今回はついに名乗りをあげます。やっとかな。
どんな内容かは物語をどうぞ!!
前回と変わらず巻きな感じですが生暖かい目で読んでってください。
050
真九郎対竜平の勝負は終わった。彼の戦いを見た者たちはそれぞれの事を思っていた。
橋の上にて。
「やはり真九郎は強いな!!」
「うん・・・それに何て言うか容赦の無い戦い方だったね」
(成程、確かに容赦が無い。それに強い。しかしあの実力で『孤人要塞』と引き分けたとは考えにくいな)
真九郎は強い。でもマルギッテは『孤人要塞』と戦った過去があるためあの彼女の強さを知っている。だから真九郎の実力を見ても納得がいかない。
確かに強いがそれでも『孤人要塞』と引き分ける程では無い。しかし彼の実力はマルギッテが所属する猟犬部隊に匹敵はするだろう。
「紅くんってあんなに強かったんだ」
「こりゃ驚きだわ。アタイってばゾクゾクしちゃった」
観客たちも彼の強さに驚いている。そして歓声が上がる。その中にいる銀子は小さく「お疲れ」と言う。
聞こえていないだろうがそれでも無意識に言いたかったのだ。これで勝負の流れは完全に変化する。
(ふむふむ。真九郎くんは容赦の無い戦い方をするっと・・・まあでも対処はできるかな)
いつの間にか燕が彼らの戦い方を観察する。実力者揃いの戦いとなれば燕としては観察しないわけにはいかない。
(うーん強いや。たぶん学園の中でも上位に入るね)
気になる相手はとことん調べる燕。真九郎は燕に観察されるに値する者である。
(・・・でも何か隠してる気がするんだよねー)
橋の下。
(おーおー、強いなあの小僧。ヒュームが評価しただけはある。でも何か実力を隠してるな。その実力を見てみたいもんだぜ)
(流石は柔沢紅香の弟子。強いわ。もし戦うことになったらアタシも覚悟決めないとな)
「ば、馬鹿な。あいつあんなに強いのか!?」
鍋島と咲は納得し、文太はまさかの強さに驚いていた。
「リュウちゃん大丈夫~?」
「こいつは意識失ってる。まあそのうち起きるから大丈夫だろうな」
真九郎は竜平が辰子に介抱されているのを見てから大和たちの陣営に戻る。「ふう」と息を吐いて気を抜く。
気を抜いたせいか痛みが急に身体中に伝わる。心の中で「痛たた・・・」と呟く。痛いものは痛い。でも勝利したのだ。
これで次の試合につなげることができた。まだ勝負は分からない。もしまた真九郎が選ばれても戦う。
「ただいま」
「おかえり真九郎。強いね」
「お疲れ紅くん。これで次につなげられたよ」
「凄いな真九郎!!」
大和たちから労われ感謝。疲れたがまだ戦える。正直戦うにあたって一番マズイのは鍋島だろう。
彼は武術者として壁を超えた実力者だ。竜平とは比べものにはならない。相手はヒュームや武神である百代と相手するようなものだ。
(・・・一応、引き分けになれば勝ちって言われたけどキツイかな。何か策を考えないと。もしくは『角』を開放させるか)
次の対戦カードが決まる。弁慶対辰子。ここに来てついに弁慶の出番となる。
今まで待っていたかいがあったと言うものだ。弁慶はストレッチをしながら試合に臨む。カード対決も仕掛けが分かってきた大和も大丈夫。
文太はまだ大和が仕掛けに気付いていないと分かっていないのかアタフタしている。
「じゃあ始めな!!」
弁慶対辰子の勝負が始まる。
「よーし投げちゃうぞ~。ポーイって」
「行くよ」
力と力の対決だ。だが殴り合いと言うわけでは無い。弁慶は一瞬の隙を突いてバックドロップを出す。
良い感じに決まったが辰子は打たれ強い。簡単にはノックアウトにはならない。技のパレードリーがたくさんだ。それでも辰子は起き上がる。
辰子は力を大きく攻撃を振るう。弁慶は確実に技を打ち込んでいく。勝負の流れは弁慶だ。
「源氏式、スイパーホールド!!」
辰子を捕まえて絞める。このままなら勝負が決まるが急に辰子が豹変したのだ。まさか急激に力を増幅して脱出する。
いつの間にか目覚めた竜平が言うには「無意識に覚醒した」とのこと。彼女はいわゆる原石なのかもしれない。離れていても力強さをピリピリと感じる。
