紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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こんにちわ。

今回は源さんと川神の探索です!!
真九朗も夜の川神を知ろうと動いています。そして出会う荒くれ者たち。

では、始まります!!


工場

036

親不孝通り。ここは怪しい界隈である。一般の人もあまり近付かない場所だが、中には火遊び目的で集まる若者だっている。

何処の町も怪しいスポットはあるものだ。

 

「ここはあまり近づかねえ方がいいぞ・・・って言いたいが揉め事処理屋のお前なら必要ないか」

 

忠勝は真九郎に川神の危険な場所を教えている。実は真九郎が代行業をしている忠勝から川神の様々なことを教えてほしいと頼んだからだ。

何でも屋ならば川神のちょっとした裏情報も知っていると思ってのことだ。

 

「ううん。助かるよ源くん」

「商売敵に手助けしてるみたいで俺は微妙な気分だがな」

 

愚痴を呟くが表情は穏やかである。商売敵と言っているが、仕事仲間として仲良くした方がお互い良いのだ。

同年代で同じ何でも屋ならお互いに情報交換でもすれば少しは成長する糧になるだろう。

 

「この親不孝通りは最近じゃあ九鬼の連中のおかげで少しはマシになっているが、変な野郎共はまだいるからな」

「まあ・・・どこでも変な人はいるからね」

 

トコトコと親不孝通りを歩くと周囲から視線を感じる。新参者として見られてるのかもしれない。実際にそうだし、気にもしない。

 

「ここらの不良を束ねている奴もいてな。そいつは板垣竜兵って名前だ」

「板垣竜兵ね」

「けっこう危険な奴だ。暴力だけで不良をまとめるくらいだからな」

「なるほど。気をつけるよ」

 

強い不良程度なら真九郎の敵にはならないだろう。戦闘屋と戦って勝利した彼なら不良に負けない。

 

「それにしても何で斬島までいるんだ?」

「それは・・・えと」

「なりゆきです」

 

実は切彦も一緒にいた。案内をされている途中で、いつも通り道の端で見つけたのだ。

 

「島津寮からいつの間にか出ていったかと思えば・・・道の端にいるから驚いたよ」

「地球はわたしの敵です」

「弱点ばかりじゃねえかよ」

 

忠勝は切彦の弱点発言に呆れてしまう。

 

「次は青空闘技場を案内する」

「青空闘技場?」

「川神は荒くれ者が集まる場所だからな。そういう場所はある。それに案外、武術の有名人もたまに参加してるぜ」

 

青空闘技場と聞いてついキリングフロアを思い出す。しかし、さすがに違うだろうと頭を振るう。

あんな醜悪な場所はもう懲り懲りだ。

 

「こっちだ」

 

案内されて数十分後に工場地帯に到着。その中の第51工場に入ると喧しい声が聞こえてきた。

 

「今日は青空闘技場が開催されてる日だ」

「だから喚声が聞こえるのか」

 

工場内の中心部に行くと2人の男が殴り合っていた。正確には1人の男が優勢なので一方的と言うのが正しい。

 

「今、相手の男をノックアウトしたのが板垣竜兵だ」

「彼が板垣竜兵」

 

ここらの不良のまとめ役。長い黒髪をなびかせ、暴力という荒々しさを感じさせる男だ。

 

「おらあっ!! 次はいねえのかああ!!」

 

荒々しく吼える。まるで鎖でも抑えられない野獣のようである。

 

「ったく、詰まんねえぜ」

 

好きな時に暴れられない竜兵は最近では息が詰まりそうであった。唯一の救いは青空闘技場が潰されなかったことだろう。ここでならまだ好きに暴れられるからだ。

 

「今日はもう俺の相手をしてくれる奴はいねえか。あーあ、この猛りを静めてくれる良い男でも探すか」

「おいリュウ」

「あんだ天?」

「そろそろ代われよ。アタシもそろそろ暴れたい」

「いいぜ」

 

今度は赤髪のツインテール少女がリングに上がる。青空闘技場に性別や年齢は関係無い。戦う覚悟があれば参加資格だ。

 

