流石にキリングフロアのような感じではありませんが、紅側の闇に近いです。
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川神裏闘技場は名前の言う通り川神市のある場所で非公式で行われている。
基本的に誰でも参加できるけれど、覚悟と自信があるものしか裏闘技場には入れないだろう。裏闘技場にいるのは血肉滴る戦いを求める者と楽しみ者しかいない。
もしくは良からぬことを考えている者くらいだろう。こういう場所は必ず何かしら良からぬことがあるものだ。
真九郎は裏闘技場の入り口に向かって見張りの者に会う。チップを渡して入り口に入ろうとしたがここで知り合いと会ってしまう。
ここには居てはならない顔ぶれだ。彼らが如何に実力があると言っても裏闘技場は裏世界側に近い場所なのだから真九郎としてはすぐに帰ってもらいたい。
「何で直江くんと葵くんがここに…」
顔見知りとは風間翔一グループと葵冬馬グループのことだ。なんでこうもぞろぞろと裏闘技場なんかに集まっているのか。
確かに川神には武術家が多いし、好戦的な人が多いけれども彼らには彼らの合う場所があると思う。
「実はある依頼を…生き残りの売春組織を潰すために動いていたらここまでたどり着いたんだ」
「僕たちはある薬物撲滅のためにここまで来たんですよ」
2つのグループはお互いともに目的があって裏闘技場に来ている。ただ楽しみにきただけではないようだ。
翔一たちは以前に潰した売春組織が復活したかもしれないということで捜索していたら裏闘技場までたどり着いたらしい。
冬馬たちは川神に最近出回っているユートピアという麻薬を撲滅するために動いていたら同じく裏闘技場にたどり着いたのだ。
そして真九郎は行方不明の川神学園の女の子を探していたら裏闘技場にたどり着く。
なんとも妙な巡り合わせだろう。裏世界に近い場所でクラスメイトと出会うなんて、こんなことはない。
「なるほど…」
正直なところ実力があるとはいえ彼らがここに来るのはやはり心配というか無謀というか。だけどここに来るということはもう自己責任だ。
彼らも言い聞かせたとしても帰らないだろう。それに裏闘技場の入り口で何か揉め事をして立ち入り禁止にされたら元も子もない。
実際に入り口にいる見張りは怪しい目で見られ始めている。
「取りあえず中に入りますか?」
「そうだな。入ろうか」
「貴方は…宇佐美先生?」
どうやら保護者がいるようだ。最も翔一たちの保護者役で宇佐美巨人はここに真九郎と冬馬たちがいることに同じように驚いたようだが。
「ほれ、入らせてくれや見張りさん」
巨人は流れるように見張りの人にチップを渡して当たり前のように入っていく。そしてつられていくように入る真九郎たちであった。
「ヒゲ先生はもしかして何度か来たことある?」
「昔に何度か来たことがあんだよ」
実は巨人、裏闘技場には若い頃に何度も訪れていたことがある。しかも真九郎や銀子は知らないが巨人は銀子の父親である銀正と一緒に仕事とはいえ、裏闘技場を荒らしたことがあるのだ。
そのおかげでいくつかの裏闘技場では出禁になっていたりする。その過去は今も残っており、巨人が裏闘技場に入ったら厳つい男が現れた。
「お久しぶりですね宇佐美」
「よおオーナー久しぶりだな。つーか生きてんのかよ。しぶてえな」
「もしやあの男も?」
「あいつはいねえよ。それに荒らすつもりはねえから安心しな。ただ久しぶりに来ただけだよ」
なんだか巨人が凄く頼りがいのある男に見える。大和や準たちは凄く意外そうな顔をしてしまう。百代や京、小雪でさえついあのヒゲ先生である巨人に頼ってしまいそうな感覚に陥るのだから。
真九郎も彼の裏闘技場での堂々とした佇まいと厳ついオーナーと涼しい顔で会話しているので、相当場慣れしていると分かる。
「荒らすことはしないから入れてくれよ。それに俺はもう年だぜ」
「うむむ、まあ良いでしょう。で、そちらの若い者たちは?」
「俺の従業員たちだ。こういう所で度胸でつかせようと思って連れてきたんだよ」
「ふむ。ま、それも良いでしょう。ですが何かあっても自己責任でお願いしますよ」
「へいへい」
そのまま闘技場内に入っていく。そして開けた場所には雄々しい雄叫びが聞こえてきた。
