紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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今回の物語で最終章となります。
今回ではいろんなキャラが活躍できるようにしていく予定です!!


裏の世界
狂気な善意と歪んだ悪意


211

 

 

私は世界を愛している。世界は私を愛してくれた。ならば私は世界のために人生を捧げるべきなのだ。

どうやって私は世界に貢献しようと考えた。その結果、九鬼財閥はある技術を生み出した。その技術に関しては私も携わっている。

 

私は僥倖計画を考えた。これはきっと世界に良い影響を与えるはずだろう。その為にはいろいろと準備が必要だ。

私を父と呼んでくれる娘も僥倖計画に賛成してくれた。彼女は私にはもったいないくらい素晴らしい娘だ。

今は彼女の正体は明かせない。時が来れば明かすことが出来る。その時が僥倖計画の始まりだ。その時まで娘には己を磨いてもらおう。

 

僥倖計画を着々と準備を進めていたら彼が川神に訪れた。彼のことは知っている。彼ほど世界から与えられた試練を突破してきた人間はそうそういない。

彼の始まりは最悪なものであった。だが彼は数々の試練を乗り越えて世界に愛されている。私はそんな彼にとても興味がある。

そんな彼と対話してみたい。川神流の対話でも良い。彼と対話できればきっと私はより世界に対して人生を捧げることが出来るだろう。

そのまま会いに行くのも良いが、それでは駄目だ。対話をする場面はきっとお互いに試練に立ち向かっている時が良い。その時こそが世界のために高みへと行ける。

私は自分自身に試練を、彼には私の我儘で試練を与えよう。私の試練なんて彼ならきっと突破するだろう。そう確信があるのだ。

 

全ては世界のために。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

僥倖計画。この計画はお父さんが世界に向けてのもの。

私はお父さんの計画に賛同した。私をここまで愛して育ててくれたんだから親孝行がしたい。なら私はどうなっても良い。

僥倖計画のために私はお父さんから己を鍛えておけと言われている。確かにこの川神では鍛えておいたほうが良い。計画ではいずれ彼女と戦うことになるのだから。

彼女は今も真面目に修業している。なら私も彼女に負けないくらいに修業しないといけない。これからも頑張らないと。

 

お父さんは僥倖計画をそろそろ開始すると言っていた。私の正体も川神に、世界に広まるだろう。

そんな時に彼が川神に訪れた。私は彼のことを全く知らない。だから興味は特に無かった。

でもお父さんは彼を知っている。彼を知ったお父さんの目の色が変わった。話を聞くと彼は世界に与えられた大きな試練を乗り越えた人だと言う。

彼ほど世界から与えられた数々の試練を突破した人間はいないと言うのだ。彼はどんな試練を突破したのだろうか。

 

お父さんは自分よりも私よりも彼の方が大きな試練を突破したと言う。だからお父さんは彼と対話をしてみたいと、お互いにぶつかりたいと言っている。そうなればお父さんはより世界に人生を捧げられるとのことだ。

だから私は彼に興味を持ってしまった。私も彼と会話をしてみたい。彼はどんな試練を突破したのか知りたい。

 

彼はどんな人間なのだろう。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

私は新たな事業を考えた。それは臓器売買。裏世界に通じる事業だが私なら成功してみせる。

私はまだまだ若い若輩ものだから慎重に行動していこう。まずは名を売らないとこの世界ではやっていけない。いっきに我が名を広める会場はちょうどある。

あのオークションで最高の物を出品すればたちまち名が広まるはずだ。出品するものは決まっている。あの臓器だ。

あの臓器は同じ重さの宝石と交換されるほど貴重だ。だからこそ臓器の価値が分かるお客に知ってもらうためのオークションだ。

 

オークションではいろいろとあるから護衛も必要だ。そんな時にある戦闘屋を手に入れることができた。彼は元裏カジノのオーナー。ならばこの世界のことはよく知っているはずだろう。

ならば素晴らしい人材である。この世界の先輩なのだから彼には丁重に接しないといけない。

 

臓器売買は闇だとか忌避なものだとか言っているが、そうだろうか。世の中には臓器を必要としている人間がたくさんいるのだ。臓器が売買されているからこそ救われた人間も存在する。

臓器を売買し、お金を得る。そうすれば生活が安定する。臓器を手に入れれば救われる命がある。何がいけないのだろうか。何も悪くないだろう。

 

これはビジネスだ。

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

模擬戦では調整が間に合わなくて負けてしまった。流石は覇王と言ったところだろう。

私はクローンたちに対抗するために選ばれたのだ。なのに模擬戦で負けてしまった。だがそれで終わりではない。リベンジをしないといけない。

 

負けっぱなしでは私という傑作は泥が塗られたままだ。私は最強の戦士誕生計画の傑作だ。元々はクローン技術に対抗するものではなかった。

私と言う傑作は秘密裡に計画が進められていた。そんな時にクローン技術が確立されたから対抗として選ばれたに過ぎない。

それにこの計画は私で終わりでは無い。次がある。最高の戦士は計画が進むと共に生まれるのだ。

 

