話を考えるというか妄想するのは楽しいんだよ。
でもね。
文字に起こすことがこんなにも面倒だとは思ってもみなかったよ。
………時間軸、若干飛ばそうかな?
さて、思ったよりもはるかに軽く篠ノ之家に受け入れられちゃった星野 空だ。
この家に来てからもう一週間ぐらいが経った。
一週間も経つとこの家での勝手や、束の家族の優しさだとか愛情だとかがはっきりわかるようになってきた。
では、ここで一度篠ノ之家の人たちを紹介しよう。
まず、一家の大黒柱である篠ノ之
「束に初めて男友達ができたぞ!」と目頭を押さえながら僕の受け入れを快諾してくれた人だ。
彼は剣術道場を開いていて、老若男女の様々な門下生たちにたった一人で稽古をつけている。
その剣の腕は日本だけでなく、世界でも随一だと言われているらしい。
………貴方、結構人外染みてますよ。
次は柳韻さんの妻、篠ノ之
娘たちのように若々しくてほんわかしている。
彼女は篠ノ之神社の神主をしていて、正月だとか受験戦争の時期になるとかなり忙しくなるらしい。
なんでも、篠ノ之神社での祈願はかなりの割合のものが叶うというのだ。
これは彼女自身の豪運が影響しているのではないかと僕は思っている。
じゃんけんでは必ずと言っていいほどの確率で勝ち、一週間で福引の一等賞を二回当て、靴紐を結ぶために立ち止まることで交通事故を回避する。
………貴女もおかしいって。
最後に、篠ノ之 箒ちゃん。
束の妹でまだ小学1年生だ。束と違って茶色がかった黒髪でまさに大和撫子という感じだった。将来は美人になると思われる。というか家族全員そう思っている。
あと、最近気になる男の子ができたらしい。
そのためか、たびたび和音さんに料理を教わっているところを目撃する。
………健気で良い子過ぎる。束が溺愛するのもわかるよ。
ちなみに。
今は初めて会ったときよりもかなり僕への態度が柔らかくなった。
いつの間にか「兄さん」と呼ばれてたことには驚いたよ。
束は若干暴走気味だったけど。「箒ちゃんが空に取られるぅぅぁぁぁぁぁ!!!」って叫んでた。
束も一応紹介した方がいいかな?
彼女は中学三年生で、もうすぐ高校生となるようだ。
学校ではいつもPCを弄っているみたいで問題児扱いされているのだとか。
友達は幼い頃からの付き合いがある『織斑 千冬』という女の子の一人のみ。そして僕が友達二号という訳だ。そりゃあ柳韻さんも泣くよ……
そして今、僕は束と箒ちゃんと一緒に柳韻さんの道場に来ている。
束の言っていた『織斑 千冬』とその弟の『織斑 一夏』に会うためだ。
……というか新しい発明品の構想を練っているときに束が来て、無理矢理引っ張って来られただけなんだけどさ。
束
……怖いよ。目からハイライトが消えてるよ。ホントに誰かを呪殺できちゃうよ。僕オカルトの方面はからっきしなんだよ。ほら、箒ちゃんが怯えたような顔をして僕の服を掴んでるから。今にも泣きだしそうになってるから。だから、ね?落ち着こう?
束を静めるのに10分。箒ちゃんは一人で先に剣道の練習をしに行った。
おお…人が多い。ざっと数えて20人は居そうかな。
あんなに小さい子までやってるのか。……っておおい!なんで全員を一人で相手にしてるの柳韻さん!?…え?これっていつもの光景なの?
その中でもあの柳韻さんに肉薄し続ける人が一人いる。
遠目で見た感じまだまだ若そうだけど……
「あ、ちーちゃん!」
「え?束が言ってたあの?」
「うん。ちーちゃんはね、たった一人の肉親になっちゃったいっくんを守るために、バイトの合間にここに来て練習していくんだよ。」
「…………強いね。」
———————バシィィィ!!
