今回からつい弁慶ルートのメインである古書争奪戦が始まります。
本当にタイトル通りで始まりまでです。
では、物語をどうぞ!!
045
川神学園の屋上。ここは昼休みのスポットだったり、サボりのスポットだったりする。
今は昼休みであり昼食の時間だ。真九郎はアンパンと焼きそばパンを齧り、牛乳を飲み込む。簡単な昼食だが彼にとっては十分な食事だ。
「それだけで足りるのか真九郎くん?」
そう言ってくれたのは心だ。真九郎は今、彼女と昼食をとっている。一緒に昼食を食べようと約束したのだ。
「うん。足りるよ」
去年は金欠で食べられないことがあった。それに比べると食事ができるなんて幸せなものだ。
その度に銀子や夕乃に心配されるのだから自分自身に困ってしまうものである。
「いや、それだけでは足りぬだろう。此方のお弁当を少しやるぞ!!」
心の弁当は重箱で真九朗が滅多に食べられない食べ物ばかりだ。流石名家だろう。
「いやさすがに・・・」
「遠慮するものではないぞ。人がせっかくあげると言うのだから貰うべきじゃ」
「そんなものですかね?」
確かに人の好意を無下にするわけにはいかない。ここは甘えて心の豪華弁当を貰うことにしたのであった。
何を貰えるのかと期待していたらメインそうなおかずである伊勢海老のエビフライをつまむ心。しかし伊勢海老。その食材は真九朗が食べるなんて本当に無い。
「し、真九郎くん。あ、あーん」
「・・・え?」
顔を真っ赤にしながらプルプルと口元にエビフライを近づけてくる。
一瞬だけ間が開いたけれど、ここは何もしないのは空気が悪くなるだろう。口を開いて運ばれるエビフライを食べる。
肉厚でプリプリしている。衣もサクサクしていて美味しいと言うのが感想だ。何故か真九朗は自分の食生活に悲しくなる。
「うん。美味しいよ心さん」
「そ、そうか。ならもっとやるぞ!!」
「それだと心さんのが無くなるよ」
食事は美味しく続く。補足だが夕乃に見つかれば後が怖いものである。ただでさえ水上体育祭での出来事で稽古をしたのだ。
更にまたあの稽古を続けると死闘もしていないのにボロボロになってしまう。
「水上体育祭の時はすまぬな」
「いや、気にしてないから。あれは仕方ないよ・・・ははは」
空笑い。もう空笑いをするしかないのだ。
「しかし、まさか真九郎が川神学園にくるとは思わなかったぞ」
「俺も川神学園に来てまさかの再会に驚きばかりだよ」
「真九郎くんはやはり今も揉め事処理屋を目指すのか?」
「うん。揉め事処理屋が俺の目標だからね」
真九郎にはまだ将来を決める時間はある。それでもやはり揉め事処理屋が目指す目標である。
あの柔沢紅香のような揉め事処理屋になりたいと思っている。とても難しいが彼の目標である。
「そうか・・・でも大変じゃろう」
「大変だよ。でもこんな俺が目指す目標なんだよ」
「・・・のう真九郎くん。もし、もしもじゃが、途中で揉め事処理屋では無くて違う職を考えたら此方の下に来ぬか!!」
「心さんの所に?」
「う、うむ。不死川家は名家じゃからな。不満なことはないぞ!!」
名家である不死川家に職としてつく。確かに悪くないかもしれない。
今の真九郎にはいくつかの将来ルートができている。まずは元々の目標である揉め事処理屋。2つ目は九鬼財閥への就職。3つ目は先ほど言われた不死川家への就職。最後は銀子から言われている風味亭への就職である。
この中で一番安定するのは九鬼財閥の就職であろう。案外、真九朗は将来に対してもう道ができている。若者にしてはそうそうない状況である。
「考えとくよ心さん。もしもの時はお願いするよ」
「うむ。九鬼よりも不死川だからのう!!」
046
今日は真九郎はある本屋のバイトをしていた。翔一のヘルプ宣言で真九朗と大和に弁慶が助っ人にきている。
「助かったぜお前たち。即戦力だぜ!!」
「助かるぜ。バッキャロー」
本屋の店長が笑顔で罵声を放つ。おそらく口癖なのか来ていて嫌な気分にはならない。
まずは店長が買い取った価値ある古書を取りに行くことだ。相当な量であるため一人では重労働になる。確かに複数人いたほうが良いだろう。
それに本運びなんて簡単だ。ただ重いだけの仕事であって真九郎には簡単すぎる仕事だ。
「へえ。真九郎って力持ちなんだ~。華奢な割にはってやつ」
「まあね。これでも鍛えてるし」
「確かに。水上体育祭で身体を触ったけど妙な鍛え方だったよね。なんていうか・・・何かを使いこなすような土台作りみたい」
よく分かったと言いたいものだ。用途までは分からないだろうが真九朗の肉体は『崩月の角』を使いこなすために鍛え上げられた。
だから常識はずれの剛力を扱えるのだ。でなければ身体が壊れてしまうだろう。
(武術家だから少しは分かるのかな・・・それに『鉄腕』の奴も俺の身体を見て土台作りは良いって言っていた)
分かる人には分かるのかもしれない。古書の積まれたダンボールをヒョイヒョイ持っていく。量は本当に多いが全然平気である。
バイトが終わる頃には夕方近くになっていた。
「仕事が早くて助かったぜ。バッキャロー!!」
本屋の店長は笑顔である。終わりごろには巨人とクッキー2が迎えに来ていた。それにしてもロボットとは驚きである。
いざ帰ろうとしたら誰かの声が聞こえてきた。メガネにスーツ。整った顔立ちの男だ。
「エコノミーの香りのする場所にファーストクラスが来ましたよ」
彼の名前は武蔵文太。
話に耳を立てると本屋の店長の店を買収に来たようだ。どこにでもこのような揉め事があるようだ。
しかし『揉め事』なら真九朗の出番である。それでもまだ動けない。本人たちの対話に「揉め事処理屋です」と言ってズイズイと出られない。
どちらか片方が言えば今すぐに出られる。真九朗の気持ちとしては本屋の店長に味方したいものである。
(・・・大手でも何か裏があるかもしれない。銀子に頼めば何かしら裏が取れるかも)
気は早いが本屋の店長を頼まれ視点で考えていると文太の方から決闘の話が持ち上がる。何でも6体6の決闘を行いたいと言う。
決闘を承諾していく翔一たち。なんとも荒々しい方法であるが揉め事処理屋である真九郎は気にしない。最終的には力で訴えるのだから。
「紅くんも頭数に入れらてるけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。これはある意味揉め事だ。力になるよ」
「報酬は何か奢るで良い?」
「それで良いよ」
決闘場所は川神で変態橋と称される下の草場だ。
本屋の店長チームは真九郎に大和、翔一、弁慶、巨人、クッキー2。
文太チームは本人である文太、辰子、竜平、大和の母、そして天神館の鍋島正。
「え」
「あ!!」
「てめえは!!」
「ヤホー」
「おう大和!!」
相手のメンバーは案外知り合いだらけであった。
読んでくれてありがとうございました。
感想があればバンバン待っています。
今回の前半は心との会話。後半は弁慶ルートである古書争奪戦です。
それにしても真九朗は早くも竜平に再開ですね。
次回はまた決闘です!!
『角』を開放するのかしないのか!?
また次回をゆっくりとお待ちください。