139
ある日の1日。
今日は夕乃と紫は清楚の正体を探すために図書館に訪れていた。発端は真九郎が清楚の正体を探す依頼をしているから手伝っているのだ。
夕乃は清楚の友として探し、紫は面白そうだから探す。図書館で偉人のところを探せば見つかるだろう。しかし清楚が誰の偉人かは分からない。
「ふむ。清楚の正体はこの偉人の本の誰かなのだな」
「そうですよ紫ちゃん」
「だが誰なのだ?」
「それを探すのが私たちの役目ですよ。清楚さんの性格や特徴はメモがあります。この特徴に一致しそうな偉人を探しましょう」
「うむ!!」
図書館なので静かに清楚の正体にあたる偉人を探してピックアップしていくのであった。
まずは文系少女という点から清少納言や紫式部などが当然上がる。
「むむ、この紫式部ってのは私と同じ名前がついているぞ」
「ですね。普段の行いから紫式部なんか当てはまりそうですね」
紫式部という偉人は清楚の正体として多くの者が思う1人である。候補として挙がって当然の帰結である。
文系の偉人で言うと他にもチラホラと出てくる。だがそれは全て日本の偉人だけだ。
ここで海外にも目を当てるのも良いかもしれない。何も九鬼財閥はクローンを日本の偉人だけとは公開していない。
「海外か。この人は?」
「この偉人はマリー・アントワネットですね」
「これは?」
「この方はアーサー王です」
「この人は?」
「ジャンヌ・ダルクです」
清楚の正体を探すついでに紫に偉人と歴史の勉強をしてあげる夕乃は良い先生になるだろう。
そんな2人の前に件の清楚が現れた。彼女は図書館をよく利用するから出会う可能性は高い。彼女のファンはよく清楚に会う度に図書館に通う者だっている程だ。
「夕乃ちゃんに紫ちゃん。こんにちは」
「こんにちわ清楚さん」
「うむ、こんにちは!!」
清楚は彼女たちの机に座る。手元には紫にとっては難しい本ばかりだ。
「それは偉人の本?」
「実は清楚さんの正体を探しているんですよ」
「それって直江くんたちや真九郎くんに頼んだ?」
「そうですよ。私たちにも手伝わせてください」
夕乃と紫が手伝ってくれる。それだけで清楚の心は嬉しさでいっぱいであった。
「ありがとう」
「自分の正体を知るのは当たり前だ」
「紫ちゃん?」
「自分を生んだ親が隠しているとは言え、自分自身のことは自分自身が知るべきなのだ。だから自分の正体を知ることは悪いことでは無いぞ!!」
「紫ちゃん…」
紫はまだ子供だ。しかし紫は大人のような言葉を発することがある。これも九鳳院として様々な人と接している賜物なのだろう。
「でも自分自身のことだから、どんな正体でも受け入れるべきだぞ」
「うん。それは分かってる」
「でも清楚は清楚なのだ。それを忘れるな。清楚と私は友達だ。紫は清楚の正体がどんな人でも受け入れるぞ!!」
「ありがとう紫ちゃん!!」
紫の笑顔と言葉に清楚は心が嬉しさで溢れてくる。
「大丈夫ですよ清楚さん。真九郎さんが必ず見つけますから」
本当は真九郎ではなくて頑張っているのは銀子だが、それは知らない方が良いかもしれない。
「すぐに見つかる!!」
清楚の正体が分かる2日前の出来事であった。
140
川神学園の屋上。
ここには真九郎たちに大和たち。そして清楚がいた。屋上にいるのは清楚の正体が分かったから集まったのだ。何故学園の屋上なのかは分からない。
「もう分かったのみんな?」
「はい。分かりました。更に紅くんたちと正体を答え合わせをしたところ、お互いに一致しました」
「いやあ流石、真九郎殿だ。こっちは全員で探したのに真九郎殿は1人でとは!!」
「頑張ったのは私なんだけどね」
頑張ったのは真九郎ではなく銀子。しかも彼女は九鬼財閥のデータベースをハッキングしたのだから正解は当たり前である。
そんな裏技もとい反則技をやってのけた銀子も凄いが大和たちも少ない情報だけで清楚の正体に辿り着けたのも凄い。
