192
さっそくだが大和と冬馬と湖兎はトランプで賭けをしていた。勝てば昼飯代を全て負担することとなる。
真剣勝負で賭けを行っていると言うがどうということのないイカサマがうずまく賭けゲーム。しかも大和と冬馬は気付かせないようイカサマをする。
イカサマをする雰囲気は出すが実際のところは相手は気付けない。気付けるのは相当なキレ者くらいだ。もしくはまた別枠の者。
そんな2人だが湖兎に圧されているのだ。
そもそも何でトランプで賭けをしているのか。その輪に何で冬馬がいるのか。それはつい15分前の出来事である。
15分前。
昼飯は何が食べたいかと案を聞くと碓氷が洋食を食べたいという案が決まった。碓氷曰く京都ならではなのか、家柄の問題なのか和食が多いらしい。なので洋食が食べたい碓氷。
洋食屋ならば良い店を知っているということで大和は案内する。レトロな洋食屋だが味は抜群で安く人気店だ。しかもリピーターが多く隠れた名店である。
店内に入ってみるとなかなかの盛況。美味しい匂いが鼻をくすぐる。案内されたテーブルに座ろうとしたら隣のテーブルに見知った顔がいた。
「紫様!!」
「おや、これはこれは」
「ヤッホー」
2Sクラスの3人組の冬馬に準、小雪が同じく食事をしていたのだ。
「ごきげんよう皆さん。ここでお会いできるなんて運命的ですね」
何故か大和と真九郎の手を握る冬馬。
「何で手を握るんだ!!」
「あはははは…」
情熱な目で手を握る冬馬に対して大和は後退して、真九郎は苦笑い。そしてその様子を見て京は妄想がはかどる。
「大和くんたちも食事ですか。一緒にどうですか」
「いやーー」
「良いではないか。みんなでごはんを食べるのは良いものだぞ」
紫の一言で一緒に食べることが決定。
「流石は紫様。素晴らしいお考えで!!」
紫に会ってから準はハイテンションだ。
「あれー。紫ちゃんがもう1人いるよ。うえぃうえぃ」
「あ、何を言ってるんだユキ…うおおおおおおおおおおおお!?」
準が碓氷を見た瞬間にさらにボルテージが上昇する。
「ここは天国か桃源郷かロリコニアか!!」
(ロリコニアって何だろう?)
聞いても理解できないだろう。
「なあなあユキ、夢じゃないよな。頬をひっぱたいてくれ」
「イイヨー」
勢いの乗った張り手が準を襲う。
「アウチ!?」
夢ではなく現実と理解。これは更にハイテンションハイテンション。
「まさか紫様の双子…妹様ですか姉様ですかあああああああああ!!」
「落ち着けハゲ。碓氷ちゃんが怯えるだろ」
準の横腹にゆっくり正拳突き。
「おうふ…良い突きだ!!」
ドシャアっと倒れるがすぐさまロリコンパワーで起き上がる。幼女が絡むと準は本気で武神の百代の一撃を耐える。
「碓氷ちゃんって言うのかあ。良い名前だね。俺、井上準。気軽にお兄ちゃんって呼んでも良いからね」
「落ち着けハゲー」
小雪のドロップキック。
「うほう。良い蹴りだ!!」
小雪の蹴りも物ともしない。そんな準に碓氷はとりあえず笑顔で湖兎は苦笑いながらちょっと警戒。
そろそろ準のために真実を伝えた方が良いだろう。碓氷は女の子ではないことを。
「おいハゲ。碓氷ちゃんは女の子じゃなくて男の子だぞ」
「はっはっは。また馬鹿なことをモモ先輩。こんな可愛い子が男の子のはずがーー」
準は周囲を見ると誰も頷かない。同志認定している真九郎を見ても首を振った。
「マジかよ…こんな可愛いのに。だが俺はショタじゃねえ。それだけは間違えねえ」
井上準。ロリコンであってショタじゃない。絶対に間違いを犯さない黄金の精神を持つ紳士である。
「すまなかったな。どうやら俺の目は雲っていたようだ…修業が必要だ」
「どんな修行だよハゲ」
「いえ、私は朱雀神碓氷です。こちらは湖兎」
「よろしくっす」
また自己紹介。
湖兎は冬馬の守備範囲に入っているので口説く。だがすぐに振られる。これもまた一連の動作である。
そんな一連を飛ばしてみんなはメニューを見てごはんを頼む。
「わたしはオムライスにするぞ真九郎!!」
「俺はナポリタンかな」
「リンは何にするのだ!!」
「私はサンドイッチで結構」
「坊ちゃんは何にします?」
「私はグラタンにしてみます」
みんながそれぞれの食べたい物を頼む。そして待っている間は雑談でもして潰そうかと思ったが、ここで冬馬がある提案をする。
「待っている間はトランプでもしませんか?」
トランプはみんなで出来る楽しいゲームだ。しかも遊び方は何種類もある。つまらなくはならないだろう。
更に面白くするには賭けなんてものもある。トランプで賭けなんて当たり前なくらい付属されるものだ。
「どうでしょうか賭けなんて。負けた人が今回の食事をおごるということで」
