紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

36 / 107
お待たせしました!!
今回は崩月の家族たちが登場です!!

日常回ですね。そして崩月家は川神でも通常運転です。


崩月の家族

087

 

 

崩月冥理と崩月散鶴は川神に訪れていた。訪れた理由は娘の夕乃たちがちゃんと新しい学園生活になじんでいるか気になったからだ。

この思ったことは親として当然の気持ちだろう。親が子を心配しないわけがない。最も冥理は真九郎と夕乃が夜の営みをしているかどうかが気になっているだけではある。

何せ若い男女が新しい地で生活するのだ。何があってもおかしくないと言う冥理の勝手な持論である。

 

(あの子ったら妙な所で弱気になるのよね。ちゃんと真九郎くんをリードできるかしら?)

「はやくお姉ちゃんとお兄ちゃんに会いたいな」

「そうね散鶴」

 

早く娘たちの顔を見たい。それでも川神に早く到着したので迎えの夕乃たちがまだ到着していないのだ。

 

「どうしましょう。どこかで時間を潰してましょうか」

「お母さん。お腹が空いちゃった」

「そうね。小腹が空いたし、どこかで軽食にでもしましょうか。時間はあるし」

 

どこか軽めな食事ができないかと歩きながら周りを見るがどうもよく分からない。実際に初めての地であり、念入りに観光の準備をしたわけではないので土地勘はまさしくゼロである。

適当に入ってハズレを引くと散鶴が可哀想なので賭けはできない。このことから導き出した答えは単純。

 

「誰か地元の人に聞くのが一番ね」

 

そう思いついたら早速行動するべき。チラリを見渡して、何となく見つけた仲がよさそうな3人組に声をかけた。

その3人を見ての感想は色黒のイケメンに幸薄そうな白い少女、そしてハゲ。また面白い組み合わせだなっと思う他ない。しかし何故かハゲには散鶴を近づけさせてはいけない気がしたが気のせいだと思うのであった。

 

「あの、すいません」

「はい。何でしょうか…これはこれはお美しいお方ですね」

「あら、お上手。うふふ」

 

冬馬は息をするように女性を褒めるが冥理も大人の対応で返す。

 

「おおおおおおお」

「どうしたハゲって、ああそういう」

 

準は散鶴を視界に入れた瞬間、静かに声を漏らしていて小雪も納得していた。

 

(こ、このロリは極上のロリ。紋様や紫様、委員長と並び立つロリだ!!)

「あう?」

(仕草も素晴らすぃー!!)

 

準の不純な何かを感じ取った散鶴は母である冥理の後ろに隠れる。もともと人見知りなので当然な行動だろう。しかし準にとっては目の保養でしかない。

しかし誤解してはならないが準は幼女に対しては絶対の紳士である。絶対に間違いはないはずである。相手を怖がらせるなんて馬鹿な真似はしない。

 

「どうしたのですか?」

「実は観光でここに訪れたのだけど、よく分からなくてね。どこか軽い食事でもできる良い場所をしらないかしら?」

「なるほど。お任せください」

 

ニコリと良い笑顔。お返しに冥理もニコリと良い笑顔。

 

(ふむ。強敵ですね)

(駄目だよトーマ。相手は人妻だよー)

(不倫ってクる言葉ですよね)

(全くもう…でも相手は簡単にはいかなそー)

(ユキまでそう思いますか。やはり強敵ですね)

 

冬馬がそう思うのは当たり前だ。彼女は真九郎も夕乃さえも敵わない大人の女性だ。

女性に対して百戦錬磨の冬馬でも冥理を相手にするにはまだ経験値が足りないのだ。それでも口説くように会話するのは冬馬ならではかもしれない。

川神市の観光場所を説明しながらどことなく口説くが意味はなかった。

 

「いろいろと教えてくれてありがとうね」

「いえいえ、力になれて何よりですよ」

「ウフフ。こんなオバサンを口説くよりも若い子を口説きなさいな」

「いえいえ、貴女はまだまだお若いですよ」

「あらお上手ね」

 

この会話を聞いていた小雪は「トーマが相手にされてない。珍しー」なんて呟いた。

ところで準はというと優しい顔で散鶴を見ていた。散鶴も準から邪悪さを感じないから少しは警戒が薄れる。でも何かモヤモヤしたもの感じるのは分からない。でも危険さはない気がするのだ。

 

「俺は井上準。君は?」

「わ、私はち、散鶴」

「散鶴ちゃんって言うんだね。可愛い名前だ」

「ボクはユキだよ。よろしくねー」

 

一応、準が何かしでかさないように見張る小雪である。最も何度も確認しても準が小さい女の子に変なことをすることは絶対に無い。

 

