お試し短編小説   作:d.c.2隊長

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最近はまったSAOのお試し二次です。感想数次第では、連載まで行きたいなあ。


お試しSAO

 ― これは、ゲームであっても遊びではない ―

 

 それが、とあるゲームをプレイしていた1万人のプレイヤー達に告げられた言葉だ。

 

 そしてそれは、プレイヤー達がゲーム……ソードアート・オンラインという名の“牢獄”に閉じ込められたことを意味する。

 

 

 

 

 

 

 2022年。それは世界初のVRMMORPG“ソードアート・オンライン”……通称SAOが正式サービスが開始された年だった。VR(ヴァーチャルリアリティ)……ナーヴギアと呼ばれるヘッドセットを装着して行われるこのゲームは、プレイヤーに本当に仮想空間にいると思えるほどのリアリティを与える。実際に自らがキャラクターとなり、その世界を生きる……ゲームとしての理想形とも言えるものが、現実の世界に誕生したのだ。

 

 

 

 

 

 「やっぱりここにいましたね、会長」

 

 「んあ?」

 

 冒頭から少し時を戻し、そこはとある有名中学校の屋上。綺麗に整えられ、暖かい日差しと冷え込む空気の中、明るい茶色の長髪の少女から会長と呼ばれた少年はいた。

 

 「ようあすみん。よく俺がここにいるって分かったな」

 

 「バカと会長は高いところが好きって言いますから。それから、私は明日奈です」

 

 「全国のあらゆる会長さんに謝れあすみん。バカと煙だろうが」

 

 「ごめんなさい、目の前の人以外の会長さん」

 

 あすみんと呼ばれた少女、明日奈はどこか楽しそうに両手を祈るように合わせて空を見上げながら謝罪の言葉を口にする。そんな彼女を、少年は同じく楽しそうに笑いながら見ていた。

 

 2人の間柄は、この学校の同級生であり、生徒会会長と副会長であり、ご近所さんである。とはいえ知り合ったのはこの学校の生徒会での会合が初めてで同じクラスになったことなど一度もない。家が近所だと知ったのも偶然帰り道が一緒になったからだ。

 

 そんな回想はさておき、少年は今まで寝転んでいたベンチから起き上がり、少女……明日奈に歩み寄る。同年代に比べると長身の明日奈だが、目の前の少年は身長だけをみれば青年に見えなくもない。180半ばという高身長故か、年齢の割りに大人びて見えるというのが明日奈の感想だった。

 

 「んで、どうしたよあすみん。今日は会議も何もなかったハズ……ていうか生徒会の引き継ぎも終わったから俺達に生徒会の仕事はないハズだが?」

 

 「もう、やっぱり忘れてる。今日はソードアート・オンラインについて教えてくれる約束ですよ。それに、放課後には後輩達の生徒会の指導があります」

 

 「ああ、すっかり忘れてたわ。つか今は無理だろ……放課後にしろ放課後。もうすぐ昼休み終わるし」

 

 「だから放課後は私は生徒会の後輩達の指導が……って会長も指導があるじゃないですか!」

 

 「有能な副会長がいるからやんねえ」

 

 あ、この人私に仕事全部押し付ける気だ。明日奈はそう直感……というか相手の言葉から悟った。

 

 彼女、結城 明日奈はエリートコースを歩く良家の令嬢である。容姿端麗で頭脳明晰、生徒と教師達からの信頼も厚く、目の前の少年がいなければ確実にこの学校の生徒会会長は彼女の役職となっていたことだろう。

 

 しかし、現実は彼こそが生徒達の頂点であり、彼女が次点であった。その事実に、彼女ではなく彼女の両親が大いに憤ったものの、彼と直接会ってからはむしろ当然のように受け入れたのだから、当初は彼女は酷く驚いたものだ。

 

 目の前の彼は、彼女よりも下の部分など幾つもある。勉強に至っては平均より少し上辺り。だが、彼女が絶対に勝てないと思う部分があった。

 

 それこそが“カリスマ”。人の上に立つに当たって最も重要とも言えるもの。明日奈にカリスマがない訳ではない。むしろ多大にあると言える。だが、それすらも越えるのが目の前の彼なのだ。この人ならば着いていける……そう思わせられることが出来る力は、彼女もそう思わせられた1人として認め、尊敬するものだった。

 

 「煽(おだ)ててもダメです。自分の仕事は自分でして下さい。子供ですか」

 

 「15は立派な子供だよ同い年。だいたい、指導なら昨日とっくにやったっつの」

 

