紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

6 / 107
こんにちわ。
勢いあまって書くことができました。
今回の話はまんまそれぞれの1日です。

では、始まります。


それぞれの1日

012

 

 

朝。気持ちの良い朝日のおかげで目が覚める。

今日の朝食ホカホカの白米、味噌汁、鮭のハラミ焼き、卵焼き、青菜のお浸し、松永納豆。デザートにヨーグルトだ。

まさに朝食の代表的な献立だろう。これは朝から食欲が湧き上がる。

 

「おはようございます麗子さん」

「おはよう紅君。朝ごはんできてるよ」

「おはようございます麗子さん。今日も一段と綺麗ですね」

「おはよう。よし。デザートにヨーグルト1つ追加だ」

 

島津寮のみんなも起きてくる。みんなで食べるご飯は良い物だ。それに誰かが料理を作ってくれるのは嬉しい。

真九郎は基本的に自炊をしている。誰かに料理を作ってくれるのはあまり無いのだ。

明るく優しい雰囲気の麗子にはどこか心が温かくなる。彼女には島津寮でお世話になるだろう。

席についてパクリと朝食をいただく。やはり美味しいの一言である。

 

「この納豆って松永納豆か?」

「そうだよ。あの子は頑張ってるからねえ。ウチも今日から松永納豆をガンガン使わせてもらうよ」

 

松永納豆。確かに美味い。安物の納豆より断然違うのが分かる。

これを売っているのが今、川神学園3年の松永燕だと大和から説明してくれた。彼女はあの武神百代と引き分けたと言うのだ。

本気では無く、手加減ありの練習試合に過ぎなかったが引き分けたこと自体が奇跡らしい。そんな彼女は川神学園で名がうなぎ上りだ。

 

「そうなんだ。松永さんか。3年なら夕乃さんが一番に面識があるかもね」

「そうですね。確か3Fだとか・・・もしかしたら会うかもですね」

 

確実に会うことになるだろう。燕は気になる相手ならば接触をしてくる。そして強さを測りにくるのだ。

それを知らない夕乃は特に気にしないのであった。寧ろその前に百代から少しなりとも目を付けられているのでそちらが大変である。

 

「ごちそうさま」

 

朝食が終えれば支度をして登校である。いつもは風間ファミリーのみんなで登校しているが今日はそこに真九郎たちが加わる。

同じ島津寮に住む者として最初くらいは登校しようとのことである。登校中とはいえ、知らない奴らが風間ファミリーの輪に入っているのに不快感が少し出た京には大和がフォローしていた。

彼女自身も確かに勝手すぎるかと思って少しだけ反省。ついでに大和にプロポーズをするが軽く避けられる。

「そんなところも好き」らしいが、いつものことのようである。

 

「おっはよおおう!!」

 

空から百代が降ってきた。この登場は大和たちにとって日常茶飯事であるが真九郎たちにとっては驚きである。

いつもは冷静の銀子ですら驚いている。人が空から降って来れば誰でも驚くだろう。今の所、銀子を驚かせたのは百代と環だけである。

 

「普通じゃないわね」

「ははは・・・やっぱり普通の人が見ればそういう感想だよね」

 

卓也がそれとなく一般人の気持ちを代弁してくれる。

 

「崩月先輩おはようございます。俺ってベンチプレス200キロを上げられます」

 

岳人が急に夕乃へアピールする。しかし夕乃が異性として見ているのは真九郎のみなので空振りしているのであった。

次は百代が夕乃にアピールする。勿論それは戦ってみないかというものだ。彼女からしてみれば少しの動作で武術を習っているか否かが分かる。

確実に夕乃は実力者。だからバトルマニアとしては戦ってみたいのだ。

 

「決闘しないか夕乃ちゃん!!」

「えっと・・・遠慮しときます」

「えーそんな!!」

 

戦う意味は無いので無難に断る。これには百代も頬を膨らませて抗議する。

 

「無理に戦うのはダメだよ姉さん」

「でも戦いたいんだよー。じゃなきゃ弟の大和で遊ぶしかないぞ」

「そこで俺をオモチャにしないで」

「今日も勇往邁進!!」

 

元気良いグループだと言うのが真九郎の感想である。こんなにも仲が良いグループは初めて見る。きっと毎日が楽しいだろう。

自分も毎日が楽しければ良いと思いながら登校する。すると大きな橋が見えてきた。この橋は川神で有名な橋だと言う。

なんでも変態橋の異名を持つのだ。イロイロな人が出現するために名付けられたらしい。今日も今日とて誰かがいる。

 

「また姉さんの挑戦者だ」

 

どうやら百代を倒すべく現れた挑戦者。その挑戦者を意図も簡単に川へと殴り飛ばす。これもいつもの光景らしい。

星領学園に登校していた時よりも過激である。そう思いながら登校するのであった。

 

 

013

 

 