銀子としてはこんな依頼は片手間感覚で楽勝だったらしいが。
「私も頑張ったぞ!!」
「そうだね紫」
紫もまた清楚の正体には辿り着いた。最も彼女は己の幸運と勘とも言うべき才覚で辿り着いたのである。それはここにいるみんなよりも特殊で凄いと思う。
「じゃあ、私の正体は誰なの?」
清楚は高揚半分、不安半分で口を開いた。やっと自分の正体が分かるのだから当然の気持ちである。
そんな彼女とは裏腹に大和たちはちょっと微妙な気持ちである。
(うーん。葉桜先輩にこの偉人を言うのはちょっとだけ気が引けるな)
(でもこの偉人があたしたちの導き出した答えだしね)
清楚はどんな偉人でも受け入れる気持ちはできている。2日前に紫に言われた通り覚悟はできているのだ。でもやっぱり自分が予想している文科系の偉人を意識しまくっているのだ。
きっとそう思っていると予想している大和たちは答えを言いにくい。なんせ導き出した偉人は正反対の存在なのだから。
最初は大和たちだって文科系の偉人を探していたが、清楚の特徴や乗っている自転車の名前、髪飾りの花の名前からある偉人の特徴と一致したのだ。
彼らが見つけたその偉人に最初はまさかと思ったが次々と一致する特徴に笑えなくなり確定したのだ。そして真九郎ではなく銀子が見つけた偉人とも合致して完全に確定した。
(ぼくたちがやっと見つけたのに対して村上さんは簡単に見つけたのは凄いね)
(村上さんって何者?)
凄腕の情報屋。
彼女は自分自身のことを大っぴらには言わない。だから大和たちは銀子の正体を知らないのだ。大和の人脈構成としては喉から手が出る存在だろう。
「誰かな誰かな。紫式部かな。それとも清少納言かしら?」
「項羽です!!」
「え?」
「葉桜先輩の正体は項羽です!!」
大和たちからしてみれば言いにくいことであったが翔一は堂々と言い切った。
「流石キャップ」とか「堂々と言ったなあ」とか聞こえる。特に気にせずに言えるというのはある意味能力の1つだろう。
言いずらいことをはっきりと言う。それは空気を読めないと言われるかもしれないし、はっきり言う正直者と思われるかもしれない。
「えと…降雨。雨?」
「いえ、中国の英雄。いや、覇王と謳われた項羽です!!」
「覇王?」
携帯電話で調べても文化系の偉人ではなくてバリバリの武人である。まさしく正解で武人なのだ。
「最初はまさかと思ったけど葉桜先輩との特徴が一致したんだ」
「葉桜先輩が乗っているスイスイ号。項羽の馬の名前は騅。これを聞いた時はハッとしたぜ」
「信じられないかもしれませんが、集めた資料を見てこうも一致するとな…」
「葉桜先輩。この資料を見て何か感じることはありませんか?」
集めた資料を清楚に渡す。渡された資料を見て、ある文章を読んだ瞬間に清楚は頭を抱えた。
「うう…頭が」
「葉桜先輩!?」
「清楚さん!?」
資料のある一文を読んだ瞬間に頭痛が響く。まるで何かを思い出せそうな痛み。
「おいヤバイんじゃないか。一旦中止だ」
百代の判断にみんな賛成して清楚を介抱しようとする。しかし清楚本人が止める。
「待って、何か思い出せそう。この一文…前に読んだことがあるような」
『力は山を抜き…気は陽を覆う。時、利あらず。騅行かず…』
清楚はまるで誰かに操られているように文を読んでいく。これは何かマズイ。屋上にいる全員が警戒した。
そして清楚が文を読み終わった後に巨大な気の爆発が起きた。
「マズイ。全員避難しろ!?」
巨大な気の爆発は川神全域に広まった。そして強者たちはこの異様の状況に気付くのであった。
川神鉄心や九鬼財閥のヒュームたちも気付く。
「おいマープル。何の事故か知らんが目覚めたぞ項羽が」
「何だって!?」
「紋様たちは既に避難させている」
「ったく覚醒を防ぐ拘束具である指輪を用意したのにこんなタッチの差で…仕方ないすぐさま対策を練るよ」
