天災?いいえ、間に合ってます。   作:104度

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お待たせしました。
やはり色々と忙しいのですが、自分の好物である日常系を書くことが難しいですね。
つまらなくならないよう、かつ派手すぎないようにしないと。


本文よりも後書きのやり取りの方が書きやすいのは何故だろうか。
今回若干無理矢理感がある。


教師の休みは短いんだよ

 

 IS学園に戻った次の日。つまりは束たちと映画を観た翌日。僕は職員室で千冬の書いたメモを眺めていた。

 そのメモには、千冬が寮長をしている寮の一年生からの様々な要望が箇条書きで記されている。

 

 何々……セシリアちゃんから、空調が壊れたから直して欲しいと。なるほど。

 こういうのは本来、専門の業者に頼んで直してもらうんだろうけど……生憎ゴールデンウィーク中は、学園がいつも依頼している所は休みみたいだ。

 セシリアちゃんは早めに修理して欲しいらしいし、どうしよう。道具や工具があるなら僕が直しに行こうかな。

 

 えー、次は本音ちゃんからで……売店で売られているお菓子のレパートリーを増やして欲しい、か。なんともお菓子好きなあの娘らしいね。僕もお菓子が大好きだから気持ちはわかるけど、これは流石に申請しても通らないだろうな。

 代わりと言ってはなんだけど、何か甘いものを作ってあげよう。それで満足してくれれば嬉しいけども。

 

 さて、次は…………男子の大浴場の使用解禁。

 いや、うん、確かに部屋備え付けのバスルームにはシャワーしかないから物足りないのはわかるよ。一夏くんも湯船に浸かるのが好きだからこういう要望が来るのもわかるよ。でもさ、一夏くん以外の匿名はどういうことなのさ……。数も二桁はいるし……なんで?

 ………気にしないことにしよ。

 

「あ、空先輩、おはようございます。」

 

 職員室に入ってきた真耶が僕の隣の席に座る。

 

「何をしてるんですか?」

 

「ほら、僕って千冬がいない間の寮長代理を任されたでしょ?だから生徒からの要望を消化しようと思ってね。」

 

「あ、それならあまり気にしなくてもいいかもしれませんよ?」

 

「え?なんで?」

 

「いつもは千冬先輩がほとんどを却下してしまうので……」

 

「………なるほど、千冬ならやりそうだね。」

 

 これぐらい我慢しろ、とか、お前は学園に何を求めているんだ、とか言っている姿が頭に浮かぶ。正論といえば正論だけど、生徒たちはまだ15、6歳だから仕方ないのかもしれない。

 ……そう言う僕らも二十半ばであまり年は離れていないけども。

 

「それと、その……」

 

「うん?」

 

 頬を赤く染めた真耶が落ち着かない様子で両の人差し指を合わせてもじもじし出した。

 

「えっと……あの、今夜、いいですか?」

 

「特にすることもないから構わないけど、どうかしたの?」

 

「へっ…いや、あの、その、ま、また昔みたいにお話、したいなぁ……と…思い、まして…だめ……ですか?」

 

 真耶はそう言いながら、こてん、と首を傾かせた。束も同じようなことをしてたけど、やっぱり可愛い娘がやると絵になるよね。

 

「大丈夫だよ。僕が付き合ってあげるから、色々と吐き出すといい。」

 

「ふぇっ…?ほ、ほんとですか?」

 

「勿論だよ。真耶はいつも頑張ってるしね。」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

 

 

***

 

 

 

「ですから、もう少し待ちなさいと言っているでしょう。」

 

『……お嬢様。』

 

「何ですの?」

 

『昨日と同じことを仰っていますが。』

 

「……………。とにかく、空さんが来るまで辛抱なさい。貴女のことだから、先生のISが近づけばわかるのでしょう?」

 

 

 折角のゴールデンウィークだというのに気を抜いて優雅に過ごすことができない。日中は御主人様御主人様と五月蠅いし、夜になれば何故か興奮し出して面倒なのだ。

 