「あ、ありがと」

 

可愛い名前と言われれば嬉しくないはずがない。つい赤面してしまう。これが真九郎ならもっと赤面して嬉しがるだろう。

 

(可愛い…心は浄化されるようだ)

 

準の周りに委員長に紋、紫、散鶴とロリが集まって最近は心に安寧を迎えられている。そして勝手に同士認定している真九郎がいるので充実もしている。

彼は1日1日を楽しんでいる。どんな楽しみ方かは人それぞれであるが、楽しいのなら小雪も冬馬も満足しているのだ。

 

「じゃあ行きましょう散鶴。ありがとうねイケメン方」

「バイバイ」

「では縁があればまた」

「バーイ」

「またね散鶴ちゃん」

 

たった短い会話であったが何とも満足のいくものであった。そして別れようと思ったが縁とはやはり意外なものである。

 

「お母さんってばこんなところに」

「あら、夕乃に真九郎くん」

 

ここで夕乃と真九郎が仲良く歩いて来た。もちろん冥理たちを迎えに来たのだ。

 

「お母さん?ってことはあの女性は崩月先輩の母親なのですか。あの美しさには納得しました」

「あれ、葵くんに井上くん、榊原さんまで?」

 

何故、冥理と一緒にいるのか分からなかったが聞いてみると単純に川神市について聞かれただけらしい。それなら納得である。

 

「紅くんは崩月先輩とデートですか?」

「いや、違…」

「もー葵くんったら。そう見えますよね!!」

 

夕乃は真九郎が今回の目的を言う前に遮る。やはりそう見られるのは彼女にとって嬉しいのだ。恋する乙女は第三者に好きな人のことについてそう言われるとつい盲目にもなる。

しかも彼女は冬馬の言葉を恥ずかしながらやや否定するのではなく、肯定する所は強かではある。

 

「お互いに羨ましいですよ」

(ん?お互いに?)

 

冬馬がお互いに羨ましいと言ったのは、彼が両刀使いだからだ。だが真九郎は気付く前に頭の片隅に追いやった。

気付いたら、気付いたで嫌な予感がすると無意識に反応した防衛反応だろう。

 

「崩月先輩のご家族が遊びに来ていたのですね。なら川神をお楽しみにください。川神は良いところですから」

「ええ。そうするわイケメンのお兄さん」

 

笑顔で冬馬たちと別れるが、その時に準から謎の視線を感じたがこれも無視することにした。

補足だがその視線を感じたのは真九郎に散鶴が駆け寄ってきて抱き付かれた時である。

 

「どうしたのお兄ちゃん?」

「何でもないよちーちゃん」

 

そう。何でもないはずである。最近、準から同志認定されたり、嫉妬されたり大変である。

 

「ところで…環さんたちはまだ来てないか。もう時間なんだけどな」

「そういえば環さんたちも来るんでしたっけ?」

「そう。でもまだいないな」

 

そろそろ集合時間なのに環と闇絵が来ない。ならば携帯電話で連絡を取る。

プルルルルル。プルルルルル。プルルルルル。

形態電話のコール音が3回鳴った後に電話が繋がる。

 

「もしもし環さん?」

『私だ少年』

「あれ、闇絵さん!?」

『環は今、手が離せなくてな。代わりに私が出た所存だ』

「はあ。で、今何処にいるんですか?」

『そうだな集合場所の駅から左方向に1キロ先くらいの場所にいる』

「結構離れてますね」

『速く川神に到着してな。少しだけブラブラしてたのさ。そして環は今決闘中だ』

「なるほど…って決闘中!?」

 

いきなりそんなことを聞かされて「何で決闘しているんだあの酔っ払いは!?」と思ってしまった。しかも相手はあの武神。

何がどうやったら武神である川神百代と決闘する羽目になったのか気になる。だが、それよりも心配しているのが迷惑をかけていないかどうかだ。

 

「今からすぐに向かいますから!!」

『待ってるよ少年』

 

 

088

 

 

百代は不意を突かれた。基本的に敵なしの百代でも不意を突かれることは案外あるのだ。

今回の不意に関しては本気で驚いたと言っても過言ではない。何せ決闘中に目の前で嘔吐されたからだ。

決闘中に嘔吐なんて結構あることだが、それは相手に攻撃して当たり所が悪かった時に起きる場合だ。それなら百代も平気である。

しかし、今回の嘔吐は本当に予想外であった為に一瞬フリーズしてしまうほどであったのだ。最初から酔っていたとはいえ、こうも不意を突かれるように嘔吐されれば武神とはいえ驚く。

 

