そしてエキビションマッチですがオリジナル要素が入ります!!
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沖縄旅行後に模擬戦が再開され、どの軍も勢いよく合戦をしている。皆が優勝を目指して頑張っているのだ。
真九郎だって最初は特にやる気はなく、不参加のつもりだったが今では覇王軍を優勝を目指そうとみんなと頑張っている。学園行事でこうも頑張るのは久しぶりの気持ちだと思う。
揉め事処理屋の仕事では味わえない感覚。普通の学園の行事でも味わえない。川神学園だからこそ味わえる感覚なのだろう。
合戦なんていうのは本当に川神学園でしか味わえない。他の学園の騎馬戦とかそういうたぐいではない。本当に自分の身と武器を使って戦うのだ。
「ここまで来たら頑張らないとな。頑張って優勝を目指しましょう項羽さん」
「あ、ああ。そうだな?」
「項羽さん?」
「ど、どうした真九郎!?」
「………」
よく分からないが沖縄旅行から帰ってきた以来、項羽の様子がおかしい。戦いの時は集中してそうでもないが、一緒に居る時はどうもおかしい。
急にオドオドするし、顔が急に真っ赤になったり、あまり顔を見てくれない。前まではそんなことはなかったのに変わった変化だと思っている真九郎である。
(どうしたんだろう。やっぱ模擬戦が終盤に近づいているから緊張…不安なのだろうか?)
真九郎は本当に心配しているが、当の項羽の心の中では清楚と項羽の心の会議が開始されていた。
(うああああああああ。どうしたのだ俺は!?)
(もう、落ち着いて。模擬戦の時は大丈夫みたいだけど…いつまでもこうじゃ駄目だよ)
(五月蠅いぞ私!!)
(貴女だって気付いているんでしょ。この気持ちは)
(うぐ…だ、だが)
(だがでもじゃありません。素直になった方が良いよ。私は素直になる)
(む、むう…)
清楚と項羽の心の対話をしている中で真九郎が声をかけることで一旦止まる。
「項羽さん?」
「お、おうなんだ真九郎!?」
テンパっている項羽の手を優しく握る真九郎。これは彼女が不安になっているかと思ってやったものだ。
「大丈夫ですよ。俺は項羽さんの気持ちが分かります」
「うえ!?」
「もちろん清楚さんの気持ちも」
(ふえ!?)
「言わなくても俺には分かります。最初に言ったように俺は項羽さんの味方です。ならばどこまでもついていきますよ」
「……………あう?」
(ふえええ!?)
「項羽さんも清楚さんも今ではとても大切な人ですよ。残りの模擬戦をみんなで頑張りましょう」
顔が超絶真っ赤になって固まる項羽と心の中で真っ赤になりながら悶絶する清楚。そして彼女たちの気持ちを実は分かっていない、勘違いしている的外れの鈍感野郎の紅真九郎。
ぼしゅっと顔から蒸気が出たようにパタリと倒れる項羽であった。
「あれ? 項羽さん?」
日常を楽しむのも良いがそろそろ模擬戦の決着である。
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覇王軍VS源氏軍。覇王軍VS九鬼軍。覇王軍VS松永軍。
残り3戦も怒涛の勢いで合戦をしたがどれも大変であった。やはりどこも優勝に近い軍であるためそう簡単には勝ちを譲ってはくれない。
だが覇王軍も最初と違う。今では項羽が信頼されている仲間を率いる。クリスたちが精鋭たちと一緒に敵軍に突っ込む。京たちによる援護射撃部隊。大和の的確な策や一発逆転になる賭けの策などなど。そして真九郎はみんなのフォローをする。
戦いは激化しているが、それでも覇王軍は負けなかった。負けなかったのだ。
覇王軍は残りの3戦を全て勝ち抜いたのだ。最初のころと比べれば全然違過ぎる。今では覇王軍を応援する観客だっている。
項羽は、覇王軍はこうも変われたのだ。
「全ての模擬戦が終了~。では順位を発表するぞ!!」