まず目に入ったのは金網デスマッチ。金網の中ではルール無用の異種格闘技繰り広げられていた。当たり前のように血が飛び交うのはルール制限が全くないからだろう。こんな状況でも身体が疼くのが武神として反応してしまう百代。
冬馬が周囲を見渡すのは早速ここで麻薬取引が行われているか確認している。確かにここならほとんどの客が戦いを見ており、裏で何かやってもバレないだろう。
この裏闘技場なら絶好の取引場所だ。オーナーは非公式の場所のくせに健全な裏闘技場と言っている。ただそれは建前で何も起こらなければ暗黙の了解という奴だろう。
どうせオーナーはここで何が起こっているか知っているはずだが、誰にも言わないだろう。
「ところで若い者たちですが腕っぷしがあるなら参加してみませんかね?」
「あん?」
「どうも腕の良さそうなが従業員がいますよね?」
「チッ、オーナーの目利きは落ちてねえな」
オーナーは相手の強さを見抜く。それは裏闘技場で様々な人間を見ているうちに培ったものだ。
今も裏闘技場は盛り上がっているがオーナーとしてはもっと盛り上げたい。新たな裏闘技場の素晴らしいカードを作りたいのかもしれない。
そうなると百代たちはオーナーにとって裏闘技場では良い人材すぎる。補足だが百代たちは流石に変装はしている。特に百代は有名人だから入念に変装している。
「それなら私が出る!!」
百代はいの一番で手を挙げる。オーナーも彼女には目をつけていて、裏闘技場に参加してもらいたいと思っている。
変装を見抜いてはいないが、実力だけを見抜いているオーナーはなかなかだ。もっとも彼女だけじゃなくて他にも出てほしい人は何人か候補がいるようだ。
「彼女だけじゃなくて、そこの白髪の子や黒髪で刀を持っている子も…」
「ボクー?」
「わ、私ですか!?」
「オーナー」
ここで巨人が睨むとオーナーはすぐさま黙る。
「最近じゃ武士娘っていうんですかね、活きの良い強い女性の時代ですよ宇佐美」
「そーかい。まあ分かる気がするが」
「この裏闘技場にも良いのがいるんですよ」
「なら私はそいつらと戦ってみたいぞ!!」
「いきなりは無理だ」
「なんでだよー」
「いきなり好カードとは組ましてもらえないからだよ」
実力があってもいきなり良い相手とは戦えないものだ。なんせ賭けにならないからだ。
賭けにならなければカードを組ませるなんてことはしない。せめて最低でもダークホースとして認められないと良いカードと組ませてもらえない。
まずは下積みからというか何人かと戦って百代の実力を見せるしかない。もっとも百代ならすぐさま実力がみとめられるだろう。なんせ有名な武神だからだ。
「じゃあ手続きしといてくれオーナー」
「ええ、良いですよ」
オーナーはしたり顔で百代の手続きを行いにいく。
「おい、今回の目的は戦うためじゃねえぞ」
「分かってるよヒゲ先生。私が戦って客たちの目を惹かせるのと闘技場内から怪しい奴を見つけるのが仕事だろ?」
「何だ分かってるじゃねえか」
「作戦は考えてきたしな」
大和がいくつか作戦を考えてきたのだ。まずその1つとして百代が裏闘技場で戦うことから。
彼女が戦えば当たり前のように客が食いつくはずだ。そうすれば9割がたの視線は百代に集まる。残りの集まっていない1割が大和たちが探す者たちだろう。
そこからは大和たちが上手く探せば良いだけだ。冬馬もその隙に探す。真九郎に関しては情報でこの裏闘技場で行方不明の女の子が働いていると聞いている。ならば探さないといけない。
ここで巨人から「お前ら適当に見て回っていいぞ」という号令で全員が動き出す。裏闘技場はなかなか広いから手分けをして探さないといけない。そして1人で動いてはいけない。必ず最低3人で動くことになっている。真九郎は大和たちより場慣れしているから1人で動けるが。
「宇佐美。その子の名前はなんてエントリーしますか?」
「どうする?」
「ピーチガールで!!」
裏闘技場に武神もといピーチガールが参戦。
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裏闘技場には真九郎たちではなくて、他にも既に侵入しているメンバーがいる。それは冬馬の仲間である板垣たちだ。
彼女たちは早い段階で川神裏闘技場を見つけて一般客として侵入していたのだ。天使や竜平は仕事とはいえ、裏闘技場に参加してみたかったのでつい参加してしまう。
