今回は水上体育祭です。
海なんて・・・もう行ってないなぁ
043
青い空。広大に広がる海。熱くサンサンと降り注ぐ太陽。女子の可愛い水着。そして男共の歓喜。
今、川神学園は水上体育祭と言う体育祭が行われているのだ。海で体育祭とはまた珍しい行事であると真九朗は思う。
そして更に驚いたのは女子の水着である。正確には驚いたと言うよりも「え?」と言う素っ頓狂な声が出ただけだ。
「この学園の指定水着がスクール水着・・・」
「アハハ・・・スク水なんて小学生以来ですよ」
銀子と夕乃が何とも言えない顔をしている。気持ちは分からなくもないがまさかこの年にもなって着るとは思わなかっただろう。
真九朗はどう言えば分からないが、取りあえず「似合っている」と言う。そして銀子の返事は「馬鹿」であった。
それにしても本当に男共は歓喜しまくっている。そして一部の女子もだ。
「夕乃ちゃーん!!」
百代は夕乃の豊満な胸を揉むために突撃するが避けられる。燕にも避けられていたので次は夕乃をターゲットにしたのだ。
「駄目ですよ百代さん」
「だってだって夕乃ちゃんの胸がけしからんだもん!!」
「だもん・・・じゃありません」
美少女だらけで男子学生と百代は大興奮である。そして逆に女子学生はイケメン男子学生にも興奮している。男子も女子も青春である。
そしてそんな美少女である百代はオメガウェポンとある男子学生に言われていたが大和たちも妙に納得してしまうのであった。
「何でこの可憐で美少女である私がオメガウェポンなんだー!!」
「いつもの行動から出た錆でしょ」
どうしようもない。
「それにしても紫まで何で居るんだ?」
「真九朗が海に行くと聞いて来たのだ!!」
スク水姿の紫が何故か一緒に来ていた。彼女のスク水姿は年相応と言うべきか、良く似合っている。
「似合っているよ紫」
「そうだろうそうだろう!!」
「とてもお似合いです紫様!!」
そしていつの間にか準が膝をついて褒めていた。彼はロリの居るところに現れる能力でも持っているのかもしれない。
「おお紫!!」
「紋白よ。私も来たぞ!!」
「紋様ぁぁぁぁ!!」
ダブルロリコンビが揃う。準にとって神々しすぎて全ての穢れが祓われるようだと呟く。
「ああ・・・やはり不純物の無いロリは良いな。そう思わないか紅」
キラーパスが飛んできた。これには何も言えない。最近、真九朗は準によく話しかけられる。
仲が良いのは構わないのだが、それで勝手にロリコンと称されるのは勘弁してもらいたいものだ。しかし彼が「可愛い」と言う感想は同意である。
「やっぱり紅はロリコンか」
「違うからね島津君!?」
「でも今の光景を見るとな」
真九朗の両手には紫と紋白。両手に花と言うよりもも両手に小さな花だ。しかしこれでロリコンとは言われたくない。せめて保育園のお兄さんと言ってもらいたい。
それならまだマシだろう。周りの見る目が変わるはずだ。本当にロリコンと称されるのは勘弁してもらいたいのだ。
「では遊ぼうではないか真九朗!!」
「いやいや、今日は遊びに来たんじゃないんだよ紫」
「あっ、そうであったな。すまぬ。すっかり忘れていた」
「紅真九朗。貴様は紫様と遊ばないと言うのか?」
「リンさん・・・その剣は抜かないでください」
「これはアクセサリーだ」
紫の護衛としてリンも来ており、水着は前に九鳳院系列で遊んだ時のものだ。リンも美人なので男子学生からは大好評である。
それでもアクセサリーと言っている2本の刀を帯刀しているので一部の男子学生は怖がっているが。
「でも時間が空いたら遊ぶよ紫」
「うん。じゃあ私は真九朗を応援するからな!!」
「ありがとう紫」
紫の応援されたら頑張るしかないだろう。
「私も応援しますよ真九朗さん」
「夕乃さんもありがとう」
「ま、頑張りなさい」
「銀子もね」
「私は日陰で本を読んでいるわ」
「それって良いのかよ」
「2Sの雰囲気はヤル気無しよ」
銀子の言ったことは本当であり、2Sのクラスはゆっくりとしようとする雰囲気だ。水上体育祭に参加するというわけでなく、バカンスしに来た感じだ。
「そうなの井上くん?」
「ああ、そうだぜ。クラスの連中はバカンス気分だよ」
準はヤレヤレと言った顔をしている。そろそろ冬馬と小雪が気になるので2Sのクラスへ帰っていった。
