紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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こんにちわ。
今回は戦いに向けての話となります。

では、どうぞ!!


交渉

067

 

 

九鬼財閥極東支部。

今は緊急事態で内部はバタバタしている。その緊急事態とはクローン組である源義経、武蔵坊弁慶、葉桜清楚が行方不明という事態。これには九鬼帝も急いで今やっている仕事を放り投げて戻って来た。

緊急会議が始まった。 メンバーは九鬼帝、九鬼局、揚羽、英雄、、紋白、マープル、クラウディオ、ヒューム、あずみ、小十郎、ステイシー、季、鯉。

会議の空気は重く、全員が張り詰めた顔をしている。

 

「これは大問題だな。捜索隊は?」

「もう動いております」

「那須与一は?」

「部屋にいます。警護として従者部隊を2人つけてます」

「引き続き警護に専念しろ」

「はい」

 

今の状況をまとめて適切な指示を出していく。

 

「どこの馬鹿がやったか分かったか?」

「はい。既に調べはついております」

「さすがクラウディオ。良い仕事をしてるぜ」

「ありがとうございます」

「では話してくれ」

「はい局様。犯人は裏世界の有名な人材コレクターです。名は御隈秀一。悪い噂が絶えない男ですな」

「聞いたことのある奴だな。人材コレクターと言うか人種コレクターだろう。悪い趣味を持つ男だ」

「そんな男が・・・」

「紋、お前はこんな男のことは覚えなくて良いぞー。脳の記憶力の負担になるからな」

 

帝としては紋に無駄な知識を覚えなくて良いと思っている。そもそもこんな会議にも出て欲しく無いが、こればかりは身内の問題だから仕方なし。

 

「もしかして侵入してきた奴らは御隈の手先か?」

「はい。その者たちから尋問して聞き出しましたから。しかし、問題があります。義経たちを誘拐したのが悪宇商会の戦闘屋なのです」

「悪宇商会か・・・また厄介なのが来たものだ。極東支部に侵入してきた輩は陽動で本隊が悪宇商会の奴らか」

 

実は九鬼財閥極東支部に侵入者が侵入してきたのだ。これに関しては簡単に対処できたがまさか同時に義経たちを狙われるとは予想外であったのだ。

従者部隊の者たちはこの失態に苦い顔をした。よくよく考えればクローン組が狙われるという可能性はあった。しかし監視はしていたが彼女たちのプライバシーも考えて24時間張り込みはしていない。

そこを狙われた可能性があるだろう。ヒュームもクラウディオもこの失態を恥じている。

 

「クローン組が狙われる可能性があった。これは私の思慮不足でもあるさね」

「マープル」

「今すぐに捜査隊からの情報を得て奪還隊を結成します」

「そうしてくれ。ヒュームにクラウディオは奪還隊に加わりすぐにでも義経たちを奪還してくれ」

「分かりました」

「仰せのままに」

 

行動方針がどんどんと決められていくがこれも帝の采配によるものだろう。アワワと狼狽している時間があるなら解決策を考えるべきだ。

 

「御隈秀一がどうしてくるか知らないが容赦をするな。うちのもんに手をだしたんだからな」

「はい。串刺しにしてやります」

「気を付けろ。相手は悪宇商会の戦闘屋もいるからな」

「悪宇商会か・・・」

 

ポツリと揚羽は呟く。彼女は壁を超えた実力者だが悪宇商会には良い思いは無い。なぜなら戦ったことがあるからだ。

百代やヒュームと違い、悪宇商会の戦闘屋との戦いは確実に殺し合いだ。一度ある事件により戦って痛い目にあったことがあるからこそ分かる。悪宇商会と戦うには本気の覚悟が必要である。

 

「うう、悪宇商会」

「紋・・・。出来れば悪宇商会とはぶつかりたくはない。もし、戦争が始まれば命が散る」

「それは難しいでしょう。私もヒュームも覚悟を決めて奪還しに行きます」

「この事に関しては情報を公開するな。これ以上大事になるのは止めておけ。あずみ頼むぞ」

「わかりました。情報操作はお任せください」

 

会議は遅くまで続く。

 

 

068

 

 