2Fのクラス。ここは様々な人物が跋扈している。面白い人物ばかりである。

まず最初は教師に驚く。教師は教鞭を振ると言うが川神学園の教師を本当に鞭を振って勉強を教えてくれる。しかも素行の悪い学生には容赦なく鞭で罰を与えるのだ。

体罰はマズイのではないかと思うが川神学園ではある程度許されているらしい。星領学園ではまず有り得ない。

やはり武術が盛んな学園だと力で抑え込む的なものがあるのかもしれない。でも常識が崩れそうである。

 

「凄いって言うか・・・常識が崩れそうだ」

「まあ、他の学校から見ればそうだろうな」

 

学生たちも様々な人たちがいる。大和は軍師と呼ばれており、いろいろと策を講じるのが上手い。そのおかげで様々な事件を解決してきたらしい。

そもそも川神学園では地域で起こっている事件やちょっとした探し物などを解決しているのだ。その時に大和の策が活躍するのだ。ちなみに褒美は食券である。

まさか川神学園でも揉め事処理屋的なことをしているのには驚きである。本当に驚いてばかりである。

もしかしたら真九郎の出番が無いかもと思ったほどである。なにせ解決した事件には売春組織を潰したこともあるらしい。

 

(売春組織を潰したのか。凄いな)

 

売春組織といっても素人どもが創り上げた組織にすぎない。真九郎が潰した組織に比べれば小さいほうだろう。

そして真九郎にとって2Fで気になる学生がいるとすれば源忠勝である。彼は代行業をしており、揉め事処理屋と似たような職種なのだ。

もしかしたらライバルになるかもしれないのだ。でも川神の地理を知る者と仲良くなるのも悪くない。今度川神市を案内してもらおうと思う真九郎であった。

 

(やっぱり揉め事処理屋として地理を知るのは必要だよな)

 

一方、忠勝は真九郎の揉め事処理屋に関して興味を抱いていた。代行業の責任者である巨人から揉め事処理屋について聞いていたのだ。

揉め事処理屋とは真九郎が説明した通りの何でも屋のようなものである。しかし違う部分もある。それは最上級の揉め事処理屋は仕事を選べると言いうことだ。

最上級の揉め事処理屋は様々なお偉いさんから依頼を貰え、稼ぎも有り得ないくらいの額らしい。巨人もそれくらい稼ぎたいとぼやいている。

業界内でも巨人がリスペクトする人物がいる。業界最高クラスの実力を持つ揉め事処理屋がいるのだ。

 

その人物の名前は柔沢紅香。

川神には狂ったような強さを持つ人物がゴロゴロいるが、柔沢紅香もまた狂ったほどの実力者だと言うのだ。巨人曰く、彼女も壁超えをしているらしい。

それに超絶美人でお近づきになりたいとのこと。この感想にはどうでも良いと応えた忠勝である。

 

(親父から聞いた話じゃ揉め事処理屋は表だけじゃなく、裏世界でも活躍していると聞く。まさか紅の奴も裏世界に足を突っ込んでいるのか?)

 

忠勝の疑問は正解である。しかも深くに足を突っ込んでいる。そもそも裏十三家である崩月に内弟子として修行していたし、他の裏十三家と死闘を繰り広げた事件も解決してきた経験があるのだ。

 

(今度詳しく話を聞いてみるか)

 

揉め事処理屋の真九郎と代行業の忠勝。お互いの職業的に気になるのは当たり前であった。

授業は続く。有名な学園であるため、なかなか難しいが分かりやすくもある。ここで勉学に励んだら成績は上がるだろう。

そう思いながら真九郎はペンを動かす。

 

 

014

 

 

2Sのクラスは特別クラス。銀子が所属するクラスであり、みんなが成績優秀。テストでも50位以内に入るのだ。

しかし選民感覚もあるので他のクラスを見下している者も一部いるのだ。特に2Fとはいがみ合いがよくある。

 

(直江君から聞いた話だとよく2Sと2Fはいがみ合ってるらしいって言ってたわね)

 

それはまた面倒だという感想しかない。交換留学に来た学生を巻き込まないでほしいものである。

ため息を吐きたくなったが我慢した。しかし、自分の席の前にいる偉人のクローンたちを見る。ニュースで少しは知っていたが本当にクローンだとは驚きである。

実際には本人のクローンと言うよりも転生に近いらしい。確かに源義経、武蔵坊弁慶、那須与一は歴史上では全員男性であったはずだ。

しかし、那須与一以外は女性である。そのことがクローンでなく、転生という事実だろう。クローンであるが歴史の義経たちと現在の義経たちは別人であることの証明でもある。

 

(源義経はとても良い子だと思う)

 

義経は早くも銀子を2Sに馴染ませようと積極的に関わってくる。悪い事では無いが、あまり人と積極的に関わらない銀子にとっては義経の行動は少し合わない。

 

(でも交換留学としてはコミュニケーションは大事なのよね。ここは頑張らないといけないわね)

 

義経の行動は気持ち的にありがた迷惑もあるが、嬉しい気持ちも含まれている。

銀子は珍しく、2Sでのコミュニケーションを取るために頑張ろうと思うのであった。

 

「村上さん。少しは2Sに馴染めましたか?」

 