ここからもしかしたら戦況が変わるかもしれないと思ったが次の行動で拍子抜けしてしまう。
「は?」
脱出して反撃してくると思えば眠りだしたのだ。これには本当に拍子抜けしてしまう。それでも勝者は弁慶である。
一瞬だけヒヤッとしたがこれで4対3。これで分からなくなってきた。そして次も勝たないといけない。流れは川神書店側だがついに難所が来た。
鍋島対弁慶。観客や大和たちもこの勝負はとても危険だと言うのは分かる。しかし弁慶は逃げなかった。
ここはあえて勝負を決めたのだ。カード勝負なんて意味は無く、流さずに勝負が始まる。
「頑張って弁慶」
「全力で勝負するんだ弁慶」
「うん任せて。真九郎、大和」
大一番とも言うべき上部が始まる。
弁慶は鍋島に全力で立ち向かう。釈杖を投げつけての打返し対決は目を見張るものだった。
釈杖を最初は軽く投げて相手のカウンターで倍返しさせる。その力の乗った釈杖を逆に利用して倍返しをする。壁を超えた者の力を利用した威力なら効くはずだ。
しかし相手の鍋島は規格外。この策はさらにカウンターで跳ね返された。
「うあ!?」
「弁慶!?」
「流石は弁慶。タフだな」
最初は食い掛かっていたがどんどんと劣勢になっていく。トドメと言わんばかりの一本背負いは重い一撃だ。
誰もがこの勝負が鍋島の勝ちだと思ってしまう。しかし、真九郎や大和は弁慶を信じる。
「頑張れ弁慶!!」
「ははは。応援どうも」
応援に促されて立ち上がる。こんな劣勢でも彼女は諦めない。なぜなら彼女にはどんな苦境も跳ね返せる切り札を持っているのだ。
まさに今がその時だ。弁慶の切り札であり、必殺技。橋の上にいる清楚が彼女の切り札を発動するスイッチが入ったのを感じて口にしてしまう。
「金剛纏身!!」
『金剛纏身』を清楚は語る。難しい説明はいらない。相手が強ければ強いほど、苦境であれば苦境であるほど自分の潜在能力を各段に上昇させる。
簡単に言うと火事場の力と言うようなものだ。絶対時間は3分だけだがこの場にいる誰よりも強くなった弁慶。残り時間も10秒。
弁慶はいっきに鍋島との間合いを詰めて渾身の攻撃を繰り出す。
「速い!?」
「そおい!!!!」
彼女の一撃は壁を超えた者にすら屠る。鍋島も一瞬だったが白目を向いて意識を失った。
この結果を見るに誰もが勝敗を理解する。この勝負は弁慶の勝利だ。
「流石弁慶だな。俺もまだまだ修行不足ってところだ」
「おじさん。まだ戦えるかい!?」
「ああ。けっこう効いたがまだ戦えるぜ」
この言葉にホッとする。4対4で追いつかれてしまったがまた鍋島が勝負に出れば勝ち目があると思っているのだ。
弁慶の切り札には大いに驚かせられたがもう彼女は戦えない。まだ勝負はどっちも分からないのだ。
「お疲れ弁慶」
「疲れた~。勝ったけど向こうはまだピンピンしてる。これじゃあどっち勝者か分からないよ」
とても疲れている。やはり大技を使った後は身体に負担があるのだろう。ヨロヨロしているから肩を貸す。
「ありがとう真九郎。優しいね」
「これくらい当然だよ」
「紳士だね」
彼が紳士なのは夕乃の英才教育のおかげである。何度でも言うが夕乃の英才教育のおかげである。
優しいのは女性であっても男性であっても好感が持てるものだ。
「さて、次で決着だぞ。最後の勝負だ」
巨人の言う通りで次で最後の勝負である。決着へのサイコロが振るわれる。
「あ」
「お、また俺か?」
決着の勝負が始まる。対戦カードは真九郎対鍋島。
「真九郎。いける?」
「うん弁慶さん。大丈夫だよ。直江くん、どのカードでも構わない」
真九郎対鍋島の勝負が決定した。
「お前さんはヒュームから聞いているぜ。なかなかの修羅場をくぐっているそうだな」
「修羅場って・・・」
「だから手加減はしないぜ。弁慶との勝負で自分はまだまだってのが分かったからな」
当たり前と言うか弁慶に負けた鍋島は真九郎との戦いでは完全に慢心を捨てる。それに裏世界で有名となった真九郎には片手間で戦おうとは思っていない。
