お気に入りがいつの間にか1000件超えてたのにビックリな作者ヨツバです。
これはとてもうれしいですね。これからも頑張ります!!
では物語をどうぞ!!
022
紫と切彦は準たちに案内されている。目指す場所は2Fのクラス。そこに真九郎がいるのだ。
真九郎がいると分かって紫は喜々として腕をブンブン振りながら歩く。その姿はとても可愛らしく微笑ましいと言う感想しかない。
幼い少女を見守ることを信条とする準にとってその光景は慈愛の心しか湧かない。小雪に「ロリコン」や「ハゲー」と言われても微動だにしないほどだ。
「準が何も反応しないよー」
「おやおや。今の準は仕方ありませんね」
「若・・・俺は夢を見てないよな。現実だよな」
「現実ですよ準」
やはり現実だと実感して更に心が晴れやかになる。この気持ちは準と同じ人種にしか分からないだろう。紫はそう思わせるほどの可愛い子なのだ。
彼女をよく知る真九郎は紫を「見ただけで得をしたような気分になる女の子」と評している。準もその評価を聞けば首を縦に必ず振る。
「早く行くぞ!!」
「はい紫様!!」
やはり良い返事をするのであった。
ドンドンと2Fのクラスへと進むが、同じく2Fに向かう者がいる。その者の名前は紋白だ。
「あ、紋白ではないか!!」
「むむ。お主は紫!!」
今ここにロリが2人揃う。すぐさまお互いに近づいて握手をする2人。パアァと笑顔を溢れるのは仲が良い知り合いだからだ。
これには準も更に幸せ一杯にしかならない。もう足が浮いて昇天するんじゃないかってほどくらい幸せ絶頂急上昇。
「ああ。もう死んでも良いかもしれない」
「準に死なれたら困ります」
準にとって今週で最高の1日に違いないだろう。
「これはこれは紫様。お久しぶりです」
「うむ。クラウディオも久しいな」
九鳳院と九鬼の会合。
同じ世界財閥同士ならばお互いに知っていてもおかしくはない。実際に彼女たちは財閥絡みで知り合っているのだ。
そこで仲良くなったのは言うまでもない。しかも間に真九郎がいるのにも言うまでもないのだ。
「なんで紫がここにおるのだ?」
「紫は真九郎に会いに来たのだ!!」
「なら我と同じだな。一緒に行こうではないか」
紫は真九郎に会いたくなったから会いに来た。紋白も同じく真九郎に会いたくなったから会いに向かっているのだ。
九鬼の絆を修復してくれた真九郎には感謝してもしきれない。それに素晴らしい人材なのだから九鬼で働いてもらいたい気持ちもある。だから断られても印象くらいは残すために行動している健気な頑張りだ。
それに紋白の心には淡い想いを抱いている。真九郎のことを思うと心が温かくなると密かに口に零したほどだ。
「早く真九郎に会いたいな!!」
「そうだな!!」
真九郎に会えると思って無意識に笑顔になる。好きな人に会える気持ちはとても温かいものだ。
「切彦も早く真九郎に会いたいだろう?」
「はい。会いたいです」
「この者は誰だ?」
「私の友達の切彦だ」
自己紹介で堂々と斬島切彦と名乗ると紋白は「よろしくな!!」と元気一杯に挨拶。そして良い人材を探すのに目がないのですぐに切彦を品定めをしてしまう。
品定め結果は合格。切彦からは何か相当な才能をビリビリ感じたのが感想だ。その才能までは分からないが中々見つからない人材なのは確かである。
(合格だな。しかし何故だろう・・・いつもならスカウトするのだが何処か迷っている我がいる)
その気持ちは無意識による防衛本能かもしれない。
(斬島切彦・・・まさかこの女性があの裏十三家の『斬島』なのでしょうか?)
クラウディオは顔には出さないように『斬島』の名を聞いて警戒する。しかも「切彦」と名乗ったということは本家の直系を意味する。
斬島切彦。「ギロチン」の異名を持ち、どんな人間も確実に斬殺させる凄腕の殺し屋である。
その正体がダウナー系の少女とは予想外なのだが。
(見た目や雰囲気からは普通の少女。しかし分かる・・・この少女の内から感じる刃のような鋭い何かを!!)
さすがは完璧執事と言うべきか、切彦の危険性を何処となく察知している。当の本人である切彦自身は特に気にもしていないが。
これから一緒に行動することになるのだから気を抜かずに心を落ち着かせる。
(しかし何故、表御三家の紫様と裏十三家の斬島が一緒にいるのでしょうか?)
