『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』   作:fuki

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3.凍土・エリア3
● “名誉ハンター”じゃありません / I am not an honorary HUNTER


 “エリア1”を、ティガレックスが目撃された西方向へと抜ける山道に入る。道の南側は“エリア1”から続く隆起した針葉樹林地帯だが、北側は三〇メートルくらいの切り立った崖で太陽などまったく見える気配がない。

「熱心だなあ。それ、さっきの狩りのことか?」

「ええ」

 マーキさんが問うたとおり、あたしがメモ帳に書いているのは、ガウシカを討伐した状況、位置関係、経緯、心理状態などのメモだ。エリア間の移動中は割りと時間が空くので、ジュンさんに教わった速記を使って忘れてしまわないうちに記録するのだ。

 もちろんあとでちゃんと清書するし、

「君の小説、ほんのちょこっと読んだけど、“モンスター”の描写とか割りとクドいよな。将来、古生物書士隊にでも転職するのか?」

「しませんよ、あたしは“モンスターハンター”一筋です!」

「“名誉モンスターハンター”?」

「違いますって! てか最後まで読んでくださいよう!」

「いやあ、かったるくってさあ、美少女ハンターの挿絵もないし。なあ?」

「“美少女ハンター”って言わないでください! あのタイトルはあたしがつけたんじゃないです!」

「えー? “美少女ハンター(笑)”?」

「うおおおおてめええええ!!」

「マーキ、つまらないことで突っかかってないで」

「ちょ! つまらないことってなんですかバニィさん!」

「え? ああ違うよ、ちゃんと集中しろってことで、君の小説がつまらないって言ったわけじゃ――」

「――なになに、お坊ちゃんハンターは名誉ハンターの肩を持つのか。金持ち同士仲いいねえ」

「マーキ!」

「あたしお金持ちじゃありません!」

「いい加減にしろお前ら」

 ジュンさんが小声であたしたちを制す。

「エリも文句を言われたくなければ、改善するところは改善しろ。小説も“名誉ハンター”もな」

 あたしはぶすっと口を膨らませる。

 でもそれは不満というより、“名誉モンスターハンター”のレッテルが図星で、それを認めたくないからなんだ。

 あたしがギルドから授与された勲章は、ジュンさんに提出したあたしの報告書――という名の『ボルボロス捕獲譚』が、回りまわって『月刊 狩りに生きる』の編集部に行き着き、連載されちゃったことに起因する。

 それだけでも天にも昇る気持ちだったのに、『美少女ハンター泥まみれで頑張ります!』なんて三〇年くらい前のピンク小説みたいな別名をつけられた捕獲譚は、あろうことかチビッ子諸君に人気が出ちゃったのだ。まあ元々小説を書く“ハンター”自体ほとんどいなくて、文章を読めるくらいの子供がエンタテイメントに飢えていたこともあるらしいんだけどね。

 その結果、ハンター見習い志望者の人数がここ数年ないくらいに増えてしまい、その事情を小耳に挟んだハンターズギルドが、あたしを“上位ハンター”に昇格できるだけのギルドポイントを、勲章という形で授与してきたのだった。

 つまり“名誉上位ハンター”。本来はまだ“下位ハンター”の中堅の間辺りが妥当なのかな?

 そういう意味では、このティガレックス調査討伐クエストは、初めての飛竜種討伐チャンスであると同時に、あたしの“モンスターハンター”としての能力を周囲に納得させるチャンスでもある。

 失敗なんてできないのだ。

 ……こういうこと書いちゃうから、ジュンさんに『鬱屈した心理描写を~』って言われるんだよね。うん。

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