「は、吐いたあああああああああ!?」

「えろろろろろろろろろろろ」

 

吐しゃ物特有の酸味とも言えないような臭いと様々な酒の匂いが周囲に漂う。この臭いに当てられてもらいゲロをしそうになる一子であったが我慢する。

環はまだ「えろろろろろろろ」と嘔吐していて、これではもう決闘どころではない。

普通なら決闘が中断されて戦闘への欲求不満が残るはずの百代だが、今回ばかりは戦闘意欲が全て消えた。

 

「ええー」

「おろろろろろろおろろおろろ」

 

まだ吐く環。

 

「何やってんですか環さん!!」

「そうですよ環さん!!」

 

ここで保護者たちが登場。

 

「おお、紅じゃないか。それに夕乃ちゃんまで!!」

 

彼女にとって最近の興味対象であり、決闘したい2人が近づいて来た。

 

「あらあら、まあ」

「え、えと…」

「そして妖艶な奥様と可愛い幼女も!!」

 

この言葉を聞いて百代も環と同じ属性を持っていそうだと感じたのは当然かもしれない。なぜなら彼女もそうなのだから。

百代と環が気が合って暴走するのだが、それはまだ先の話である。

 

「ほら環さん。水ですよ」

「うう…ありがと真九郎くん」

 

水を飲んでいる彼女の背中を優しく擦る。そのおかげで多少は楽になった。

もう決闘は御開きだ。九鬼の従者である鯉は既に決闘不可と取って、観客たちに帰るように促している。流石は九鬼財閥の従者で仕事が早い。

 

「うう…気持ち悪い。真九郎く~ん、背中ぁ」

「はいはい」

 

環を背負る。この状態の環はもうどうすることはできない。このまま島津寮に帰るのが一番だろう。

 

そして島津寮。

島津寮に返ってきた真九郎一行。帰って玄関を拓くと大和と京が出迎えてくれた。

 

「おかえり。て、お客さん?」

「モモ先輩にワンコもいる」

 

彼らの反応は最もだろう。だから普通に自分たちの知り合い、家族と説明。するとすぐに大和たちは把握。

ここからは率先して大和が寮内を案内してくれる。やはり彼は気が利くというか、気配りができる人間の一種だ。

 

「お邪魔します」

「お、おじゃまします…」

 

居間に集まってお茶うけ等を用意し、環は真九郎の部屋で寝かせる。補足だが環が「あん、真九郎くん。続きはベットでぇ」なんて戯れ言を呟いた時は本気で誤解が生じようとしたから大変であった。

大和たちの目が「え!?」とか「案外、紅くんって…」なんて感じ取れた時はどうしようと思った程である。特に夕乃は目が笑っていない。

 

「本当に何をやってんのよ馬鹿」

「銀子…これは俺のせいじゃないと思うんだけど」

 

確かに彼のせいではない。ただの偶然と環の戯れ言のせいである。

 

閑話休題。

ここで一区切りがついたのでやっと落ち着くことができて、本題の話ができる。それは今まさにっていう状況だが、崩月家の家族と五月雨荘の住人が川神に遊びに来たということだ。

 

「初めまして。私は夕乃の母で崩月冥理です。娘と真九郎くんがお世話になってます」

「崩月散鶴と言います。よろしくお願いします」

「闇絵だ」

 

自己紹介を簡単に済ませて談笑する。

 

「銀子ちゃんも元気そうね」

「はい。お世話様です」

「うんうん。夕乃も真九郎くんも学校では上手くいっている?」

「もちろんです」

「まあまあですかね」

「うんうん。良し良し。お友達の方はどうかしら?」

 

大和たちから真九郎たちの評判を聞きたいということだ。せっかく友人たちが、学友がいるのだから親としては評判を知りたいものだ。

気兼ねなく、異端無く評価を教えて欲しいという笑顔をしている。ならばと大和たちは遠慮なく答えるのであった。

 

「そうですね、紅くんは優しいと評判ですよ」

 

実際に真九郎は優しいと評判である。その評判の理由は目立つことはここぞという時以外はしないが、何だかんだで雑用もとい手伝いをしてくれるのだ。

特に女学生の頼みは絶対に断らないので女学生からは評判が本当に良い。そのおかげで夕乃と銀子は不満になったりするだ。そしてついでに岳人からも嫉妬されたりする。

 

「そうなのね。さすが真九郎くん」

「村上殿は冷静な性格だな。それに頭が良いし、調べものなんかは彼女に任せれば完璧だぞ!!」

「え、銀子いつのまにクリスさんに?」

「…断り切れなかったのよ」

「何調べたの?」

「…何てことの無い日本の歴史についてよ。しかも結構マニア向けなヤツ」

 

