだ。趣向と合致しているからこそ、俺ならその役をきっちり演じられる。

 

「だ、旦那?」

 

「巨乳のヒーローとして戦えばいいのだろう?」

 

「旦那、あんたぁ、いったいどういう把握力をなさってんですかい? あっしゃ、巨乳なんて一言も言ってねぇってのに……」

 

 驚きかすれた少女の声が聞こえてくるが、やっぱり正解らしい。なら、後はあの幼女の言動を参考にしつつ、キャラを作って行けばいい。そう思ってトカゲもどきと幼女の方を見ると。

 

「ぐ、ぐうう……あまりの強大な幼気に吹き飛ばされたか……」

 

 トカゲもどきが何やら呻きつつ身を起こすところだった。

 

「くっ」

 

 なんてレベルの高い擬態だ。真相を知らなければトカゲもどきが変態性を発揮して勝手に吹っ飛んだあげくダメージを受けたかのようなそぶりで居るように見えたことだろう。

 

「だが」

 

 この場に立っている以上、俺もあの高みに達しなくてはならない。となると、まずは自分の胸部にあるこのけしからん膨らみを触ってみることから始めるべきか。

 

「いや」

 

 芝居も良いが、今は好機(チャンス)なのだ。トカゲもどきはツインテール幼女に気をとられたまま。幼い女の子を囮にするなんて人としてどうかとは思うが、スーツを着て飛び出してきてるのだ、相応の戦闘力は持ち合わせているだろう。くわえて、ツインテールを奪うと言うあのトカゲもどきのポーズを鑑みれば、負けたとしてもすぐに命を奪われるとは思えない。

 

「行くぞ」

 

 これ以上の思考は時間の浪費だ。

 

「はあっ」

 

 あの場所の近くへ運んでくれと願いながらアスファルトを蹴り、胸元を装飾するリボンに手を添えた俺はそのまま胸を軽く撫でる。使い方は、ブレスレットが、スーツが教えてくれる。下乳の間、丁度谷間に挟み込んでいるかの様な角度でヘソの前に現れた柄を掴み、一気に引き抜けば、手に握られていたのは、片刃の斧。

 

「シュトゥルムアクストっ」

 

 一振りすれば、通販で買った高枝切りばさみか何かのように柄が伸び、ポールウェポンと化したそれを両手に持ち替え、突撃する。

 

「「モケ?」」

 

 妙な仮面を付けた黒ずくめ、さしづめ戦闘員の幾人かが俺に気づいたが、遅い。

 

「邪魔だぁぁぁぁっ」

 

「「モケェェェェェ」」

 

 利き手を外し、斧頭から遠い方の手のみ残して一閃すれば広いリーチに巻き込まれた仮面戦闘員達が一気に吹き飛ぶ。いける。さっき作った設定の筈なのに、胸に触った辺りからどんどん力が溢れ出てくるような錯覚を覚えるが、きっとこれは戦いに直面したことで生じた高揚感の産物だろう。それと。

 

「……あいつ」

 

 そう、トカゲもどきに向かっていった幼女だ。幼い女の子さえ怪物に向かっていったと言うのにここで俺が臆したりまごつく訳にはいかない。それは、きっと男としての矜持だ。うん、今はついていないけど。

 

「なん、だと? あれだけの戦闘員(アルティロイド)をたった一振りで! ぬうう、不覚。素晴らしきツインテールに目を奪われ、敵の存在に気かなんだとは……貴様、何者だ!!」

 

「っ」

 

 ただ、俺は同時にやらかしもしていたらしい。いくらツインテールへ執着する変態を演じていようとも、部下が薙ぎ払われれば気付きはするか。しかし、何者だと言われても、生憎名乗れるような名前は持ち合わせていない。

 

「ただの巨乳好きだ」

 

 だから、色々と台無しと言われようとも、俺の回答としてはそれが精一杯だった。

 




一応ちゃんとした名前は考えてるんですけどね。次くらいに披露出来たらいいなぁ。

ちなみに、主人公、変身した時とそうでない時で一人称を使い分けます。

これはまだ認識攪乱のことを主人公が知らない為、出来るだけ正体を隠せるようにと自発的にやったことです。

主人公の一人称失念してタイトルつけたので辻褄合わせなんてことはありませんとも、ええ、きっと。

次回、第五話「俺としてはそれよりも」

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