 「え!? 嘘!?」

 

 「本当。いやぁ次期生徒会会長さんは勉強熱心で助かるわ」

 

 そしてこの男、素行は少々悪いが仕事は異常に早かった。本人曰わく、夏休みの宿題は初日で終わらせるタイプ。明日奈が夏休み2日目に生徒会メンバーで勉強会をしようと告げた時の返答が「あ、悪い。さっき徹夜して終わらせたから寝るわ」である。その翌日に確かめる為に勉強会に連行し、確かに終わってはいたが所々間違っていたのは余談である。

 

 それはさておき、彼が指導が終わったと言うなら本当に終わっているのだろうと明日奈は思考する。しかし自分は仕事が残っており、放課後は一緒にいられない。昼休みはもう終わる。つまり、約束であった“ソードアート・オンライン”のことを教えてもらうことが出来ないのだ。

 

 「大体SAOを教えるっつったって、お前さんはしばらくできんだろうに」

 

 「将来のための予習です。私だって興味がありますし」

 

 「……つーかさ、お前なんでまだ敬語なの? もう引継ぎは終わったんだから俺達の間に上下関係はないはずだぜ」

 

 「露骨に話題変えてきましたね。SAOのことを教えて頂ければ、私も教えますよ。因みに、私が聞きたいのは公式サイトや情報ではなく、会長がβテストで感じたことですので」

 

 「チッ、先手を打たれたか」

 

 「会長の考えくらいお見通しです」

 

 舌打ちしつつも楽しそうな少年に対し、同じく楽しそうに年齢の割りに豊かな胸を張る明日奈。両親や周囲からの期待やプレッシャー故に生真面目であった彼女がここまで楽しそうに、年相応の表情を出すには少し時間がかかった。エリート故のプライドも多少はあったが、今ではこうして冗談を交えて会話する程度には余裕を持てるようになった。

 

 「さあ、どうしますか? 会長」

 

 「まあ、確かにちっとばかし気にはなるが……残念だったなあすみん」

 

 「は?」

 

 「タイムオーバーだ」

 

 少年がそう言った直後、キンコンカンコンという定番の鐘の音が鳴り響いた。タイムオーバー……つまり、昼休みの終了を告げる予鈴である。更に、少年は明日奈を置いてさっさと屋上から出て行ってしまっている。

 

 「……やられた」

 

 悔しそうに、しかしやはり楽しそうに、明日奈は自分の教室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 翌日の昼の12時。屋上にいた少年は自宅の自室にいた。その手に握られている携帯端末には、今さっきまで見ていたであろうメールの文章が映し出されている。

 

 『兄が急遽海外に出張に行ってしまったので私がSAOできることになりました。プレイヤーネームはAsunaにしますので、見かけたら声をかけてください』

 

 「……あんだけ脅かしたのになあ」

 

 文を見た少年の顔に浮かぶのは苦笑と、後悔。

 

 少年は昨日、結局明日奈と共に後輩の指導に当たっていた。その際、明日奈にSAOのあることないことを言って脅かしていたのだ。彼女は結構怖がりであることは知っていたため、幽霊だゾンビだといえば参加はしないだろうと計算してのことだ。それほどに、少年は明日奈にSAOをしてほしくはなかった。

 

 しかし現実はメールの通りである。正式サービスが始まるのは13時ジャスト。初回プレイできるのは僅か1万人。そんな中に明日奈の兄が入り、兄はできなくなったから明日奈がやる。

 

 「そうなるとは思ってたけどさ……なんで自分から危険地帯に突っ込んでいくかねえ」

 

 危険地帯。何を指してそう言っているのか、今はまだ彼以外のプレイヤー達は知らない。知っているのは彼と……このゲームの製作者である茅場 晶彦(かやば あきひこ)くらいだろうと少年は思っている。

 

 時刻を見れば、まだ12時15分。サービス開始まで残り45分。それまでに何とか明日奈にゲームを止めさせようと思って考えるが、さすがに思いつくことはなかった。気がつけば時間が55分。もうタイムリミットと言ってもいい。

 

 「……仕方ないか。そもそも、俺は“この世界をSAOで終わらせる為に来た”んだからな」

 

 それだけを誰に言うでもなく呟き、少年はPCを起動し、ナーヴギアを頭につける。後は時間を確認し、起動ワードを言うだけ。それだけで彼の意識はSAOの世界へと旅立ち……最低でも2年に渡るデッド・オア・アライブの生活が始まる。

