『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』   作:fuki

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● 刃物は苦手です / first wound

 声も上げず、ふらつきもせず、ボウガンを取り落としもしなかったのは、“モンスターハンター”としての意地か?

 無意識のうちに装填中の通常弾を氷の上にばら撒き、散弾を装填して撃ち放った。

 一発、二発、三発、四発、リロード。

 無回転で射出されたカートリッジからはじけクルミの弾頭が離れ、充填した火薬の衝撃で破裂、殻が指向性をもった直径五ミリの切片となってバギィたちの身体に食い込む。

 一発、二発、三発――

「――うう、ぐぐ……」

 揺れるかがりの明かりだけが動く洞穴の中、食いしばった歯の間からやっと息を吐いた。

 幾本もの筋を作って肘に流れて前腕を伝わり、氷の上に垂れて凍っているのは、紛れもない、あたしの血だ。

 バギィの牙はガウシカの毛皮を貫き、“紅彩鳥”の羽根を何枚かちぎり、右上腕の前面と背面にそれぞれ十数個の穴を穿っていた。

 あたしの顔は、たぶん青ざめていたと思う。

 ボウガンのストラップに右腕の体重をかけるように構えていたからか、肩が痛い。背中に回して納めると、バックパックを下ろしてかがりのそばに座りこんだ。

 ポーチから応急薬を取り出して綿に浸し、歯型の穴を消毒していく。前腕へ肩へと痛みが走って行き、歯の隙間から呻き声が漏れる。

 じわじわと泡立つ薬を横目に、左腕の尻尾に殴れた場所も見てみる。青痣になっているが、こちらは痛みも散漫だ。

 遅ればせながら涙が滲んできた。

 ハンターズギルドが認可する武具は、鈍器がごく一部にでほとんどが“刃”を備えている。

 超質量の頭部を振り回す腕力と、適切な位置――たとえば頭部――に攻撃を加えられる繊細さを必要とする鈍器と、刃物は違う。鈍器なら軽い打撲で済む部位でも、刃物なら表皮を切り裂いて出血を促すことができるからだ。

 “ハンター見習い”に最初に支給される武具が、剥ぎ取り用ナイフに近い片手剣と小盾であることも、これに起因している。硬い鱗をもたない“モンスター”が相手なら、刃物という属性は経験不足を十分に補えるのだ。

 人間と人間の戦闘でもそれは同じで、強大な力を持つ部族は金属の鋳造技術で生産した刃物を持ち、征服された部族は棍棒しか扱えなかった、との調査結果もあるくらいだ。

 戦うべきじゃなかった。

 かがりをつけたら周囲を確認して、場合によっては閃光玉を使って、一目散にゴールに走るべきだったのだ。

 なのに、散弾を七発も消費して、腕まで怪我して。がむしゃらに四頭もバギィを狩って。

 なにが『本番に強い』だ、クソ!

 あたしが目指してたのは、こんな浅はかな“モンスターハンター”じゃない!

 叫べるものなら叫びたかったけど、それは新たなバギィを呼び出すだけだと分かってるから、無言で頭を振り回すだけ。

 なんの意味もないストレス発散だけど、それでも十分に落ち着いた。

 二本目の応急薬を浸したガーゼと薬草を傷にあてて、強く包帯を巻く。痛みはあるけど武具は扱えるレベルだし、やがて若干の麻酔効果も発揮されるはずだ。

 いや、どっちにしたって立ち止まってられる状況じゃあない。

 バックパックを背負い、ポーチから出したなめし皮の手袋をはめ、かがりの蓋を閉じて火を消す。

 身を屈めて“エリア6”への横穴に入り、すぐに現れる階段状の縦穴と、そこに垂らされた最初の縄ばしごを握り締める。

 握力は問題ない。あとは登りきる体力だけだ。両腕を非対称的に苛む痛みは、無視するしかない。

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