紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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こんにちわ。
今回から源氏組の那須与一が少しずつ出番が増えます。
厨二設定を面白くカッコよく書けたらなーと思います。
そんでもって今回からはオリジナルの物語要素が含まれて行きます!!


組織

053

 

 

ビルの中。パソコンの光と窓の外からの光で部屋は明るい。その中で一人の女性が電話対応をしている。

 

『お世話になります。頼んだ人材は此方と合流しました。ありがとうございます』

「いえいえ。こちらこそありがとうございました。派遣した人材は良い仕事をしますのでよろしくお願いいたします」

『それにしても大丈夫なのか。相手はあの九鬼になるからな』

「はい。我が社はお相手の事情に一切関係無くご依頼にお受け致します。それが悪宇商会ですから」

『そうか。ではお願いする』

 

ピッと携帯電話を切る。相手は電話内容の通りお客様である。依頼内容は九鬼財閥が最近発表したクローンが欲しいから誘拐するために人材を派遣してほしいとの事だ。

悪宇商会はどんな人間だろうがどんな仕事だろうが受ける。それが裏世界で5本の指に入る程となった会社の実力かもしれない。

それにしても相手は良い趣味をしている。クローンが欲しいなど普通の考えの持ち主では無い。きっと変わった性癖の人物だ。名前は明かせないが裏社会の人間で一種のコレクターである。

相手は九鬼財閥なのだから相手も覚悟はしているだろう。依頼を受けたからには最高の仕事をするが九鬼財閥と戦争になったら責任をとらねばならないだろう。

 

「まったく・・・なかなかの依頼ですよ。一応うちの最高顧問からGOサインを貰っているので大丈夫だと思いますが」

 

ピピピピピピピピピピ。携帯電話がまた鳴る。

 

「はいもしもし。悪宇商会のルーシー・メイです」

 

 

054

 

 

厨二病。それは少年少女がある日を境に目覚める人格のことだ。もはや別人かと言いたくなるほどだ。

しかも本人は至って真面目でふざけているわけでは無いからかえって性質が悪い。

言動や行動にも影響が出ており、人それぞれであるが意味深な事を言う。例えば「闇の人格」とか「封印が」とか呟いている。

行動に関しては無駄にカッコイイようにしている節がある。正直何が原因で厨二病になっているのか最先端技術の医療を持つ日本ですら不明である。

だが問題があるかどうかと言われれば害は無い。単純に絡みづらいだけくらいだ。気にしない人は気にしない、気にする人は気にする。

やはり人の個性だろう。そして川神学園に厨二病にならなかった人、厨二病なった人、絶賛厨二病になっている人がちょうどいる。

 

「まさかお前は腕に鬼の角の宿していたとはな。異能者同士は惹かれ合う運命か」

 

今まさに厨二病的な発言をしたのは与一。彼は誰もが認める厨二病患者だ。そしてそんな言葉を贈られたのは真九郎である。

最近はというとよく与一に話かけられる。理由としては古書争奪戦の時に『崩月の角』を開放したからだ。川神では噂は広まるのはどうやら早いようである。

あれ以来彼は様々な人から質問攻めにあっている。詳しく話すつもりは無いので「秘密」としか言えない。しかも一部の連中に目をつけられた。

あの武神である百代に目を付けられて夕乃と同じように決闘をふっかけられる始末だ。さらに何故か燕にも目を付けられた。おそらく『崩月の角』について聞き出したいのだろう。

 

「与一はこんなんだから。まあはっきり言って厨二病だ」

 

諭すように言ってくれたのは大和。彼は元厨二病患者であり、与一のことを見ていると黒歴史は蘇って心にクリティカルヒットするらしい。

 

「見て分かるよ」

 

真九郎は厨二病にならなかった者。そもそも彼の人生に厨二病なる切っ掛けは無かった。人生経験が一般と違うとしか言いようがない。

 

「紅も組織に狙われるだろう。お互いに普通の暮らしができないらしいな」

「組織に狙われるって・・・」

 

狙われているというか休戦をしている組織はある。その組織とは悪宇商会だ。案外的を得ている与一には苦笑いをするしかない。

そもそも変な所で現実として厨二病に厨二設定を与えるとややこしくなるものだ。きっと『裏十三家』とか『悪宇商会』とか彼にとって良い情報だろう。

 