今の最高傑作が私であるだけだ。私もいずれは次の最高傑作のために受け継がなければならない。

私の身体は歴代の全てが受け継がれているのだ。完璧な性格に完璧な容姿。完璧な力に完璧な知力。完璧な能力。

 

今度は負けない。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

川神でいろいろと調べて多くの情報を手に入れることが出来た。全く星噛製の人工臓器を勝手にオークションに出すなんて面倒なことをするものだわ。

その人工臓器が最新のもので売ったものなら良いんだけど、まさか旧型の臓器で売られた臓器ではないなんてことが問題なのよね。

 

星噛製の人工臓器にはちゃんと製品番号がついている。そして売った人工臓器には全て記録している。だが今回の川神裏オークションに出される人工臓器は記録が無い。

ならどっかの馬鹿が盗んで売り出したのでしょうね。本家からは取り戻すか、せめて破壊しろって命令が来てるし面倒だわ。

だけどこれも本家のためだから仕方なわね。これも星噛家のため、悪宇商会のため。

 

さて、やるしかないわね。

 

 

212

 

 

身体をクキクキと動かすと少しだけ傷が響く。だが問題ないレベルだ。

絶対安静にしてなくてもいいし、そこらの悪漢と戦う分にも問題無し。流石にプロと戦うことになればキツイが。

 

「大丈夫そうですね真九郎さん」

「はい夕乃さん。日常生活に支障はなさそうです」

 

夕乃は笑顔だが少しまだ怒っている感じだ。きっと黒騎士との戦いのことだろう。だがその時ばかりは本当に仕方ない。

だってまさか黒騎士と戦うなんて予想も何もできなかったのだから。だから夕乃は真九郎に怒っているのではなくて自分に対して怒っているのだ。

自分が真九郎と一緒にいれば守れたというのに。それが出来なかった不甲斐なさに怒っている。

 

「あの、心配おかけしました」

「本当です。これはまたどこかに連れてってもらわない割に合いません」

 

ぷんぷんと可愛く怒りながらしれっとデートの約束を取り付けるのはいつものことだろう。

 

「心配させたのならどこかに連れてってもらえるなら、私もどこか連れてってくれるのかしら?」

「銀子まで…どこか行きたいのか?」

「それは貴方に任せるわ。エスコートしてくれるんでしょ?」

「ははは」

 

今の状況。左に夕乃。真ん中に真九郎。右に銀子。

 

「「じゃあ今度の日曜日に…え?」」

 

まさかのダブルブッキング。このあとの流れが容易に読める。

 

「あらあら銀子さん。日曜日はうちの真九郎さんとお出かけする日なんです。余計な予定を入れないでくれます?」

「崩月先輩。その予定とやら前から決まってないようで、今まさに決まったようですよね?」

「いえいえ、私との予定が最優先ですから」

「勝手に予定を入れる女って面倒だし、重くないですか?」

「全然重くないですよ。なんせ真九郎さんと私は屋根の下で一緒に寝た仲ですから」

 

ここでピキっと銀子の額に血管が浮き出た気がする。

 

「そうですか。でも私の方がよく頼られますよ」

 

ピキっと夕乃の額に血管が浮き出た気がする。

 

「「…………!!」」

 

無言の見つめ合い。真ん中にいる真九郎は肩身が狭い。こんな思いをしたくなければ真九郎はさっさと運命の人を決めれば良いのだが、決めることができない駄目な男である。

こんな駄目な男であるがいずれが運命の人を決めるだろう。それが誰かはまだ分からない。予想通りかもしれないし、予想外の人かもしれない。

 

「おーい真九郎!!」

「あれ、紋白ちゃん」

「紋様だ」

「紋様」

 

高級車の窓から紋白とヒュームが顔を出す。彼等は登校中。

こんな高級車で登校とはさすが住む世界が違う。

 

「おはようございます」

「おはよう真九郎!!」

「おはようございます」

「おはよう紋ちゃん」

 

夕乃や銀子も挨拶。挨拶は大事だ。

 

「そうだ真九郎。今度の日曜日に九鬼家に来てくれ!!」

「「「え?」」」

 

もう語るまい。




読んでくれてありがとうございました。
前半は分かるかもしれませんがあるキャラたちの心情ですね。

分かれているように5人の心情です。
キャラが分かる人は分かりますね。ですが2人ほどは原作をよく知っていないと分からないかもしれません。
1人はマジ恋(原作)にいますが、名前も立ち絵も無いのでオリジナル寄りになります。
そしてもう1人はちょっと特殊で、ゲストのような感じで登場する人物です。
そのゲストキャラは紅の未来で登場する悪人です。(未来人というわけではありませんよ)紅の未来の物語と言えば・・・

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