『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』 作:fuki
“エリア3”側のかがりが横倒しにされ、木炭が火の粉をまいて飛び散り、流れ出た油に炎が燃え移った。一瞬で増えた光量に目を覆いながらも、その姿が目に留まる。
話に聞いていた通り、飛竜種であることに違いはない。胴体に頭と尻尾があり、翼を持つ両腕はティガと同じように左右に張り出して、肉厚な指が地面を捉えている。脚は見えないが、情報通りなら小振りなものがついているはずだ。
なのに、なんだろう、この嫌悪感は。
頭の先端にある口は、尻尾の先端にある総排出腔まで一直線に繋がっていて、まるで体幹部分が一本のパイプのような構成になっている。骨格が存在しないかのように柔軟な身体は、下手な打撃では衝撃が受け流されることを意味する。
炎を反射しててらてらと白く光る体表は、動くたびに反射光を変化させる。分泌された体液がグニョグニョの皮膚の表面を流れているからだ。
目のように見える一際白い部分は毒腺で、自身の血液から毒素を生み出し、口から吐き出すために用いる。逆に目は存在せず、獲物は熱感知能力で捉える。
『なにを書いてるんだ?』と思う人もいるだろう。でも実際そういう生物が存在して、それに直面しているんだ。
「エリちゃん、二人を起こして! あいつを引きはなそう!」
「いえ、バニィさん! 消耗は最小限にするべきです!」
あたしは小さいがはっきりした口調で否定する。
マーキさんもジュンさんもプロだ。問題がなければ――或いは指示がなければ――休息を中断しないが、一言助けを求めればイヤな顔一つせず起きてくるだろう。だけど、みんなまだ二時間近く休める時間がある。ここで総出で対処したら、なんのための見張りだ?
流れを意識するんだ。四人で立ち向かえば確実性は高まるが、明日のティガ討伐に影響を出しかねない。あたしたち二人で対処する。それができるはずだ!
バニィさんはあたしを見て、だけど頷いた。
「……うん、君が正しい。指示を変更する、サブクエスト『見張りが交代となる二〇分以内に、ギギネブラを“エリア5”から追い出せ』!」
サブクエスト、ロックラック支部のクエストでは有名な、主たる目的以外に設定された下位目標のことか。
「はい!」
絵本を手に、あたしは鋭く応える。
まあ今回は自分たちで課したものだから、報酬はギルドから出ないんだけどさ。