「なぜゴルフクラブ?」

「あいつは板垣三姉妹の1人だ」

 

板垣三姉妹。竜兵の姉や妹だ。実力は相当あるらしい。

 

「オラァ。対戦者上がってこいや!!」

 

とても元気で好戦的な少女のようだ。

すると同じく元気な対戦者がリングに上がって試合が始まる。

 

「うわあ・・・」

 

試合はすぐに決着がついた。勝利したのは天使だ。ゴルフクラブを遠慮なく振るって相手を叩きのめした。

 

「何と言うか。遠慮が無いって言うか・・・」

「けっこう危険な奴らだ。案外有名だぜ」

「そうなんだ」

 

ある程度、青空闘技場を見学したから引き返そうとしたができなかった。

 

「あん・・・って、てめえは!?」

「どーした天?」

「おいそこにいる金髪少女!! 確か・・・斬島切彦!!」

「はい?」

 

天使が切彦を呼び止めたからだ。これには真九郎も立ち止まる。

 

「知り合いなの切彦ちゃん?」

「・・・ゲーセンで会った気がします」

「なるほど」

 

おそらく格闘ゲームの流れだろうと予測する。まさに正解で、切彦は天使をゲーセンで出会っていたのだ。

しかも天使を格闘ゲームで倒したので、彼女からは迷惑な因縁をつけられている。

 

「まさかこんな所で会えるとはな。よっしゃあ、リベンジだ。リングに上がってこい!!」

 

ゲームで負けた腹いせにリアルファイトをするわけではない。天使は切彦の実力を知りたいのだ。

師匠である刑部が切彦と戦うなと念を押されて言われたからだ。ダウナー系な雰囲気の彼女を前に戦うなとは理解できない。

ならば戦って証明するしかないのだ。

 

(何で師匠が戦うなっつってたか理解できねえ。なら確かめてやる。こんな奴に負けるアタシじゃねえ!!)

 

ゴルフクラブを肩に担いで切彦がリングに上がるのを待つ。

 

「切彦ちゃん。無理に戦う必要は・・・」

 

真九郎が止めようとしたが切彦が自らリングへと簡単に跳ぶ。

 

「へへん。ヤル気マンマンじゃん!!」

「・・・ん」

「あん?」

 

取り出したのはバターナイフ。これを見て天使はキレた。

 

「ナメてんのかあああ!!」

「ナメてねえよ。これで充分だ」

「それがナメてるってことだろうが!!」

 

バターナイフとゴルフクラブの勝負だ。

 

「おいおい大丈夫なのかよ」

「危ないかも・・・」

「バターナイフじゃふざけすぎだろ」

「赤髪の子が心配だ」

「そっちかよ!? つーか、は?」

 

普通に考えたらバターナイフでゴルフクラブに勝てるはずはない。だが、使い手によっては勝てると言うべきだろう。

でもどんな使い手でもバターナイフは使わない。

切彦だからこそできるのだ。

 

「いくぞ。オラァァァァァァ!!」

 

天使がフルスイングで切彦を狙う。

しかし、ゴルフクラブが切彦に届くことは無かった。

 

「は?」

 

間違いなく天使は遠慮無くゴルフクラブを振るった。だが手応えは無くて、寧ろいつも持っているゴルフクラブが軽すぎる。それはゴルフクラブが綺麗に切られているからだ。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

なぜゴルフクラブが切断されているのか分からず、声をあげるしかなかった。

 

「何でだ!?」

 

周りの観客たちも分からない。真九郎以外は何が起こったか分からないだろう。

 

「何しやがったてめえ!!」

「切っただけだよ」

「何だと!?」

 

バターナイフでゴルフクラブを切断したなんて誰もが信じられない。

そう思って切断されたゴルフクラブを切彦に投げたが、その後に思いさらされる。

切彦がバターナイフで残りのゴルフクラブを細切れにしたのだ。今度は周りの観客も分かるようにだ。

 