竹刀で体を叩く強烈な音が響いた。
どうやら柳韻さんの勝ちという形で勝負がついたようだ。
余程疲れたのか、彼女は下を向き、その場に座り込んでしまったまま動かない。
そこに僕らは近づいていく。
「やっほー、ちーちゃん。随分と強くなったね。あのお父さんとあれだけ張り合えるなんてさ。」
「いいや、まだまだだ。あの人に体力で追いつける気がしない。それにあの剣捌き、まだまだ見習えるところがある。つまり私はまだ、上を目指せる。」
「それも全部いっくんを守るために?」
ふいっと、彼女は顔を上げた。
…美人だ。
「ああ、そうだ。……ん?ところで、お前の隣に居るのは誰だ?お前に友達などいないものだと思っていたのだが。」
「えぇー!?ちーちゃん流石にそれはひどいよ!!私だって友達作れるんだよ!!」
「いつも学校でクラスメイトを邪険にする奴の言葉とは思えないな。」
「そ、それはあいつらが……」
「どちらにせよ同じことだろう?」
「う、うぅ~~~!!そ、そんなことはいいんだよ!!はい、空!自己紹介!!」
「はいはい。…えーっと、僕は星野 空です。貴女の話は束から常々伺っています。お互い仲良くしていきましょう。」
「ああ、私は織斑 千冬だ。こちらこそよろしく頼む。……ところで束、お前なにか変なことを吹き込んでいないよな?」
「いや、特に変なことは話してないですよ。貴女がかなりの努力家で、弟の為に身を粉にして働いて、守るための力をつけようと自分の身体を虐め続けていて。そのような、非常に強い人だと聞いています。」
「………よく、本人を目の前にして褒められるな。恥ずかしくないのか?」
「いえ。そもそも恥ずかしいとはどういう感覚の事を指すのかすら僕は知りませんから。」
「……まあいい。で、この男を連れてきたことには理由があるのだろう、束?」
「うん、そうなんだけど………とりあえずお風呂に入らない?ちーちゃん、汗だくだよ?」
「なっ……す、すまない、すぐに洗って来る。」
そう言うと千冬は風呂があるだろう方向へ走っていった。
***
私が湯浴みを終えてから、今は篠ノ之神社に来ている。
束によれば、あまり他人には聞かせたくない話らしい。
ただ、一夏は連れてこいと言われたが。
「そんな馬鹿な話があるか」「ありえない」
束の話を聞いて第一に思ったことだ。
この世界とはまた違う世界から来た?
あの束をも凌駕する頭脳を持つ?
………とてもじゃないが信じられない。
そんな私に彼はある道具を見せてきた。
なんとそれは、様々なものを量子化して保存できるという。
それを用いて私の目の前で、地面に落ちていた小石を消し、彼の手のひらの上に出現させた。
信じざるを得ない。
……………だが、それがどうした?
彼とは全く無関係な私に、何故、束は会わせた?
それに対する答えは、単純だった。
「ちーちゃんも友達がいないとつまらないでしょ?それに、空なら私達を受け入れてくれるんだ。ちーちゃんも、少しは気が軽くなるかもよ?」
私を想ってのことだったのだ。
いつもは場を茶化すことばかりするあいつが。
…………ただ、嬉しかった。
それからは、彼について話をした。
彼は本当に束より頭が切れ、かの有名な国民的アニメ、『ドラえもん』の道具を作り尽くしたのだという。
非常に驚きだ。
…………まぁ、生まれてから束に会うまでに、家から出たことがない(引っ越しを除く)ということの方が印象が強かったがな。
それに、彼と一緒にいると不思議な気分になる。
会ってから数時間も経っていないというのに、一緒に居たいと感じてしまうのだ。
学校の男子共のような媚びへつらう態度ではなく、周りの大人のように過度な期待を寄せることもなく、ただの一人の女の子として私を、私自身を見てくれている。
たとえ、私の能力を知ったとしてもこの姿勢は変わらないだろう。
………これはあくまで私の勘だ。あてにはならない。
だが、私の勘はよく当たるのだ。
今回もいつも通り、この勘を信じようではないか。
まずは敬語をやめさせて、それから…名前で呼ばせよう。そして、私も空と呼ぶことにしよう。
あとは……………恥ずかしいが、親がいない分甘えさせて貰うとしようじゃないか。
勿論、誰にも見られないようにな。
***
千冬、一夏くんと出会ってからひと月が経った。
一夏くんは他人と打ち解けあうことが上手なようで、僕ともすぐに仲良くなった。
今では「
千冬は一夏くんを養うために働いているので非常に忙しい。
そのため、一夏くんが家事を満遍なくやっており、僕はよくその手伝いに行っている。
おかげで僕の料理の腕は上がるばかり。………一夏くんのおかげだけど。
なんでも一夏くんによると、「空兄がうちに来ると、千冬姉が嬉しそうにするんだ。だから暇な時はうちに来なよ!」とのこと。
なんでかはわからいけど、千冬の気分が良くなるのならそれでいいや。
ただ、千冬の家に行く度に束の機嫌が悪くなるからなぁ………どうしろと。
ちなみに今は受験期真っ只中だ。
あの二人は、学費が安いが合格するのが非常に難しいとされている藍越学園を受けるようだ。
僕はどうするのかって?二人を見送るだけだよ。
そのことを聞いた二人は物凄く残念そうにしてたけど。千冬なんて珍しく感情を全て表情で表したような顔をしてたし。
「だから、僕は学校には行かないって。」
「その言葉はもう聞き飽きたぞ。」
「いや、飽く飽かないの話じゃなくてね…」
「いいもんいいもん!!だったら私が無理矢理受けさせるもん!!逃げられると思わないでねっ!!」
…………後日、藍越学園の受験票が届いた。
入試当日には篠ノ之家全員に束、千冬ともども見送られた。
逃げようとするたびに二人が両腕を掴んでくるから逃げられないし、わざと落ちようと考えていると千冬が指をポキポキ鳴らしながら黒い笑顔で迫ってくる。
……………はぁ。
……まぁ、いっか。
………………友達、できるかなぁ。
次回は学校風景が半分くらいになるかなと思います。
やらないといけないことが沢山あるので………(´;ω;`)