ついに始まった古書争奪戦。原作とあまり変わらないので巻きで物語は進みます。
そして真九郎はまた彼と戦う!!
では始まります!!
047
夕暮れの河原で決闘が始まる。続々と観客たちが物珍しさで集まってくる。中には知り合いもいた。
(・・・銀子)
銀子も橋の上から冷静に見ていた。表情からは「また面倒事なのね」と伝わってくる。
その通りだとアイコンタクトで返事をするしかなかった。よく見るとクラスメイトや島津寮の麗子までいる。
もうイベントのような感じとなっている。賑やかな川神ならではのことだから住民たちもきにしていないのかもしれない。
「さーて、ここからはアタシがルールをロックに説明してやるぜ」
「メイドがハーレーで登場したよ」
決闘形式は簡単である。
勝負時間は1分。ギブアップは30秒後でなければ宣言できない。ルールは基本何でもあり。
決闘相手は決めるのはサイコロで決める。出た目の数で戦う者が選ばれるのだ。
その中でトランプの1から7までカードがある。決闘が始まる前にカードによって大富豪のような勝負が始まる。それによって勝った者が決闘を流すか続行するかを決められるのだ。
「へへっ、燃えてきたぜ。あの時の借りを返してやるぜ」
竜平の目線は真九郎に送られる。できればもう再会したくない相手だが再会してしまったものは仕方ない。それに今回は依頼されているためお互いに勝手な行動はできないはずである。
しかし、もし決闘になってしまった場合は気を付けないといけないだろう。
「こいこいこい!!」
「ヤル気だね~リュウちゃん」
「あの時のリベンジをしてやるぜ」
「あれ、知り合いでもいるの?」
サイコロが振るわれる。出た目の数により組み合わせが弁慶対文太となった。次はカードにより決闘が行われるか決める。
大和たちとしてはチャンスである勝負だ。ここで1勝をしておきたい。文太が良く分からない計算方法を口にしていたが気にしない。
しかしカードの結果で勝負は流れることとなった。惜しいものをしたものである。
「流れたか」
「みたいだね」
次のサイコロが振るわれる。対戦は大和対大和の母だ。親子対決である。
「がんばれ大和!!」
「おう!!」
決闘が開始される。見ていてヒヤヒヤしていたが結果は引き分け。長期戦では無く、制限時間が1分と言うのに助かっただろう。
それにしても母親だからと言って手加減はしていなかった。愛の鞭というやつかもしれない。
「直江くんのお母さんって強いな」
「元ヤンキーらしいよ」
「・・・へえ」
特にツッコミはせずに疑問を飲み込む。ここで気にしたら面倒ごとがあると理解しているからだ。そして次の対戦カードが決まる。
次は大和の母対クッキー2。人間とロボットの戦いだ。ロボットが戦うとなると案外気になる。実は昔からロボットが好きな真九郎はワクワクしてしまう。
九鬼財閥が制作したと言うのだから驚きである。そう考えると九鬼財閥に就職するのも案外悪くないかもしれない。
ワクワクしながらクッキー2の戦いを見る。やはりロボットらしい戦い方だ。ビームセイバーとかカッコイイとか思ってしまう。
(・・・やっぱ好きなもんは好きなんだよ。でもあの時は誤解やらなんやらで大変だったな)
前に真九郎の大切な物を見つけようと躍起になっていた夕乃や環との時を思い出す。あの後は環のせいで性癖の誤解が生まれたのだから。
「お、クッキー2が勝ったね」
ダイナミックな必殺技で勝利をもたらしたクッキー2。本屋の店長チームが1勝して幸先の良い流れとなる。
「さすがクッキーだぜ!!」
「まあな」
「負けちまったか」
「お疲れ様ですサキさん。実力が未知数の相手が分かっただけでも十分ですよ」
4試合目のサイコロが振るわれる。次の対戦カードは巨人対竜平である。
「ゲッ・・・オジサンかよ」
「んだよオッサンか。オレはあいつとヤリたかったのに。つーか、あのオッサンはよく見る顔だな」
「直江。できればオレはこの勝負流したいぞ・・・」
「高いカードで行くか」
「あ、流す気無いだろでめえ」