「お、おもしそうだな。頑張れ大和!!」
「姉さん人任せすぎ」
「でも弟はこういうの得意だろ?」
大和はこういうゲームが得意だ。得意なのはイカサマであるが。無論、冬馬もである。
その冬馬が賭けを仕掛けてきたということは絶対イカサマでもしてきそうだ。
「それは面白そうっすね。やりましょーよ坊ちゃん」
「ええと湖兎?」
「ほら、こちらも彼も乗り気のようですし」
「あー…」
何かに気付いた真九郎。だがあえて何も言わない。
取りあえず大和組、冬馬組、湖兎組で分かれて代表の3人がやることになった。
それが冒頭の続きになる。
「ではこちらのトランプをーー」
「いやいやこっちのトランプを使おうぜ」
何故2人はトランプを常備しているのだろうか。もうイカサマをしていると言っているようなものではないか。
なかなか2人は譲らない。だが湖兎は気にしていない。
「どのトランプを使うかは決めて良いっすよ。そのかわりやるのはババ抜きをやりたいっす!!」
「良いですよ」
ゲームはババ抜きに決定。トランプは結局新しいのを買うはめに。買いに行った人は準。
だが大和も冬馬も気にしない。イカサマをする者は何重も用意しておくものだ。そんな中で、湖兎は余裕な顔で配られたカード見る。
食事が届くまでのちょっとの間、ババ抜きが始まる。
193
ババ抜きが開始されてから数分。勝者は決定した。
勝者は湖兎であり、2位は大和、敗者は冬馬であった。提案者が負けるなんてのは案外あったりするものだ。
「これはこれは、負けてしまいました」
「じゃあ宣言通りおごってもらうからな」
「敗者は勝者の言うことを聞きますかね。どんな命令でもどうぞ。この体も明け渡しますよ…良い夜を過ごさせます」
「いらん」
「くう…こればかりは私も身を引くしかない!!」
「本気にするな京」
半分冗談は受け流しておいて冬馬にはおごらせる。半分本気なのが怖い。
「オムライス!!」
「これがグラタン…美味しそうです」
可愛い2人が運ばれてきたごはんに目を輝かせている。その姿にニコニコしてしまう準。だが間違いは犯さない。
おごりと分かって百代は容赦なく注文していく。注文されたごはんが次から次へと届いて美味しくいただいていく。
そんな中で大和と冬馬は先ほどのババ抜きのことを考えていた。
冬馬も大和も勝つためにイカサマを実行しようとしていたが、その前に湖兎が勝ったのだ。
だがその勝ち方が有りえなかったのだ。大和はカードを引かれていた側だからこそ分かる。彼は必ずと言っていいほど自分が持つ番号のカードを引き当てるのだ。
引き当てられなかった場合は大和が湖兎の欲しい番号カードを持っていなかった時くらいだ。そして何かしらイカサマでもしようとすると湖兎がジッと見てくるのだ。
おかげで大和も冬馬もなにも仕掛けることができなかったのだ。それはまるで全てを読まれているような感覚だったと2人は感じていた。
(…彼もイカサマをしているようには見えないし、普通にババ抜きをしていた。なのにカードを確実に見抜いていたのは何故だ?)
単純に運が良かったのかもしれない。実際にキャップである翔一は剛運の持ち主だっている例もある。ならば湖兎も同じなのだろう。
だからこそ賭けに自信満々に乗っていた。イカサマをするにあたってこういう何かを持った人は苦手である。
(分かりませんね…)
(まあ、イカサマなんてした覚えはないっすからね。コレがイカサマって言われたらそれまでっすけど)
湖兎はイカサマをしていない。ただ『読んだ』だけだ。正直なところこういうゲームなら絶対に勝てる。もしババ抜きが一対一ならば絶対に勝てるほどだ。
(ここにいる奴らは全員無害っすね。これなら坊ちゃんも大丈夫っす)
彼はどこでも碓氷の無事を願う。
「ところで紅くんは不死川さんの仕事をしているんだっけ。はぐはぐ」
「もぐ…そうだよ川神さん。護衛の仕事」
「そうじゃ。此方の護衛じゃ…邪魔するではないぞ」
「しないわよ。はぐはぐ」
誰も仕事の邪魔なんてしない。一子だってそこまで愚かではないのだ。
最も今日は予想外でその仕事に偶然にも関わってしまったわけだが。そればかりはどうやってもどうしようもない。
どんな人生も運命も案外予想外なもの割り込んでくる時もある。これが俗にいう人生何があったか分かったものじゃないというやつだ。
「どんな仕事~?」
「どんな仕事と言っても心さんの護衛だよ。特に難しいことはしてないかな。他にもあるとしたら雑用くらい」
「真九郎くんに雑用なぞさせぬわ。真九郎くんには此方を守るという素晴らしい仕事だからのう」
「いや、雑用はしますから」
