『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』   作:fuki

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● aggression

 ――ぱあっと辺りが明るくなった。

 なにが、と考える前に、ティガが立ち上がったのか、あたしの身体は急上昇してお腹に押し付けられる。

「むぎゅおお! ちょ、ちょっとお!」

 と声を上げるが早いが、ティガは翼膜を展開して、あたしを凍った地面に放り出した。

 怪我の残った右腕から落ちて、一瞬意識が遠ざかるが、その痛みを基点に逆に気を引き戻して身を起こす。

 点在する二つのかがりに明かりがついていた。やはりここは“エリア4”だ。“エリア7”ほど気温は低くなく、吹き込む雪の量も少ないので、高い天井からデコボコした壁まで、乾燥した土で覆われていて、だからティガの休息に使われる場所だ。

「エリちゃん!」

 そこに人間の声が響いた。バニィさんだ。

 だけど、嬉しさを覚える前に、危機感を抱く。

 彼らはあたしを助けにきたんだ。ティガを攻撃して追い払うつもりなんだ。

「ダメです! こっちにこないで! 危ないですよ!」

 え、危ないって、誰が?

 ふと止まった思考を吹き飛ばすように、ティガの左腕があたしのすぐ横を通り過ぎる。

 手のひらがごりごりと地面をえぐりあげ、投擲武器と化した土くれがすさまじい速度で空を切った。

 その風圧があたしの左半身を叩き、思わず半身振り返って顔を庇う。体温が文字どおり左に吹き散らされていき、膝が笑い始める。

「ヒュウ!」

 マーキさんが大盾の向こうに隠れ、直後、ばあん、と音を立てて土が砕ける。

「ジャガイモっぽい攻撃だな、おい。ティガ、投げるならほんもんのイモにしとけよ!」

 大盾を叩き、ティガの注意を引くマーキさん。

「エリちゃん武器拾え! そこにあるぞ!」

 ん、そうだ、あたしのボウガンは?

 ボウガンはティガの爪から解放されて、右手後ろの地面に落ちていた。

 でもこれを拾ったら、ティガはあたしが敵対するつもりだと思うんじゃないか?

「どうしたエリちゃん!」

 マーキさんが叫び、しかしその声をかき消すくらいのティガの叫びが耳を貫いた。

 振り返ると、ティガの左後ろでデコボコした頭を持つハンマーが振り上げられる。そしておそらくは再度、振り下ろされた。

 鈍い音がして、ティガがつんのめって前に倒れた。幸いにもあたしはティガの脇の下を抜けたのだが……。

 ハンマー――バニィさんが左後ろ。

 “T・レックス”フォーメーションが動いている?

 “討伐”するつもりなのか!?

「やめてください、バニィさん!」

 視界の隅でマーキさんがオーバースロウでなにかを投げた。

「飲んで離れろ! エリちゃん!」

 たいまつに揺れて輝く液体は赤色、ホットドリンクのビン。無意識に掴み取り、ティガの動向も気にせず一気にあおる。染み渡る熱に毛穴が開いて猛烈にかゆみを覚えるが、そんなものは無視だ。飛びつくようにボウガンを拾い、ストラップをたすきにかけるが抜銃はしない。

 ティガが方向転換し、狙いをマーキさんからバニィさんに向ける。

 読んでいたマーキさんが盾を構えたまま一歩踏み出し、ランスを突き出す。四つ叉の切っ先が方向転換したティガの左足を捉えた。

「マーキさん!」

 どん、と鈍い音が地面に走り、次いでなにかが転がってくる音。

 バニィさんがタル爆弾を蹴り飛ばして、ティガの方へと転がしたのだ。

「エリちゃん、撃て!」

 どうして。

 討伐が始まっているということは、調査が完了したってことだ。

 あたしが見つけた氷の中のティガの子供を誰かが再発見して、目的を更新したってことだ。

 どうしてそんな判断をするんだ!

「やめてください! マーキさんもバニィさんも!」

 タルは転がっていく。

「早く撃って!」

 ティガの右腕にぶつかり、ティガが首を向ける。

「撃てよォ!」

 叫び、しかし業を煮やしたかマーキさんはランスを反転させてチャージ、石突で蓋中央のプライマーを殴り付け――

 ――爆音と共に炎が吹き上がった。

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