141
川神学園のグラウンドに避難した真九郎に大和たち。さっきまでいた屋上は物凄い気がほとばしっている。
「大丈夫か紫、銀子、夕乃さん!!」
夕乃も銀子も急いで抱きかかえて避難した。
「大丈夫だ。でも…」
紫が屋上を見る。自分のことよりも清楚が気になるのだろう。
「お前たちはここにいろ。私が見てくる」
百代がまた屋上に向かって跳ぶ。屋上に何が起こっているのか分からない。だが嫌な予感しかしない。
全員が屋上を見る。何が起こっているか見えないが巨大な気が溢れていることしか分からない。そしてたった2分も経っていないのに屋上から更に空へと何かが飛んで行った。
「ええ、お姉さま!?」
空に飛んで行ったのはまさかの百代。何故、空に飛んで行ったか訳が分からない。
百代が空に飛んで行ったの確認した次はグラウンドに何かが落ちてきた。
「な、何!?」
「クハハハハハハ!!」
大きな笑い声と現れたのは葉桜清楚であった。しかし清楚であって清楚でない。彼女は項羽であった。
「我が名は項羽だ!!」
堂々と自分自身の名前を言う。姿が清楚であるが中身はまるで違う。
「さて、礼を言うぞ。よくぞオレの正体を見破り覚醒させてくれた!!」
清楚で項羽。彼女は二重人格のようにも見えるが2人で1つの人格であるらしい。元々、項羽人格は清楚の中にあったが封印されていたのか分かれていたようなのだ。
だから1つであったはずの人格が別れたらしい。その状態がやっと混じり合ったとのこと。清楚の人格が消えたのではない。やっと欠けていた人格が元に戻ったというべきだ。
「クハハハ。オレが天下を取った暁には大きな褒美をやろう!!」
「て、天下!?」
「おいおい世界征服のつもりかよ!?」
「オレは覇王だ。ならば世界を統べるのは当然だ!!」
拳をグっと握りしめた。その力強さは雄々しい。
「さて、どうやって天下を取るんだ?」
「ええ!?」
「各国のトップでも落とすか…まずは挙兵か?」
「おいおい何を言ってるんだ!?」
「オレは発言を許可した覚えは無い」
「うおわあああ!?」
「岳人!?」
止めに入った岳人が川神のプールまで投げ飛ばされた。落ちた場所がプールであることから無事であるようだ。
清楚もとい項羽は突拍子もない世界征服発言を繰り返す。彼女の言っていることはただの子供のような発言だ。これにはなんと言えばいいか分からなくなる
『聞こえるか清楚。いや項羽』
「この声はマープルか!!」
スピーカーから声が聞こえる。彼女の正体を知っていることから九鬼家でも上層部の人間だろう。
『目覚めちまったもんはしょうがない。一度帰っておいで』
「帰るだと、必要ない。オレは目覚めたばかりで元気でいっぱいだ。見ていろマープル今日中に日本を墜とす!!」
『馬鹿なこと言ってんじゃないよ。いいから帰ってきな!!』
「オレが馬鹿だと。恩があるとはいえ許さないぞ。オレは馬鹿じゃない。馬鹿じゃないぞ」
『別に許してもらわなくて構わないね。最後の警告だ。帰って来な』
「どうしてそこまで帰らせる?」
『これから教育カリキュラムを考えるのさ。勉強はこれからもやってもらうよ』
「勉強だと。クハハ、そんなもの名前さえ書ければ十分だ!!」
『はあ…話が通じそうにないね。それに鼻っ柱も折る必要がありそうだ』
マープルの交渉は決裂したようだ。次に彼女が提示したのは項羽の暴走を止めるために自分の財を報酬として川神学園の強者たちと川神全域の強者たちに放送した。
そこからの九鬼家の動きは早かった。項羽が川神学園から出た場合はすぐさま一般市民の安全を優先させるために九鬼家従者部隊を待機させる。
ケガをしたくないものは安静にする。項羽に立ち向かう者は自己責任。最も九鬼家からは治療はしてくれる。
