投稿した日にちが日にちですからね!!
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清潔感ある広い部屋の中心に置かれる長い机。机に綺麗に並ぶ椅子。その椅子に座る九鬼一族面々に控える従者たち。
恐らくいつもここで九鬼の重要人物たちが会議やら家族団らんやらしていると思う。
奥に九鬼帝が座り、右に九鬼局。左に揚羽、英雄、紋白が並んで座る。そして後ろに控えるはヒュームやクラウディオ、小十郎、あずみ。
こんなところに何故か紅真九郎。
「…………………」
「よお久しぶりだな真九郎。また会えて嬉しいぜ!!」
「…お久しぶりです。九鬼帝様」
帝が満面の笑みで真九郎を歓迎している。局だって優しい目で見てくる。揚羽や英雄も笑顔で、特に紋白は凄い満面だ。
なんだってこう九鬼の一族から好意的な視線を射止められているのかよく分からない。いや、理由はあるのだが真九郎としてはこうも世界の九鬼から好意的に接しられると萎縮してしまう。
真九郎と九鬼一族とは住む世界が違うし、人間的にも違う。正直に言って悪いかもしれないが居心地が悪いのだ。出された高級茶なんて味が分からない。
しかも従者部隊ですら目線を飛ばしているのだから尚更萎縮する。悪い人たちではないし、寧ろ完全に善なる人たちだが真九郎にとってはここはアウェー過ぎて魔の巣窟すぎる。
よくよく考えてみよう。例えると一般人がいきなり天皇家の食卓に参加したとして、一体どうすれば良いと言うのだ。
「まあ難しいかもしれんが、気を抜いてゆったりしてくれよ。我が家のようにな」
無理だろう。
「ほれヒューム。お前がそんなキツイ目で真九郎を見るから萎縮してんじゃねーか!!」
ヒュームのせいだけではない。
「帝様。私はいつも通りですよ」
「じゃあいつもそんなキツイ目なのか。はっはっはっは」
「言われたなヒューム」
「局様まで」
ヒュームの目がキツイのはいつものことにして真九郎が何故、ここまで九鬼一族から好意的なのは理由はちゃんとある。
それは去年の紅香との仕事を手伝った時のことだ。紅香は九鬼から仕事を請け負っていて真九郎がその時に紋白に出会った時が始まりだ。
「最初にお前に会った時はそこらの若者かと思ったが…話をしてみたらお前はタダ者じゃねえのが分かった。俺の鑑定眼が燻ったかと思ったほどだぜ」
「紋でさえ、最初はスカウトの対象に外れていたからな」
「はい。我としては不覚です」
最初の真九郎はただの紅香の手伝いという括りで見られていたのだから仕方ないだろう。真九郎だって九鬼一族とは深く関わる気はなくて本当に紅香の手伝いという名目ででしかなかったのだから。
だから真九郎は無事に仕事を終わらせようとしか思ってなかった。だが真九郎は紋白が悩んでいる姿を本当に偶然的に見てしまったのだ。
紋白が悩んでいる姿を人に見せるなんてことはほとんどない。だから真九郎が紋白の悩み姿を見てしまったのは本当に運が悪いのか良いのか分からないかとんでもない偶然だったのだ。
紋白の悩みに関わってしまったことにより真九郎は九鬼に深く足を突っ込んだことになる。
「あん時はお前の言葉がこの俺の心に突き刺さった。局の心にもな」
「ええ。私の心に響きました。そして紋のことも家族としてちゃんと分かったのです」
「母上」
「紋は悪くない。だというのに紋の後ろにいるあの女ばかり見ていたため紋を冷たくしていたのだ。だが今は本当に家族だ」
「母上!!」
まだ紋白と局の間はまだ少しだけ溝はあるが、お互いに歩み寄っているので完全に溝が無くなるのも時間の問題だろう。
「あの時は本当に助かったぞ真九郎よ」
真九郎がしたのは紋白の人材集めの手伝いだ。紋白は局に認めてもらうために九鬼のために人材を集めようとしていたのだ。
紅香も真九郎が紋白の手伝いをすることになってもすぐに了承を出した。何でも「子供のお守りはお前が適任だ」とのことだ。
九鬼側も真九郎が紋白と一緒にいることも許していた。ヒュームには当時厳しい目で見られていたが。
人材集めに関しては真九郎は紋白の補佐をしていた。その時から紋白は専属従者とはこういうものなのかと少しだけ実感していたのだ。