勝負は流れずに試合は開始される。
巨人の実力に皆が驚く。真九郎もまた意外に驚く。やはり川神学園の教師をやっているのだから腕は確かなのかもしれない。
それでも油断は禁物だ。竜平の実力は不良であるが確かだ。それでも巨人は竜平の拳を上手く避けている。
「宇佐美先生って強いんだ」
「真九郎みたいに意外って奴だね」
「あはは・・・宇佐美先生と同じかあ」
力の限り殴り掛かる竜平に巨人は目にも止まらぬ速さでカウンターパンチを繰り出した。相手の力を利用したカウンターだから威力は相当ある。
呻き声をあげながら後ずさりする竜平に余裕の顔をする巨人である。それでも相手を舐めてはいけない。相手は暴力の野獣だ。
「リュウちゃんファイト~」
「ったく、これでもちったあ効いたんだぜ辰姉」
「やっぱタフいな。簡単にはいかねえか」
「余裕こいてんじゃねえぞ。行くぞおらあああああああ!!」
油断せずに戦えば勝負は見えていたかもしれない。しかしここで意外な展開が起こった。
グギリと嫌な音を聞いてしまった巨人。それはギックリ腰。なった者は相当の痛みを伴う。ギックリ腰になった者に勝負の微笑みは無い。
あるのは負けと言う二文字と腰の痛みだけである。ギックリ腰にはなりたくないものだ。
「おらああああああ!!」
「ぐえ!?」
竜平の勝利である。
「宇佐美先生大丈夫ですか!?」
「紅・・・あと頼んだ。オジサンもう駄目かも」
「今直しますよ」
「え、弁慶治せるの?」
「どれどれ見せてみ。そぉぉぉい!!」
「痛あああああああ!?」
それでも治ったのだから驚きである。弁慶って整体師になれるのではなかろうか。
「流れが悪くなってきたな」
「紅くんもそう思う?」
「ああ。次は勝っておきたいな」
しかし大和の希望は叶わない。今度の勝負は鍋島対クッキー2。クッキー2が男を見せたが結果は鍋島の勝利であった。
勝負の流れは悪い。しかもカード対決もまるで文太に読まれているように負けてしまう。
(・・・何でこうもカード対決で負けるんだ。何かあるのか?)
「えーとこの辺かあ?」
「あと2歩後ろだね」
鍋島に空高く殴り飛ばされたクッキー2をキャッチする。ダメージが酷く連戦させるのは不可能だろう。
もしまたクッキー2が戦う羽目になったら不戦勝になるだろう。こればかりは運に任せるしかない。
「ダイスロォォォォル!!」
次の対戦は辰子対大和。相手はほんわかしているが弁慶の見立てでは相当強いとのこと。
もし捕まったらヤバイとアドバイスをする。大和も避けに徹することを決める。
「頑張って直江くん」
「任せて」
勝負が始まる。最初は何とか避けていたがついに捕まってしまう。
「直江くん!?・・・・・て、あれ?」
「ん?」
「ありゃあ・・・」
大和は辰子に捕まった。そして鯖折りのように絞められているように見えるが実際は抱きしめられているだけである。
普通に美少女に抱きしめられているので男子からは非常に羨ましい状況だ。橋の上にいるクラスメイトたちは絞められているのに耐えていると勘違いしている。
近くに居る真九郎たちは呆然である。このままだと勝負は引き分けだろう。そして予想は正解で引き分けであった。
「・・・あれ?」
「お、おい辰姉なにしてんだ。あのままぎゅいーと絞めて、そいやっと投げ飛ばしてやればよかったのによ」
「ふぃ~」
「そんなツヤツヤした顔をされてもな・・・」
ツヤツヤした顔で満足顔である。何だか締まらない決闘であった。
気を取り直して次の対戦カードが決まる。大和の母対巨人である。この勝負は流れた。
「助かるぜ。オジサン紳士だから女性相手だとね」
「さっきのダメージが抜けてないだけでしょ」
「それにしてもカード勝負が負けてばかりだ。何かあるのかもしれないな」
「真九郎の言う通りかもね。何か相手ちょっと行動が怪しいよね」
現在の所、大和たちは1勝しかしていない。相手の文太チームは3勝であって大和たちはピンチの状態である。
それにしても相手の文太は大和の読みを的確に当てている。まるで朱雀神のように心を読む力でも持っているかのようである。