「う、嘘だろ。バターナイフだろアレ」

「シンジラレナイ・・・」

「何者なんだ彼女は!?」

 

観客たちはそれぞれのことを呟く。信じられないと思っているのは天使自身だ。目の前で自慢のゴルフクラブをバターナイフなんかで切断されたのだから。

 

「どーすんだ。give up or challenge?」

「んぐぐ、チャレンジだ!!」

 

武器を無くしたが基礎訓練をおこなっていないので肉弾戦で戦える。

拳と蹴りを繰り出そうとするが、その前に切彦がリングを切断した。

 

「ほえ?」

「give upだろ?」

 

切彦対天使の勝負は切彦の勝利で終わった。観客たちからの歓声が爆発。耳を塞ぐくらいうるさい。

 

「お前・・・何者だよ?」

 

バターナイフをポッケに入れて、のんびりした声で口にする。

 

「斬島切彦。あいむひっとまん」

「あ?」

「また格ゲーしましょう」

 

正直リアルファイトするよりも格闘ゲームをしている方が楽しいものだ。

いきなりの格闘ゲームの誘いに天使はポカーンとする。さっきまでの鋭い殺気は何処えやらって感じだ。

 

「お、おう。今度は負けねえかんな!!」

「ではまた」

 

何事も無くリングから降りる。

 

「よお天。普通に負けてんじゃねえか」

「うるせえ。でも師匠が戦うなって言ってたのが分かったぜ。あの野郎とんでもねえ強さだ。もしかしたら辰姉が覚醒した状態でも勝てるか分からないぜ」

「おいおい、マジかよ」

 

辰子は板垣家の中で切り札とも言える存在。姉弟ならどれくらい強いかは当然分かる。その切り札でも、もしかしたら敵わないと言うのだから信じられないのだ。

 

「だが、あの切れ味は確かにとんでもねえな」

「だろ」

「とんでもねえ女がいるもんだ・・・って、あの女はここらでの代行業をしている源の連れかよ」

 

そして更に忠勝の隣にいる真九郎を見てニヤリとする。それは良い男を見つけたからだ。

 

「おいおい。源の野郎は前から良い男と思っていたが今回は更に追加で良い男がいるじゃねえか。興奮するぜ」

「どこ行くんだよ」

 

己の野獣が起き上がる。自分の野獣を鎮めたい欲求に駆られるためか、足は勝手に動いていた。

 

「よお」

「お前は・・・板垣竜兵」

 

不良の大将がズンズンと近づいてくる。彼からは暴力の雰囲気しか感じない。どんなものも全て力でねじ伏せる存在だ。

 

「お前ら良い男だな。どうだ、もう青空闘技場も閉まる。これから夜の町を一緒に過ごさねえか?」

「え?」

「プククク、気を付けろ。竜はガチホモだかんな。油断してたらすぐ掘られるぜ」

「え・・・」

 

天使がとても怖いことを呟いた。その言葉を何度も頭の中で確認するが、やはり怖いことだった。

 

「そう身構えるなよ。興奮しちまうぜ」

「・・・悪いが俺たちはもう帰る。てめえの相手をしてる暇はねえよ」

 

少しだけ後退する。忠勝は真九郎と切彦を見て、2人だけに聞こえるように呟いた。

 

(俺が合図したら走るぞ)

(分かったよ源くん)

(・・・分かりました)

 

ズンズンと近づいてくる竜兵にサービスで貰っていたドリンクを投げつける。それが合図となって真九郎たちは走り出す。

 

「あ、待てお前らぁ!!」

 

追いかけっこが始まる。捕まれば野獣の相手をする嵌めになるだろう。

それだけは御免被る。真九郎たちは全力で逃げる。

もし、逃げられなければ力でねじ伏せるしかないだらう。




読んでくれてありがとうございました。

ついに不良の大将に目をつけられた真九朗。
イロイロと危険です・・・はい。背後を取られたら最後だなあ

次回は久しぶりに戦いとなります。
頑張って書かなきゃ!!

ではまた次回!!

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