簡単にまとめたものになっております。
非日常から日常へと戻ります。
080
クローン奪還戦の後日談を語ろう。
真九郎がプリムラに勝利し、清楚を奪還した。悪宇商会のプリムラたちは文句も言わずに撤退していった。
これでも仕事のプロであるためルールをちゃんと守ってくれた。流石にルールを守らない程の愚かな戦闘屋ではないようだ。その彼女が歪んでいようとも。
この決闘後はきっと悪宇商会から連絡があるかもしれない。今回は特別であったが元々、悪宇商会とは休戦状態なのだから。それを考えると少し憂鬱な気分になる。
だが紫の笑顔を見たらどうでもよくなった。そして義経たちの笑顔も見れば尚更だ。今は勝利を、彼女たちを救えたことを喜ぼうと思っている。
真九郎たちは精神的にも肉体的にもボロボロであるが達成感はある。今回の一件で真九郎は燕と与一と繋がりはできた。死闘を乗り越えた的な意味で。
「今回は私たちだけの秘密だね」
「秘密って言うかな?」
そして今回の黒幕と言うか元凶である御隈秀一は決闘の結果により捕縛。九鬼の力で御用となったのだ。彼はもう何もできないだろう。
裏世界でも大きな力を持つ者の1人とはいえ、九鬼も本気を出せば潰せることはできる。警察も動いたと聞くが、もしかしたら『円堂』も裏で動いたかもしれない。『円堂』に関しては真九郎の勝手な推測である。
この一連の事件でもう裏世界の人間はクローンを狙うなんて馬鹿な真似はしなくなるだろう。だが九鬼の人間は裏世界へ目を光らすこととなるだろう。
「ありがとうございました真九郎様」
「義経さんたちが助かって良かったですよクラウディオさん」
「真九郎様には御礼として報酬がございます。どうやら金銭面で苦労しているようですから」
微笑むクラウディオ。これはこちらも微笑むしかない。確かに金銭面では苦労しているので言い返せないし、御礼金は嬉しい。
「真九郎様も大変ですね。もしよければ九鬼で働きませんか?」
「嬉しいお誘いですが…」
「まあ応えは分かっておりましたよ。でも九鬼はいつでもお待ちしています。紋様も待っていますよ」
「ありがとうございます」
前回は九鬼にて関わった事件を解決したが今回も事件を解決した。自覚をまだ持っていないが真九郎は九鬼との大きな繋がりができたのだ。
これが今回の事件の一連の後日談である。
081
正座をしている真九郎。そして正面には夕乃が正座をしている。これはクローン奪還戦の報告をしているのだ。
何故か正座をさせられているのは夕乃の命令である。今回の戦いでボロボロになったからとのこと。戦えば身体がボロボロになるのは当たり前なのだが。
「良いですか真九郎さん。今回はちゃんと悪宇商会と戦うと事前に言ってくれたのは良いでしょう」
「はあ」
「でもそんなボロボロになるまで戦うとは許してませんよ!!」
「でも義経さんたちを救うには振り絞って戦うしかないですし…」
「それでもです。私は真九郎さんが傷つくのが嫌なんです」
夕乃も義経たちが誘拐されたのに心配はした。とても心配した。だが真九郎が傷つく方がもっと心配してしまうのだ。
「全く…本当に心配したんですからね。これはとっても怒ってます!!」
「す、すいません」
理不尽かもしれないが本当に心配されているのだから真九郎は頭が上がらない。そもそも夕乃には絶対に頭が上がらない。
「謝っても怒りが収まりません。これ何かしてくれないとダメです!!」
「な、何かって…」
「そうですね。今度どこかに遊びに連れてってください。それで怒りは収まります」
「わ、分かりました。じゃあ今度どこかに出かけましょう」
真九郎が了承したのにピクリと反応する。
「本当ですか?」
「本当です」
「私と2人っきりですか?」
「え、あ、はい」
「村上さんや紫ちゃんたちは含めませんよ」
「はい」
完全に肯定した真九郎。そしたらズズイっと夕乃が近づいて早速、遊びに行くもといデートプランを打ち合わせするのであった。
「それともう1つ。ぎゅっとしてください」
「え?」
「抱擁、ハグとも言います」
「…えっと」
「しないんですか、どうなんですか!!」
「は、はい!!」
優しく抱擁する。
(幸せ日記に書かなくちゃ!!)