「全くマープルめ。このオレに賞金を懸けるとは…まあいい。目覚めたばかりの運動だ。どこからでもかかってこい」
項羽は身体から巨大な気を滲み出させる。
翔一が持ってきた武器を受け取る一子たち。まさかこんな状況になるとは思わなかったが今は彼女を力づくで止めるしかない。
話が通じないなら力づくしかない。なんと川神らしいことである。
「悪いけど力づくで止めさせてもらうわよ!!」
「黛流。黛由紀江…行きます」
「行くぞ!!」
一子たちが構えて立ち向かう。
「んは。どこからでもかかってこい。遊んでやる!!」
項羽は間違いなく川神で言うところ壁越えの実力者。しかも百代を空へと飛ばした張本人である。
最も百代が項羽に飛ばされたのは油断という一点がとてつもなく大きい。実力は五分五分であっただろう。しかし百代の長く戦いたいという欲と油断からカウンターをもらって吹き飛ばされたのだ。
相手が格下ならばカウンターなんて物ともしないが、項羽は百代と同じくの圧倒的な実力。ならばカウンターは警戒するべきだったのだ。
結果として項羽に打ち負かされたのである。
「気を付けろみんな!!」
油断していたとはいえ、百代を打ち負かした項羽に勝てるかなんて低い確率だろう。それでも立ち向かうのは武士娘だからだ。
「おりゃあ山崩し!!」
一子の一撃を難なく弾き返す。
「はああああああああ!!」
クリスの怒りの攻撃も効かない。
「貰った」
京の矢を脅威の肺活量で吹き返す。
「はああ!!」
由紀江の最高速度の斬撃さえ歯で受け止める芸当を魅せて見せた。
まるで百代のように常識外れの実力である。勝負は一瞬で項羽は一子たち4人は1分以内で片づけた。
「みんな!?」
圧倒的実力。彼女をどうやって止めるのか。
遠くから観察している燕も「ありゃりゃ」と呟くが笑えない状況だ。彼女を倒すには真正面からは厳しい。
どこかしら隙をついて狙うしかないだろう。
「ふん…遠くからオレを見ている奴がいるな。って、んん?」
川神学園の入り口からゾロゾロと腕に自身がある学生が現れる。全員がマープルの放送を聞いて集まったのだ。
これだけの人数がいれば押さえつけることはできるはずと思ってしまった時点で間違いである。
「こんなものか。スイ!!」
『はい』
進化したスイスイ号がロケットの如く飛んできて方天画戟を噴射する。それを簡単にキャッチして一閃。
すると突撃してきた学生がまるで紙のように空へと舞い上がった。まさに死屍累々。
「クハハハハハ。こんなものか!!」
項羽は止まらない。川神学園に腕利きの者を倒したが彼女はまだ動き足りない。ならばスイスイ号に乗って一っ走りしようかと考えた時、小さいが強き言葉が聞こえた。
「止めるのだ清楚!!」
声の主は紫であった。
「お前は紫だったな。幼いくせによくオレの正体を探す手伝いをしてくれたな。礼を言うぞ」
「止めるのだ清楚。こんなケンカは駄目だ!!」
「ケンカだと…違うな。これは報酬目的で襲って来たから撃退しただけだぞ」
「でもやりすぎだ!!」
「む、確かに。まだ覚醒したばかりで加減ができていないな」
加減なんて一切するつもりはなかった項羽。まずは身体を全力で動かしたかったのだ。
「もう止せ清楚。これ以上のケンカはダメだ!!」
「子供とはいえ、オレに指図するな」
紫の言葉を無視してスイスイ号に乗ろうとするが紫は諦めずに彼女の前に出る。
「邪魔だぞ」
「もう止めるのだ」
「くどい。オレは我が道を進む」
「止まるのだ」
紫の目は怯えているが強い目もしている。
「くどすぎる。子供に手を挙げるつもりは無いが…邪魔をするのなら容赦はしないぞ!!」
気を滲み出させて威嚇するが紫は立ちふさがる。
「こいつ…」
「待ってください清楚先輩!!」
「む、お前は真九郎か」
紫を守るように前に出てくる真九郎。彼女を守るのは彼の役目である。
「もう落ち着きましょう。今は落ち着くことが大切です」