御隈秀一邸。

世間一般的に言うならば金持ちの家で漫画なんかでありそうな屋敷だ。しかも山奥の人気の少ない静かなところで隠れ家や別荘には最適な場所ではある。

しかし今回は静かというよりドタバタしている。何せ九鬼財閥の従者部隊2トップが義経たちを救出しに強襲をかけているからだ。

「スマートに正面突破で行きましょう」とクラウディオが呟いたのが強襲スタートの合図で、そこからは特急列車の如く止まらない。物の数分で従者部隊で構成された奪還隊は御隈秀一の屋敷を制圧した。

クラウディオとヒュームの目の前には冷や汗ダラダラの御隈秀一がいる。

 

「さあ、もう貴方の負けです。大人しく義経たちを解放なさい」

「ぐ・・・この九鬼の犬共があ。私のコレクションを奪うのか!?」

「義経たちは貴方の物ではありません。彼女たちは彼女たち自身の身体です」

「何を言う。私が手に入れた物だ。せっかく手に入れた物を手放す馬鹿はいない」

「このような状況でそのような発言をするお前も馬鹿だと思うがな」

 

クラウディオもヒュームもいつでも秀一に痛い目を合わせることができるが、流石に今はまだ拳で語ることはできない。まだ義経を奪還していないからだ。

現在進行形で他の奪還部隊も屋敷内を捜索しているがまだ見つからない。見つかったのは他に捕まった哀れな人たちだ。

 

「まだ見つかった連絡はありません。もしかしたらまだ捕獲隊の悪宇商会が引き渡してないのかもしれませんね」

「・・・・・」

「無駄に黙っているのが怪しいですね」

「このまま悪宇商会のやつらがノコノコとやってきてくれると助かるが・・・そんな真似はしないだろうな」

 

捕獲対象を取引相手の所に持っていくにあたって、取引先に異常事態があれば不用意には近づかないだろう。屋敷の近くに来ていると考えて奪還隊を外で捜索させる。

通信機を使って外にいるメンバーに連絡を入れるが繋がらない。いつでも通信が出られるように言っているのでこれは何かあった状態だろう。

何らかの戦闘にあったか、やられたかのどちらかだろう。しかしこの屋敷は既に制圧しているので御隈秀一の部下にやられるはずは無い。このことから推察するに外部から攻撃された可能性はある。

 

「・・・悪宇商会が来たのかもしれませんね」

「ノコノコとやってくるとは助かるな」

 

ヒュームはガッシリと拳を合わせる。

その時、通信機にザザザっと通信が繋がる。

 

『もしもし。私は悪宇商会のプリムラです。この通信先は九鬼財閥の方ですか?』

 

悪宇商会の者から通信が入った瞬間に空気がピリっと変化する。

 

「悪宇商会から連絡がくるとはな」

「プリムラよクローンはどうした!?」

『今から話しますよ』

「・・・近くに来ているな」

「はい。そうですね」

 

扉が開いた先には長髪にスーツ姿の女性が現れていた。彼女こそが悪宇商会のプリムラだ。

 

「プリムラ!! クローンは!?」

「ご安心ください御隈様。クローンは無事ですよ」

「義経たちは貴様の物ではないと何度言えば分かるんだか・・・さて、悪宇商会の戦闘屋よ。義経たちを返してもらおうか」

「九鬼財閥の従者部隊第0位のヒュームに3位のクラウディオか。大物が来ましたね」

 

室内に大きな気と殺気が溢れる。状況はヒュームたちの方が圧倒的有利だが油断はできない。相手が曲者であるのも確かだが、人質として義経たちがいるので余計な事はまずできない。

秀一は戦闘屋を使って逃げる算段を考える。まずは逃げなければどうしようもないからだ。この状況さえどうにかできれば後はどうにでもなる。しかし、プリムラは後にとんでもない事を言い出す。

 

「どうしますか御隈様?」

「こいつらを殺せ!!」

「はい・・・と言いたいですが先に御隈様が危険です」

「なんでだ!?」

「よくご自分の周りをご確認ください」

 

御隈は自分の周りを確認する。彼自身の前にはヒュームとクラウディオでその先にプリムラ。これではプリムラが2人を殺す前にどちらかが秀一を攻撃するだろう。

逆に取引先を捕縛されれでは悪宇商会としては動けなくなる。この事実を理解した秀一は顔を青くする。

 

