今回は魔法の違いにビックリなキアラン。
そしてギーシュとの戦いです。
今日、キアランはルイズに頼んで授業に出させてもらった。ハルケギニア大陸の魔法が気になったからだ。
教室に入って席に座る。そして教師が使い魔に関して話してたのが間違いだった。おかげでルイズは機嫌を悪くしたのだ。
キアランは分からない。なぜ他の生徒はルイズを馬鹿にするのか。なぜ、『ゼロ』と呼ぶのか。しかし、それが分かるのこの授業中であった。
「それでは錬金の魔法を見せます」
教師であるシュヴルーズが錬金の魔法を使用しただの石を真鍮に変化させる。これには驚いた。
シーベーグが見たら本当に驚くだろう。ハルケギニアでは錬金を成功させているらしいのだ。
魔法は4系統が基本となっている。火、水、土、風の4つ。そして今は失われた虚無という属性があるらしい。
まるで瘴気ストリームを通る時の属性と同じだ。虚無と?属性が同じかは分からないが関連性はあるかもしれない。
(でもケアルやクリア、レイズと言った癒す魔法は無いんだ)
大陸が違えば魔法の種類も違うことを実感する。今度、こちらの魔法をいくつか見てみたいと思うのであった。
「ねえルイズ。先生がトライアングルとか言ってたけど・・それって何?」
「アンタって本当に何も知らないのね」
メイジにはランクのようなものがあり、下からドット、ライン、トライアングル、スクウェア。
系統を複数乗せることで強力な魔法を使えるというのだ。1乗でドット、2乗でライン、3乗でトライアングル、4乗でスクウェア。中でもスクウェアに到達するメイジはそうそういない。
さらに複数の系統を組み合わせることで、初めて使える魔法も存在するらしい。
「へえ。マジックパイルみたいなものなんだね」
マジックパイルはやろうと思えば誰でもできる。ならばキアランは最低でもトライアングルかもしれない。それに頑張れば4乗できるのでスクウェアでもある可能性もある。
ここに来てから自分の持ち物を確認したがリングやアクセサリー、アイテムはいくつか持っている。剣と盾が無いのが惜しい。
もし、ルイズを護衛するならリングを使って戦うしかない。長い旅をしてきたおかげでマジックアイテムは揃えてある。
補足だが、ル・ジェたちと取り合いになったのは言うまでもない。今では良い思い出だ。
(魔石もあるからリングと組み合わせることもできる。それにしても魔法メインの攻撃はシーベーグの役目なんだけどなあ)
「ねえマジックパイルって何よ?」
「マジックパイルってのは・・・」
ここでマジックパイルを説明しようとしたがシュブルーズがルイズを指名してきた。錬金の魔法を実践してみろとのことだ。
その瞬間、周囲の生徒たちが青ざめた顔している。全員がルイズの魔法を止めた方が良いと言うのだ。
それでもルイズは止まらず、錬金の魔法を使用する。
「ちょっとキアラン。机の下に隠れた方が良いわよ」
「それってどういう・・・」
ここでドカーン!!
眩い光とともに爆発が起きた。いきなりの爆発でキアランは成す術なく吹き飛ぶ。関係無いが、錬金と爆発の組み合わせはシーベーグの怪しい実験を思い出す。
シーベーグの実家は錬金術だ。いつも怪しい実験しては爆発して周囲に何かを及ぼす。変な煙が出て木を一瞬で枯らしたこともあった。シーベーグ曰く、「失敗ではなくて成功への過程に過ぎない」らしい。
「な、何があったんだ?」
仰向けに倒れながら呟くと他の生徒がギャイギャイ騒いでいる。
「だ、だから言ったのよ!!」
「ちょっと失敗したみたいね」
ルイズはハンカチで頬についた煤をふき取る。この状況をちょっとの失敗と言う彼女はシーベーグと気が合うかもしれない。
「どこがちょっとだよ!!」
「今まで成功率ゼロじゃないか!!」
「ゼロのルイズ!!」
これでは授業を行うのは不可能である。ここでお開きだ。
この後どうなるか分からなかったがお咎め無し。しかし教室の片付けはさせられるのであった。
特に会話も無く黙々と汚れた教室内を掃除を続けるキアランとルイズ。
彼女が『ゼロ』と呼ばれる理由は魔法の成功確率がゼロだから。不名誉な二つ名で『ゼロ』のルイズ。
「これで分かったでしょ。私がゼロって呼ばれている理由。どんな魔法を使っても、あんなふうに爆発しちゃうの」
「・・・・・・・・」
「何黙ってんのよ。笑うなら笑いなさいよ」
「・・・・・・・・」
キアランは笑わずに教室の掃除を続ける。ルイズは自分の不名誉を語る。
「・・・ルイズ」
「な、何よ」
ついに馬鹿にされるかとルイズは覚悟する。使い魔にまで馬鹿にされるのはとても嫌だ。
でも魔法が使えないのは事実であり、馬鹿にされても否定はできない。拳をぎゅっと握る。
「ルイズはゼロなんかじゃないよ」
「・・・え?」
「だってボクを召喚したじゃないか。魔法成功率ゼロならボクは今ここに居ないよ」
魔法の成功確率がゼロならキアランはルイズの使い魔になっていない。今頃ティパの村に帰っていたはずだ。
「ルイズ。君が魔法を成功させた事実がボクだよ。それにとても努力をしているのは知っている。そんな君を笑うことはできないよ」
「キアラン・・・」
「さ、早く片付けて昼食しよう。ボクはお腹が空いたよ」
「・・・・・・あ、ありがと」
ルイズはポタリと涙を流す。悔しい涙じゃなくて嬉しい涙だ。初めて自分を笑わない人。自分の努力を認めてくれた人。
