『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』   作:fuki

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1.凍土・ベースキャンプ
● 支給品が減りました / the first day of the third week


「はい、これが今回の支給品ニャ」

 手渡された目録には、向こう四日間分の食料、着替え、防寒用具、その他の備品がずらずらと書かれている。ざっと目を通したあたしは、その実物を運んできた荷車を見て頷いた。

「ありがと。食料が一食分早くなくなっちゃって、どうしようかと思ってたんだ」

「そんなのボクの知ったことじゃないけど、お礼を言われるのはヤブサカじゃないニャ」

 妙な語尾と共に胸をそらせたのは、アイルーと呼ばれる獣人の一種で、直立ではないものの二足歩行に進化したネコの一系統だ――けど、このお話じゃ出番はないと思うし、みんな知ってると思うから割愛します。

「じゃあ待ってて。納品のチェックするから」

「うんにゃ、ボクはもう帰るニャ。寒さはネコの天敵なのニャ~」

「え? ちょ――」

 と言うが早いか、アイルーはぶるりと身を震わせると、いそいそと針葉樹林の間を延びる小道を走り去ってしまった。

「えー。前はそんなこと言ってなかったじゃない」

 違うアイルーだったのかな?

 荷を引いてきたガーグァ――飛行能力を失った鳥類である“丸鳥”――はそんな事情なんて知らない顔で、積もった雪にくちばしを突っ込んで土をはんでいる。放っておいたら荷をひいたままどこかに行っちゃうんじゃないの?

 と、目録を手におろおろしていると、雪を踏む音が近付いてくるのが聞こえた。そして、

「おお、エリちゃん! メシ届いた!?」

 背負ったバックパックを放り投げて、マーキ・パラオさんが雪を蹴立てて走ってきた。

 角ばった輪郭と濃い顎ヒゲをたくわえた顔に、滑らかに光を反射する鱗を繋ぎ合わせた、まるで潜水服のような鎧でぴっちりと線の出た全身が、何度見てもミスマッチで笑いそうになる。

「お昼はまだですよ。てか、食料を獲りに行ったんじゃないんですか?」

「いやあ、それが、サシミウオがあんまりに美味そうでさあ。やっぱ魚は釣りたてが一番じゃん?」

 食べたのか。

 てか釣りしてたってことは、ベースキャンプのすぐそばにいたってことじゃん!

「もう、食料を獲りに行くはめになったのも、マーキさんが一人で二食分食べちゃったからじゃないですかあ」

「いやあ、腹減っちゃってさあ」

 あたしが頬を膨らませるも、彼は褒められたと思ったのかなんなのか、照れ笑いを浮かべている。あんまりにも悪気がなさそうなので、怒ってるこちらが狭量なんじゃないかと勘違いしてしまうくらいだ。

 更に彼は今回の狩りのキーマンでもあるので、どっちにしたって強く言えないあたしなのだ。

「で、あれ、アイルーは? もう帰っちゃったのか? モフモフしようと思ったのに」

「寒いところは苦手って言ってましたよ。納品物のチェックもしないで」

「完全にウソじゃねえか。いつだってオレらを監視してるクセに」

 などと片手をワキワキさせつつもマーキさんは目録に目を通し――眉を寄せた。

「応急薬の支給量が減りやがった。ホットドリンクもだ。砥石に至ってはゼロ。なーるほど、責められたら面倒だからさっさと帰ったんだな、アイルーのヤツ」

「え、どういうことです? 減ってる?」

 あたしの疑問に、マーキさんは手のひらを空へ向け、肩を竦めた。

「ティガがここにいる可能性は低いって、ギルドは考えたってんだろ」

「ええー!? そんなあ!」

 あたしは開けっぴろげに大声を上げたが、マーキさんは黙々と目録にチェックを入れると、荷車にそれを括りつけ、

「ほれ、持って帰れ!」

 とガーグァのまるまるしたお尻を蹴り上げた。

「ちょ、ちょっと!」

 ガーグァは痛そうな鳴き声をあげて、大きな身体を揺らしたものの、大人しく空の荷車を引いて小道を走り去ってしまった。

「……もうちょっと優しくしましょうよ」

「いいのいいの。ほら」

「え? あ……」

 ガーグァが立ち去った轍の間に、大きな卵が転がっている。荷車の車高が高くて助かったらしい。

「じゃあ昼メシにするか」

 マーキさんは支給品を軽々と担ぐと卵を片手に、ヒレのようなブーツをペタペタいわせながら運んでいってしまう。

 あたしはその後姿を見て、長々と白い溜息をついてしまった。

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