でもそれは無いと言える。心を読める力を持っているなら今までの勝負を有利にこなしていただろうし、決闘をするまでも無く本屋の店長を追い込んだであるはずだ。
(何か裏があるかもな。銀子なら分かるかもしれない)
真九郎の考えは正解である。銀子はそれとなく周囲の情報を集めていた。すると河川敷に設置されている監視カメラに文太が細工してあると見つけ出していたのだ。
このことを伝えようしたいがこの勝負に銀子は無関係。どうするか考えたが先にイカサマをしている相手にどう思っても関係無い。メールを真九郎に送る。
(銀子から・・・なるほどね)
メール内容を確認して真九郎は大和に小さく呟く。
「やっぱり・・・」
「やっぱりって事は気付いてた?」
「一応ね。でも確認はしてみる」
勝負の流れは変化する。次の勝負は翔一対鍋島で勝負結果は鍋島の勝利。
4対1で文太チームがリーチをかけたが、ここからが本番とも言える。
もしかしたら最後の戦いになるかもしれないサイコロが振られる。
「よっしゃあリベンジだぜ!!」
サイコロの目により次の対戦カードが決まる。その対戦カードは真九郎対竜平。
「なに向こうの不良と知り合いなの?」
「まあ・・・ちょっとね」
実は忠勝の夜の川神を案内されていた時に知り合い勝負をしている。前回は撤退戦を目的とした勝負であったが今回は本当に勝ちにいかなければならない。
「俺は戦えるよ直江くん」
「任せたよ紅くん」
2人がカードを出す。文太が2で大和が3であった。
「は!?」
「どうしました?」
「い、いや何でも無い」
文太が予想外と言った顔をしている。それでもすぐに何か納得したような顔をして終わった。
「頑張れ真九郎~」
相手は力のある不良だ。容赦無く闘うことを前提にした方が良いだろう。ストレッチをして身体を慣らす。
竜平は既に準備が出来て前に出てきている。相手がもう準備できているならばこちらも前に出る。
「久しぶりだな真九郎。今度は負けねえ!!」
「悪いが今回は撤退戦じゃないんでね。俺も負けるつもりは無い」
お互いに拳を構える。そして名乗り上げる。それは本気の名乗りでは無いが。
「俺は揉め事処理屋の紅真九郎」
「板垣家長男。板垣竜平!!」
今度は撤退戦では無い。勝たねばならない決闘だ。
048
橋の上には観客が更に増えている。クリスや京、マルギッテまで観客として来ていた。
彼女たちは既に来ていた麗子に状況を説明される。
「それはまた大ピンチな状況だな」
「そうなんだよ。みんなで大和ちゃんたちを応援しよう!!」
「うん。もちろんそうする。でも大丈夫な気がする。大和の目を見ると打開策ができたんだよ」
「そうなのか。でも真九郎いるしな。大丈夫だろう!!」
(紅真九郎・・・あの『孤人要塞』と引き分けた男。どれほどか見せてもらいますよ)
橋の下。
大和の母である咲は真九郎を見て思う。
(あの子が紅真九郎。あの柔沢紅香の弟子か・・・こりゃあ分からない展開だな)
(あの子は今回で初めて闘うな。まだ実力が未知数だけど不良のまとめ役である板垣竜平なら大丈夫だろう)
文太は楽勝だと思い、大和の母は鋭く今回の戦いを見る。
今から始まる彼の戦い方は今までの戦い方と違う。普通に見る分には今までの決闘は可愛い方かもしれない。
しかしこれから始まる真九郎対竜平の決闘は本当に容赦が無いと言うべきだ。最初に決められたルール無用と言うのが効いている。
これが揉め事処理屋の、紅真九郎の戦い方だ。相手を容赦なく叩き潰す。金髪メイドのステイシーが勝負開始を言い放つ。
049
真九郎対竜平。
「行くぞおらああああああああああ!!」
「行くぞ」
拳と拳が合わさる。お互いに引かずに拳の押し合いである。ガツゥンと骨と肉がぶつかる鈍い音を感じても気にしない。
余った片手で手刀を作って相手の目を擦るように振るが避けられる。次に金的狙いで蹴り上げるが、これもまた避けられる。
「やっぱ容赦ねえな。そう思って警戒しててよかったぜ」
「前に戦ったからな。避けられるのは予想していたさ」