審査員である百代から全ての軍の順位発表がされた。どの軍も順位にドキドキするし、知っている者はこれから発表される結果にどうなるか気になりもする。
発表された順位は。
1位が松永軍、覇王軍、源氏軍、九鬼軍。5位が武蔵軍。6位が福本軍。
まさかの1位が四軍で同列優勝という結果となったのだ。これはこれで面白い結果だが川神学園は終わらない。
活気のある川神学園生は最後の最後まで決着をつけないと気が済まないのだ。既に模擬戦の結果は四軍が優勝で決まりだ。
あとは本当に最後の勝利者を決めるだけなのだ。どの軍の大将が頂きに立つか。今ここでエキビションマッチが開催される。
「エキビションマッチか」
エキビションマッチの内容は簡単でただのバトルロイヤル。四軍から大将ともう1人が選出。2対2対2対2の全力勝負である。
覇王軍からは項羽と真九郎。松永軍からは燕と辰子。源氏軍からは義経と弁慶。九鬼軍からは英雄とあずみ。
場所を山から変更して九鬼と川神学園が用意した会場で開始される。このエキビションマッチに観客や軍のみんなはこの結末を見届けようと集まる。ここまで多く集まるなんてもうオリンピックなんて思うのは流石に飛躍しすぎかもしれない。
どの軍からも応援が凄い。そして大将たちは応援に応えようと気合いを出すのであった。
覇王軍。
「ここまでの高揚感は無いぞ。だが油断はせん!!」
「頑張りましょう項羽さん」
「ああ。俺様についてこいよ真九郎!!」
「はい」
松永軍。
「がんばろーね辰子ちゃん」
「うん。頑張る~」
「頑張りなよ辰。本気だして良いからね」
「頑張れよな辰姉!!」
「くふふ。ここでうちの切り札暴れさせちゃうよ」
源氏軍。
「義経は頑張る!!」
「主に勝利を捧げるために頑張っちゃうよ~」
「後は任せたぞ姉御」
「頑張れよ。無理するな」
「頑張ってね義経ちゃん!!」
「うん!!」
九鬼軍。
「このエキビションマッチでは恐らく勝てないだろう」
「兄上…」
「英雄様…」
「だが、大将としてのケジメだ。我は最後まで戦うぞ!!」
「兄上!!」
「流石です英雄様!!」
戦う場所にあがる8人。そして実況者である百代が試合開始の合図を宣言するのであった。
「エキビションマッチ開始!!」
百代が宣言したと同時に先に動いたのは英雄であった。
「うおおおおおおおおお真九郎!!」
「英雄くんまた!? でも…」
応えるように真九郎も動く。そしてお互いに跳躍して飛び蹴りが交差するのであった。
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エキビションマッチが開始された。最初からクライマックスというか全力勝負だ。
真上で飛び蹴りが交差している真九郎と英雄。真下では燕のとっておきである辰子が姉からの宣言で既に覚醒していた。
「うああああああああああああああああ!!」
「こいつはあの時の奴か!!」
項羽は覚醒した時のことを思い出す。
「やっちゃって辰子ちゃん。場を存分にかき混ぜてね」
辰子は意の一番に項羽に突っ込む。
「はっ、良いだろう。前のリベンジのつもりなら相手をしてやる!!」
方天画戟を振り下ろすが辰子は両手で受け止める。
「うあああああ!!」
「こいつ前より力が上がっているな」
彼女の両手から方天画戟を無理矢理離させて連続で振るう。
「うああああああああ!!」
「こいつ!?」
攻撃を受けてもなお突撃してくる。覚醒していて痛みを感じなくなっているのだ。アドレナリンの大量分泌だろう。
その隙を狙ってあずみと弁慶が項羽に攻撃してくる。辰子が覚醒して項羽に攻撃しているおかげで援護できるように2人も攻撃できるのだ。
「こいつら!?」
「悪いがあんたを先に潰させてもらうぜ」
「先輩には悪いけど狙わせてもらうよ~」
「あずみは英雄を守ってろ!!」
「悪いな英雄様直々に紅の野郎の戦いに手を出すなって言われてるんでね」