 

 ………何故かはひとまず置いておくことにしましょう。

 

 

 この駄メイド、日頃はISや勉強一般に関してあれこれと助言を与えてくれるのだが、休日となるとこうなってしまう。メイドとして色々とダメな気がするし、というかダメであり、一人の淑女としても慎みが足りないというか、なんというか……。

 

 それとその助言だが、今まで眠っていたと言う割にはあまりにも的確すぎるのだ。私の今の成績やら身体能力やら、はたまた私自身でも量ることのできない私の心理やら。極めつけには私しか知らないはずの、両親との思い出までも知っていた。正確には私の心から読み取ったと言っていた。

 

 なんでも、あのクラス代表決定戦の最中に、私が一定の練度に達したから表層に出てくることにしたらしいが…。それだとまるで、ISコアが搭乗者を選んでいるかのように聞こえてしまうけれども、実際はどうなのだろうか。ISコア全員が女性を選ぶとは考えられないものであるし。

 

 ……本当、篠ノ之博士はとんでもないものを造り出したものだ。いや、彼女か。まるで気軽に話せる、心の内を曝け出せる友達ができたみたいだ。人格も言動も人間の女の子と遜色ない、良いパートナーを手に入れることができた。空さんに感謝しなければ。

 

 

『お嬢様!御主人様がいらっしゃいましたよ!迎え入れる準備をしなさい!』

 

 

 …………まぁ、空さんのことになるとここまで図々しくなるのが玉に瑕なんですがね。何ですか、仮にも『お嬢様』である私に『しなさい!』って。メイドのくせに。

 

 

———コンコン

 

 

「今行きます。」

 

 

 

 空さんを部屋に招き入れると、手に持っていた小難しい用具を取り出してエアコンの修理を始めた。

 その間私はすることもないので、いつも飲んでいる紅茶を淹れていた。少し前までは便利なティーバッグで作った紅茶を飲んでいたのだが、このメイドが出てきてからは自分で淹れるようになった。やはりティーバッグとは違った風味が出て美味しいのだ。

 

 

 ………といっても、最初はダメダメでしたけれども。

 

 

 当初のことを思い出しては、ISに指導される私って……などと落ち込んでしまうが、結果が伴っているのでどうこう言うこともできない。より美味しくしようとして何かを付け加えようとする度に『何をなさっているのですか?爆弾でも作るおつもりで?』などと丁寧なのに辛辣な言葉を投げつけられるのだから、へこんでしまっても仕方がないと思う。変態メイドのくせに。おかげで自分の料理に関する能力が皆無なのがわかったが………それでも何か言い返したい。変態な駄メイドのくせに。

 

 

「セシリアちゃん、終わったよ。」

 

 

 余計なことを考えている間に修理はもう終わってしまったようだ。

 

 

『早く!お嬢様早く!!』

 

 

 分かった。わかったからそんなに急かさないでほしい。

 

 

「休日なのにわざわざありがとうございます。」

 

「どういたしまして。といっても、僕は今日から普通に仕事があるから実は休みじゃないんだけどね。」

 

「それでもです。紅茶を淹れましたので、良ければどうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。その娘が僕と話したがってると。」

 

「はい。」

 

 ブルーティアーズのコアが前から私にねだっていたことをようやく先生に伝えることができた。これで夜中に騒ぐことがなくなるだろう。………そういえば、この娘に名前はあるのだろうか。

 

 私のブルーティアーズを空さんに渡すと、空さんはどこかからノートパソコンとよくわからない装置を出現させた。よく見ると手に何かの器械を持っているが……ISのデータ領域からではないようだ。

 

 

 

「…これでよし、と。どう?聞こえる?」

 

『大丈夫です。そちらはどうですか?』

 

「こっちも大丈夫だよ。」

 