「今しか日常を楽しめない。卒業したら後戻りができないからな。だから悔いのないように青春しとけ・・・これは先輩の受け売りだかな」

「先輩?」

「そこにいる大和だ」

「・・・へえ」

「紅くん。後で話し合おう。主に誤解を解く話」

 

大和はまるで自分の昔を見ているようで恥ずかしい以外の何者でもない。やはり自分の黒歴史を掘り返されるのは精神的に苦痛である。

実際に自分の思い出したくない過去とは向き合いたくないものだ。

 

「あ、有名人」

「真九郎くんに直江くん。与一!!」

「有名人は弁慶さんもでしょ」

 

古書争奪戦で有名人になったのは何も真九郎だけでは無い。弁慶もまた同じくらい有名人だ。

彼女もまた様々な人から挑戦を受けさせられようとしている。でも面倒だということで戦わないで断っている。

 

「もう私は十分戦ったからねえ~。褒めて」

「・・・偉いです弁慶さん」

「うん弁慶は偉い!!」

「もっともっと褒めて~」

「流石弁慶だぜ!!」

 

弁慶の褒める会が始まった。そんな中で与一が「くだらえねえ」と言った瞬間に源氏式ラリアットをくらっていた。

まるで当たり前のような動作で「おおー」と呟いた。聞くところによるといつものことらしい。いつものことでラリアットとは物騒だ。

 

「それにしてもどこに行っても質問攻めだし、挑戦しようしてきてウザイ」

「弁慶、何を言ってるんだ。注目されてるからこそ挑戦者が現れるんじゃないか」

「主は本当に真面目だね。そこが可愛いんだけど」

 

酔っ払いの如く義経に抱き付く弁慶。どこか弁慶には環の雰囲気を感じてしまうがまだマシだろう。

 

(つーか、この前メールで環さんと闇絵さんが遊びに来るとか来たな・・・正直面倒ごとしかない)

 

この本音を伝えたらきっと環はウソ泣きしながらからかってくる。何だかんだでめげない心の持ち主だから仕方ない。

 

(・・・一応お酒を用意しとくか。そして直江くんたちに迷惑かけないように注意もしなきゃなあ)

 

酒癖の悪い環のことを考えると頭が痛くなるが彼女には助けてもらっているので無碍にはできない。でもあの性格に関しては少し直してもらいたいものだ。

性格を少しでも直せばきっとモテるだろう。そうでなければ別れ話を何度か聞くことは無かったはずだ。

 

「どうしたんだ真九郎?」

「ん、実は今度知り合いが川神にくるみたいなんだ」

「紅くんの知り合いか」

「うん。正確には俺が元々住んでいる五月雨荘の住人だよ。癖のある人たちだから注意」

「癖のある人たちには慣れてるから平気」

「そいつらも異能者か!?」

「普通・・・の人です」

 

一瞬迷ったが普通ということにした。正直、環も闇絵も癖が強い人間だ。

環は素手で岩をも砕き、下駄でフルマラソンを走り切るらしいのである意味超人。闇絵は五月雨荘で一番妖しい人物である。正直何をしているのか分からない。

本当に2人は普通と答えるのが正解か怪しいものだ。よくよく考えると五月雨荘には一般的と言う人がいない気がする。五月雨荘1号室の住人である鋼森は基本的に五月雨荘にいないのでよく分からない。

 

(・・・なんか普通の人との出会いがないな)

「異能者では無いのか・・・」

「異能者じゃないよ。異能者同士は惹かれ合うって言ってるけど、そんなすぐには出会わないよ」

「・・・かもな。惹かれ合うって言ってもすぐさま出会うわけじゃない。タイミングってもんがある。そして場所だ」

 

急に語り出す与一。これは止められないと思って聞きに徹底しようと思って口を閉じる。

 

「タイミングは俺たちが川神学園に来た時だ。そして出会いはこの川神という場所そのもの。まるで運命かのように人が集まり出している」

 

それは単純に転校と留学が重なっただけであろう。場所もたまたまだ。

 