まるで紫の時のように真九郎と紋白の絆が少しずつ深まっていったのだ。紋白にとって真九郎のような人間は初めてで興味深かったのだ。紋白としては最初まるで従兄の優しいお兄さん的な感覚になっていったのだ。
結果としては大勢の才能ある人材を九鬼に集めることができたのだ。その結果を局に報告した後が真九郎の出番だったのだ。
何故家族として認められないのか。何故そこまで紋白に冷たくするのか。何も自分勝手に決めないで紋白と最後まで対話して決めるべきだ。
何が九鬼家は結束力で世界を取っただ。家族問題も解決できていないのに結束力を言葉にするな。家族の愛を知らない子供はいてはならない。
家族を大切にする真九郎はこんな言葉を局に投げかけた。そうすれば局は怒るだろう。ヒュームはすぐさま動いて真九郎を殴り飛ばして動きを封じる。
だが真九郎は口を閉じない。
家族はこの世で最も尊いものだ。局にも思うところがあるのは理解している。それでも紋白が局に何をしたというのだ。何もしていないのだ。
局は見て分かるように揚羽と英雄には優しいか紋白にはあたりがキツイのだ。それも許せない。しかも理由が自分の生んだ子ではなく帝と他の女の子供というだけでだ。
生まれた子供に罪は無い。局は紋白を見ているのではなくて後ろにいる女の影を見て冷たくしているのだ。
「女の影を見るんじゃなくて紋白を見ろ。紋白と目を合わせて話をしろ」
この言葉が局に少しでも伝わったのだ。自分のやっていることは紋白を見ていないことが真九郎の言葉でやっと分かったのだ。
そして紋白にも今ここで本音を言うことを伝える。どんな結果になろうともお互いに対話をしないと決着がつかないのだ。
「どんなになろうとも俺は紋白の味方だ」
この言葉は紋白の味方だと絶対的な言葉だ。真九郎はヒュームに抑えられているが何とか立ち上がろうとする。
紋白の味方と言っている立場上、倒れているのは恰好が悪い。ならばヒュームの抑えている力を無理矢理押し返して立ち上がる。
これにはヒュームもクラウディオも驚いた。ヒュームは力を弱めていない。だが真九郎は押しのけたのだ。
「俺も一緒にいる」
この言葉に紋白は勇気をもらったのだ。そして紋白と局はやっとお互いを見ることができたのだ。少しずつだけど2人は家族として歩みよっているのだ。
「いやあ見てたけど凄かったな」
帝はその時はちょうど帰ってきていたのだ。その光景を見ていて「素晴らしい」と一言。
帝も局と紋白の元に行って家族に対して確認したのだ。でも真九郎はまだ口を閉じない。それは帝に対してである。
何勝手に今頃合流して家族大団円に加わっているんだと。何もしてないのに加わっているのが気に入らなかった。
九鬼家の当主のくせに何で家族問題を蔑ろにしたのか。家族よりも仕事の方が大事なのか。この確執だって全ての原因は帝だ。
そのくせ紋白にも局にも何もしていない。彼が何かしていれば2人とも変わっていたかもしれないに。
だからこそ「何でへらへらしているんだ。何で家族問題をすぐに解決しなかった」と。そんなこと言えばせっかく丸く収まったのにまた問題が起こる。
紋白はおろおろするし、局は夫に対しての言い分に睨んでくる。ヒュームは今度こそ本気で真九郎を床へと叩きつけた。
それでも真九郎は立ち上がる。確かに彼のやっていることはもう九鬼家の家族問題が領域外になっているかもしれない。
でも帝にもこの問題に立ち向かってもらわないといけない。
帝は「俺に時間を取らせるということは九鬼財閥の経営を遅らせるということだぜ?」と言うが真九郎は「今の言葉はやっぱ家族よりも仕事を取る言葉と言っていいんだな」と言う。
これには帝も黙る。真九郎はまだ口を開き続けるのだ「九鬼帝なら家族問題を先に解決しろ」と。
だからこそ決定的な言葉として「家族問題よりも仕事を選んで子供も悲しませる会社なら滅べよ」と言ってしまったのだ。九鳳院のように言ったのだ。
これにはヒュームも今度こそ黙らせようとしたが紅香によって止められる。紅香は「邪魔するなよ」と一言。
今は真九郎と帝の対話だ。紅香はヒュームに邪魔させまいと拳銃を頭に向けていた。更にクラウディオにも何もさせないように睨みつける。
