『美少女ハンター凍土で大奮闘です!』改め『ティガレックス討伐譚:吹雪の前触れ』 作:fuki
「なあ、お前ら食わないのか?」
マーキさんはティガ肉の刺さった三つの串を手に、トン殿たちに話しかけている。へえ、ちゃんとみんなの分も準備してたんだ。意外なようだけど、やっぱり基本はいい人なんだよね。
「ボクらはいいよー」
「それを食べる権利は、我々にはない。貴様らが食うがよかろう」
「ぬう、そうかあ」
トン殿と片手剣ハンターが辞退すると、マーキさんは串を手にあたしたちの方に戻ってきた。
「三本あまっちまった。しょうがねえ、ここはオレが全部――」
「――バニィ、エリ、私の三人で食べよう」
音もなく近付いた迅竜のポンチョから、にゅっと腕が伸びてマーキさんは串を奪われてしまう。
「あっ! おい、なにすんだよ姐さん!」
「あの三人がティガの肉を食べないことは分かっていたはずだ。その上で七切れに別けたということはつまり、最初から自分で半分以上食べるつもりだったんだろう?」
「え、あ、いや、ああ、なに言ってんだよ姐さん、あはは、このオレがそんなことするわけないだろ?」
うわあ。「基本はいい人」とか言ったあたしがバカみたい。
「それに君は携帯食料を二食も食べたんだ、私たちが食べるのが道理だろう」
「ぐ、ぐおお……」
「小細工はするべきじゃなかったね。じゃ、ボクらで食べちゃおう」
今度はさっきよりもすんなり喉を通り、お腹が膨れる。
「ああ、オレの肉が……」
「君の肉は、君が死んだ時にちゃんと食べてやる。心配するな」
「そういう意味じゃねえってー!」
バニィさんが破顔し、ジュンさんが口元を上げ、マーキさんが頭を抱え、あたしが鼻息を漏らし――
――鐘が小さく響いた。
トン殿たちを含めた全員が、“エリア7”への穴のそばにある仮設の鐘楼が鐘楼を見た。
調査クエストが始まって、一箇月と二週間と二日目の、一三時の鐘。
亀裂の休憩ポイントで飲んだホットドリンクの効果は、残り三時間半程度。
たぶん、それが過ぎる前には、このクエストは終わる。
そう、終わるんだ。
今度こそ。
あたしたちは誰が最初でもなく、羽織っていた毛皮を脱ぐ。
残響が遠ざかるのを待って、バニィさんがあたしたちに手を見せる。
『東方』『外』『二五〇メートル』『クエスト目標』『狩猟準備』『散開して移動』『速やかに』、そして『T』。
一つ一つ、全員が確認できる程度に落ち着いて、だけど冗長にならないように示す。
最後の打ち合わせが終わると、あたしたちは打って変わって無言で雪原を突っ切り、そのまま氷床へと脚を踏み出す。
直後、咆哮が響いた。