「私はこのままこの青髪のお姉さんの攻撃に便乗させて…おっとぁ!?」
辰子は近くにいたあずみと弁慶を攻撃する。
「うあああああああああ!!」
「危なっ」
「何だこいつ!?」
さっきまで項羽を攻撃していたと思ったらあずみと弁慶を攻撃し始めた。まるで近くに居る者を攻撃するようである。だがまさにそうで、これは燕の作戦である。
遠くから様子を見る燕は辰子に「近くに居る者を隙に攻撃してね」と指示している。覚醒状態の辰子に細かな指示を出すよりも簡単な指示の方が効果的だ。とういうよりもバトルロイヤルなら暴れさせる方が良い。
燕は辰子が暴れて場を混乱させている隙を突く作戦を実行しているのだ。
「うあああああ!!」
雄叫びをあげながら辰子は近づく者、近くにいる者を無差別に攻撃する。力だけなら項羽にも匹敵するだろう。とういうことで一発でも食らえば大ダメージである。
「ちっ、ただの獣だなこりゃ」
「でも彼女は凄いよ。正直とんでもないポテンシャルを持ってるよ」
辰子とまともに戦えるのは項羽のみ。弁慶も辰子とまともに戦おうとするならば『金剛纏身』だろう。
「主のために覚悟を決めますか…そぉい!!」
自慢の武器で連続に振るって項羽と辰子に立ち向かう。
「ぐ、やるな弁慶!!」
「このおおおおおお!!」
「おっとあぶなっ!?」
項羽に辰子、弁慶が一ヵ所に集まったのを見計らってあずみは大量のくないを投げつける。
「占めた。食らいやがれ!!」
どこにそんな大量にくないを隠し持っているんだと思うくらいのくない雨。
項羽と弁慶は自慢の武器で弾き落とすが辰子は武器を持っていないので直にくないを受けてしまう。
「うあああああ!!」
だが覚醒している辰子に意味は無く、飛び交うくないの中に突っ込んであずみを目で捉える。
「こいつくないの中を無理矢理!?」
「捕まえ…たぁ!!」
「捕まるかよ」
捕まえたと思ったがあずみの技術の1つである変わり身で上手く避ける。しかしある声によって隙を作ってしまう。
「ぐああああああ!?」
「英雄様!?」
声が聞こえた方向を振り向くと英雄が真九郎にカウンターを食らっている姿が目に入る。
状況としては英雄が渾身の一撃を真九郎に叩き込もうとしたところをカウンターされたのだ。
「見事だ我が友、真九郎!!」
「英雄くんも勇ましかったよ」
あずみが彼らのやりとりを見た瞬間が隙を生じさせてしまったのだ。その隙を燕は逃さない。
すぐさまあずみに接近して強力な一撃を叩きこんだ。
「隙ありだよん」
「く、くそ!?」
九鬼軍。英雄とあずみリタイヤ。
「次は私が相手だ真九郎くん!!」
「義経さんか!!」
「私もちょくちょく相手するよ!!」
「燕さんまで!?」
義経の刀と燕のギミックが襲い掛かる。
義経の剣捌きは素早くて正確だ。燕のギミックは多彩過ぎる。2人の攻撃は真九郎を攪乱させるには十分であった。
特に燕は真九郎の動きを止めようととして立ち回っているので戦い辛いのだ。
(真九郎くんの切り札。あの角には注意しないとね)
彼女が恐れているのは『崩月の角』。その力を見ているからこそ警戒しているし、解放されないようにしているのだ。
「てやあああ!!」
一太刀目は右肩を。二太刀目は両膝を。三太刀目で下から斬り上げる。
「おっと!?」
一太刀目、二太刀目、三太刀目を後退しながら躱す。そして後ろに電撃を纏った平蜘蛛の籠手を装備する燕が待つ。
ぐぅんと身体をひねって避けるが着地した場所に刀の柄を突きあげてくる義経の姿。
「うぐ!?」
刀の柄が脇腹に入り、呻く。
「隙あり!!」
「うわっ!?」
義経が追撃をしようとしたら燕が攻撃してくる。2対1かと思えば三つ巴にもなったりする。これがバトルロイヤルの醍醐味だ。
「やってくれましたね松永先輩!!」
「ありゃりゃ躱されちった…てことで次は真九郎くん!!」
平蜘蛛の籠手から小さな針が複数打ち込まれる。すぐに毒針だと思って跳躍することで避けた。
