『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』   作:fuki

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● 食事の横取りはいけません! / divine justice

 『やっぱり』と言うには今さらすぎた。微かにでもその前兆を感じたのなら、口に出すべきだった。

 でももう遅い。

 “エリア3”から軽やかともいえる足音を立ててやってきた、体長一二メートル、体高四メートルばかりの獣竜種は、クラウチングスタートのように頭を地面につけると、スプーンのごとく歪曲した前頭部で雪をえぐりながら突進してきた。

 最もそこに近く、またあたしの言葉の届かなかったマーキさんが、不完全ながらも試みたガードを弾かれて五メートルもはね飛ばされる。

 雪原中央付近のバニィさんがそのやりとりに気付いた時には、もうボルボロス目の前。

「バニィさん逃げて!」

 無意識のうちに装填し直した貫通弾を一射。

 大きな反動に身を逸らす動作のまま、後方にステップ。

 命中したが、ボルボロスはとまらない!

 それでもバニィさんは冷静だった。ハンマーを手に両足で軽くステップを踏むと、地面と接する前頭部を真正面に捉え――

「ふっ!」

 ――ハンマーを叩き下ろし、その衝撃とボルボロスの突進の勢いを使って側面に回避した。

 ボルボロスは転倒、ブレーキをかけられずにあたしの脇を滑って、ブナハブラの巣へと突っ込む。

「……うっそ」

 ティガの突進を正面から回避――とドM談義で揶揄されていたそれを、まさにやってのけたのだ。

「エリちゃん! こっちだ!」

 あたしはボウガンを背中に納めて、雪原を走る。

「バニィさん! マーキさんは!?」

「大丈夫そうだよ」

 数十メートル先で身を起したマーキさんは、もうこちらに走ってきている。

「でもお見事でした、バニィさん。あんなことできるなんて」

「左右に避けても、あの“スノーダンパー”は的確に追撃してくるからね。それにカス当たりだった。流石は震鎚、芯を当てられなきゃ威力半減か」

 言いながら、あたしたちは獣竜種に視線を戻す。

 ボルボロスは身を起してあたしたちを一瞥したが、ひとまずは巣に頭を突っ込んで食事を始めた。

「どうしましょうね、このボルボロさん」

「ティガの調査をしたかっただけなんだけど……放っておいてくれそうにないね」

「まあ、自業自得ですよね……」

「エ、エリちゃん、ほんとにドS化してない?」

「えっ?」

 だって、違和感の正体がブナハブラと判明した時、あたしはなにも言わなかったのだ。一言でも「違う可能性もあるんじゃ?」と言っていれば、こんなことにはならなかったんだからさ。

 土、その中の巣に頭を突っ込んでもりもりと口を動かしていたボルボロスが、ふと振り返ってこちらを見た。

 鳥竜種の牙を使って貫通力を高めた貫通弾は、頭頂部の中央右寄りから側頭部に向かって斜めに抜けたようだ。だがそこに主要器官はなく、大きなダメージにはなっていない。

 もっとも、バニィさんとのコンボで敵愾心を抱かせたのは確実だろうけど。

 マーキさんが駆け寄ってきて、大盾を油断なく構える。

「観測船に連絡して、飛行船でも呼んでもらえよ、お坊ちゃん。『さっさと片付けて』って言うには重いぜ」

「残念だけど、数分で来てもらえるスピードじゃないんだよね」

「じゃあ……振り切るか?」

「うん、ボクらの目的はあくまでティガの調査だ。“エリア7”まで走り抜けよう」

「あーあ、砥石さえ支給されてりゃボルボロ肉をご賞味できたのによお」

 軽口を叩き合うも視線を交わす二人を横目に、あたしは口を開く。

「あたしが引きつけます。泥のボルボロスとは戦ったことがありますから」

 その素材で作られたライトボウガン『バズルボローカ』を一度叩いて、意志を示す。あたしの責任の取り方はこれしかない。

「それは無茶だよエリちゃん、お互いにフォローしながら“エリア7”に向かおう」

「でも――」

「――エリちゃん、そりゃ心強いお言葉なんだけどよ」

 マーキさんはあたしの肩に手を置き、親指を後ろに向ける。

「同時に何頭まで相手にできんの?」

「は?」

 判別できない数の足音が近付いて、あたしはボウガンを取り落としそうになった。

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