早速誰かが話しかけてきた。相手は冬馬である。彼はいつもの3人組だ。準と小雪がいつも一緒にいる。

風間ファミリーとはまた違う仲良し組みである。

 

「・・・そうね。少しだけかしら。私に構ってくれる人もいるからね」

「義経を呼んだか?」

「確かに」

 

フフッと軽く笑う冬馬。それだけでファンの女子は歓喜ものだろう。なぜなら彼はイケメン四天王だからだ。銀子にとって興味は無いが。

 

「村上さん。もうすぐ昼食だから一緒に食べよう」

「そうね。私も一緒に相席させてもらうわ」

「うん!!」

 

義経は笑顔で頷く。それを見た弁慶が「主可愛い」と川神水を飲みながら呟く。

 

「私もご一緒しても?」

「変なことしなければね」

「これはこれは手厳しい」

「若、警戒されてるな」

「けいかーい」

 

それでも冬馬は柔和な笑顔のままである。なぜなら最近は九鬼のおかげで自分の運が回ってきたからというのもある。

 

(それにしても井上準・・・ロリコン)

 

さすがに2Sにいればクラスメイトたちの個性は分かってくるものである。そしてロリコンがいるのには少し頭痛がしたのだ。

きっと紫に出会えば準は変な意味で覚醒するだろう。それはそれで面倒くさい。

銀子は思う。去年、紫が真九郎に会うために星領学園に侵入してきたことがある。今回ももしかしたら川神学園に侵入してくるかもしれない。

なれば何か厄介事が起こるだろう。そう思うと銀子はため息を吐きたくなる。

次に一方的に知り合いがいる。それは「選民選民」と言っている不死川心である。それは真九郎が揉め事処理屋の仕事として不死川家で依頼があったのだ。

その時に情報で調べたことがあるのだ。名家であるためか少しはブロックされたが九鳳院の情報を調べた銀子には楽勝であった。

 

「此方を見て何か用でもあるのか?」

 

扇子を口に当てながらトコトコと歩いてくる。選民である自分に興味を持ったのは良い目をしていると心は思う。そのまま友達になってやろうと上から目線で言おうとしたが銀子が先に話しを折る。

 

「いえ、特に」

「にょわあ!?」

 

いきなり出鼻を挫かれる心であった。しかし、いつもの光景である。

まだまだ2Sには個性的なメンバーはいる。

 

 

015

 

 

3Sのクラスも特別なクラスである。2Sにも負けない個性的なメンバーが揃っているのだ。

そんな3Sのクラスでも夕乃は持ち前の性格でよく馴染んでいた。しかもクローンである葉桜清楚と仲良くなり、清楚と大和撫子コンビで凄い人気を得ていた。

 

「夕乃ちゃんは運動も勉強も凄いですね」

「いえいえ、清楚さんもですよ」

 

周囲から勝手にコンビを組まされたが、お互いに仲良くなるのは時間がかからなかった。

彼女たちの会話姿を見る3Sの学生たちは「清楚で大和撫子」や「癒される」とか言っている。彼らにとって彼女たちは良い絵になっているのだ。

京極彦一も静かに笑みを浮かべるのであった。

 

「それにしても清楚さんの名前って過去の偉人の名前じゃありませんよね?」

「そうなんです。とにかく勉学に励めと言われてて、25歳あたりになれば教えてもらえるんです」

 

義経たちには教えといて清楚には教えないとはおかしい話である。予想するに教えられない理由が必ずあるのだ。

清少納言などが良いと清楚は言っているが、もしそうなら教えられているはずだ。その偉人だと教えられない理由が無い。

きっと清楚は偉人の中でも更に深い存在かもしれないと思う夕乃であった。

 

「私としては早く知りたいんですけどね」

「まあ自分のルーツですからね。気持ちは分かります」

「自分で調べるか、誰かに調べてもらおうかしら?」

「良いと思いますよ。自分自身を知るのに誰かの許可なんていりませんから」

 

クローンと言えど、自分のことを知るのは自由だ。誰かの許可はいらない。夕乃の言葉に清楚は目から鱗が取れた。

 

「そうよね。自分のことを知るのに許可なんていらないわよね」

 

今まで教えてもらうまで待つつもりしかなかった。自分から探すという考えは無かったのだ。しかし夕乃との会話から探すというのに至ったのには良いと思っている。

川神学園には依頼を頼む制度を導入している。利用するのも1つの手だろう。最初は分からないことだらけだが少しずつ自分を知ろうと決めた清楚であった。

 

「ありがとう夕乃ちゃん。何か心が少し晴れた気がするよ。お礼に杏仁豆腐奢るね」

「はい。楽しみにしてます」

 

真九朗たちは少しずつ川神学園に馴染んできている。それは良いことだ。これから川神で彼らに様々なことが起こるだろう。

まず最初の1つとして表御三家と裏十三家が川神に向かっていることだろう。




読んでくれてありがとうございます。

今回の話に補足をいれるならば、物語の展開を広げるための話でした。
簡単に分けると・・・

男のツンデレルート
ニョワニョワルート
覇王様ルート

って感じですかね。でもその前に紫と切彦の初登場ルートですが。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。