本当は紫と紋白の所から離れたくない気持ちがあるが仕方ない。チラチラと見ながら2Sに帰って行く。
「後で2Sとやらに紫が行くから紹介してくれなー」
「・・・はぁ!!」
「ん?」
「イエス。マイロード!!」
ノリノリで帰って行った。
「元気なハゲだな」
「ロリコンだからな」
「ロリコンってなんだ?」
「紫は知らなくて良いから」
「知らなくて良いのか?」
「知らなくていいんだ」
紫には知らなくて情報がある。それがロリコンだ。本当に知らなくて良い情報だ。
「私もそろそろ戻るわ」
「うん。またな」
銀子は真九朗たちと会話した後は自分のクラスである2Sに戻ると口をきつく閉じた。理由はクラスの雰囲気にある。
銀子がクラスから離れる前はクラスのほとんどはヤル気が無い感じであったのになぜか皆が水上体育祭でのヤル気がガンガンに出していた。それはもう人が変わったように。
しかも数分前まで普通だった準も変化していた。数分前に何があったか気になる。
「これは一体何?」
「ああ村上さん。これは京極先輩の言霊のせいさ」
「言霊?」
言霊とは言葉の力。言葉には意味があり、力がある。
人は言葉に惑わさせられたり、信じたり、力になったりするのだ。誰もが持つ力だが、その力を極めるのが京極だ。
「京極先輩はみんなのヤル気を出すためって言ったけど・・・」
「これ洗脳の類ね」
「あ、やっぱり?」
言葉は人を誘導させる力を持つがこれはもう洗脳の域だろう。言葉の力も極めればとんでもない。
「行くぞ我が主。お前は前だけを見ろ。後ろは全て俺に任せろ!!」
あの与一ですらノリノリである。どの時代も言葉に強い意志を持った者が人を動かした。これもその1つだろう。
「その結果がこれなのね」
ヤル気マンマンの2Sは怒涛の勢いで競技に参加して優勝へと近づいていく。無論、2Fだって負けていない。勝負は2Sと2Fで拮抗している。
岳人対準、翔一対英雄、一子対小雪。どの勝負も熱い。
「なんだなんだ。2Sの奴らは妙にヤル気だな!?」
「慢心してくれないと勝てないぞ」
「妙に元気ね」
2Fの感想はごもっともだろう。
そしてその勢いについていけず、ただただ流される銀子と弁慶。補足だが真面目な義経は競技に参加していた。
「義経は与一が競技に参加してくれて嬉しいぞ!!」
「任せな主!!」
「別人だろ」
本当に怒涛の勢いで競技をこなしていった。そしてそろそろ終盤へと近づく。
ここで学長である鉄心が新たな競技を宣言する。それは代表者が段ボール被って女性の足を見て、誰かを見極める競技である。
これが体育祭の競技かどうか分からない。
「・・・ここの学長って」
「言いたいことは分かるよ村上さん」
044
人の足しか見えない。これが真九朗の思ったことだ。
今、段ボールを被って女性の足を見ていると言う訳の分からない状況である。しかもこれが体育祭の競技だと言うのだから本当に分からない。
いまいち自分が何をしているのか分からなくなるのであった。そして見ている足も誰の足か分からない。
とりあえず分かるのは2Fのクラスの女子と言うだけ。正直に言ってしまうとつい最近に交換留学してきた真九朗に分かるはずも無い。
だから答えなんて、ここ一番の勘で当てるしかない。運任せである。
「クリスさん?」
クリスと答えたのは単純に頭に浮かんだからだ。彼女とは決闘しているので川神学園の中で一番印象に残っている。
「正解じゃ!!」
適当に言ったのが正解で自分自身でも驚いている。
「凄いな真九朗殿。よく分かったな」
「いやいや、これはもう勘だよ」
勘でも正解すればこっちのものだ。この競技は難しく、クリアできる者は当たり前に少ない。しかし本当にどうでも良い競技であった。
「では次じゃ!!」
「おいおいまだあるのかよ?」
学長である鉄心が考えた競技はまだあるようだ。しかも次の競技はさらにどうでもよいものである。
競技名は「ますらお決定戦」。内容はまず男が磔にされる。女が磔にされた男を誘惑する。男の獣が反応したら負け。反応したら電気が走る。最後まで残った者が男の中の男である「ますらお」だ。
「・・・・・・・・」
この競技を聞いて絶句してしまう。川神学園はどうなっているのかいろいろと問いただしたいものだ。
それを察した大和は真九朗の肩に手を置いて説明する。
「言いたいことは分かるけど、これが川神なんだ」
「川神って・・・」
