『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』   作:fuki

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● ブナハブラを狩りましょう! / preslip

「ああ、ほんとですね……」

 マーキさんが小声で叫んだとおり、“エリア2”には大量のブナハブラがいた。

 一メートル近いサイズの飛甲虫は、手持ち無沙汰に三対の翅を振るわせて中空を舞っており、五〇は下らないその数で異様な雰囲気を醸している。

『どうする?』

 マーキさんがバニィさんの肩を叩き、指示を仰ぐ。

『ティガの位置は?』

 バニィさんが問い返すと、マーキさんは鼻をひくつかせてから手を動かす。

『右前方――北東――数キロの地点』

『“エリア6”だな?』

 今日の探索が始まって、初めてその単語が口――手に出された。

 マーキさんは首を傾げたが、肯定に近いニュアンスを得たか、バニィさんは闇の中で微かに舌打ちをする。

 前述のとおり、“エリア2”と“エリア6”の間は高い山脈があるので、北側の洞穴からその山の中――“エリア7”に入って南東へ通り抜けるか、西の“エリア3”から地下に潜り、“エリア2”の真下に位置する“エリア5”を経由してぐるりと回って行くしかない。前者では二時間半、後者では四時間以上かかる。

 バニィさんはすぐに“エリア2”に――その先の洞穴に視線を向ける。

『前方、低脅威目標を一掃、可能な限り静粛に、速やかに。完了次第“エリア7”へ移動』

 指示が終わるや否や、マーキさんはバックパックを背負ったままランスを抜刀、チャージをしかけた。

 バニィさんも続いてハンマーを抜刀、大タルを後頭部に背負ったままバランスを取り、さっと走っていく。

 あたしは感じた違和を払拭するようにストラップをスライドさせると、通常弾を装填したボウガンを構えて“エリア2”へと進み出る。無益な殺生はしたくはないけど……この状況じゃ仕方ない。

 狩り自体は難しくない。四〇センチ近い産卵管から腐乱性の体液を吐いてくる飛甲虫に対し、マーキさんは近付いてくるそれを大盾で払いながら、攻撃範囲の長いランスで正確に突き殺す。バニィさんも高度を落としてきたブナハブラに、左右へと転がりながら接近してハンマーを振り上げて叩き潰す。

 あたしも同じだ。ブレを考慮しつつ、頭を埋め尽くされそうになる羽音を無理矢理無視して、一匹一匹狙って打つ。

 簡単な作業だが……。

 どうしてこんなにブナハブラがいるんだ?

 あたしは少しずつ、雪原の東側へと移動する。ブナハブラの密度はそちらに向かって高くなっているし、記憶が正しければ、山の斜面の土や雪を掘り抜いて作られた巣が、その辺りにあるからだった。

 一〇分ほどの狩りを経て、ブナハブラの総数は七割減。攻撃の密度が下がったので、あたしは武具を背中に納めて、巣まで走った。

 巣は――破壊されていた。

 雪と土を深々とえぐって走る線上の痕跡が、山肌までの一〇メートルばかりの雪原に一直線に伸び、そのまま巣の外壁を破っていた。そこから覗く内部には、強力な圧力で身体をちぎられたブナハブラが文字どおり詰まっている。虫にはそんなに嫌悪感を抱かないあたしでも、さっき食べた携帯食料を涙と共に戻しそうだ。

 しかし――ああ、やばい。

 見回して、そこここに残された、凍土にしては奇妙に湿気をまとって泥になった土やぼた雪に見覚えがあった。その酸味を帯びた匂いは、打ち砕かれ叩き潰されたブナハブラの体液に満たされた空間では、今でこそ打ち消されているが、あたしが最初に覚えた違和感の正体だ。

 その痕跡に気付くが早いが、震動が脚を伝わってくる。

 羽音を締め出した耳では分からなかった音が、近付いてくる!

「気をつけて! こいつはボルボロスの仕業です!」

 “静粛に”の指示を破ったあたしを叱責するものはいなかった。

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