この言葉を聞いた帝は目を閉じ、紋白と局を見る。そして謝ったのだ。
「今度こそ家族として生きていこう」
これでやっとまとまった。これで今度こそ九鬼家は家族としてやっていけるのだ。九鬼家が本当の家族になったキッカケは全て紅真九郎によるものだったのだ。
「いや本当にあん時は凄かったぜ。まさかあんなことを言うなんて絶対いないぜお前以外にな」
本当によくあの九鬼帝に言ったものだ。普段なんてそんなことは絶対に言えないのに。
「あの蓮杖の野郎にも啖呵を切った男だしな。俺あいつのこと苦手だけどお前は立ち向かった…それがすげえぜ!!」
ここまで帝に褒められると逆に恐れ多い。もう帰りたくなってきたがここに呼び出された理由をどうにかしないといけないだろう。
「あの、今日呼ばれた理由は何でしょうか?」
「おおっと、昔話で盛り上がりすぎて今日呼んだ理由をすっかり忘れてたぜ」
帝は本当に楽しそうにころころと笑顔になっている。そして急に真剣な顔になる。
「真剣な話なんだが真九郎お前九鬼財閥に就職しねえか?」
「…!?」
九鬼財閥のトップである帝直々の勧誘。この意味が分からない者はいないだろう。
それだけ九鬼財閥から真九郎が信頼されており、喉から欲しいということだ。普通ならすぐに了承するだろう。しかし真九郎は普通では無かった。
九鬼財閥からのスカウトは前々からあった。その度に迷ったが揉め事処理屋として生きていくこと選択したきた。だが今回はまさかの帝からの勧誘、
それだけ九鬼財閥は真九郎を手に入れようと本気ということだ。
「いきなり重役なんてポジには置かねえが、良いポジにはするし待遇なんて良くするぜ。まあお前ならすぐに上に行きそうだがな」
流石に過大評価しすぎだ。真九郎はそこまでの器ではない。
「ま、俺としては紋の従者になってほしいかな」
「父上!!」
帝からの紋白への専属従者推薦。これは紋白もとても嬉しい。実際に紋白は真九郎が九鬼財閥に就職したら自分の従者になってくれるように考えている。
だからこそ帝が推薦してくれることは本当に嬉しいのだ。
「どうかな?」
九鬼財閥は本気でヘッドハンティングをしている。これは真九郎も本気で答えなければ帝に失礼だろう。
紅真九郎の目指している将来は正直迷っている。でも何だかんだでやっぱり揉め事処理屋を選ぶのだ。
人生の損をしているのは確かだが、真九郎は紅香に憧れて生きる道を見つけたのが揉め事処理屋なのだ。だからこそ彼は揉め事処理屋として生きていく。
「…ありがとうございます。ですが自分は揉め事処理屋を将来として選んでいるんです。申し訳ありません」
本当にもったいないが真九郎はキッパリと断ってしまった。どうせ後で真九郎は後悔するだろうが、やっぱ揉め事処理屋を選ぶからいいのだ。
「振られちまった」
「残念ですね」
「くくく、はっはっはっはっはっはっは。やっぱお前はおもしれーや!!」
帝は大笑い。
「俺の申し出を断る奴なんていねーのに…いや、案外いるか。でもそうそういねーぜ!!」
どうやら帝のツボに入ったようだ。どこが面白いのか分からないが。
「ますます気に入ったぜ」
ニヤリと笑う帝。その目は確実に獲物を逃がさない目をしていた。
局やヒュームは帝のこの目を知っていて、確実に欲しい人材を手に入れる目だ。実際にこの目になった帝は確実に人材を手に入れている。
だからこそ帝は最終的には真九郎を手に入れることを決定している。だからすぐさま退く姿勢を見せた。
「今は振られちまったがまだ諦めねー。九鬼はいつまでも待ってるぜ」
何でそこまで真九郎を九鬼財閥に入れたいのか本当に分からない。だがそれほどまでに九鬼財閥は真九郎を気に入っているのだろう。
ここまで第三者であった真九郎が九鬼家に関わった。家族を取り戻してくれたことが九鬼家にとってそれほどのものだろう。だからこそ九鬼家は真九朗郎ととても気に入っているのだ。
「俺は諦めねえ。お前が何かあれば紋が悲しむからな。何かあれば手は貸すぜ…そのかわりお返しも求むけどな!!」
お返しとは九鬼家への就職だろうか。
「うむ。父上の言う通り九鬼家はいつでも真九郎を待とう!!」
「ああ。我も友である真九郎が九鬼家に入ってくれるのは嬉しいからな!!」