それは歴史好きで、侍とか戦国とかについてで、さらに奥に踏み込んだものである。

クリスは銀子が調べものが凄いと言う理由で知りたかった歴史について調べて欲しいと頼んだのだ。しかも目をキラキラさせる純真無垢な子供のように。

その謎の圧からつい断れなかった銀子は仕方なく調べたというわけだ。その感想はまるで甘えん坊の子供を相手にしたかと思ったほどである。一応報酬は駅前の評判の良いフルーツケーキである。

 

(実際にクリスは甘えん坊と言うか、子供っぽいと言うか…そういう時があるからな)

 

彼女と仲良くなれば性格を把握できる。良い言い方をすれば可愛い天然さん。悪い言い方をすればおバカさんって感じだろう。

 

「で、最後に夕乃ちゃんはとっても大和撫子で私なんかメロメロだ。そして決闘したい!!」

「あらあら決闘なんて」

「だって夕乃ちゃん強いだろ?」

 

ジーっと夕乃を見る百代。まだ彼女は決闘を諦めていないのであった。何とか留学中に決闘しようと考えているのだ。

本当に懲りない武神だと思う一同であるが、彼女の性格故なので誰も責めることはしない。

 

「どうだい夕乃ちゃん。私とデートでも」

「お断りしますね」

「また振られた!?」

「夕乃は川神学園でもモテモテなのね」

「でもってことはそちらの学校でも?」

「ええそうよ。去年のクリスマスなんか先輩や後輩から何人も誘いを受けてたのよ」

 

彼女の武勇伝を聞いてると彼女がとてもモテるのがよく分かった。だが彼女は真九郎一筋なので他の男なんて見えていない。

その為、他の男性から言い寄られるのはとても面倒なのだ。しかし彼女の性格上、他の男性を突っぱねることができないのでいつも断るのに苦労しているのだ。

 

「成程。ウチの学園でも夕乃先輩はすごくモテてますよね。しかもファンクラブまでできてますし」

『そーそー。葉桜先輩とのコンビで大和撫子で清楚で凄いことになってるよなー』

 

散鶴は松風が気になったのかジーと見ている。興味を持ってくれたのが嬉しいのですぐさま散鶴の相手をする由紀江であった。

 

「大変ねえ。なら早く行動した方が良いかもね夕乃」

「行動って何ですかお母さん?」

「それは勿論、夕乃が他の男に言い寄られないようにするための行動、方法よ」

「それは?」

「ここなら実家から離れてるし、気兼ねなくしていいのよSEX…」

「お母さん!!!!!」

 

自分の母親が何を言いだすかと思えば、まさか娘に性行為を進めるとは思うまい。崩月家でなければ。

もう夕乃は顔が真っ赤になりながら母親に抗議している。普通の人が見ればどう反応すれば分からないが崩月家では日常茶飯事である。

この崩月家の日常茶飯事には大和たちもやや驚き。まさか大和撫子の夕乃が性に対してからかわれているのは意外である。でも大和や百代は夕乃の意外な一面が見れて良しと思っている。

 

「大丈夫よ。ここは寮だけど学友たちも暗黙の了解で…」

「そういうわけじゃありません!!」

「そんなんじゃ周りの男性からしつこくまとわりつかれるわよ?」

「だから…もう!!」

 

何を言っても聞かなそうなのでこちらが折れるしかなかった。やはり母はいろいろな意味で強しである。

口では絶対に勝てないのでどうしようもない。深いため息を吐きながら席に座る。

 

「うーん、何とも個性的と言うか、大胆と言うか」

「だな。まさか堂々と娘に性行為を、その、進めるとは…」

「あうあう」

「あわわわわ」

 

百代と京以外の女性陣はSEXと聞いてしまい顔が真っ赤だ。この3人は興味はあるけど耐性が少ないという女性たちである。

 

「大胆ですね。夕乃ちゃんのお母さまは」

「常識外れなだけです!!」

「酷いわ夕乃」

「娘の前で、学友の前であんなことは言うからです!!」

「でも皆くらいだと気になる年頃でしょ」

 

誰とは言わないがある者たちは心の中で頷くのであった。

 

「しかし、夕乃ちゃんのお母さまは紅を相手にさせるのですね」

「ええ。どこの馬の骨に相手させるよりは家族の真九郎くんが信頼できるしね」

 

ニコニコと真九郎に顔を向けるが苦笑するしかできない。こういう話は上手く会話できないのだ。そもそも余計なことを言うと話がややこしくなりそうなので迂闊に発言は控えている。