彼女はキアランに見せないように泣いた。キアランも見ないように背を向ける。そして優しい言葉をかけるのであった。
「大丈夫。魔法は使えるよ」
「うん・・・うん」
ルイズは溜め込んでいた悲しみを全て出し切った。相手が平民で使い魔でも関係無い。自分のことを認めてくれた人だから。
・・・・・・・・・
昼休み。
ルイズは外のテーブルに座って紅茶を飲んでいた。そしてクックベリーパイを一口。キアランが厨房に頼んで持ってきてくれたのだ。
好きな物を食べるというのは良いことだ。泣いた後には甘い物が良い。
(キアランは笑わなかった。私の努力を始めて認めてくれた人・・・)
ルイズがキアランに感謝している一方で、件のキアランは給仕の手伝いをしていた。実は学園で知り合ったシエスタというメイドにはお世話になったから恩を返そうと給仕を手伝っているのだ。
そして何故か決闘をするというわけの分からない状況に陥っていた。理由を応えるならばシエスタがギーシュの香水を拾ったことから話は始まる。
彼女は親切心からの行動を取ったまでの話である。しかし、その香水が事件のキッカケであったのだ。
その香水のせいでギーシュの二股がバレてしまったのだ。悪いのはもちろんギーシュだ。バレたくなかったらちゃんと自分で管理しろとの話である。
「も、申し訳ございませんでした!!」
シエスタは悪くないのだが彼女の性格上、逸早く謝る。それもマズかった。ギーシュはつい彼女に自分のどうしようもない不甲斐無さを怒りに変えてあたってしまったのだ。
ギーシュ自身も本心では無いが、この状況を収めるために怒りをぶつけて終わりにするつもりだった。
「ちょっと待った」
でもここでキアランが介入するので、さらに話はややこしくなる。キアランは争いを止めるためにシエスタとギーシュの間に入る。
「落ち着いて。ここで争っても意味は無いよ。穏便に済まそう」
これで終わりにすれば良かったのだが止めたのが平民だと格好が付かない。そんな理由でギーシュはキアランに狙いを定める。
「平民には分からないかもしれないが、貴族の問題にイチイチ介入しないでほしいね」
「でも二股していた方が悪いよ。早く謝った方が良いよ」
「そうだそうだ」と周りの生徒も笑いながら賛同する。これには恥を掻いたと顔を真っ赤にするギーシュ。ここで「貴族に対するマナーを教えてやろう」と決闘を言い出したのだ。
しかし決闘をする意味は無いと返事をする。シエスタもホッと息を吐く。自分のためにキアランが場を収めようとしてくれるのはとても助かったし、嬉しい。だが、そのせいで貴族と決闘させてしまうのは嫌なのだ。
「ふん。決闘を受けないなら最初から介入なんてしないでほしいな・・・って君は確かルイズの使い魔じゃないないか」
「そうだけど」
「ルイズは何をやっているんだ。使い魔の躾すらできていないのか。魔法もゼロ、躾もゼロ。やはり落ちこぼれじゃないか」
今の言葉だけは見過ごせない。
「それは関係無いよ」
「何?」
「ルイズは落ちこぼれなんかじゃないって言っているんだ。訂正してほしい」
ルイズは落ちこぼれでは無く、努力家だ。誰よりも努力している。
「分かった。決闘を受けるよ。ボクが勝ったら訂正してほしい。それにシエスタたちにも謝ってね」
「良いだろう。ヴェストリア広場で決闘だ」
このような経緯があって決闘をすることになったのだ。
キアランは手持ちにあるアイテムを確認する。アクセサリや魔法のリングもある。これだけあれば戦えるだろう。
(でも剣と盾が無いのが惜しい)
キアランは魔法も剣の腕も一流である。どっちが得意かと言われれば剣の腕と応えるだろう。
指にブリザドリングを嵌めてヴェストリア広場に向う。その時に後ろから大きな声を掛けられる。声の主はルイズであった。
「あんた何やってるのよ!?」
「決闘かな」
「決闘かな・・・じゃないわよ!!」
ルイズは決闘するのを止めるように促す。平民は貴族には絶対に勝てない。それがハルケギニア大陸での理である。
同じくシエスタも決闘を止めるように言ってくる。キアランがギーシュから守ってくれたのはとても嬉しかった。でもこのままではキアランが殺されてしまうと思って必死になっているのだ。
「ボクは大丈夫だよ」
笑顔で答える。でも大丈夫と言われてもルイズとシエスタは不安でしかない。
キアランは決闘を取り止めない。温の民でもルイズの努力を馬鹿されて黙っているつもりはなかった。
・・・・・・・・・
キアランはギーシュの前に立つ。これから決闘が始まるのだ。周りには観客という名の野次馬が集まっている。
「逃げずに来たのは褒めようじゃないか平民君」
薔薇の杖を優雅に持ってポーズを取る。
「僕は青銅のギーシュだ」
「ボクはキアラン」
貴族だから魔法を使わせてもらうと言う。それに関しては構わない。決闘なのだから自分の力を出し惜しみする気は無いからだ。
薔薇の花びらを1枚散らすと青銅のゴーレムが出現する。名前はワルキューレ。ギーシュ自慢のゴーレムだ。
「これがゴーレム・・・」
「驚いたかい?」
確かに驚いた。魔法で簡単にゴーレムを練成したのだから。そしてちょっと拍子抜けした。
ゴーレムと言われればヴェオ・ル水門のゴーレムを思い浮かべるからだ。あのゴーレムは大きく強かった。
レーザーにロケットパンチ。とんでもなく苦しめられた記憶がある。
(まさかワルキューレと言うゴーレムもレーザーを出すのかな?)