「私でもこの2人を1人で相手するのは不可能ですね。最も、御隈様の身の安全を考えなければ不可能ではありませんが」

「言うではないか戦闘屋の女」

「嘘ではありませんよ。さらに付け足すなら私も四肢が無事でありそうもありませんがね」

(・・・あの女の両腕から何か感じる)

(ええ。何か仕込んでますね・・・とても危険な何かを)

 

緊張が走る。

 

「どうしますか御隈様。このままクローンを九鬼に返せば助かります。おそらく痛い目を合ってから」

「それは駄目だ。私の物を渡すなぞありえん。くそっ・・・どうすれば突破できるのだ」

「クローンを人質にとれば有利ですが、御隈様も人質にとられればお相子ですね」

 

今の状況はお互いに手が出せない。これではずっと解決しないままだ。

 

「くそ、まだもう1人のクローンだって手に入れていないのに!!」

「・・・クラウディオさん。妙な動きは止めてください」

「おや、分からないように糸を巡らしたのですがね」

「しかし、もう遅いぞ」

「はい。貴女がこの部屋に来る前には糸はあらかた仕掛けてありますので」

 

クラウディオが指をクイっと動かすと秀一が一瞬で捕縛された。

 

「うおおおおお!?」

「お静かに」

「何をしても良いから助けろプリムラぁ!?」

「分かりました」

 

メガネをクイっと掛け直し、とんでもない事を言い出す。

 

「御隈様を離さなければクローンを殺します」

「む」

「何だと?」

「それは駄目だあああ!!」

 

ヒュームやクラウディオよりも秀一が大きく反応する。

 

「何を馬鹿なことを言うんだ!?」

「何をしても良いと言うので。今はクローンよりも御隈様の命が大切ですよ」

「ぐ・・・確かに。それに今は逃げてクローン技術さえ盗めばなんとかなるか」

「馬鹿な事を言うなこの誘拐犯ども」

 

パキリと指を鳴らすヒューム。

先ほどから黙って聞いていたらイラつく事ばかり言う奴らだ。向こうから大切な仲間を奪っておいて、身の危険を感じたら切り捨てる。

命を軽んじているようだ。確かに自分の命と他人の命を比べると自分の命が大事に決まっている。もしいるならば聖人くらいだ。

温厚なクラウディオもイラつき始める。彼は怒ればヒュームよりも怖く、非情となる。だが秀一に巻き付けた糸で縛る力を強めない。ここで無駄な動きをしたら義経たちが危険と理解しているからだ。

 

「大人しくすることをお勧めします。このまま逃げても九鬼財閥は必ず追いかけ捕まえます。最も、今この瞬間を逃がす程愚かではありませんよ私たちは」

「その通りだ。逃げ場は無いぞ。悪党ども」

「・・・確かに逃げ場はありませんね。お互いどちらかが退かない限り、この状況はどうにもできません」

 

お互いの状況は未だに解決に至っていない。無駄にアレコレ空っぽの会話をしていても何も起こりはしないのだ。

だからプリムラは今の現状を打破する策を口にしたのだ。

 

「ならばゲームをしましょうか」

「ゲームだと?」

「はい。ゲームでそちらが勝てばクローンを返しましょう」

「お、おい何を言って・・・!?」

「逆にこちらが勝てば残りのクローンである那須与一を貰います」

「何?」

「おお、そうか、そういうことか!!」

 

ゲーム。悪宇商会の戦闘屋が提案したものなんてきっと良いものでは無い。そもそも彼女の言う賞品が義経や与一と言っている時点で人を賭けるゲームだ。

人を賭けるなんていつの時代の話をしているんだ。まるで義経たちを奴隷のように扱っている。

 

(・・・いえ、彼女は依頼をこなすために言っているに過ぎない。悪宇商会は依頼を成功させるにあたって手段は問いませんからね)

 

悪宇商会は仕事の内容によっては善にも悪にもなる。今回はどう見ても悪側だろう。だから依頼主の願いであるクローンが欲しいという仕事を完遂するに至ってどんな方法でもこなすのだ。

悪宇商会の人間にもよるかもしれないが基本的に仕事に忠実で、そこに私情は挟まずに効率の良い方法を模索するだけだ。

 

「一応聞くが・・・ゲームの内容は何だ?」

「簡単です。決闘ですよ」

「決闘だと?」

「川神は決闘を良しとしている物騒な町と聞いています」

 