「ふん」
また拳同士が合わさる。だがすぐに拳を引いて今度は回し蹴りで横腹に蹴り払った。
「この野郎!?」
竜平も負け時と無理矢理にでも拳を真九郎の顔にめり込ませた。だがこんなものは歯を食いしばれば我慢できる。
歪空魅空に顔面に拳銃で撃たれた時の痛みに比べれば軽いものだ。真九郎は気にせずに近づいて同じように竜平への顔面へと拳をめり込ませる。
「ぐおああ!?」
「顔面を殴られるのは痛いだろ?」
「ケッ・・・やるじゃねえか。でもこっち今回は猛るに猛ってんだ。まだ終わらないぜ!!」
「覚悟は決まってるってことか。でもこっちも乗りかかった船だから負けるつもりは無い」
拳のラッシュで攻めるが真九郎は受け流す。そのまま流れる水流のように動いて裏拳を勢いよく放つ。
スパアアアアン!!っと音が響くだけで裏拳の威力がどれ程のものか理解できるのだ。腕で防がれたが骨まで響いて痺れるだろう。
水流のように流れる動きで真九郎が攻め続ける。まるで手足が鞭のように振るわれた。
「あれが『崩月流』か。こりゃあ相手するとなると厄介かもな」
大和の母である咲は観察を続ける。見ていて感想はまるで喧嘩殺法と思ってしまう。彼女の感想は正解である。
他の武術と違って確実に相手を破壊するように戦っている。あれが本気の殺し合いで使われたらゾッとしてしまう。
そもそも真九郎は相手の急所を狙うのに躊躇いが無い。それだけでも容赦の無い者だと理解してしまう。実際に勝つのに急所を狙うのは適格だろう。
しかし今回は大和の母である咲は大和とクッキー2と戦っていたからすっかり油断していた。確実に相手を壊す相手もいると言うことを。
(ったく流石は柔沢紅香の弟子ってとこか。彼女も容赦無いしな)
どんな相手でも銃をぶっ放す紅香を思い出す咲であった。
「おらああああああああああ!!」
「ぐう!?」
連続で拳が振るわれる。デタラメだが威力は人間を壊すくらいあるが竜平の重い拳を受け止める。
ガッチリと拳を握りつぶすくらい握る。そしてそのまま睨み合いとなる。
「楽しそうだな」
「おう楽しいぜ。潰しあいってのは本能が滾るからな。闘うギラギラした感じに飢えてるんだよ!!」
確かに彼の目は闘いに飢えている目をしている。最悪の未来だと竜平は人を殺してしまうかもしれない。最悪の未来の話ならばだ。
でも一応彼にも人の心はある。姉である辰子と話す時はどこか優しい彼となるからだ。家族は信じる。他はただの人としか思っていない人だ。
「おうらあああ!!」
残りの拳も振るってきたが同じく受け止める。
「何!?」
「戦闘狂か。あんた戦闘屋になれるよ」
真九郎は思ったことをそのまま口にした。彼ならきっと戦闘屋になれるだろう。
「戦闘屋か・・・良いかもな」
竜平も満更悪くないと口をニヤける。
「好きなように暴れられて負けたらそこで終わり。悪くないなあ!!」
両腕に力を込めて押し込もうとするが真九郎も負けまいと押し返す。
「あんたが戦闘屋になろうがなかろうが俺には関係無い。でもこの勝負は勝たせてもらう」
「言ってろおおお!!」
「ふっ」
力をいっきに抜いて前へと倒してバランスを崩させる。そして小指を立てて竜平の左耳へと容赦無く突っ込んだ。
「うごああ!?」
鼓膜の完全破壊とは言わない。ただ小指を耳の中に入れただけだ。他人の指が人の耳の中に入ったら異物感が相当あるだろう。
だから真九郎のいきなりの行動に竜平は対処しきれなかったのだ。
「もう沈め」
右拳に力を込めて顔面に力の限り殴った。そしてトドメに踵落としで意識を刈り取り勝負を終わらせた。
「そこまで。勝者は紅真九朗!!」
竜平は強い。しかし真九郎の方が戦闘の場数として上だったのだ。
読んでくれてありがとうございました。
さて、今回はまた真九郎VS竜平でした。
そして勝負結果は真九郎の勝ちです。不良相手には負けませんよ。
容赦なく耳に小指を突っ込む行動はさすが揉め事処理屋と言う他ありませんね!!
次回でもう古書争奪戦は決着です!!
どうしようかなー