 

 「さあ、デスゲームの始まりだ」

 

 

 

 ー リンク・スタート ー

 

 

 

 パスワードを入力し、βテスト時代のアバター……ゲーム内の自分の体と名前を引き継ぐ。そうした工程を終え、ゲームへのダイブを終えた彼の視界に広がるのは、ファンタジックな町。町の名は“はじまりの町”。所謂スタート地点であり、“第一階層”である。

 

 SAOの世界とは、アインクラッドという全百層からなる浮遊城の中で完結している。プレイヤーはこの百層を上りきり、最上階のボスを倒すことを目的とするのだ。

 

 「さて、まだ時間はある……やることはただ一つ」

 

 レベル上げだ。そう呟いた存在は、少年ではなく黒髪の青年の姿をしていた。

 

 

 

 

 

 

 昼間の草原でファンファーレが鳴り響く。それがSAOのレベルアップの合図だ。音を鳴らした主は黒髪の青年……の姿をした会長と呼ばれていた少年である。

 

 「これでやっとレベル3か……ま、レベリングに時間かかるのは仕方ない」

 

 ゲームをスタートしてから役3時間が経っていた。その間ずっとレベルアップに勤しんでいた彼のレベルは言ったとおり3。早すぎず遅すぎずというところだろう。現在の時刻は16時過ぎ……ここで彼はとある確認をするため、腕を振るってステータス画面を開く。

 

 装備やスキル等の項目を見ていき……最も重要な項目がないことに気づく。

 

 「……始まってる、と考えるべきだな」

 

 ログアウト。この仮想空間から帰るための唯一の項目が存在しなかった。開始直後に確認した時には確かに存在したそれが、今現在存在しない。この時点ではサービス開始初期ということもあって不具合の可能性もある。

 

 だがしかし、彼は不具合ではなく意図的なものであるということを確信している。否、知っていた。

 

 「さて、まだ時間はあるか……残りは1時間もないが……まあ、やってやるさ」

 

 そう呟き、彼はステータスを弄るのだった。

 

 

 

 

 

 

 17時。彼の目の前に映るデジタル時計がその時刻を刺したとき、リンゴーン、リンゴーンという鐘の音が響いた後、彼は気づけばスタート地点であるはじまりの町の広場にいた。その彼が見たのは、プレイヤーであろう人、人、人。およそ1万人が集まっていることを考えても、その光景は壮観と言う他にない。

 

 やがてプレイヤーが全員集まったのだろう。光は収まり、代わりに茜色の空が血の如く赤く染まり始めた。【Warning】【System Announcement】……そう書かれた無数のポリゴン体で埋め尽くされた真っ赤な空。そのポリゴン体同士の隙間から落ちる赤いナニカ。やがて赤いナニカは1つになり……その姿を真紅のローブを纏った顔と体のない巨人へと変えた。

 

 

 

 

 『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』

 

 

 

 巨人は名乗る。自身こそがGM(ゲームマスター)であり、製作者“茅場 晶彦”だと。メインメニューからログアウトボタンが消滅しているのはゲームの不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様であると。

 

 当然、プレイヤー達からは怒りの声が上がる。ここから出せ、出してと。しかし茅場は気に留めた様子もなく、淡々と言葉を紡いでいく。

 

 『諸君は自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間の手によるナーヴギアの停止、あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

 それは、自分の意思に反して死ぬかもしれないということだ。この場にいるプレイヤーの全てが、現実世界をどうこうする事はできない。もしも何らかの拍子でナーヴギアが外れる、または家族などの第三者が外そうとしてしまえばその時点で死んでしまうのだ。そのような絶望を与えてなお、茅場は絶望の言葉を重ねる。

 

 『残念ながら、現時点でプレイヤーの家族友人等が警告を無視し、ナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり……その結果、213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

 その言葉が真実であると告げるように、巨人の近くに現実世界の情報を写すモニターが現れる。嘘だ、ありえない。そう言っていたプレイヤー達も声をなくし、ただただ絶望に嘆くものも現れ始めた。

 

 そんな中で、彼の少年はどこ吹く風とばかりに冷静だった。ある意味で当然である。彼はこの世に生まれ出でたときから“こうなることを知っていた”のだから。しかし、それを知っていて尚、彼はこの狂気の世界にいた。

 

 そして、茅場はとどめの言葉を言い放った。

 

 『しかし、充分に留意してもらいたい。今後ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し……同時に』

 

 

 

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 

 

 