(実力を見てみたいってのもあるがな。さーてあの『孤人要塞』に『炎帝』と戦った実力は如何ほどか)
もちろん引き分けなら勝ちなのは変わらない。最初に言った事は守る。それに関しては助かるが慢心を無くした鍋島に引き分けまで持ち堪えるのは相当難しい。
真九郎はどうやって勝つか考える。そして思いついたのは簡単なことだった。初撃必殺。
開幕と同時に決着をつけるだけだ。各上の相手と戦うのに長期決戦は愚策である。
(・・・『角』を開放するしかないな。観客がいるけど別に隠しているわけじゃない)
川神は武神と言う規格外がいるので案外許容するかもしれないが。息を吸って吐く。
相手は格上の実力者であり、経験豊富であり、真九郎よりも強い。だが全て負けているというわけでは無い。彼にも鍋島に勝てる可能性はあり、ゼロではないのだ。
「んじゃあ、前に出ろヤロー共!!」
真九郎と鍋島が前に出る。もう勝負が始まるので引き返せないから覚悟を決める。
心の奥にあるスイッチを入れる。右肘の皮膚を突き破って『崩月の角』が開放され、身体中の血液が沸騰するくらい熱くなる。身体に力が巡る。負けられない戦いに勝負を挑む。
「お、お前さん・・・その右腕から出ている角はもしや」
「きっと鍋島さんが思っているので正解だと思いますよ。でも今はそんなの関係無いです」
いつでも戦えるように構える。それでも驚く鍋島だ。彼だけでなく、周りの者たちも驚いている。
「な、何だアレは・・・骨、角?」
大和や弁慶たちは真九郎の右肘から突き出した『崩月の角』に驚き、慄いている。人間の右肘から角が出れば当然の反応だろう。
しかしそれよりも驚いたのが真九郎の気の異常な強さだ。弁慶の『金剛纏身』と同じくありえないくらい気を醸し出している。
もしかしたらそれ以上かもしれない。今まさに真九郎は川神で言うところの壁越えを軽く超えた存在だ。
「弁慶の強さも相当だったがお前さんもだな」
「アレが何だか分かる大和?」
「・・・分からない。でも素人の俺でも紅くんが角を開放した瞬間にとんでもないくらい気が膨れ上がったのが分かる」
「そうだね。正直あれは戦鬼みたいだよ」
「紅のやつってうちの学長みたいに人外かよ」
「あの右腕に生えてる角カッケー!!!!」
橋の上。
(あのバカ。こんな所で『崩月の角』を・・・)
銀子は片手で顔を隠す。『崩月の角』は元々隠しているものでは無いがこうも大勢の前で発動とは頭が痛くなる。だが相手は格上の存在。発動しなければ勝ち目はなからこそ仕方ないだろう。
(まったく・・・負けても勝っても明日から大変よ)
「何・・・あれ」
「分からないぞ。真九郎があんなのを隠し持っていたとは・・・でも凄まじい気の大きさだぞ」
(まさかアレが『孤人要塞』と引き分けた秘密か!?)
やはり初めて『崩月の角』を見る者は驚くだろう。カッコイイと思ったのは紫や翔一くらいだ。
「凄い・・・紅くん」
「あれはもう鬼のようだな」
清楚と京極も驚く。異能と言うべき『崩月の角』。誰もが真九郎に視線を移ししている。
もちろん燕もこの異能を見逃すつもりは無い。食い入るように見ている。
(何あれ・・・あんなの初めて見るんだけど。しかも凄い気の大きさ)
誰もが食い入るように真九郎対鍋島の戦いを見守る。
「はっ、アタシとしたことが呆けちまったぜ。じゃあ始めるぜ!!」
試合が開始させる。『崩月の角』を開放したのだから負けられない。真九郎は本気の名乗りをあげた。呼応するように鍋島も名乗りあげる。同じ立場に立つ者として認めたからこそだ。
「崩月流甲一種第二級戦鬼。紅真九郎」
「天神館館長。鍋島正」
闘いが始まる。
読んでくれてありがとうございました。
感想など待っています。
ついに真九郎が名乗りをあげました。さすがに鍋島相手だと『崩月の角』を開放しないと勝負にならないと思い、こんな感じになりました。
流石に角無しじゃあ厳しいと思いますので。
次回の戦闘内容はどうしようか難しい所です。一応「初撃必殺」の内容ですが頑張って書きます。
では次回もゆっくりとお待ちください。