そもそもこれが大の大人が考える競技なのだろうか。
「まあ学長だし」
(学長って・・・)
ごちゃごちゃ考えても競技は始まる。1クラス1人が選出される。2Fは大和か真九朗まで候補として出た。
「いや、俺は・・・」
「案外、紅くんの方が良いかもしれない」
「直江くん!?」
理由は代表で出るよりも、軍師として相手を潰す考えをしたいからだ。
「まあ頑張って紅くん」
「ちょっ!?」
強制的に磔にされる真九朗であった。本当に本当にこの水上体育祭が分からない。
彼の目の前には女。聞こえてくる男共の悲鳴。そして焦げ臭い臭い。これは絶対に水上体育祭では無い。
「何やってんのよアンタ」
「ははは・・・何か強制的に参加させられたんだよ銀子」
「馬鹿ね」
呆れる銀子。彼女が呆れるのもいつものことである。
「・・・誘惑するのか銀子?」
「しないわよ。私が誘惑したら即電気ショックでしょ」
「自信あるんだな」
「アンタ相手なら簡単よ」
ここまで言われれば真九朗も男としてプライドがある。何か言い返そうとしたが前の出来事を思い出す。
それは銀子に2人きりで旅行に行かないかと言われた時だ。その時は本気でドキリとした。そのことを思い出してしまうと言い返せない。
「誘惑されないように精々気を付けることね」
「そうだな・・・誘惑されたら電気が走るし」
銀子は真九朗から離れて遠くから本を読みながら観察する。すると真九朗の元に2Sの女子たちが集まってくる。
「真九朗くんが磔にされてる!?」
「へ~・・・真九朗が代表なのかぁ」
「義経さんに弁慶さん・・・」
他にもあずみやマルギッテ、心、小雪などが集まって来た。彼女たちは誰もが認める美人である。いきなりピンチだ。
あの真九朗が磔にされているのを見てあずみは笑う。
「ははは。おいおい真九朗。磔にされて気分はどうだ?」
「あんま良くないですあずみさん」
磔にされて気分なんて良くないに決まっている。これで良い気分と言うのは特殊の人たちだろう。
もう苦笑いしかできない状況である。そしてよくわからない競技も始まる。
「アタシが誘惑してやんよ」
「お手柔らかに・・・」
真九朗の周りに2Sの美人たちが集まってくる。彼も男だから水着美人に囲まれればドキドキするのは当たり前。
「私もがんばろっかな~」
「義経も頑張るぞ!!」
「この競技に頑張る要素はありません」
弁慶は色気溢れるポーズをし、義経は恥ずかしがりながらポーズをとっている。これには男だったら嬉しく反応するだろう。
だが耐える。なぜなら反応したら電気が走ると聞けば性欲求よりも恐怖の方が勝るに決まっている。
(だと言うのに・・・既に他のクラスの代表者は電気の餌食になってる。え、普通は恐怖が勝つものじゃないかな)
川神学園の男子は恐怖よりも性欲求が強いらしい。だから電気ショックの餌食になっているのだ。
「色気のあるポーズじゃダメか~。じゃあもう少し攻めてみるか」
「ちょっ・・・弁慶さん!?」
顔が近い、そして「ふぅ」と息を吐いて来た。これにはゾワゾワしてしまう。
彼女はとても色気があり、艶がありすぎる。彼女のような存在をエロイ女っていわれるのかもしれない。
(・・・そう思うのは失礼かな)
「ふんふ~ん」
「わわわ、弁慶が攻めてる!?」
「アタイたちも攻めるか猟犬」
「くだらない競技ですが早く終わらせましょう。相手はただの学生ですから」
「そりゃ違うぜ猟犬」
「む・・・確か彼は揉め事処理屋でしたね」
「そうだけど違うぜ。あいつはただの揉め事処理屋じゃねえ。あいつは裏じゃ有名な奴だぜ」
裏では有名と聞いてマルギッテは首を傾ける。揉め事処理屋の学生が裏で有名とは気になるのは確かだ。
マルギッテは軍人であるため、多少は裏のことも知っている。しかし彼女は真九朗活躍のことは知らない。それはマルギッテが日本に居ないで海外にいたからと言う理由もある。
「彼は裏ではどのような存在なのですか?」
「あいつは裏で「孤人要塞」と引き分け。「炎帝」には勝利した男だ」
「なっ・・・あの「孤人要塞」に!?」
「ああ。あいつもある意味とんでもない男だよ」
まさかの事実を聞いて驚く。それもそうだ。過去に彼女は「孤人要塞」に戦ったから分かる。
あの化け物によく引き分けまで持ち堪えたものだ。普通の者なら一瞬で殺される。そのような化け物に引き分けは凄い。
