『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』 作:fuki
尻もちをついていた。
ティガの後ろに隠れた格好になって直接のダメージはなかったが、音の衝撃で転んでしまった、と気付いたのは少ししてからだ。
かがりの明かりを黒々とした黒煙が覆い、視界が閉ざされている。
どうして。
誰かが叫んでいて、誰かが叫び返しているが、なにがなんだか分からない。
やがて、黒煙を破るようにティガが飛び出してきた。
バックステップであたしを飛び越したティガは、しかし着地に失敗して滑った。地面は氷じゃないのに。
疑問が言葉になる前に、あたしはその答えに息を呑んだ。
ティガの右手が、凍り始めた血で赤黒く染まっている。そして三本あったはずの爪が、ああ、二本になってるじゃないか。しかもそのうちの一本にも細かなヒビが入っている。
タル爆弾の爆圧と外円部分に配された砂利が、そうしたのだ。
どうして!
「マーキさん、やめてください! まだそんなことしちゃダメなんですよ!」
タル爆弾を至近距離で起爆したマーキさんは、おそらくは爆圧で内蔵を揺さぶられ、礫で軽傷を負いながらも、石突の破損したランスを支えに立ち上がっている。
あたしは彼に詰め寄ろうとするけど、スタミナを失った身体はホットドリンクで熱を取り戻しただけじゃ復旧しない。
脚がもつれかけ――
「やめるのは君だ」
――首になにかが触れた。
ポンチョの感触が背中に触れていると気付いたのは、首をがっちりホールドされた後。
抱きすくめられている。
すうっと、寒気のような浮遊感のような感覚が全身を襲う。
指先の熱さが遠ざかるように分からなくなり、代わりにかすかな痺れが伝わってくる。
そして……そう意識するが難しくなる。
「見ているなアイルー。ネコタク一名様、臨時キャンプまでご案内だ」
ああ、クソ。
アイルーが支給品を持ってくるたびに、“この物語じゃ出番はないと思うし”って書いてたのに。
大ウソじゃないか。