『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』 作:fuki
暗闇で意識を取り戻したあたしは、すぐにいくつかの驚きを感じた。
意識が戻ったこと自体もそうだけど、身体を寄せていたのが氷のベッドじゃなかったし、頬を流れたと思しき涙の跡も凍り付いていなかった。
そしてなにより、暖かいのだ。
これ、あたし、死んじゃったんじゃないの?
と思うけど、ボウガンとバックパックを背負ってないことを除けば、さっき倒れた時の状態から変わりはない。右腕の怪我は定期的にあたしの神経に痛みを送るし、服が一部破れているのも同じだ。
じゃああれは夢で、今、目が覚めたの?
と思うけど、この暖かさはホットドリンクから産まれるものじゃなくて、外部から染み入ってくるものだ。だからあの“エリア外”でホットドリンクが切れたのは夢じゃない。
状況が分からない。
周囲を観察しようと身じろぎすると、周りは思ったより柔らかかった。上は熱湯を張った袋のように弾力があって重く、脈動を感じる。ゆっくりしたペースで上下運動を繰り返し、上がると同時にグゴゴゴと振動する。下はVの字型に曲がった硬い棒の間に膜が張られていた。あたしはその棒を枕に、膜をベッドに、袋を布団に、寝ていたのだ。
そこまで思いを巡らせた頃、足元の方――“V”の開いた側から微かに風が流れてくるのを感じた。あたしは棒を掴んで身体を滑らせていき、膜の切れ目に到達すると、その下に更に互い違いになった“V”を見つける。なんだこれ。
今度は膜と膜の隙間を同じようにして滑り――
――ざりっと凍りついた土が靴にぶつかり、冷たい外気が身体を貫いた。
「うわっ、サミィ!」
ここはもう“外”なんだ。
“エリア外”のように呼気が一瞬で凍るわけではないが、それでもヒトが活動するには苛烈すぎる寒さだった。吹きさらしらしく風がもろにぶつかってきて、否応なく身体がガクガクと震える。それは必死に熱を作ろうとする動作なんだけど、そんなのはあってなきが如し抵抗だ。
でもその厳しさは、あたしが死後の世界じゃなく、厳しい自然がある現世にいることを実感させてくれた。
膜の間に戻りたくなる気持ちを抑えて、あたしはポーチから火打石を取り出し、状況を把握しようと暗闇の中で打ち合わせた。
閃いた光に、目を疑った。
ここが死後の世界だと言われた方が、ずっと信憑性がある光景があった。
視界を埋め尽くした、橙色と青色の波。
グゴゴゴ、と空気が流れる音が、今さらながらに耳につく。
息を吐くたびに引きずり出されていく、肺のなけなしの熱さえも意識できない。
あたしは……ティガの腕に抱かれて寝ていたんだ。