「ほう。あの男がな」
あずみの説明を聞けば興味を出すマルギッテ。競技には興味は無いが真九朗自身には興味が湧き出た。彼女も彼のことを知ろうと近づく。
「マ、マルギッテさん?」
「ふむ・・・鍛えられている身体です。しかし妙な鍛え方だ。普通の鍛え方じゃできない身体だ」
真九朗の身体を触る。くすぐったくて何とも言えない気持ちになってしまう。同じく弁慶に義経も触ってくる。
「つんつん」
「榊原さん・・・つんつんしないでください」
「つんつーん」
「にしてもよく見ると身体に傷の痕があるじゃねえか」
分かる人には分かるのだろう。真九朗はこれでも拳銃で撃たれた経験があるほどだ。なれば身体に傷痕が残るのは当たり前。
それでも崩月の修業で脅威の回復力があるのだから自分でも驚くばかりである。去年で何回拳銃に撃たれたのか数えたくないものだ。
(・・・これって銃痕じゃねえか。どんな修羅場を通ってるんだよこいつは)
(拳銃を受けた肉体か。だが傷は癒えている。武神ほどでは無いがとんでもない回復力だ)
(何か拳銃を受けた傷を見てる気がする・・・)
ベタベタと触ってくる2Sの美女たち。これには本当にドキドキしてしまう。しかし反応したら電気ショックだ。
性と恐怖の堺に挟まれる真九朗は頭がグラグラしてくる。日差しも強いからさらに頭がグラグラする。これは最悪熱中症になってしまいそうである。
早く終わってくれないかと思ってしまう。もしくは誰かに助けてもらいたい。そんなことを思っていたら誰かが声を荒げた。
「こらぁぁぁぁぁ。止めぬか!!」
この声は聴いたことがある。
「ええい。散らぬか!!」
「心さん!!」
「だ、大丈夫か真九朗くん!!」
「助かったよ心さん」
真九朗を助けてくれたのは不死川心であった。
彼女とは知り合い。去年に出会って友達となったのだ。出会いの経緯はいつも通り揉め事処理屋としての依頼である。
心がよく言う選民たちが開くパーティでの護衛仕事。一応何事も無いのが平和だが選民たちのパーティにはたまに事件が起こるものである。そして真九朗が護衛をした日こそが「たまに」が起こってしまった日だ。
逆恨みを持った暴漢が現れて心を襲おうとしたのだ。そこを助けたのが真九朗である。年も近いせいか仲良くなるのに時間はかからなかった。
正確にはいつもの真九朗の意図しない女たらし言葉で懐柔したというのが正しい。
「久しぶりですね心さん。学園ではクラスが違うからなかなか会話できなくて」
「いやいや良いのじゃ真九朗くん!!」
本当はなかなか会話できなくて寂しい思いをしていたのだ。でもそんなことを言えるはずもなく我慢する日々である。
真九朗と一緒になればもう一人で昼食を取らなくてよいし、憧れの友達生活が始まる。
「もう大丈夫じゃからな真九朗くん。今度は此方が守ってやるぞ」
「ありがとう心さん」
本当に助かるものだ。
「何だ知り合いなのか」
「と、友達じゃ!!」
顔を赤くしながら「友達」と宣言する心。そして友達を肯定する真九朗。
これには笑顔になる心。友達と認められてとても嬉しいのだ。口元はついにやけてしまう。
「でもこれは競技であり2F対2Sの勝負だぜ」
「そ、そうなのじゃが。友達が困っていたら助けるじゃろうが!!」
「そんなこと言わない~」
「にょわ弁慶!?」
弁慶が心を絡みつき真九朗へと押しやる。
「にょわ。ごめん真九朗くん!!」
「このまま雪崩れ込めー!!」
「ちょっ!?」
心を巻き込んで弁慶たち2Sの美女たちが真九朗へと雪崩れ込む。今の状況は真九朗に美女たちがベッタリとしている。
一言で言うなら「ハーレム」だ。これは男冥利に尽きるかもしれない。しかしこうも密着してしまえば男として反応してしまう。電気ショック覚悟したがその後のことは更に怖いものであった。
これは覚悟をしても怖い。なぜなら目の前に夕乃がいるからだ。それに紫もいる。
「ゆ、ゆゆ、夕乃さん。それに紫・・・」
「真九朗。他の女にベッタリとはどういうことだ!?」
「真九朗さん後で稽古をしましょう。でもその前にここでお灸を据えます」
電気ショックの方がマシだったかもしれない。真九朗は違う意味でリタイヤした。
読んでくれてありがとうございました。
感想など待っています。
今回は青春?的な物語でした。
それにしても磔に色気に電気ショックって・・・非常識すぎる。