そもそも清流と言われる表御三家と濁流と言われる裏十三家が一緒にいること自体が不思議であり得ないのだ。
普通では一緒になることは無く、表御三家の方から裏十三家に近寄ることがない。だが紫と切彦は友達となって表も裏も関係無くなっている。だから2人は友達として一緒にいるのだ。
「早く真九郎に会いに行くぞ!!」
みんなでルンルン気分のまま歩き出す。
「紋様に紫様・・・最高すぎる。ロリコニアが見える」
その頃、準は勝手に妄想の国に入り込もうとしていた。
023
真九郎はリンから「紫様はどこだ!?」と迫られていた。これには「落ち着いて」と言うしかなく、宥める。しかし、リンは護衛の身として紫を心配するのは当たり前。
心の中では「護衛失格だ・・・」と自分自身にイラついている。その一部を真九郎にぶつけているのだから困る。
「紫が川神学園に来てるんですか?」
「ああそうだ。だからこその何処だ!!」
「俺に言われても分からないですよ!?」
「紫様イコール紅真九郎だろう!?」
「何その関係図!?」
前回に呟いていた謎の関係図はまだ健在のようだ。しかし否定できないので首を横には振れない。そんなんだから銀子から「ロリコン」と言われるのだから。
その称号だけは勘弁してもらいたいといつも思っている。去年で何回言われたか覚えていないが、いつもグサリと身体から心に突き刺さる。その度に夕乃からは「年上が一番ですから」と言われる。
「ねえねえ紫様って誰?」
一子はそれとなく口にする。その答えを言うのは大和だ。
「あの女性は九鳳院の近衛隊だ。そして紫様って様付けしているってことだから九鳳院の関係者だろう」
紫と言うの名前は聞いたことがある。確か去年に九鳳院から娘がいると報道されたはずだ。
「紫様ってのは九鳳院の娘だ」
「ええっ、それって大物じゃない!?」
「大物どころか超大物だよ」
九鳳院は表御三家と言われる日本を支配する一角だ。大和や一子たちが関わることなんて普通は無い。
しかし、リンが言うには超大物の紫が川神学園に来ていると言うのだ。
「ああ。だから九鳳院の近衛隊が学園に来たわけか。しかも強者が2人も」
強者とはリンと大作のこと。百代がワクワクとしているのを見て、やはりバトルマニアだと思う。
「真九郎。早く紫ちゃんを探すわよ」
「分かってる」
ガタリと椅子から上がって紫を探しに行こうとする。察してくれたのか、大和たちも探すのを手伝ってくれると言ってくれる。
お礼を言おうとしたが、また2Fの扉が開かれた。そこから走って来たのは今から探しに行こうとした人物である。
「真九郎!!」
「む、紫!? それに切彦ちゃんまで!?」
紫が元気一杯に真九郎へと抱き付いてくる。それを応えるように真九郎は優しく受け止める。受け止めてくれた事実が嬉しいのか紫は幸せ一杯の笑顔になった。
やっぱり紫は年相応の可愛らしい女の子。九鳳院なんて肩書きはオマケみたいだ。
「どうして紫がここに?」
「真九郎に会いに来たのだ!!」
やはり前回と同じであった。
「迷惑だっただろうか?」
「そんなことないよ」
「本当か?」
「俺は嘘ついてるか?」
「ついてない」
パアアっと笑顔になって真九郎に強く抱き付く。それを見た準は嫉妬するが、ここはあえて無視しているみんなだ。
「銀子にも会いに来たぞ!!」
「ありがとう紫ちゃん」
「これ、どんな状況なの?」
卓也の疑問は当然であった。
この状況をどう説明すればよいか悩み、「うーん」と呟く。まず紫との関係を説明しなければならない。しかし表御三家の九鳳院との関係をどう上手く説明すればよいか真九郎は思いつかなかった。
大和たちは少なからず真九郎が九鳳院と関係があることで驚きである。やはり川神学園には普通の人はこないようだ。
「そうだな・・・俺と紫は」
九鳳院との関係を何とか説明する前に紫がいつもの爆弾発言をする。
「私は真九郎の恋人だ!!」
「「「ええええ!?」」」
本当にいつもの爆弾発言である。この答えには大和たち全員が色々な意味で驚く。
「こ、こんな小さな子と恋人!?」
「紅くんってそーいう趣味なんだ」
「ロリコン」
「ずるいぞ!!」
一部だけ嫉妬が入っているがその他は真九郎の心にグサグサと刺さる言葉の雨である。
だからこそ、強くこの言葉を言うのだ。
「誤解です!!」