「今は友好的な流れだがそろそろ敵対勢力である裏組織が動き出すころだ。気を付けないとな」

 

被害妄想が相当大きい。

 

「ねえ与一。あんたはいっつも裏組織、裏組織って言ってるけど・・・どんな裏組織に狙われてるんだ?」

「姉御・・・流石に言えない。言ったら巻き込まれる」

「何に巻き込まれるんだか・・・」

 

呆れ顔の弁慶を無視して与一は手で顔を覆いポーズをとる。やはり厨二病特有の行動を起こしている。

それにしても狙われていると聞いて、もしかしたらその可能性は少しはあると思ってしまう。彼らは偉人のクローン人間。

胸糞悪い趣味のコレクターは裏世界に何人もいる。その内の1人は余計な行動を起こすかもしれないのだ。そんな胸糞悪い予想はさっさと捨て去る。

 

「じゃあ俺たちに教えてくれよ。もうどうせ狙われてる身だ。なら情報があった方が良い」

「・・・そうだな大和と紅には教えておく。しかし無理に調べようとするな。したら組織が攻めてくる」

「直江くん?」

 

ノリノリの厨二病の大和。これは与一と会話する時しか出さない。この後大和は羞恥に身悶える。

与一は弁慶と義経に聞かれないようにコッソリと呟く。その勝手に狙われていると言う裏組織の名前を。

その裏組織の名を聞いて真九郎は顔には出さないが驚いてしまった。どこでその裏組織を知ったのか知らないが与一の言っていることが冗談に聞こえなくなってしまう。

 

「悪宇商会だ」

「・・・!?」

 

本当にどこで手に入れた情報だろう。例え九鬼財閥にいるとは言え、あんな危険な組織を知らせるはずはない。

そもそも一般の者が知って良いものではない。ただでさえ表世界に住む者が裏世界に足を突っ込むなんて危険すぎるのだ。

 

「悪宇・・・商会?」

「そう悪宇商会だ。裏世界を牛耳る組織で異能者が集まると聞く。中には肉体を改造しているらしいぞ」

(・・・だいたい合ってる)

「・・・・・悪宇商会ねえ」

 

大和は微妙そうな顔をしたのはきっと信じていないからだ。それが一番である。悪宇商会に関わると碌な目に合わない。

 

「一応聞くけど、どんな組織だ?」

「悪いが分からない。知れば確実に狙われる・・・だが噂だとどんなことでもする組織だ。犯罪を起こしたり、逆に人助けしたりもな」

(・・・それもだいたい合ってる。しかしどこで知ったんだ?)

 

九鬼財閥が悪宇商会のことを与一に教えるはずがない。ならば彼は独自に情報を調べ上げたのだろう。

ここまできたら厨二病も馬鹿にできない。どんなものでも極めれば凄いというものだ。

 

「その悪宇商会って組織はどこで知ったのんだ?」

「ふ、電子の世界で知った」

「インターネットのことだよ紅くん」

「そう」

 

会話するのも少し難しいと分かった瞬間であった。

だが悪宇商会をどこで知ったのかが分かった。インターネットなら分からなくもない。悪宇商会はあれでも人材派遣会社でビジネスに徹底している。

ならばインターネットで広告をしているのにおかしいことではないだろう。そもそも去年に九鳳院系列のホテルのスパを貸し切ったことがある。そこで悪宇商会の力を借りた一般人がテロ未遂を起こした。

案外調べ上げれば表の人間でも悪宇商会に辿り着くのだろう。

 

(彼はきっとインターネットを調べているうちに偶然に知ったんだろうな。しかも嘘じゃなくて真実だから余計こじらせてるよな・・・だけど本当のことを教えても危険だ。もしかしたら逆にもっとのめり込むかもしれない)

 

やはり知らせない方が良いと判断して軽く笑いながら平和な会話を続ける。

 

 

055

 

 

岳人と卓也は仲が良い。体育会系と文化系と言う形で正反対な感じでアベコベなコンビだが、それでも何だかんだで親友だ。

そんな2人は何度目か分からないナンパをしている。主にノリ気なのが岳人であり卓也はそうでもない。このナンパに関してはいつも失敗して最後は美味い物を食べるのがシメである。