「オレは落ち着いている。クハハ、お前は割と気に入っているぞ。表のオレが世話になったしな」
真九郎のすることは紫たちを守ることと項羽を止めることだ。
「もう止めましょう。清楚さんは正体が分かったのなら九鬼財閥に戻るべきです」
「お前まで言うのか。オレは日本を手中に治めねばならん。そう天下統一だ!!」
「天下統一の前に九鬼財閥に戻ることが大切です」
「お前…」
「清楚先輩…いえ、項羽さん。今の貴女では天下統一なんてできません」
「なんだと!?」
「紫に…子供相手にムキになっている時点で駄目です。今の貴女には冷静になって話を聞くべきです」
この場にいる最年少の紫が今の項羽がやっていることが間違いだって分かっているのに認めない。それを理解できない項羽は暴走しているし、天下統一なんてできない。
それすら分からない彼女は間違っているのだ。今まで封印されていた衝動かもしれないが、常識が外れている。項羽としての性質が強いせいか時代錯誤の考えをしてしまっている。
「そもそも今の時代に…天下統一なんて言葉は合いません。今は戦国時代でもありません」
「くう…」
「お願いです。落ち着いてください項羽さん!!」
当たり前のことを言われたがイラついてしまう項羽。やはり今の項羽は覚醒したばかりで常識が足りていない。
マープルだって項羽に話が通じればこんな実力行使なんてさせなかった案である。
「五月蠅いぞ。お前には借りがあるがウダウダと言うな!!」
次に項羽が取った行動は彼女の人格に引っ込んだ清楚にとって止めて欲しかった行動であった。
『だめ…!?』
項羽の頭に清楚の声が響いたが既に遅かった。方天画戟が真九郎を襲ったのである。
真横に垂直に吹き飛ぶ真九郎。
「真九郎!?」
紫が急いで真九郎のもとに駆け寄る。
「はあはあ…くそ。スイ、行くぞ!!」
項羽はスイスイ号に乗って川神学園の外へと出て行った。
「し、真九郎…」
「真九郎!?」
銀子も駆け寄って介抱してくれる。
「ゴホッ…ゴホッ」
口に鉄の味がする。ポタポタと血が滴る。
項羽の攻撃で内臓をいくつか負傷したようである。
「は、早く病院だ真九郎!?」
「だ、大丈夫だよ紫」
「何が大丈夫なものか、血を出しているんだぞ!!」
「紫ちゃんの言う通りだ紅くん」
「直江くんまで…一子さんたちは?」
「ワン子たちは保健室に運んだ。でも紅くんは病院に行くべきだ」
吐血して、内臓も負傷したなら病院に即直行である。
「でも清楚さんを止めないと…ゴホッ」
内臓をやられたせいですぐには動けない。でも身体に鞭を売って動かなければならない。
依頼は達成させられたが揉め事処理屋としてまだやるべきことがあるのだ。項羽の暴走を止めないといけない。
「真九郎さんは休憩していてください」
「夕乃さん?」
「清楚さん…いえ、項羽さんは私が止めますので」
夕乃は真九郎の口についた血をハンカチで拭った後、川神学園から出ていく。
「清楚さん…項羽さん。貴女とは友人です。しかし真九郎さんを傷つけたことは許しません」
夕乃は一瞬だけ怒りを発してしまった。一瞬だったので彼女の気に気付いた者は一握りしかいなかった。そして川神市にいる『孤人要塞』もマープルの放送を聞いて面白そうと思っているのであった。
覇王の前に真九郎以上の戦鬼と無敵の要塞が向かう。更に空に飛ばされた武神もまた急いで帰還しようとしていた。
読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりお待ちください。
さて、今回で清楚が覚醒して項羽に目覚めました。
今回のメインはこれでした。基本的に清楚ルートとあまり変わらないと思います。しかし次回はオリジナルになります。
なんせ、ついに夕乃が動きます。更に絶奈まで、遅れて百代も。
どんな展開になるかはお待ちください!!