護衛の仕方も何通りもある。時には雑用に紛れて護衛をしたりもするのだ。
前の護衛時もウエイターの雑用をしながら護衛をしていた。今回も同じような方法でも構わない。だが心としては側で護衛させたいようである。
簡単に言うと付きっ切りで護衛してほしいというのが心の願いである。
「もぐもぐ。なら護衛時は気を付けた方が良いわよ。ヘルモーズたちはまだ諦めていないかもだから」
「だね。あいつらはまた来るかも」
「大丈夫っすよ。坊ちゃんは守るっすから」
「そうじゃ。不死川家として誘った名家を誘拐させるわけないのじゃ!!」
絶対に守る。それだけは譲れない。
「なら、気を付けた方が良いぞ。ヘルモーズには2人ほどヤバイのがいるぞ。まあヘルモーズに所属かどうか分からんが」
百代は護衛をするならと警告してくれる。あのヘルモーズとの戦いではヤバイ奴が2人ほどいたのだ。戦ってはいないが、戦えば確実に百代でもただではすまないと理解しているのだ。
「負けるつもりはないが正直ヤバイだろうな。あぐあぐ」
「姉さんがそこまで言う程か」
「ああ。一対一ならまだしも2人がかりはキツイかもな」
特に鋭い剣をイメージさせた殺気を持つ者は相当ヤバイ。あれは壁を越えた者でさらに研鑽し続けた者の気。
あれだけの者は身近でも祖父の鉄心か九鬼部隊従者のヒュームくらい。もしくはどこかの地で偶然出会った謎の爺さんだ。
「川神先輩はそこまで言うくらいだとキツイかもね」
真九郎は静かに今回の護衛に覚悟を決めた。武神の彼女がそこまで言うということは相手は裏の中でも手練れだ。
はっきり言って裏世界には想像のつかない奴ばかりだ。真九郎が裏の手練れと思いつくのはルーシー・メイに教えてもらった裏世界の上位十傑だ。まさか裏の十傑がいるとは思いたくないものだ。
「うぐぐ、そんな奴らが」
「大丈夫ですよ。湖兎さんが言うようにかならず守りますから」
「真九郎くん…」
「紫様は私がお守りします」
リンも真九郎のように必ず守ることを誓う。
「まあ紅ならやってのけそうだがな」
紅真九郎なら何でもやってのけそうというのが大和たちに根付いたイメージだ。彼自身としては勘弁してもらいたいものだ。
真九郎はスーパーヒーローではないのだから。
「何かあれば力になるから。いつでも連絡入れてくれ」
「ありがとう直江くん」
194
「いやあ切彦さん仕事の依頼がきましたよ」
「…またですか。最近依頼が多いです」
「繁盛しているってことですよ。内容はいつも通りある人物の抹殺です」
切彦のもとにまた悪宇商会の仕事がきた。いつも通り殺し屋の仕事だ。
斬島切彦のもとには小物から大物の人物の殺しの仕事が入る。しかも中には名指しで依頼も入るのだ。今回はまさに指名で切彦のもとに仕事がきたのだ。
「切彦さん人気ですねえ。依頼主からはどうしても貴女が良いと来ましたよ」
「そうですか」
「ターゲットはこの方です」
ピラっと写真を渡されて見る。ただのターゲットなので切彦は特に思うところは無い。たが刃物を振るう相手に過ぎない。
「じゃあ今すぐにでも…」
「あ、待ってください。実行するには依頼者からのGOサインが必要なんですよ」
「サインですか?」
「はい。どうやら依頼者にも都合があるそうで、すぐには仕事はできそうにないんですよ。少し面倒かもしれませんが準備だけしといてください」
「…分かりました」
こういう依頼もたまにはあるものだ。切彦は文句も言わずにGOサインを待つしかない。
ならば準備としてターゲットのいる場所や時間帯、行動パターン、スケジュールの確認をするしかない。
「相手方のスケジュールならもう分かってますよ。依頼者もなかなか調べてあるようでこちらはただ仕留めるだけです」
「…そうですか」
だが自分で出来ることはしておくつもりだ。殺し屋の仕事はただ相手を殺すのに至るまで多くの準備があるものだ。切彦だって準備はする。
「場所はまた川神…」
「最近の仕事場所は川神が多いですね。縁があるのかもしれません」
(川神。真九郎のお兄さん)
表世界でも何か起きていれば裏世界でも何かが起きている。しかも案外知り合いが関わっているなんて思いもよらないものだ。
そして表裏一体という言葉があるように案外どこかでつながっているものだ。しかも身近に。
着々と事件が起きようといくつかの場所で駒が揃い始めていく。その駒が盤上に揃うのはもうすぐかもしれない。
読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。
日常編もぐだぐだしそうになってっきたので次回は物語をもう少し展開させたいですね。
特に何かネタがなければどんどんと物語を進行させていきます。