物騒な町。この言葉を聞いて否定できないのが残念だが事実だから仕方ない。

 

「御隈秀一様。どうぞ決めてください」

「き、決める?」

「はい。決闘内容です。どのような決闘にして、どのような勝敗にするか、どのような場所で行うか等々です」

「そ、そうか」

「おい、そんな決闘が認められるとでも」

「認めるのは貴方ではありませんよ。九鬼家の当主です」

「こいつ・・・」

「それに貴方がたはクローンを殺したなんて結果を九鬼家当主に報告するつもりですか?」

 

本当の現状のところ実はヒューム側が不利なのだ。お互いに人質を取っているとはいえ、ヒュームたちは義経を殺すわけにはいかない。だから秀一を殺すなんてことはできない。

もし、秀一がクローンを諦めれば命が助かる。悪宇商会は依頼主を守ったと言うことで報酬はもらえる。クローンの奪還の際に警備も任されているから報酬は半分はもらえる算段だ。

逆に、九鬼家の当主が決闘の話に応じれば現状の結果から良いと言っても良い。

 

(御隈秀一は脅威ではない。脅威なのは悪宇商会の戦闘屋だ。この現状から決闘の話を持ち掛けるとは中々肝が据わっている)

「面白いじゃねえかその決闘を受けてやる」

「帝様!!」

 

現状が多少変化すれば流れも急激に変化する。九鬼帝が扉をぶち破って登場した。

 

「これは九鬼家の当主様。お目にかかり光栄です」

「ほー。お前さんが悪宇商会の戦闘屋か。美人じゃねえか」

「ありがとうございます」

「さて、御隈秀一。その決闘を受けてやるぜ」

「くく、九鬼家の当主がでしゃばるとはな」

「何か、俺様の勘がここに来いとピンと来たからな」

「帝様はいつも破天荒でいらっしゃる」

「じゃあ、決闘の内容を決めようぜ」

 

 

069

 

 

決闘内容が決定した。

3対3の団体戦。ルール無用のバトル形式だ。1つだけあるとしたら『殺し』は不可。

賞品となるのはクローン組となる。悪宇商会側が賭けるのは義経、弁慶、清楚。九鬼が賭けるのは与一となる。

九鬼側が全員助けるには悪宇商会の戦闘屋を全員倒さねばならない。逆に悪宇商会側は1人でも勝てば与一を奪えるのだ。

そして決闘場所は深夜の川神学園となる。場所が場所だけに川神学園の学長である鉄心に話を持ち掛ける。

 

「なんとも面倒な話を持ち掛けてくるもんじゃな」

「申し訳ございません。しかし、川神学園の学生に身の危険はさらしません。そして決闘によって起こる壊れ物に関してもこちらが保障します」

「まあ、構わん。川神学園が決闘場なんていつものことじゃしのう。しかし、今回は不快な事件じゃな。学生たちも義経たちが急な欠席となって心配しておる」

「必ず助け出すさ。しかし、今回の決闘は勝手が違うのだ。忌々しいことにな」

「なんじゃい勝手が違うとは?」

「決闘をするメンバーに問題があってな」

「メンバーじゃと?」

「ああ。九鬼から1人と残り2人は九鬼以外から選べとのことだ」

 

これに関しては秀一が九鬼からの強力な従者部隊を恐れたからに過ぎない。しかし一人も決闘相手を出さないのは許してくれるはずも無く、1人だけという形に納まったのだ。

 

「よく譲歩したのう」

「御隈ではなく、頭の切れる悪宇商会が横やりを入れてきたのだ。もっとも決闘形式やルールなどはこちらで決めさせてもらったがな」

「やられっぱなしでは無いということじゃな」

「で、誰が出るんじゃ?」

「本当なら俺やクラウディオが出るはずなんだが・・・与一の奴が出ることとなった」

「おい、狙われている那須与一が出て良いんか!?」

「ああ。反対したさ。だが与一は義経たちと一緒に居てやれなかったことを後悔して自分で助け出すと言ってこちらの話を聞かんのだ」

「で、彼が出ることになったと?」

「帝様直々に了解が出たからな。それに決闘場所は川神学園でこちらのホームグラウンドだ」

「ううむ。そうか」

「納得がいかないようですね。帝様も破天荒さはいつものことですが、今回は賭けに近いですからね」

 

危険だが与一を信じた結果と言えるようなものだろう。

 