本当にこの言葉だけは切実な思いを乗せている。川神学園でロリコンのレッテルを貼って過ごすのは真九郎にとってキツイ。
「銀子からも誤解を解くように説明を・・・」
「ハァ・・・。面倒になったわね」
取りあえず九鳳院との関係を当たり障りなく説明するしかなかった。やはり要人の護衛として知り合ったとしか言えない。
紫を救ったことは誇れることだと思っているが詳しく語れず、重要な部分は抜きにして説明した。
「なるほど。九鳳院でも護衛の仕事をしていたのか」
「そうなんだよ直江くん」
「でも凄いな九鳳院の護衛なんて。近衛隊もいるのに・・・そもそもどうやって護衛の仕事がもらえたんだ?」
大和が中々鋭い質問を斬り出してくる。確かに未熟な揉め事処理屋が九鳳院から護衛の仕事がもらえるとは普通思わないだろう。
そもそも大財閥が学生を護衛として任せること自体が考えにくい。
(やっぱり直江くんは頭が良いって言うか、鋭いって言うか)
鋭い質問をされたら返す答えは用意してある。それは紅香から頼まれた仕事だからだ。これは本当のことである。
「揉め事処理屋の師匠から依頼をもらえたからだよ」
嘘では無い。しかし去年はまさか当初、九鳳院と関わるとは思っても見なかった。
「そういうことなのか」
「うん。そうなんだ。その時に紫と知り合ったんだ」
取りあえず納得はしてもらえた。でもロリコンのレッテルは少し張られたかもしれない。実際に岳人たちから少しだけからかわれたからだ。
それにいつの間にか紋白も抱き付いてくる。これもロリコンと勘違いされる状況だ。
「真九郎~!!」
「やあ紋白ちゃん」
優しく抱きしめて頭を撫でる。すると紫と同じように幸せそうな笑顔になるのであった。
紫も紋白も幼いが、どちらも強い娘だ。それは真九郎がよく分かっている。もっとも紋白は紫と違い、見た目がロリなだけだが。
「こら紋白。私の真九郎に抱き付くな!!」
「何を言う。真九郎は誰のものでも無いぞ」
なんとも可愛らしい会話だ。でも周りからのからかいは困る。
「ハハッ、おい紅。お前ロリコンだったのかよ」
「違うからね島津くん」
「意外だわー。ちょっと残念かも」
「だから違うからね小笠原さん」
「一緒にロリコニアを目指すか?」
「・・・勘弁してください」
準に優しい笑顔で肩をポンと叩かれる。その顔はまるで同士を見つけたような顔だ。
本当に勘弁してくださいとしか言えない。せっかく川神学園にて馴染んできたかと思えば、まさかの評価だ。
揉め事処理屋からロリコンへの転身したのだから。
「俺はロリコンじゃないから!!」
何度も言う切実な思いだ。
しかし、勘違いされてもおかしくない状況だから仕方ない。何せ今は右に紫、左に紋白という両手に花状態だからだ。
準は真九郎の肩に手を置きながら嫉妬している。もう少しすれば嫉妬が爆発するかもしれない。
「紋様が楽しそうでなによりです」
「クラウディオさんお久しぶりです」
「ええ。紅真九郎様もお変わりなく」
クラウディオに話しかける真九郎。取りあえずロリコンとからかわれる状況を抜けたい一心にだ。
それに彼はとても安心感を与えてくれる老紳士。空気の流れを変えてくれるに違いない。
「今日はどうしたんですか?」
「なに、紋様が真九郎様に会いに来ただけですよ」
優しい笑顔になる。話を聞くとどうやら本当に真九郎に会いに来たらしい。
「そうですか」と言って紋白を見る。前に会った時より元気に見える。まるで紫の時と同じようにだ。
「紋様は真九郎様のスカウトを諦めてませんからね。いつでも歓迎ですよ」
「ありがとうございます。考えておきます」
「前に言ったが我はいつでも歓迎しておるぞ!!」
「真九郎は渡さないぞ!!」
紫と紋白の可愛らしい会話は自然と笑みを浮かべてしまう。
今日は可愛らしい訪問の日であった。
読んでくれてありがとうございます。
今回は紫と紋白の会合でもありました。そして準は今にもロリコニアに飛び立ちそうです。
真九郎は川神学園でもロリコンのレッテルを張られる苦労は仕方ないですね。
紋白に関しては真九郎に淡い想いを抱いている設定にしました。そりゃあ自分を救ってくれた人ですからね。おそらく違和感は無いと思ってます。
今回の物語は紫の訪問と言う日常パートでしたが次回は切彦に視点を移します。今回は切彦は空気でしたからね。
ではまた次回をゆっくりとお待ちください。