最近は九鬼のせいで暴れられないでの溜まった鬱憤を晴らすには竜平にはちょうど良かった。それに裏闘技場で勝ち上がれば、いろいろと待遇が良くなるというか勝ち上がった者にしか手に入らない情報が手には入れるかもしれないのだ。
勝てばファイトマネーが貰えるし、本来の目的も達成できるかもしれないから一石二鳥である。
竜平と天使は既に裏闘技場では強者であり、人気のファイターになっている。
「本来の目的を忘れんじゃないよ竜に天」
「分かってるよ亜巳姉。そろそろマロード…じゃなくて葵が来るからな」
「私たちは麻薬売買人を捕まえるのもそうだけど、葵たちを護衛するのも今回は仕事に入ってるからね」
裏闘技場は危険なところだ。だから護衛するのは必要だろう。
「戦ってみて分かったがここにはヤバイのが何人かいるからな」
「だなー。アタシとしては今活躍しているあの2人がとんでもねえと思うぜ」
「ああ、あの2人ね。覇王捕縛戦やつい最近出会って裏闘技場のこと知った切っ掛けになったあの赤髪の女とこの裏闘技場のナンバーワンの女」
この裏闘技場には2人の人気者がいる。その2人は負け無しで場を盛り上げてくれるのだ。
オーナーは特に重宝しており、いつか2人のカードを組み合わせて戦わせたいと思っている。その時はきっと多くの客がくるはずだろう。
まず1人目が『赤髪サイボーグ』。その正体は星噛絶奈である。裏闘技場にいるのは仕事まで暇つぶしに過ぎない。
それにここではオーナーに気に入られているので酒がタダで飲めるのもある。正体をオーナーに明かせば更に驚くだろう。もしくは知っていながらの対応をしている可能性もある。
そして2人目が『アルティメットクイーン』。ふらりとこの裏闘技場に現れてはすぐにトップになった強者だ。
何者か分からないが日本人ではない。顔に仮面をつけているが性別は女性であることは分かる。何故ならスタイルが女優並みだ。
そして目立つのが綺麗な長い金髪。本当に金で出来た髪って言われても信じられる。
ここでは人の経歴などは聞かない。ただ裏闘技場を楽しめればよい。裏闘技場に迷惑をかけなければ何者でもいいのだ。
「あの2人は要注意だな…それとここの従業員にヤベーのが1人いる」
「ああ、あの髪の毛から魂まで全てが鉄で出来ているかのような巨漢のやつか」
「あいつは完全に人を殺しているようなやつだぜ」
亜巳たちが見た巨漢の従業員。そいつは師匠である釈迦堂刑部よりも冷徹そうな男。人を人と思ってないような危険な男だ。
その男ともし戦うことになったら間違いなく殺し合いになるだろう。竜平として望むところだが今は麻薬売買人の方を捕まえるのが大切だ。
「そろそろ葵たちがここに来るそうさね。準備するよ」
「へいへい。あれ、ところで辰姉は?」
「むにゃむにゃ」
「こんなところでも寝てんのかよ」
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この川神裏闘技場に私が会いたかった奴が来た。しかも裏闘技場にまで参加をするそうだ。その名前は武神の川神百代。
これは私の力を見せる時がやっと来たのだ。ここで力試しをしていたらまさかの機会が巡ってくるとは思わなかった。
これは運が良いものだ。いずれ武神とは戦うつもりだった。
何故か変装しているが私の目は誤魔化せない。あいつは間違いなく武神だ。『ピーチガール』なんて名前で登録しているが分かる奴にはバレバレだ。
彼女も戦いを目指してこの川神裏闘技場に来たのだろうか。そうだと言うのなら私と同じかもしれないな。武人や戦士はやはり戦いの場に惹かれてやってくるのかもしれない。
少し彼女に向かって殺気を飛ばしてみたがどうやら気付いたようだ。これは嬉しいものだ。私の殺気に気付いてくれた。
彼女ならすぐにここのオーナーに気に入られるだろう。そうしたらすぐさま私とカードを組んでくれるかもしれない。
これは私もアップしておこう。私の機能性を早く見せてやりたいものだ。前に覇王と戦った時より私は完成されているぞ武神!!
読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。
さてさて、大和たちは裏闘技場にきちゃいましたよ。
いくら強いと言っても今まで経験が通じる世界とは違います。でも保護者として宇佐美を選びました。彼はこういうところ知っているイメージがありますから。
なんとなく適役だと思っています。