『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』 作:fuki
ベースキャンプの鐘楼が鐘を鳴らし、午後七時を知らせた。ティガは一度顔を上げてそちらを見たが、残響が消え去る前にはもう興味を失ったようだった。
「ああ、腹減った。メシにしようぜ」
「一時間前に食べましたよね。……そういえば、それで美味しいガノスのトロには出会えたんです?」
「ん? いやあ、まだだなあ。もう八年も黙々と狩ってるんだけどなあ」
「八年。っていうと、マーキさんが“モンスターハンター”のキャリアって、意外と短かったんですね。それでもう上位なんて、すごい」
八年前なら二〇歳前後、今のあたしと同じくらいだ。実力からしてずいぶんキャリアがあるのかと思っていたけど、そうじゃなかったのか。
「上位になるスピードって言ったら、エリちゃんの三年間の方がすげえよ」
「それはちょっと事情が違います」
「“名誉”だもんな」
「その言い方はダメです!」
「むっふっふ」
ギルド最速記録保持者だったりするけど、ズルっこだしね。
「でもすげえキャリアって言ったら姐さんだよ。“ハンター”になったのは九歳なのに、“モンスターハンター”になったのは二四歳の時らしいぜ? 一五年間なにしてたんだよなあ」
「ああ、それは――ん? でもジュンさんが“モンスターハンター”になったのって、あたしが見習いになった時――一一歳の時ですよ?」
「え? そうなの?」
「だって、『私も今日から“モンスターハンター”だ。ミエコに代わって私が君の師匠になろう』って言ってたんですもん」
「へえ……え? じゃあ今、何歳なんだ!?」
「えっと、ちょうど一〇年前だから、さん――」
真っ二つのギィギが落ちてきた。
「――じゅぇぇええむぎゅ!?」
マーキさん、ナイス手のひらミュート!
「差し入れだ。ほら、食っていいぞ。エリも遠慮するな」
「いや、いい、いえいえ!」
「は、早かったなおい!?」
ど、どこにいるの!?
「来てたんなら教えてくださいよ!」
小声で叫ぶと、背後のからか、かすかにポンチョが揺れる音が聞こえた……いや、風か?
木陰の一つがほんの少し立体的に見え……なくもない?
「面白そうな話をしてたからな。続けてもらって構わない」
「いや別に、ねえ!?」
「そうそう、姐さんの報告を聞かせてくれよ!」
「臨時キャンプの設営は完了した。地下だがいいところだぞ。おばさんの足腰でも十分行ける場所だ」
「おば、おばさんだなんて! あたしたちの中には若者しかいないですって!」
「“君たちの中”?」
「いえあのあのえっと、別に深い意味は、えっと――」
「――バ、バニィはどうした!?」
ナイス助け舟!
「私の荷物を持って移動中だ。なにしろここは、おばさんの足腰には厳しい場所だからな」
返せねええええ!
「おーい、お待たせー!」
雪をガスガス蹴立てて、バニィさんが走ってくる。
「どうしたの?」
「いえ、その――」
「――ティガが歩き始めた。エリは気付かれないようにペイント弾を打ち込め。マーキも動けるように準備するんだ。ホットドリンクを飲んで移動を開始する」
「あ、ああ、だなー! あは、あはは!」
「わ、分っかりましたー!」
「ん?」
慌ててバックパックを背負うあたしたちの背中に、太刀よりも鋭い視線が食い込むのが分かる。
さすがドS、とか言ってられません。