今回のナンパもそうなりそうでどこで食事をするか卓也は調べ始めている。

 

「まだまだ俺様は諦めねえ!!」

「もう今回もダメだよ。そんなことよりも今季のアニメはさ」

「待て、その話は長いから後で聞く。今は次の女を探すぞ!!」

「まだやるの・・・」

 

呆れるしかない。でもそんな彼でも付き合うのが親友だからこそだろう。

島津岳人は力強く優しい男性だ。正直に言う感想なら悪いはずはない。それでもモテないのはタイミングが悪いのか、ガツガツした性格が災いを招いているかのどちからかだろう。

そんな彼の恋はいつ成就するか分からないがそのうち叶うと思われる。確率は低いかもしれないが。

 

「うぬぬぬぬ」

「そんなギラついた目で女性を探してたら怪しまれるよガクト」

「おお!!」

「どうしたの?」

「すげー良い女を見つけた」

「誰々?」

 

卓也も男だから良い女と言われれば気になるのは仕方ない。指を指す方向を見ると美少女がベンチに座っていた。

その彼女は棒付きキャンディを咥えて、携帯電話を操作している。何と言うか「ギャルっぽい?」と思ったのが卓也である。

少し苦手と思うのは彼の性格からのものだろう。逆に岳人は好みだと言わんばかり興奮している。

 

「話しかけてみるか!!」

「・・・ほんと、ガクトは積極的だね。そういうところは尊敬するよ」

 

今日最後のチャンスだと思ってズンズンと近づく。おそらくそのちょっとした行動が失敗だろうと思ってしまう。

 

「そこの綺麗なお嬢さん。今暇かい?」

 

キザったらしく会話を始める。どうも岳人は女性と会話を始める時はキザな感じで始める。厳しいかもしれないが正直似合わないだろう。

棒付きキャンディを咥えている女性は一瞬ポカンとしたがすぐに怪しい笑みを零す。これには脈ありかと勝手に期待するがそうではない。

 

「どうですか。これから一緒に食事でも?」

「あは。お誘いありがとうございます。でも私、これから大事な仕事の打ち合わせがあるんです」

「だ、大事な打ち合わせ?」

「はい。大事な大事な仕事の打ち合わせです」

 

ペロっと棒付きキャンディを舐める動作にドキリと興奮してしまう。彼女からどこか怪しい色気を感じる。そして何か危険な香りも。

 

「お誘いありがとうございます逞しいお兄さん」

 

チロっと舌を出して去っていく。

 

「ほえー・・・」

「ナンパ失敗だね」

「んー・・・何かあの美人。何かあるな」

「何かって何さ」

「なんつーか・・・うちらの女性陣や知っている武士娘たちと違って何かある感じなんだよ」

「ふーん」

 

その何かとは結局分からないが岳人は気を取り直して食事に行こうと決める。最後に会った女性のせいでナンパの気分ではなくなった。

プルルルルルルルルルル。電話が鳴る。

 

「もしもーしこちらビアンカ。今は川神を探索中。そんでもってさっきナンパに会ったよ」

『それはどうでもいい。計画のための探索は順調か?』

「ええ大丈夫よ。ターゲットたちがよく通るルートに人気の無い時間帯とかオーケー。後は九鬼の奴らをどうにかするだけ」

『そっちは問題ない。依頼者の方が我々とは別に策を打っている』

「策って何?」

『別業者に頼んで九鬼の会社に侵入させて目を背けさせるようだ』

「ふーん。ま、九鬼の連中もターゲットをずっと監視しているわけないし時間との勝負ね」

『そうだな。じゃあ切るぞビアンカ』

「じゃあねユージェニー」

 

ピッと通話ボタンを切る。

川神に怪しい影は見え始める。




読んでくれてありがとうございました。
感想などがあればガンガンください。

今回から悪宇商会がついに出てきました。
ルーシー・メイが派遣した人材とは一体!?・・・って分かる人には分かるか。

そんでもって今の私の頭の中の構想中ではこんな感じです。
???VSビアンカ
???VSユージェニー
真九朗VS???

まあバトル展開をまた考えないとなぁ(悩)
ではまた次回!!


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