紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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こんにちわ。
今回は真九郎たちがついに川神学園に来た話です。
ま、自己紹介の話ですね。

では、始まります。


武術家の集う学園

004

 

 

金曜の真夜中。川神学園の屋上にて武術を極めた者たちが酒盛りをしていた。全員が渋い飲み方をしているのであった。

 

「ほっほっほ。こうやって月を見ながら飲むのも悪くないわい」

「総代、飲みすぎないでくださいネ」

「分かっておるわい。それにしてもヒュームや、この学園はどうかのう?」

「ふん……赤子だらけだな。だが、マシな赤子もいるのも確かだ」

 

ヒュームはこの学園の学生たちの評価を簡単に話した。世界最強と言われる彼からしてみればの評価である。そのマシな赤子とは数名くらいだろう。

自分の孫はどうかと聞く鉄心にヒュームは「修行不足」と簡単に言い放つ。それを否定出来ない。本当だからである。

いつもサボリ癖のある孫娘には困っている。センスだけで、早い段階で武術を極めてしまった弊害であるだろう。

 

「まったくウチのモモは真面目に修行してくれれば良いのじゃがのう」

「マッタクその通りですヨ」

 

ため息を吐く2人であった。

 

「ところで新しく川神学園に交換留学生を招くそうだな」

「何じゃ知っておったのか。全くどこから仕入れたんじゃ」

「私たちにかかれば簡単なことです。と言っても噂程度で聞いた話ですよ」

 

クラウディオが酒を飲みながら説明を補足する。何もスパイの如く情報を知ったわけでは無い。ただ学生たちの噂話を聞いたから今聞いてみただけである。

 

「近頃の学生はどっから情報を仕入れているんじゃ」

「総代。ワタシは交換留学について知っていましたガ、何人来るのですカ?」

「ほっほっほっほ。3人じゃ」

 

右手の指を3本立てる。

 

「そうですカ。シカシ、その交換留学生がかわいそうでス。クローン組の義経たちに松永燕の登場で学園の生徒たちに驚きを与えていますかラ」

 

その中で交換留学生が来ても新しい驚きは無いだろう。クローン組も燕も初登場は驚かせる場面であったからだ。

 

「確かにそうですね。過去の偉人であるクローンと武神とまともに戦った松永燕様。それ以上の驚きはそうそう無いかと」

「うーむ……確かにそうじゃな。出来れば先に交換留学生たちを学園に呼びたかったわい」

 

ここで「しかし」と鉄心は付け加える。その顔は何か驚かせる隠し玉を持っているようである。

 

「どうした鉄心?」

「実はその交換留学生のうち1人はクローン組や松永よりもある意味有名なのじゃよ」

 

世間を騒がせた過去の偉人のクローン組や学園を騒がせた燕よりもある意味有名と聞けばヒュームたちが気になるのは当たり前であった。

その「ある意味有名」という言葉が引っ掛かるが聞けば分かる。そして鉄心は、もったいぶらずに続けた。

 

「その交換留学生の1人があの裏十三家なんじゃよ」

「何!? 裏十三家だと!?」

 

裏十三家。この単語を聞いた瞬間にリー以外が驚いた顔をした。

 

「総代、ソノ裏十三家とは一体なんですカ?」

「ルーは知らなかったかの。裏十三家とはこの国の裏世界の頂点に君臨していた家系じゃ」

 

現在では裏十三家の半数が断絶、廃業しているがその勇名、悪名、凶名は今なお畏怖の象徴として語られている。

そのため裏世界では強く影響を残しているのだ。

そのことを聞いて驚く。そして険しくなる顔。そんな内容を聞けば学園に招いて大丈夫かと心配になるのは当然であった。

 

「まさか裏十三家筆頭とか言うつもりか?」

「大丈夫じゃよ。来るのは崩月じゃ。それに大和撫子が似合う女の子じゃ」

 

ニッコリと笑うのであった。

 

「崩月ですか。・・・確か穏やかで温厚な者ばかりと聞いていますね」

「逆鱗に触れれば、その恐ろしさを味わうがな」

 

川神にさらなる者たちが集まるのであった。

 

 

005

 

 

月曜日の朝。川神学園のグラウンドにていつも通り学長である鉄心が朝の挨拶を行う。

その挨拶が終われば次は交換留学生の紹介が始まる。知っている者はどんな学友かと気にし、知らない者は「また?」っと思うのであった。

 

「これから学園に新しい学友が増えるぞい。みんな仲良くするんじゃぞ」

 

交換留学生は合計3人。3Sに1人、2S1人、2Fに1人である。

それぞれのクラスは新たな学友がどんな人物かとワクワクする。女子か男子かと言ったり、特別なSクラスに来る人を歓迎してやろうと言ったり様々である。

一部の男子学生は可愛い女子を所望しており、カメラを持つ者まで現れているほどである。もちろん女子学生も同じ考えである。

最初に壇上に上がったのは3Sに所属する女子。大和撫子と言う言葉が似合う崩月夕乃であった。

 