ギーシュのワルキューレはレーザーを発しない。簡単な動きをするゴーレムである。
「ゆけワルキューレ!!」
ガチャガチャとワルキューレがキアランに迫り殴りかかってくる。盾を持っていれば防いでいたが今は持っていない。殴りかかってくる腕を見切って避ける。
余裕そうな声で「よくぞ避けた」と聞こえてくる。次の命令も単純に殴打だけである。相手の動きを冷静に見て避け続ける。
それが何度も続けばさすがのギーシュも焦り始める。圧倒して遊ぶつもりだったのに予想と反している結果となっているのだ。
(なぜ当たらない・・・!?)
(どうやらあのゴーレムは単純な動きしかできないみたいだ。それに警戒していたレーザーも発しない。ならそろそろ反撃だ!!)
キアランとギーシュの戦いはもう少し続く。
一方、彼らの戦いを見る者たちはいろいろと楽しんで驚いていた。驚いているのはキアランに対してだ。平民のくせによく避けているからだ。
「へえ、けっこうやるじゃない彼」
「・・・彼は強い。動きが素人じゃない」
青髪が目立つタバサがボソリと呟く。
「そうなのタバサ?」
コクリと頷く。タバサは顔を崩していないがキアランに対して驚いていた。あの動きは一朝一夕で身に付くものではない。
何度も修羅場を潜り抜けた者のみが身に付けられる動きなのだ。あまり他人に興味を抱かないタバサも少しは気になった。
「ねえルイズ。キアランは何者なの?」
「え、えっと。ティパの村の出身で農家って言ってたけど」
それだけ聞けば平民と思われるのは仕方ない。ハルケギニアに住む者なら絶対にそう思うだろう。
しかし、キアランの動きを見たタバサはそうは思えない。他に彼が何か言ってなかったかルイズに聞く。
「他にか。そういえばクリスタル・キャラバンに所属しているって言っていたわ」
「クリスタル・キャラバン?」
聞いたことも無い言葉に首を傾ける。
「何それ?」
「さあ・・・私も分からないわ」
分からないのなら今度詳しく聞いてみようと思うのであった。
タバサはクリスタル・キャラバンを特別な部隊だと予想した。メイジ殺しと呼ばれる存在がいる。まさかと思いながらクリスタル・キャラバンはそのような者が集まりだとさらに予想する。
しかし実際はタバサが思う物騒なものとは違う。
「く、なぜ当たらない!?」
「今度はこっちからいくよ!!」
ブリザドリングを使用して詠唱を唱える。その姿を見た瞬間に周りの生徒の声が止まる。
「ブリザド!!」
カキィン・・とワルキューレが凍り、キアランがトドメと蹴り飛ばしてコナゴナした。
「な、なな・・・君はメイジだったのかい!?」
「いや、ボクはクリスタル・キャラバンだよ」
ギーシュを含めて周りの生徒は驚く。平民だとばかり思っていたのにメイジだったからだ。それも実際は違う。
さらに驚いたのはブリザドという氷の魔法だ。ハルケギニアでは氷の魔法を使うにはトライアングルのランクは必要だ。なればキアランはトライアングルと勝手に思われたのだ。
ドットであるギーシュはさらに焦る。まさか格上だっとは思わなかったのだから。
「く、くそお!」
それでも負けじと6枚の薔薇の花びらを散らして6体のワルキューレを練成する。しかし全てブリザドによって凍らされるのであった。
この状況だとどちらが勝者か一目瞭然であった。
「ま、参った・・・」
「じゃあ約束は守ってね」
キアランの勝利で決闘は終了した。
読んでくれてありがとうございます。
キアランは剣がないのでブリザドリングを使用しました。
ガンダールヴに力は発揮されませんでしたね。また今度です。
ギーシュは嫌いなキャラじゃないんだけど、キアランの見せ場を作るために仕方なし。
ではまた次回!!