だが彼女は毒針を当てるつもりはない。ただ誘導させたのだ。辰子がいる方向に。
「うあああああああああああああ!!」
「しまーー」
暴力の拳が振り下ろされた。
「ぐあっ!?」
見事に重い一撃が背中に叩き込まれてミシミシと軋んで殴り飛ばされた。
「真九郎!?」
「大丈夫です!!」
重い一撃を叩きこまれたというのにすぐに立ち上がる。彼の頑丈さは並みではない。
「嘘…今ので立ち上がるの!?」
車に轢かれても、銃弾を背中に複数打ち込まれても、絶奈の要塞砲をも耐えた肉体だ。そんじゃそこらの攻撃では壊れない。おそらく彼の頑丈さにはここにいる誰よりも1番だろう。
「まったく冷や冷やさせるな真九郎め…っと!!」
「余所見はしてないですね」
「ああ。俺は余所見なぞしないぞ弁慶!!」
項羽と弁慶は武器の撃ち合いが始まる。金属音が響いて、腕には武器のぶつかり合う振動。勢いよく振るっている音が耳に響く。
「んは!!」
「そぉい!!」
項羽はまさにパワータイプだが弁慶はイメージとは違いテクニックタイプ。力よりも技術なのだ。
大きな力で攻撃してくる項羽を弁慶は巧みな技術で張り合う。
「はは、やるな弁慶!!」
「そらどうも…っとぉ!!」
お互いの武器が大きく弾かれたの隙に弁慶が懐に入り込み掌底を叩きこむが項羽は素早く腕で防ぐ。
「やはりやるな」
「入ったかと思ったのに」
「うああああああああああああ!!」
撃ち合いをしている2人の間に真上から踏みつけてくる辰子。
「くっ、本当に場をかき乱す奴だな!?」
「こりゃこっちも切り札を使うか」
「うあああああああああああああああ!!」
「金剛纏身!!」
弁慶の切り札である『金剛纏身』。巨大な気が彼女から膨れ上がる。膨れ上がった気を右腕に集中させる。
「そおおい!!」
「うぐああああああああ!?」
突撃してきた辰子に恐れず弁慶は拳を突き出した。
「ま、まだまだあああああああああああ!!」
殴り飛ばされないように足に力を入れるが2発目の拳には足の踏ん張りが聞かなかった。
松永軍。辰子リタイヤ。
「強いね。いつかはタッグを組んでみたいかも」
「弁慶ちゃん隙あり!!」
どんな達人も技を撃った後は隙ができる。その隙も燕は見逃さない。
「させませんよ松永先輩!!」
隙を狙った燕だが義経の斬撃によって失敗に終わる。
「うーん…隙を狙うのも厳しくなってきたかな」
「もう隙はみせません」
「んはっ。チマチマしてないでかかってこい。それとも俺に恐れて立ち向かえないか!!」
「それは挑発のつもりかな?」
燕に挑発行為は効かない。
「んはっ。効かないことは百も承知だ。だがこっちからは行くぞ!!」
方天画戟を乱雑に振り回す。攻撃パターンが読ませないように乱雑に振るったのだ。
「あぶなっ!?」
「今度はこっちが隙ありです燕さん」
「真九郎くん!?」
実は項羽は燕と同じことをしたのだ。攻撃をあてるつもりはなく誘導させたのだ。
「やばっ!?」
「終わりです」
松永軍。燕リタイヤ。
これにて覇王軍と源氏軍の戦いとなる。エキビションマッチも佳境へと入り、盛り上がりも最高潮。
「弁慶大丈夫か?」
「大丈夫だ主。このまま金剛纏身は維持できるよ」
カチャリと刀の柄を握り直す義経。まるで仕切り直しと言わんばかりに集中。
「おそらく2人のコンビは手ごわいぞ」
「はい項羽さん。でも負けるつもりはないんですよね」
「無論だ!!」
お互いに向き合う4人。項羽は無造作に服のボタンを外す。
「合図だ」
ピーンと指で真上に弾く。そしてボタンが地面に落ちた瞬間に4人は走り出す。エキビションマッチも決着が近づく。
読んでくれてありがとうございます。
最後の最後でオリジナルになりました。まあ、オリジナルと言ってもエキビションマッチ戦を少し変えただけなんですけどね。
次回ににて覇王ルートは終了です。
次々回は新章で紅側の「西」です!!