「うむうむ。我も真九郎が入るは反対せん。それに義経たちも喜ぶだろうな」
もし真九郎が九鬼財閥に就職したら義経たちはきっとよく真九郎を呼び出すに違いない。特に項羽に清楚。弁慶。
「まあ話はここまでだ。せかっくここまで来たんだから遊んでいけや」
214
やっとこさ解放された真九郎は紋白たちと極東本部を案内されていた。ここにはいろいろとあるが特に珍しいものだってある。
特に新作のロボットであるクッキーISを見た時はつい興奮してしまったほどだ。まだ調整中であるが上手くいけばまた九鬼家は新たな事業を成功させるだろう。
何でもクッキーISは108式もあるらしい。それぞれがある機能の特化型ロボらしい。
奉仕系の家事をこなすクッキーもいれば、戦闘型のクッキーや掘削型のクッキーもいる。特に巨大型ロボもいるなんて聞いたら真九郎はより興奮するものだ。
本当に様々な機能を持ったクッキーがいるものだ。
「凄いな…それにしてもクッキーISか。これ、国によっては戦闘型ロボをもっと作成してほしいって言うんじゃないかな?」
「それか。クッキー作成には2人の人間が携わっていてな。1人は津軽と言って今のIS作成を進めている。もう1人が禍津と言ってクッキーをより戦闘ロボにしようと主張しているんだ」
禍津が作成するクッキーはマガツクッキーと言われてより戦闘型だ。だから彼の元には密かにマガツクッキーを発注する輩は多いのだ。それに関しては少し頭が痛いところだ。
勝手に九鬼の技術を外に出してはマズイからだ。実際にマガツクッキーを手に入れて何かを仕出かす輩がいたからヒュームやクラウディオが出向く時もある。
そうなると禍津の処分だが、勝手な行動しないように厳重に監視させれながら新たなクッキー開発に携わっているらしい。
問題児だろうが才能ある者は九鬼財閥では何だかんだで重宝される。だが限度はあるだろう。
「おや、これはこれは九鬼のご子息様方が勢ぞろいですね」
「む、貴様は最上幽斎」
最上幽斎。彼は九鬼帝が直々に見つけてきた人材だ。
彼の才能はまさに九鬼財閥に多く貢献した。彼ほどの人材はそうそういなく、彼もまた九鬼帝のお気に入りの1人だ。
「それにそちらは?」
「彼は紅真九郎だ。お前と同じように父上のお気に入りだ」
「ははは。私と君は同じのようだね。よろしく」
「よろしくお願いします。同じと言ってもお気に入りという部分だけですよ」
「いや、私と君は同じな気がする。お互いに世界に愛され、試練を突破した者だからね」
「ええ?」
「真九郎よ。こいつはこういう奴なのだから気にするな」
「まあ世界博愛主義者みたいな感じだな」
「はあ…?」
幽斎は世界を愛している。平和主義者というわけではなく、世界を愛している人間。
世界を愛していると言うだけあって彼は九鬼財閥に貢献しているだけでなく、世界にも貢献している。世界のためにボランティア活動だってしている。
貧民国をいくつか救っていたりもする。おかげで彼はいくつかの国では英雄扱いだ。
それに彼は笑顔が素敵だ。この笑顔だからこそ様々な人間から警戒を解かせるのかもしれない。
(…彼が紅真九郎)
真九郎と幽斎は握手をする。彼は真九郎と同じだと言うが、真九郎自身は彼と同じとは思えない。
全く違う気がする。何が違うかと聞かれれば知らないが、違う気がする。それに彼は今まで会ったことがない人間だ。
「君とはこれから仲良くしていきたいね」
「はい。よろしくお願いします」
紅真九郎と最上幽斎。
彼等は似た者同士ではないだろう。真九郎自身がピンと来ていないのだから。でも幽斎は似ていると言い張る。まるで矛盾だ。
幽斎は世界博愛主義者だが真九郎はそんな人間ではない。そんな大層な人間ではない。彼は臆病で弱い人間であり、生きるために、大切な人を守るために強くなろうとしている人間だ。
2人は出会ってしまった。この出会いが後にあの場面へとつながる始まりだ。
読んでくれてありがとうございました。
今回は昔に九鬼家お関わった真九郎の話をしました。ぎゅうっと圧縮してまとめましたが、要は九鬼家は真九郎を気に入っているということです。
そして後半は最上幽斎と真九郎の会合でした。彼等2人はどのような物語を繰り出すのか