予想だが絶対にややこしくなりそうな気がするので注意しているのだ。そして今まさに環で酔っ払って寝ているのがせめての救いである。彼女がこの会話に混ざったら絶対に暴走する。

 

「それにいつか散鶴の相手もしてもらうのよね」

 

お茶を飲んでいたが咽た。この発言だけは真九郎もヤバイ。しかも散鶴も笑顔で「うん。お兄ちゃんに教えてもらう」なんて堂々とい言う始末。

さらに遊び相手になっていた由紀江に「SEXって何?」なんて聞いている。これには由紀江は答えられない。

 

「え、えと、そのあのそのえっと!?」

「ちーちゃん。前にも言ったけど大きくなったら教えてもらえるよ」

「そっか。やっぱりお兄ちゃんに教えてもらうね」

「ははは…」

 

空笑い。

 

「ロリコン」

「違うから!!」

 

銀子からの冷ややかな一言。何度も言おう。真九郎はロリコンではない。

 

「ろりこんって何?」

「ちーちゃんが知らなくて良いことだよ」

 

幼い彼女には知らなくて良い十字架である。

 

「さて、せっかくだから観光したいのだけど良いかしら?」

「もちろん。せっかく来たんだからね」

「じゃあ、もう少し休憩したら観光しに行きましょう。もちろんお友達もね」

 

ニコリと笑顔で大和たちを見る。その返しに「いいんですか?」と答える。

それはそうだろう。せっかく家族が会いに来てくれたのだ。家族たちだけで楽しむかと思っていたのだから。

 

「あら、せっかく仲良くなれたもの。みんなで楽しんだ方が良いでしょう。それにお友達の方が詳しいでしょう?」

「そうですね。なら川神さんたちが良ければですが」

「私はオーケーだ。こんな美人家族と一緒に観光だなんて最高だ」

 

百代を筆頭に大和たちも同行することを決める。なんとも大所帯な観光だ。観光自体が大所帯でするものでもあるが。

 

「じゃあ行きましょうか。まずが御昼ご飯を食べに行きましょう!!」

「なら俺が良い所を知ってますよ」

 

大和が携帯電話を取り出してオススメの場所をピックアップする。

 

「ところでそちらのミステリアス且つ不思議な貴女様は?」

「歩くのは面倒だが食事はしたいしな。行くとしよう」

「うーん。ミステリアスな淑女…良いな」

「姉さんってば」

「私は淑女ではないよ」

「なら?」

「私は悪女さ」

 

ピシャリと堂々と言い放つ悪女宣言。どうでもいいが何故かカッコイイと思ってしまった一子。

 

「環さんはどうします?」

「せっかく来たけど酔っ払ってるからね。寝てもらうとしよう」

 

流石に酔っ払いを連れて外を出るわけにはいかない。ここは部屋でゆっくりと寝てもらおう。しかし、島津寮で一人お留守番もある意味心配ではあるが。

そんなことを思っているとドタドタと聞こえてきた。その足音の正体は件の環である。

 

「私も連れてけー!!」

「うわっ環さん!?」

「置いていくなんて酷いよ真九郎くん!!」

「酔っ払いは寝てください」

「あーん。真九郎くんが冷たーい」

 

酔っ払いには優しくしない。ただ寝させるだけである。何せ酔っ払いに何を言っても会話が成立しないからだ。

 

「少しは酔いが覚めたから大丈夫。あ、それと真九郎くんの部屋にはエロ本無いんだね」

「何を調べてるんだ酔っ払い!!」

(無いのか)

(無いんだ)

(無いのですね)

 

人が集まれば騒がしい。それは当然の摂理かもしれない。

 

「騒がしい連中だな。だが平和だ…この寮ではな」

 

闇絵はテレビをチラリと見る。今はニュースがやっている時間帯だ。

内容は様々である。政治家の汚職事件に殺人事件、強盗事件と日本の闇が放映されている。平和の裏にはいつも闇が隠れているものだ。

平和しかない世界なんてものは存在しないのかもしれない。そんなの夢のまた夢。永遠に平和主義者が望み続ける願いだろう。

 

「ふむ、脱走事件か。よく脱走できたものだな」

 

脱走事件。三十代前半頃の大柄な白人男性が脱走したというニュースも流れていた。

 

「出かける前にウコン茶作って真九郎くん」

「やっぱ寝てろ」

 




読んでくださってありがとうございます。
今回の話はオリジナルかサヤカルートを組み込もうと思っています。
そして『絶対切断』というタイトルがある通り切彦もメインで登場させようと思ってますよ!!

次回もゆっくりお待ちください。
次はもう少し早く投稿できたらなって思ってます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。