 空さんが話しかけているパソコンには、巷によくあるような白と黒のメイド服を来た女の子が映っていた。顔はまだ幾分か幼さが残っており、浅葱色の髪は肩先まで伸びている。体の線は全体的に細いモデル体型で、メイド服にあしらわれた可愛らしいレースが彼女の可愛さを引き立てている。私も自分のプロポーションには自信があるがなんというか…ずるい。中身はアレなのに。

 そしてその特殊な趣味も空さんの前ぐらいでは自重すると思っていたのだが

 

 

『ところで御主人様。』

 

「なんだい?」

 

『お嬢様との試合で御主人様に攻撃してしまったことへの罰をください。』

 

 そんなことはなかった。むしろ堂々としている。

 彼女は真顔で頼んでいる。

 

「そう言われても……」

 

『御主人様が気になさらなくても私が気にするのです。というか欲しいです!』

 

 真顔である。

 

「まぁ…うん……考えておくよ。」

 

『そう仰らずに今すぐにでも!』

 

 何度も言うが真顔である。

 

「じゃ、じゃあセシリアちゃん、今日は葵を預かるけどいいかな?明日返しに来るから。」

 

「ええ、構いません。…って葵?」

 

 聞き覚えの無い単語に疑問を覚える。

 

「あれ?この娘の名前、教えてもらってないの?」

 

「はい、初めて聞きましたが…」

 

『一度も尋ねられていないので。』

 

「「…………。」」

 

『どうか致しましたか?』

 

 いや、私のことを認めてくれたのなら普通は名乗るものなのではないか。名前を訊かなかった私も私であるが…。

 

「なら僕が紹介するよ。この娘は葵。しっかり者で色々とサポートしてくれるだろうから、仲良くしてあげてほしい。………他は何も言わないよ。」

 

「勿論です。その『他』に関してはそれなりに体験していますので…。」

 

『改めて宜しくお願い致します、お嬢様。では。』

 

「何かあったら相談に来てね。葵のことならなんとかできると思うから。」

 

「ありがとうございました。」

 

 

———パタン

 

 

 ………。

 久しく訪れた静寂。普段は彼女、葵とよく会話していたため、幾分か寂しく感じられる。両親が亡くなってから慣れたと思っていたのだが、そんなことはなかったようだ。

 

 

 ………明日が、待ち遠しい。

 

 

 

 

 

———ガチャ

 

 

「そうだ、セシリアちゃん。さっき言い忘れたけど、自分のISコアと会話するときは口に出さなくても伝わるからね。」

 

 

 

 遅いです。言うのが遅いです。そういうことはもっと早くに言ってほしかったです。

 

 うわぁ、恥ずかしい……ううぅぅぅぅぅぅぅ!!(ベットで悶え中)

 

 

***

 

 

 

 それから、お菓子を作りに行ったり勉強を手伝ったりIS操縦の鍛錬に付き合ったりして夜になった。葵についてはもう済んでいる。画面の向こうにいる彼女に直接触れることもできないためかなり悩んだが、結構簡単に終わった。

 デスクトップに立っている…浮いている?葵をマウスカーソルでクリックやドラッグをしたり、いつの間にか僕のPCにインストールされていたソフト(開発者 束)で様々な道具に変えたカーソルでつついたりした。もちろん何もやましいことはしていない。本人は恍惚とした笑みを浮かべていたが、僕は気にしない。気にしないったら気にしない!

 

 葵は一通り満足したようで睡眠状態、つまりはPCで言うスリープモードになっているため、静かである。

 そんな中僕は台所で軽くつまめるものを作っている。昔みたいに、というと日頃の苦労を零すようなものが多いから今回もそうじゃないかと思って、より話しやすいようにね。

 

 

「お、お邪魔します。」

 

「いらっしゃい。」

 

 おずおずと部屋に入ってくる真耶を見ると、その手には缶ビールの入ったビニール袋を持っていた。予想通りみたいで良かった。このおつまみ、真耶の口に合うかな。まぁ千冬みたいに、つまみが美味いのがいけないんだとか言ってべろんべろんになるまで飲むことはないだろうけど……。