082
「…機嫌でも悪いのか銀子?」
「…そうよ」
「何で?」
「言わなきゃ分からないの?」
「…すいません」
銀子の機嫌が悪いのは言うまでもなく今回のクローン奪還戦である。夕乃と同じように報告はしたが馬鹿みたいにボロボロになって心配させてしまったのだ。
これも理不尽ともいえるような扱いかもしれないが心配されている証拠だ。毎回いつも心配されては怒られているのだ。
「ごめん銀子。でも知り合いを見捨てるなんてできなかったからさ」
「馬鹿ね。九鬼にでも任せれば良かったのに」
「その九鬼から任されたからね」
「…なら私をもっと頼りなさいよ」
ボソリと呟くのであった。
「うん。頼るよ」
真九郎もボソリと呟く。
彼と彼女の関係は信頼しあっている。何となくお互いの気持ちが分かるように。しかし色恋沙汰に関しては除外されるが。
「それにしても悪宇商会が川神まで…本当に世間は狭いわね。で、今回の一件でまた本社にでも呼ばれるのかしら?」
「それはまだ分からない。でも連絡はくると思う」
「気を付けないさいよ」
「分かってる」
083
可愛い女の子が真九郎の懐に飛び込んできた。紫である。彼女のおかげで今回の決闘に勝てたのもある。
真九郎は紫を優しく抱きしめて頭を優しく撫でる。
「緊急事態とはいえ、来てしまって悪かった。ああいうところは危ないと分かっていたけど真九郎が心配だったのだ」
「いいよ。寧ろ来てくれてありがとう紫」
「真九郎!!」
紫はさらにぎゅっと抱き付く。小さいがとても温かく、子供の強い力を感じる。この子を必ず守ろうと思うのであった。
「私はよくわからないが今回はもう大丈夫なのか?」
「ああ。もう大丈夫だよ。今度さ義経たちにまた会ってくれ。御礼を言いたいそうだ」
「私は何もしてないぞ」
「それでも来てほしいってさ。来てくれたことに意味があるんだ」
「そうか。分かった!!」
本当に彼女の笑顔は太陽のようだ。時折見せる大人の対応もしているが何だかんだで年相応の女の子。
「そうだ。今度の休みにまた遊びに行ってよいだろうか?」
「うん大丈夫。それに今度の休みは環さんたちや冥理さんたちがくるんだ」
「おお、全員集合だな」
「そうなんだよね」
きっとごちゃごちゃでうるさくなるだろうが、面白くなるだろう。
環はきっと酒で絡んでくるだろう。闇絵は意味ありげな言葉でからかってくるだろう。散鶴は甘えてくるかもしれない。冥理は突拍子もない言葉で悩ませてくるかもしれない。
それでもきっと良い日になるだろう。そう思いながら真九郎も笑顔になるのであった。
084
「真九郎くん!!」
「やあ義経さんたち」
「実は改めて御礼が言いたいんだ」
義経たちは真九郎に御礼を言いにきた。彼はまさしく命の恩人だ。だから御礼を言いたいと義経は言うのだ。
この彼女の提案は弁慶や清楚も文句はない。寧ろそれが当たり前だ。その中には与一もいて、クローン組の勢ぞろいだ。こうも改まって来てくれると真九郎もどう返事をしようか悩んでしまいそうだ。
「改めてありがとう真九郎くん。君のおかげで助かったよ。もう義経は君に感謝いっぱいでどう御礼をすればいいか分かんない程だ」
「主~そんなの身体でも何でもで返せば良いじゃない」
「べ、弁慶。そ、それは!?」
「弁慶ちゃん。それは流石にだめよ」
「はーい清楚先輩」
「全く…姉御は」
「あんだって与一?」
「何で俺だけ!?」
いつものクローン組だ。これには微笑ましく思ってしまう。
それはともかくとして身体で返されても困ると思う。そんなの後が怖いに決まっているからだ。主に夕乃たち的な意味で。
正直のところもしもを考えたとして、死しか未来が見えない。そんなのもう『稽古』の話どころではなくなる。
「真九郎くんは命の恩人だ。もし何か困ったことがあったら何でも言ってくれ。義経は必ず真九郎くんの力になるよ!!」
その言葉に弁慶たちも頷く。力になってくれる。この言葉は嬉しいものだ。
「ありがとう。何かあれば力を貸してもらうよ」
クローン組との絆は深まっただろう。あれだけ濃すぎる長い夜だったのだ。日常とは違う非日常。
彼らは成長したとは違うが世界の見識は変化しただろう。裏世界の一部を見てしまったのだから。
真九郎は思う。彼らにはもう裏世界に関わって欲しくないと。関わったら碌なことがない。それは真九郎自身が味わっている。しかし彼は後悔していない。自分で選んだ道なのだから。
(でも1度裏世界に関わると簡単には切り離せないものだ。それが表で有名な九鬼財閥なら尚更。でも彼らにもう危険なことがないことを願うしかないな)
彼らを守りたいと思うが真九郎は誰彼全てを守れるヒーローではない。ならば揉め事処理屋として頼られたら力になろうと思うのであった。
「あの真九郎くん。良いかな?」
「何ですか葉桜先輩?」
「助けてもらって何なんだけど頼みがあるの」
「頼み?」
「良いかな。助けられてばっかりで今度は頼みごとなんて」
「構いませんよ。俺は揉め事処理屋ですから」
「ありがとう。真九郎くん!!」
揉め事処理屋の仕事は終わらない。
読んでくれてありはとうございました。
後日談で簡単にまとめたものなので物足りない感があるかもしれませんが生温かい目で読んでってくださいね。
そして次回はついに環さんたちが登場だ!!
たぶんはっちゃけるかな?