「はあっ」
だいたい、偽装変態トカゲとのやりとりをしてる場合でもない。巨乳好き宣言への反応を待たず転進した俺は、手にした
「まったく」
囮にはなってくれていたようだが、少々群がりすぎだろう。幼女の戦闘力がどれ程のモノなのか分からない手前、要らないお節介だった可能性もあるが、先の一薙ぎで目を付けられてしまった今、トカゲもどきが俺をスルーする何て事は、あり得ない。
「あ……あ、ありが」
「後ろだ!」
おそらくは、助けられたと思ってくれたらしく、礼の言葉をかけてきた幼女だったが、その背後に戦闘員を見た俺は謝罪の言葉を遮り、短く叫ぶ。
「へ?」
「モケ?」
振り返った幼女、至近距離で対面する仮面の戦闘員。
「あ」
両者の時が止まる中、戦闘員の手に撮影機材が有るのを見て、気づけば小さく声を漏らしていた。敵が接近しているように見えたので警告を発したのだが、多分俺が薙ぎ払った戦闘員が落とした機材を拾うためたまたま近寄ってしまったのだろう。
「ち、近寄るなあああああああああ!!」
「モケェェェェッ!」
だが、俺の勘違いなどには気づかず、駄々っ子のように振り回した幼女の腕に当たった戦闘員は、少年漫画を彷彿と焦るポーズで空高く飛んでいった、スコーンと音を響かせながら。
「ほう」
「ぬうっ、ツインテールの素晴らしい幼女だと思っていたが、よもやこの幼女にまでこれほど凄まじき力があろうとは……貴様、何者だ!!」
その一撃に、俺の確信は強まる。だが、これでトカゲもどきも幼女を狂言回しのパートナーではなく油断ならない相手と認識したらしい。幼女へ投げたデジャヴさえ感じさせる問いにはお約束臭さえ、感じたものの、幼女を見倣うと決めた俺は横目で幼女を見た。
「…………何なの、俺?」
「は?」
そして、我が耳を疑った。あれだけ完璧にトカゲもどきとツインテールがどうのと言う話できっちり合わせておきながら、まさかの発言。手抜かりなのか、それともこういうボケなのか。
「待てよ」
ひょっとしたら、俺への気遣いか。先程トカゲもどきに名を問われたが、成り行きで変身してしまって名前のない俺は巨乳好き宣言で回りに何とか合わせるのが精一杯だった。もし、ここでこの幼女が名乗ろうものなら、俺の対応のまずさが際だつ。
「そうか」
この幼女、俺が名乗りに失敗したのを聞いていて、状況を察し、俺に合わせてくれたのか。
「くっ」
なんという心遣い、そして完璧な演技力。事情を察した俺でさえ、まるで自分の存在そのものに疑問を抱いているように見えないのだ。
「うおお~っ、よく分からぬがしょんぼりした幼女、たまらぬ!! 誰ぞ、彼女に抱かせる人形を持てい!!」
「モケェ!」
トカゲもどきと戦闘員までもが、彼女の演技に騙されていた。
「うわあああああああ!!」
ただ、一方欠けた包囲網を狭めずいずい寄ってくる変態の群れに悲鳴をあげる幼女を見るに、自身の演技のがもたらした影響は彼女の想定も越えていたようでもあったけれど。
「ふんっ」
「モゲッ」
俺を忘れて貰っては困る。幼女の脇を抜けると一番近くにいた仮面戦闘員を斧で叩き伏せる。
「ぬうっ、貴様、またしても邪魔だてするか!」
「当然だ」
この幼女には、借りがある。名乗りでやらかした失敗をわざわざ俺のために一緒に被ってくれたのだ。一時のパニックから立ち直る程度の時間を稼ぐごとぐらいで恩返しになるとは思えないが、それでも。
「ならば、気は進まんが貴様の相手は俺がする。者ども!」
「「モケーッ!」」
「しま」
トカゲもどきの指示で失敗に気づいた。変態偽装能力は思い知っているが、トカゲもどきの戦闘力は未知数だ。幼女も戦闘員を殴り飛ばす程の力は持っていたようだが、パニックを起こしたままやり合える程なのか。
「モケーーーーーー」
「っ」
飛びかかる仮面戦闘員の声、だが振り向く訳にはいかない。目の前にはあのトカゲもどきが居るのだ。
「ひゃああっ」
「なっ」
だから、隙を見せればそこに乗じて攻めてくる筈で、あり。
「モケッ」
「わっ」
「うぐっ」
攻めて、くる、はず。
「モケェ~~~~~~~」
「うおわー! くのっ……!」
攻めてくるからどうしようと思った筈だった。なのに、なんだろう、これは。引きつった声がしたかと思えば、チラチラと視界の端を炎がかすめ、仮面戦闘員の声がしたかと思えば、すぐに断末魔に変わる。
「……そうか」
立ち直ったのだろう、多分。ならば、後方に気をやる必要はない。俺は俺で目の前のトカゲもどきの相手をするだけだ。
「いく――」
足を屈め、作り出した前に飛び出すための瞬発力をもって俺は飛び出そうとし。
「動けなかった」
そんな俺を前にして、トカゲもどきは口を開く。
「な」
「釘付けになって動けなかった……。剣閃と共に空を舞うツインテール……今俺は、神話世界の楽園に迷い込んだ錯覚を覚えたぞ!!」
そうですか、後ろの光景が気になって俺はガン無視ですか。
「ホントに錯覚だ、やめろ気持ち悪ぃ!!」
道理でこっちに攻撃が来なかった訳だと納得すべきか、叫ぶ幼女に便乗して一言罵声でもぶつけるべきか。とりあえず、無視されたことにイラッとしたのは確かだが、また幼女に気が逸れたなら、それはそれでいい。
「はぁはぁ、ツインテール……ツインテェェルゥゥゥ!!」
「ひ……?!」
高度すぎる変態偽装のトカゲもどきが荒ぶり過ぎてて、助成した方が良いのではと後ろ髪を引かれる重いではあったが、俺の目的はそもそも輪っかの破壊だ。
「任せた」
「えっ、あ、ちょっ」
後ろから幼女の声が引き留めたような気はしたが、きっと気のせいだ、気のせいだったのだ。
本来の主人公の出番奪わないような調整って難しいですよねー。
ですが、これであとはリザドギルディとテイルレッドの一騎打ちの形に持って行けるはず。
次回、第六話「あくまで俺は――」
尚、勘違いモノと言うことで、リザドギルディ編終わったら、総二視点の番外編でもやってみようかと思っております。