「ふむ。では残り2人は?」

「目星はつけている。だが、その2人が川神学園に所属しているから鉄心に話をつけようと思っている」

「・・・誰じゃ?」

「紅真九郎様に松永燕様です」

「彼らか」

「真九郎様と燕様は私たちと九鬼と関係がありますからね。頼みを了承してくれるか分かりませんが」

「・・・学長としては反対したいところだが、義経たちを助けたいのもある」

 

学生を助けたい気持ちと学生に危険な目を合わせたくない気持ちのせめぎ合いだ。鉄心は悩み悩んで決定する。

 

「・・・分かった。しかし2人に決定権があるのが一番じゃぞ」

「分かっております。無理強いはさせません」

「それと立ち合いにワシも連れていってくれ。そもそも決闘場所が川神学園じゃし」

「もちろんでございます」

「じゃあ早速、件の2人を呼ぶか」

 

指をパチンと鳴らすと真九郎と燕が部屋に入ってくる。これには鉄心も「仕事が早いのう」と呟く。

 

「およ、真九郎くんも呼ばれてたんだ」

「松永さんもですか。何の話ですかね?」

「それは今から俺が説明する」

 

ヒュームが今回のクローン組誘拐事件を語る。真九郎たちは義経たちが急に欠席している理由が今分かった。

学園でも義経たちの急な欠席は今でも心配されている。その理由がまさか誘拐とは良い気持ちにはならない。しかし、どこに住んでいても胸糞悪くなる事件は起こるものだ。

誘拐は真九郎も子供の時に経験している。当時はどうでもよく、死んでも構わないなんて思っていたが、今は知り合いが誘拐されて心が静かに怒る。

 

「ヒュームさん。誘拐事件で核心となる話は何ですか?」

「フ、話が早くて助かる。実は誘拐した奴から決闘を申し込まれた。義経たちと与一を賭けた決闘だ」

「人を賭ける・・・」

「思うところもあるかもしれませんが、誘拐犯から九鬼の従者部隊は出ないこと決められてますからね。こちらとしては実力があり、信頼できる相手にしか頼めません」

「・・・相手は誰ですか?」

「戦闘屋だ」

 

戦闘屋。その言葉を聞いて良い思い出は無い。だが今回の戦いに容赦はいらないだろう。

戦闘屋と戦うにあたって容赦も慈悲も無い。あったら逆に殺される。

 

「それにしても紅くん。即決とは凄いね」

「即決ってわけじゃないですよ。これでも考えて受けたつもりです。それにこれは『揉め事処理屋』の仕事ですから」

「その通りだ。もちろん謝礼は出す。無償で戦わせるなんてことはさせない」

 

揉め事処理屋の仕事なら断るつもりは無い。今の真九郎はフリーだから忙しいわけでも無い。危険な依頼だがこの業界では危険なんて言葉は当たり前の言葉だ。

だから真九郎は了承してこの依頼を受けたのだ。

 

「ふーん。ま、私も受けるよ」

「松永さんも?」

「危険な依頼だけど、私も学友を見捨てるなんて非情さは無いよ」

 

燕は常に計算しながら周囲の状況を確認している。だが今回は計算よりも感情が動いた。

 

「ありがとうございます燕様」

「では、情報提供をしよう」

 

ヒュームは決闘相手の写真を出す。その写真を見て真九郎は目を見開いて驚く。

 

「こいつらは・・・」

「知っているの?」

「はい」

 

彼女たち3人は去年真九郎が関わったとある事件の首謀者たちだ。悪宇商会の戦闘屋とは今回の事件は根が深そうだ。

 

「悪宇商会か。これはあの人に連絡かな」

 

ボソリと呟く。

 




読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽にくださいね。

さて、今回の誘拐犯は『御隈秀一』というオリジナルキャラです。
単純に義経たちを誘拐する元凶を登場させたかったのでオリジナルを考えました。
そしてもう登場は無いでしょう。
悪宇商会VS真九郎勢の構図を作りたかっただけのキャラです。

そして決闘メンバーは九鬼絡みで燕と与一を活躍させたかったので、この2人にしました。最初は従者部隊の誰かを考えてましたかメインキャラである2人にしました。
これからバトルシーンの構図を考えなきゃなあ。今年中にはあと1,2話は更新したい。

では、また次回!!

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