 RPGとは、初見でクリアするには時間がかかることが多い。それをセーブロードを繰り返して謎を解き、答えを見つけ、強くなり、進んでいくものだ。だが、茅場はその手段を悉(ことごと)く奪った。レベル上げや攻略の最中で誤ってHPを0にした場合、その場で死ぬ。それは現実世界と何の違いがあろうか。

 

 その後も茅場は言葉を紡いでいく。プレイヤー達が解放される条件はただ一つだけ、このゲームをクリアすること。プレイヤーの現在位置はアインクラッドの最下層、第1層である。各フロアの迷宮区を攻略しフロアボスを倒せば上の階に進め、第100層にいる最終ボスを倒せばクリアとなる。

 

 救われる道のりは、途方もなく長かった。βテスト時、1000人のプレイヤーが進めたのは第10層。フロアボスは9層のものまでしか見ていない。情報もほとんどない状態で100層クリア。プレイヤーは減っても増えることはなく、強くなっていく敵を倒していかなければならない。

 

 クリアなんてできない。大半のプレイヤー達がそう考えてしまったとき、再び茅場が声を出した。

 

『それでは最後に。諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』

 

 言われるままに、プレイヤー達はメニューを開いてストレージを確認する。彼もまたそうすると、敵がドロップした装備やポーションのほかに、今まで持っていなかったはずの“手鏡”というアイテムを見つけた。

 

 当然、彼はこのアイテムの効果も知っている。やがて手鏡を使ったのだろう。プレイヤー達が次々と青い光の中へと消えていく。しかしそれも一瞬のことで、プレイヤーはすぐに姿を現す。しかし、光に包まれたときと光が消えた時とでプレイヤーの姿が変わっていた。美男美女だったプレイヤーは中年のおじさんや太った青年へ。半分近くいた女性プレイヤーは大多数が男性へと変わる。否、本来の姿へと“戻った”。

 

 無論、それは彼も当てはまる。彼は手にした手鏡に自分の姿を写す。15という年齢に合わない180半ばの高身長。少し釣り目がちの黒の瞳。首程度の長さの赤みの強い髪。それが、彼の本来の姿だった。

 

 『諸君は今、何故と思っているだろう。何故SAO、及びナーヴギア開発者の茅場 晶彦はこんなことをしたのか、と。私の目的はすでに達せられている。この世界を創り出し、観賞するためにのみ、私はSAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 

 プレイヤー達の混乱やらショックやらを意に介さず、茅場は自らの目的を言う。それを聞いているものは、もうほとんどいないようなものだったが。

 

 『以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る……ああ、その前に諸君らにもう一つの報告と、一つの言葉を贈らせてもらおう』

 

 まだ何かあるのか。もううんざりだ。冗談はやめてくれ。そんな言葉を投げかけても、やはり彼のGMは聞き届けることはなかった。

 

 そして、ある意味で最大の絶望をプレイヤーに与えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 『ナーヴギアを外される以外で、このゲーム内で完全決着デュエルを行い、死んだプレイヤーが既に3名いる』

 

 

 

 

 

 

 瞬間、誰もが理解する。もしもこれが本当のデスゲームであるならば……システム上の仕様であるということを理解しつつも、この約1万人の中に。

 

 

 

 殺人(レッド)プレイヤー……殺人犯がいると。

 

 

 

 『これは、ゲームであっても遊びではない……気をつけたまえ諸君』

 

 恐怖、混乱の絶頂とも言えるプレイヤー達にはその言葉は聞こえていない。いつの間にか消えていた巨人など思考の隅に追いやり、混乱した思考のままにプレイヤーは広場から姿を消す。残ったのは呆然として動かないもの、恐怖から動けないもの、狂ったかのように俯いて微動だにしないものと様々だ。

 

 しかし、そのどれにも属さないものが1人。

 

 「さて、あすみん探すか。どこにいるのやら……あ、プレイヤー名知ってんだからメッセージ送ればいいか」

 

 少年はメニューを開き、同級生である少女、明日奈へとメッセージを送る。宛先であるプレイヤー名は、彼女のリアルネームであるAsuna。そして、その送り主の名は……。

 

 

 

 「んじゃま、頑張って生き残って明日奈の奴を現実に帰す努力をしようか……ALOなんて面倒なもん挟まずに、な」

 

 

 

 Red(レッド)……そう綴られていた。




いかがでしたでしょうか?

アニメも何も見てないので他の作者様の二次小説ちとWikiのみが便りでしたが^^;
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