 

 

 

 

「きぃてくらさいよせんぱぁい…」

 

「聞いてるよ。聞いてるから話してごらん。」

 

 やっぱり酔っぱらった。

 千冬と三人で飲むときはこんなに酔うことはなかったのになぁ。

 

「わらひはねぇ、いつもがんばってるんでふ!あれをけーさんしたりぃ、ちょーせーしたりぃ、じゅぎょーのこーせーかんがえたりぃ、あたまをたくさんつかってるんでふ!がんばってるんでふ!なでてくらしぁい!!」

 

 いつもの柔らかな雰囲気から想像できないほどに真耶は興奮してしまっている。

 その真耶が、私を労ってくれと言わんばかりに頭を押し付けてくる。

 

「はいはい。真耶はよく頑張ってるよ。本当に。」

 

「そうなんでしゅ!それなのにせんぱいはぁ…あれをやってくれこれをたのんだっていうんでしゅよ!!わらひらってまらやることのこってゆのにぃ!」

 

「……そんなことしてたのか。僕から千冬に言っておくから安心するといいよ。自分の仕事は自分でやらないとね。」

 

「そーでしゅそーでしゅ!もっほしぇんふぁいにいっへやっへくやしゃい!!」

 

 ぐびぐびとビールを煽りながら真耶は捲し立てあげるが、段々と呂律が回らなくなってきている。というか最後なんて何が言いたかったのかわからなかった。酔いの程度で言うと酩酊あたりだろうか。そろそろ止めた方が良い。

 

「僕がなんとかするから、真耶はもう寝た方がいいよ。」

 

「うゅぅぅぅ………しょーしましゅ。」

 

 ここから真耶の部屋まで歩かせるのはきついだろうから、一夏くんのベットで寝てもらおう。酔っていた間の記憶が飛んでいれば明日の朝は混乱するだろうけどね。

 ふらつく真耶を支えながらベットまで行き、気分が悪くならないようにゆっくりと横たわらせると、間もなく寝息をたてて寝付いてしまった。

 

 

 ふぅ。あとは片づけをして僕も寝るとしよう。また明日も仕事があるし。

 

 





「う、うぅーん……」
「お、ようやく起きたね」
「ふぇえ……?」
「朝ご飯はもうできてるから着替えてきなよ」
「うん………?」
「今回はとびっきり美味しく出来たからね、楽しみにしておくといいよ」
「……へ?そ、空先輩、どうしてここに…?」
「どうしてって言われても、ここは僕たちの家だからとしか言いようがないなぁ」
「へっ…へっ!?」
「それよりも早く顔を洗ってきなよ。ご飯冷めちゃうよ?」
「わ、わかりました、空先輩。」
「……もう。癖が抜けきれないのはわかるけど、敬語とかは使わないって約束したじゃん」
「え…な、何でですか?」
「いや、僕たち結婚してるし。」
「は………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「いやいや、なんで叫ぶのさ。今日の真耶ちょっとおかしいよ?」
「ほ、本当に!?」
「だからそうだって…ってなんで泣いてるの!?」
「いえ、その、嬉しくて……空さん、大好きですっ!」
「なんだかよくわからないけど……僕もだよ、真耶」



「えへへへ~………はっ!…………夢ですか」
「お、ようやく起きたね。ご飯できてるから着替えてきなよ」
「………え?」
「…どうかした?」
「(こ、この流れはまさか……正夢!?)」
「僕はやることあるから行ってくるけど、真耶は十分休んでね」
「(ですよねぇ!おかしいと思ってましたもん!部屋は寮のものだし!何期待しちゃってたの私!!)」
「そうそう、食器とかは洗わなくていいけど、水につけておいてね。あと、気分が優れないようだったらここにいていいから。それじゃ行って来るよ」
「………行ってらっしゃい。それと、大好きです」ボソッ
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