「皆さんこんにちわ。私の名前は崩月夕乃です。短い期間でありますが今日からよろしくお願いします」

 

優しい笑顔を川神学園の学生たちに送る。なれば男子学生は大はしゃぎであった。あと一部の女子も。

 

「大和撫子キター!!」なんて言う者もいれば「清楚と大和撫子で完璧コンビ」とも言う者もいた。

パシャパシャ写真を撮る音も聞こえる。

 

「うおお。すっげえ美人!!」

「うん。それに黒髪も綺麗だね」

「うーん・・・どんどんと美人が来て自信無くしそう」

 

それぞれの学生たちが夕乃に様々な感想を抱く。しかし中には注意深く観察する人物もいるのであった。

 

(あれが裏十三家の崩月か。特に闘気や殺気を出しているわけでは無いな)

 

それとなくヒュームは軽く闘気を夕乃にぶつけてみるが気にしてない反応であった。

夕乃も気付いているが相手からぶつけられた闘気が自分を試すようなものだったので受け流した。

 

(あの金髪の老執事からですね。確か紫ちゃんと同じ世界財閥である九鬼財閥の執事ヒュームさん)

 

裏十三家である夕乃は独自の情報網を持っており、今日のために川神についていくつか情報を持っている。

そのうち九鳳院と同じ世界財閥である九鬼財閥についても知っていたのだ。

彼の反応からやはり裏十三家のことを知っているのだろう。どう思っているかは分からないがこちらから敵対するつもりは無い。

 

(でも真九郎さんに何かしたら許しません)

 

大事な人を守るためなら老若男女を問わず敵対する者は敵として徹底的に叩き潰すと心に決めている。

 

(真九郎さんはうちに婿入りするのですから)

 

裏十三家であろうと夕乃は恋する乙女である。

夕乃の挨拶が終わり、次は2Sに所属する女子学生が壇上に上がる。彼女の名前は村上銀子。

 

「おはようございます。村上銀子と言います。これからよろしくお願いします」

 

淡々と挨拶をこなす銀子。

冷静な挨拶でも川神学園の学生たちは興奮している。また同じく「眼鏡っ子キター」や「クール美人だ」とか言っている。

特に2Sのクラス連中は様々なことを言っている。

 

「ほぉ、此方のクラスに来るか。これは可愛がってやらねばのう」

「若。あの子とか良いとか思ってるんじゃない?」

「良いですね。口説きたくなります」

「義経たちのクラスに新しい学友が来る。これは仲良くしなければならないな」

「そうだね~主は可愛いね」

 

2Sの連中は様々なことを思うのであった。しかし銀子も2Sの個性的な面々に負けていない。彼女は裏世界で有名な情報屋である村上銀次の孫である。

祖父の銀次にはまだ及ばないが、銀子の才能は間違いなく凄いと言えるのだ。真九郎が絶対の信頼を置いているほどである。

そんな彼女なら個性的すぎるSクラスでも上手くやっていけるだろう。コミュニケーションが上手くとれるかは別としてだが。

そして最後は2Fに所属する男子学生。紅真九郎の挨拶の番である。

 

「おはようございます。俺は紅真九郎。今日からよろしくお願いします!!」

 

無難な挨拶をする。そんな彼を見て2Fの学生たちもそれぞれ感想を言うのであった。

 

「へえ、悪くないわね。イケメンと言うよりもカワイイ系かな」

「ヒョロそうだなー。俺様の筋肉を見習わせたいぜ」

「何か武術とかやってるのかしら?」

「紅真九郎か」

 

2Fのクラス連中はそれぞれ思うのであった。それに他の2人と比べると盛り上がりは少し低い。

しかし2Sの英雄や1Sの紋白は顔を笑顔にした。

 

「おお、我が友の真九郎ではないか!!」

「知り合いですか英雄?」

「うむ。去年に知り合ったのだ。彼には助けられたことがある」

「そうなんですね。じゃあ英雄の友達なら私の友達でもありますね」

 

1Sのクラスでも似たような反応が起きている。

 

「おいクラウ爺よ。真九郎だぞ!!」

「そうですね紋様。またお会いすることができましたね」

「うむ。早速スカウトに行くぞ!!」

「あの~紋様。あの紅さんと知り合いですか?」

「うむ。その通りだムサコッス」

 

真九郎も一部の濃い面子に人気があるようである。

これにて朝の挨拶は終わる。真九郎たちは各々が自分のクラスへと向うのであった。




読んでくれてありがとうございます。
感想など待っています。

内容通りで真九郎は九鬼と実は知り合っていたことにしました。
話のネタを広げるための処置です。

どうなるかは未定ですが、次回もゆっくりお待ちください。

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