『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』   作:fuki

23 / 80
● 口は災いの元です / go in silence

 ベースキャンプの鐘楼が鐘を鳴らし、午後七時を知らせた。ティガは一度顔を上げてそちらを見たが、残響が消え去る前にはもう興味を失ったようだった。

「ああ、腹減った。メシにしようぜ」

「一時間前に食べましたよね。……そういえば、それで美味しいガノスのトロには出会えたんです?」

「ん? いやあ、まだだなあ。もう八年も黙々と狩ってるんだけどなあ」

「八年。っていうと、マーキさんが“モンスターハンター”のキャリアって、意外と短かったんですね。それでもう上位なんて、すごい」

 八年前なら二〇歳前後、今のあたしと同じくらいだ。実力からしてずいぶんキャリアがあるのかと思っていたけど、そうじゃなかったのか。

「上位になるスピードって言ったら、エリちゃんの三年間の方がすげえよ」

「それはちょっと事情が違います」

「“名誉”だもんな」

「その言い方はダメです!」

「むっふっふ」

 ギルド最速記録保持者だったりするけど、ズルっこだしね。

「でもすげえキャリアって言ったら姐さんだよ。“ハンター”になったのは九歳なのに、“モンスターハンター”になったのは二四歳の時らしいぜ? 一五年間なにしてたんだよなあ」

「ああ、それは――ん? でもジュンさんが“モンスターハンター”になったのって、あたしが見習いになった時――一一歳の時ですよ?」

「え? そうなの?」

「だって、『私も今日から“モンスターハンター”だ。ミエコに代わって私が君の師匠になろう』って言ってたんですもん」

「へえ……え? じゃあ今、何歳なんだ!?」

「えっと、ちょうど一〇年前だから、さん――」

 真っ二つのギィギが落ちてきた。

「――じゅぇぇええむぎゅ!?」

 マーキさん、ナイス手のひらミュート!

「差し入れだ。ほら、食っていいぞ。エリも遠慮するな」

「いや、いい、いえいえ!」

「は、早かったなおい!?」

 ど、どこにいるの!?

「来てたんなら教えてくださいよ!」

 小声で叫ぶと、背後のからか、かすかにポンチョが揺れる音が聞こえた……いや、風か?

 木陰の一つがほんの少し立体的に見え……なくもない?

「面白そうな話をしてたからな。続けてもらって構わない」

「いや別に、ねえ!?」

「そうそう、姐さんの報告を聞かせてくれよ!」

「臨時キャンプの設営は完了した。地下だがいいところだぞ。おばさんの足腰でも十分行ける場所だ」

「おば、おばさんだなんて! あたしたちの中には若者しかいないですって!」

「“君たちの中”?」

「いえあのあのえっと、別に深い意味は、えっと――」

「――バ、バニィはどうした!?」

 ナイス助け舟!

「私の荷物を持って移動中だ。なにしろここは、おばさんの足腰には厳しい場所だからな」

 返せねええええ!

「おーい、お待たせー!」

 雪をガスガス蹴立てて、バニィさんが走ってくる。

「どうしたの?」

「いえ、その――」

「――ティガが歩き始めた。エリは気付かれないようにペイント弾を打ち込め。マーキも動けるように準備するんだ。ホットドリンクを飲んで移動を開始する」

「あ、ああ、だなー! あは、あはは!」

「わ、分っかりましたー!」

「ん?」

 慌ててバックパックを背負うあたしたちの背中に、太刀よりも鋭い視線が食い込むのが分かる。

 さすがドS、とか言ってられません。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。